ADHD(注意欠如・多動症)
不注意・多動・衝動性による、生きづらさを減らす

音声はオフです。
ADHD(注意欠如・多動症)について
ADHDは、子どもの頃から続く不注意、多動、衝動性を特徴とする発達障害です。大人になると、忘れ物や仕事のミス、先延ばし、時間の管理などが主な困りごとになります。
治療では、必要に応じて薬で症状を和らげ、生活の工夫を組み合わせます。「うまくいった」経験を増やして、落ち込みや不安などの二次障害を減らし、本来の長所を生かすことを目指します。
当院では、メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)の処方は行っていません。
こんな症状に注意
手がかりになるのは、以前から繰り返している困りごとと、生活への影響です。特に次のような場面を振り返ると、診察でも状態を伝えやすくなります。
1.忘れ物や仕事のミスを繰り返す

外出前に鍵や財布を探す、予定を忘れる、書類の記入漏れを繰り返すなどの困りごとがあります。話を聞いている途中で別のことに注意が向き、頼まれた内容の一部が抜ける場合もあります。
注意しようと努力しても同じ失敗が続き、自信を失ってしまうことがあります。
2.片付けや課題に取りかかれず、期限が迫る

何から始めるか決められず、目についた別の作業を始めてしまいます。片付けの途中で思い出の品を読み始める、提出物を後回しにして前日に慌てるなどの形で現れます。
始めること、順番を決めること、最後まで終えることの、どこでつまずくかを確認します。
3.落ち着かず、休もうとしても動き続ける

会議中にそわそわする、話し始めると止まらない、話題が次々に飛ぶなどの特徴があります。大人では、見た目の動きより「頭の中が忙しい」「ゆっくり休めない」と感じることもあります。
疲れていても予定や作業を増やし、後から強い疲労が出る場合があります。
4.言葉や買い物を、その場の勢いで決める

相手の話を最後まで聞く前に答える、思ったことをすぐ口にする、欲しくなった物をすぐ買うなどの行動が続きます。かっとなったときに強い言葉が出て、後で悔やむこともあります。
人間関係やお金の管理への影響まで含めて、対策を考えます。
ADHD(注意欠如・多動症)を詳しく知る
1.はじめに

診断と治療、生活の工夫によって改善を目指せる発達障害です。
ADHDでは、不注意や衝動性によって、仕事や日常生活で同じつまずきを繰り返すことがあります。周囲から注意される経験が続くと、自分を責め、落ち込みや不安が強まる場合もあります。
ADHDには、症状の改善に用いる薬があります。必要な薬と生活面の対策を組み合わせ、困る場面を減らすことが治療の基本です。
大人になってからの診断にも、これまでの生きづらさを整理し、取り組む方向を見つける意味があります。ここでは成人のADHDを中心に、症状、検査、薬、生活での工夫を説明します。
2.ADHDとは―大人になって気づく理由

症状は子どもの頃から続き、生活の変化によって目立つことがあります。
ADHDはAttention-Deficit/Hyperactivity Disorderの略で、「注意欠如・多動症」と呼ばれます。「注意欠陥多動性障害」は以前から使われてきた名称です。
症状は「不注意」と「多動・衝動性」の2つのまとまりで捉え、不注意が中心、多動・衝動性が中心、両方が目立つ、という3つの現れ方があります。
大人では、不注意が中心の方もいる
子どもの頃のような走り回る多動は目立たず、忘れ物、段取り、時間の管理などに困る方もいます。静かに過ごしていても、話を聞き逃す、課題が終わらないなどの支障が続くことがあります。
女性では、不注意を中心とした困りごとが見逃され、成人後に診断につながる場合もあります。診察では、外から見える落ち着きと、生活の中で起きていることの両方を確認します。
就職や役割の変化で、対処しきれなくなる
学生時代は家族の手助けや決まった時間割で対応できていても、就職後は複数の仕事を自分で管理する必要が出てきます。昇進、異動、家事や育児の負担が増えた時期に、困りごとが目立つこともあります。
「いつ気づいたか」と「いつから特徴があったか」を分けて振り返ることが、診断の手がかりになります。
3.ADHDの代表的な症状と二次障害

不注意・多動・衝動性を整理し、その後に加わった不調も確認します。
①不注意―注意の持続、段取り、整理が難しい
周囲の物音や思いついたことに注意が移り、作業の途中で別のことを始めてしまいます。不注意によるミス、忘れ物、なくし物が多く、片付けや整理にも時間がかかります。
宿題や仕事の課題を先送りし、期限直前にまとめて取り組むこともあります。「始める」「順序を決める」「途中で戻る」「終える」といった、行動を進めるための実行機能に関わる難しさとして整理できる部分もあります。
②多動―体や頭を、休ませにくい
じっと座っていることが苦手で、会議や待ち時間にそわそわします。しゃべり始めると止まらない、会話の話題があれこれ飛ぶなど、話し方に現れる場合もあります。
大人では、休もうとしても頭が休まらず、疲れていても活動を続けてしまうという訴えがあります。休みの取り方も、対策の一つになります。
③衝動性―一呼吸置く前に、言葉や行動が出る
相手の話をさえぎる、順番を待てない、思いついたことをすぐ言うなどの特徴です。衝動買いを繰り返したり、怒りに任せて相手を強く責めたりして、生活や関係に影響が出る場合があります。
気持ちが動いたときの反応と、後からどう感じているかを一緒に確認します。発言や買い物など、行動が起こる直前に区切りを作ることが対策につながります。
④二次障害―落ち込み、不安、体の不調など
仕事や対人関係でうまくいかない経験が重なると、落ち込み、対人不安、イライラ、慢性的な体の症状などが出ることがあります。人との関わりを避け、引きこもる場合もあります。
こうした二次障害が重なると、生きづらさがさらに強まります。特性への対策と、現在つらい不調への治療を並行し、成功体験を増やしていくことが重要です。
4.ADHDの原因と、生活環境との関係

脳の発達に関わる複数の要因があり、環境によって困り方が変わります。
ADHDには、遺伝的な要因や、注意・行動の調整に関わる脳の発達などが関係すると考えられています。診察では、本人の努力の量より、どのような場面で注意や行動の調整が難しくなるかを確認します。
静かな場所では進められる作業でも、電話や声かけが多いと止まりやすくなります。睡眠不足や過重な仕事が重なると、もともとの難しさに疲労が加わります。
治療では、特性を和らげることと、その特性で困りにくい環境を作ることの両方に取り組みます。
5.ADHDと似た病気・合併しやすい不調

ASD、双極性障害、甲状腺の病気なども、経過を見ながら確認します。
①ASD(自閉スペクトラム症)
ASDは、対人面の苦手さや強いこだわりを特徴とする発達障害です。ADHDと重なることがあり、幼少期からの対人関係、変更への対応、興味の持ち方なども確認します。
問診や心理検査の情報を合わせて考え、両方の特性がある場合は、不注意・衝動性への工夫と、対人面・こだわりへの対策を組み合わせます。
②双極性障害(躁うつ病)
双極性障害では、落ち込みのうつ状態と、活動や気分が高まる躁・軽躁状態が現れます。多弁、衝動買い、活動の増加などが、ADHDと似て見えることがあります。
子どもの頃から続く特徴と、ある時期にまとまって出る気分・睡眠・行動の変化を分けて確認します。治療の選び方に関わるため、両方が重なっていないかも含めて見ていきます。
③甲状腺など、体の病気
甲状腺機能の低下では、疲れやすさや頭の働きの鈍さが、集中しにくさにつながることがあります。甲状腺機能の亢進では、落ち着かなさ、動悸、眠りにくさなどが出ます。
最近の体重変化や疲労、動悸なども伺い、必要に応じて採血で確認します。身体の原因が見つかった場合は、その治療を進めます。
④睡眠の問題・うつ病・不安症状
睡眠不足やうつ状態でも、注意や記憶、作業の進み方が変わります。強い心配事に気持ちを取られ、目の前の話が入りにくくなることもあります。
以前からの特徴に加え、最近何が変わったかを整理します。合併する不調を治療すると、今の困りごとを軽くできる場合があります。
6.ADHDは何科で相談する?―受診の目安

成人の発達障害を診療する、精神科・心療内科が相談先になります。
診断だけでなく、その後の治療や支援も確認する
大人のADHDの診察に対応しているか、必要な心理検査をどこで受けるか、診断後にどのような相談ができるかを確認します。検査を別の機関へ依頼する形の医療機関もあります。
受診先に迷う場合は、自治体や発達障害者支援センターなどへ相談する方法もあります。検査内容、費用、予約の流れは、受診先と実施機関に確認してください。
同じつまずきが続き、生活に影響しているとき
忘れ物や遅刻が仕事に影響する、片付けや支払いが回らない、衝動的な発言で人間関係に困るなどの状態が、受診を考える目安です。落ち込みや不眠が加わっている場合には、その治療も必要になります。
診察では、「仕事の締め切りに間に合わない」など、いま一番困る場面から話してください。特性の評価とともに、目の前の負担を減らす方法を考えます。
7.ADHDの診断―問診・心理検査・血液検査

ADHDは症状と発達の経過から診断し、検査は目的に応じて組み合わせます。
①問診―子どもの頃からの症状と、現在の支障
不注意・多動・衝動性がどのように続き、学校、家庭、仕事で何に困ってきたかを伺います。一般的な診断基準では、12歳より前から一部の症状があること、症状が6か月以上続くこと、複数の場面で支障があることなどを確認します。
本人の記憶に加え、家族からの話、通知表、母子手帳、過去の検査結果などが参考になります。手元の情報を出発点に、必要な経過を整理していきます。
②心理検査―得意・不得意や、ほかの特性を整理する
質問票や認知機能を調べる検査などを用い、日常の困りごとを別の角度から確認します。注意や作業の進め方の特徴、ASDなどの特性を検討し、診断と支援の方針に役立てます。
検査結果は、問診や生活歴と合わせて判断します。当院では、心理検査は提携している心理機関などへ依頼する形で進めます。
③血液検査で分かること―甲状腺など、身体の原因
血液検査は、甲状腺の機能など、現在の集中しにくさや落ち着かなさに関わる身体の原因を確認するために行います。ADHD自体の判断は、発達歴、症状、生活への影響を整理する診察で行います。
また、治療を始める際には体調や持病、服薬を確認し、薬の種類に応じて血圧・脈拍なども測定します。診断のための確認と、薬を安全に使うための確認を分けて考えます。
| 診察・検査 | 主に確認すること |
|---|---|
| 問診・生活歴 | 子どもの頃からの特徴、複数の場面での支障、他の病気との関係 |
| 心理検査 | 症状の傾向や認知機能、得意・不得意など、診断と支援の材料 |
| 血液検査 | 甲状腺など、症状に関わる身体の原因や体調 |
セルフチェックと、診断後の相談
セルフチェックは、気になる特徴を振り返るきっかけになります。受診時には点数とともに、実際に困った場面を伝えると役立ちます。
診断後は、薬が必要か、どの工夫から始めるか、周囲にどのような協力を求めるかを相談します。検査結果も、自分に合う対策を選ぶために活用します。
8.ADHDの治療の方向

薬で症状を和らげ、生活の工夫で困りごとを減らします。
ADHDの治療では、必要に応じて薬を使い、不注意・多動・衝動性を和らげます。その効果を土台に、メモを取る、注意がそれたら戻る、一呼吸置いて行動するなどの対策を続けます。
薬と工夫で「できた」と感じる場面が増えると、自信を取り戻し、うつや不安などの二次障害の緩和につながります。そのうえで、行動力や得意な分野への関心など、本人の長所を生かすことを目指します。
生活の工夫で対応できている場合や、薬の副作用の負担が大きい場合には、薬を使わず進める選択肢もあります。症状と本人の希望を踏まえ、続けやすい方法を相談します。
9.治療①薬の治療―アトモキセチン・グアンファシンなど

当院では、まずアトモキセチンの効果と相性を確認する進め方を基本にしています。
成人のADHDでは、効果と副作用のバランスを見ながら、薬を選びます。当院では、アトモキセチンから相性を確認し、合わない場合などにグアンファシンを検討します。
①アトモキセチン―継続しながら効果を確認する
不注意、多動・衝動性の両方に用いる薬です。ノルアドレナリンの働きに作用し、注意や行動の調整を助けます。
少量から調整し、数週から1〜2か月ほどの経過を見ながら効果を確認します。本人には大きな変化が分かりにくくても、「仕事の抜けが減った」「会話を落ち着いて聞けるようになった」と、周囲が気づく場合もあります。
飲み始めには、吐き気、食欲の低下、眠気などが出ることがあります。慣れて軽くなる場合もありますが、つらいときは早めに相談し、量や服用方法を調整します。
②グアンファシン―眠気や血圧を見ながら調整する
アトモキセチンが合わない場合や、多動・衝動性への対応を重視したい場合などに検討します。不注意の改善も治療の対象となり、全体の困りごとの変化を見ていきます。
量を徐々に調整し、2〜4週ほどを含む初期の経過から、効果と副作用を確認します。十分な効果を見極める期間は、調整の進み方によって変わります。
眠気やだるさに加え、血圧の低下、脈が遅くなること、立ちくらみなどに注意します。開始前や増減量時を含め、血圧・脈拍と体調を確認しながら使います。
③メチルフェニデート徐放剤―当院では処方していません
比較的速く効果が現れる薬です。食欲低下や不眠などの副作用、依存・乱用への注意を踏まえ、適切に管理して使用します。
当院では、成人になってから診断された方への使用で、副作用などの負担が効果を上回ると感じるケースを経験しており、慎重な立場を取っています。メチルフェニデート徐放剤の処方は行っていません。
服薬中に確認すること
薬の効果と合わせて、睡眠、食欲、体重、血圧・脈拍の変化を確認します。ほかの医療機関の薬、市販薬、妊娠の希望なども、処方前に伝えてください。
アトモキセチンとグアンファシンは、服用中の自動車の運転や危険な機械の操作を避ける必要があります。失神や強い動悸、気分・行動の急な変化が出た場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。
妊娠・授乳中の薬の選択は、薬ごとに確認が必要です。特にグアンファシンは、妊娠中や妊娠の可能性がある方には使用できないため、該当する場合は早めに主治医へ連絡し、切り替えや中止の方法を相談します。
10.治療②特性等への工夫・取り組み

工夫を繰り返し、成功体験から二次障害の改善につなげます。
薬で症状が和らいだ後も、仕事や生活の進め方を身につける取り組みが重要です。使いやすい方法を選び、日常で繰り返すことで習慣にしていきます。
①不注意―覚えておく負担を減らし、作業に戻る仕組みを作る
予定や頼まれごとは、その場で一つのメモや予定表に集めます。リマインダーやアラームを使い、思い出すきっかけを作ります。送信前に宛先や添付を読み上げるなど、確認する項目と場面を決める方法もあります。
作業は「書類を仕上げる」から「見出しを3つ書く」のように小さく分けます。注意がそれたことに気づいたら、今の作業を示すメモを見て戻る練習をします。
片付け・時間管理への応用
鍵や財布の置き場所を決め、戻す手順を短くします。収納を増やす前に、よく使う物と、それを使う場所を対応させます。
時間の対策では、締め切りだけでなく、作業を始める時刻にもアラームを設定します。所要時間を実際に測り、移動や身支度に余裕を含めると、予定を立て直しやすくなります。
②多動・衝動性―動く前に、一呼吸置く
話をさえぎりそうなときは、言いたいことをメモしてから相手の話を聞きます。買い物はすぐに決済せず、いったん候補として置いて、予算と必要性を確認する時間を取ります。
怒りが強まったときに席を離れる、返事を少し待つなど、アンガーマネジメントの方法も取り入れます。自分の緊張に気づくマインドフルネスや、「何も進めずゆっくりする」休養の練習も役立てます。
取り組みを支える人や、続けたい理由を確認しておくことも大切です。一人で気合いを入れ続けるより、支えや動機づけを活用します。
③二次障害―課題の難しさを調整し、「できた」を増やす
最初から多くを変えようとせず、取り組める課題を選びます。「今週は予定を一つの場所に記録できた」など、小さな成功を確認することが、自信を取り戻すきっかけになります。
失敗したときは、「自分は駄目だ」という考えに加え、「手順を減らせるか」「別の方法が使えるか」と振り返る練習をします。強い落ち込みや不安があるときは、その治療も並行します。
④本来の長所を生かす
衝動性として困っていた面が、場面によっては行動力や発想の豊かさとして役立つことがあります。薬と工夫で弱点が和らぎ、二次障害が減ると、自分の強みを使える余裕が戻ります。
得意なこと、周囲から評価されたこと、無理なく続けられることを探し、仕事や生活で生かしていきます。
11.仕事・生活での環境調整と、利用できる支援

本人の練習と合わせて、仕事や生活の仕組みを分かりやすく整えます。
指示・優先順位・作業の環境を具体的にする
仕事では、口頭の指示にメモを添える、複数の依頼の優先順位を確認する、締め切り前に進み具合を共有するなどの工夫があります。話し声や通知で注意がそれる場合は、集中する時間や場所を調整します。
「気をつけること」を増やすより、迷う場面と覚えておく量を減らす方が、取り組みやすくなります。職場には、困る場面と必要な調整を具体的に伝えます。
睡眠と休養を確保する
作業に集中して夜更かしする、休日も活動し続けるなどで、疲労がたまる場合があります。起床・就寝や食事の時刻に見通しをつけ、休む時間も予定に入れます。
うつや不安、不眠が強い時期は、仕事量の調整や休職も含めて回復を優先します。その後、同じ負担を抱え込みにくい方法を整えて戻ります。
カウンセリングや就労支援を組み合わせる
時間管理や対処法を継続して練習したいときには、認知行動療法などの心理的支援が選択肢になります。自分を責める考え方や、感情との付き合い方を扱うこともあります。
働く準備や職場への定着に支援が必要な場合は、発達障害者支援センター、就労支援機関などで相談できます。利用条件と支援内容を確認し、現在の課題に合う方法を選びます。
12.治療の3段階(薬を使う場合)

初期は薬の相性、中期は工夫と成功体験、後期は生活を保てる薬の量を考えます。
薬を使う場合の治療を、3段階に分けて説明します。最初から生活の工夫も始め、薬の効果が見えてきたら、取り組みを深めます。生活が安定した後は、薬を減らせるかを主治医と相談します。
①治療初期―合う薬と、適切な量を探す
当院では、まずアトモキセチンの効果と副作用を見ながら、量を調整します。副作用が強い、十分な効果が得られない場合などには、グアンファシンも検討します。
この段階から、メモやアラームなど、始めやすい工夫に取り組みます。薬の効果が出てきたら、その助けを使って練習を進めます。
②治療中期―特性への工夫を習慣にし、二次障害を和らげる
薬を適切な量で続けながら、注意を戻す、一呼吸置くなどの練習を繰り返します。生活や仕事でうまくいった場面を増やし、「できた」という実感を大切にします。
工夫が習慣になり、落ち込みや不安などの二次障害が和らいできたら、生活の安定を確認します。そのうえで、後期の治療方針を相談します。
③治療後期―生きづらさを増やさず、減薬・中止を検討する
薬を減らした後も生活を維持できそうな場合は、徐々に減薬し、状況が許せば中止を目指します。不注意や衝動性が再び目立つときには、生活の工夫を確認し、薬の量や調整の速さを相談します。
工夫だけでは負担が大きい場合は、適切な量の薬を続けます。減薬を検討する場合も、働くこと、家事、人との関係が安定していることを大切にします。
13.アトモキセチンの減薬と、薬を続ける期間

症状と生活への効果を定期的に見直し、続ける量や減らす時期を相談します。
減薬を考えるときに確認すること
仕事や家庭が安定しているか、メモや時間管理の工夫が続いているか、落ち込みや不安が落ち着いているかを確認します。本人が感じる効果と、副作用の負担も合わせて考えます。
異動や繁忙期など、大きな変化がある時期には、その負担も踏まえて時期を選びます。薬を減らす前に、どのような変化が出たら相談するかを決めておきます。
減らした後は、気分だけでなく生活の変化を見る
忘れ物、遅刻、作業の抜け、衝動買いなどが増えていないかを確認します。本人は同じつもりでも、家族や職場が変化に気づく場合もあります。
困りごとが戻った場合は、工夫を調整するとともに、服薬を続ける必要性を再評価します。適切な量で長く治療を続けることも、生活を支える選択肢です。
グアンファシンは、急な中止に注意する
グアンファシンを急に中止すると、血圧が上がったり、脈が速くなったりすることがあります。減薬は、血圧・脈拍を確認しながら、主治医の指示で徐々に行います。
アトモキセチンとは、中止時の注意点が異なります。飲み忘れが続いたときや副作用で服用が難しいときも、再開や中止の方法を処方医・薬剤師に確認してください。
14.家族・パートナーの関わり方

責めることより、忘れにくく、行動しやすい仕組みを一緒に考えます。
頼みごとは、「後でやっておいて」から「夕食前に、ごみを玄関へまとめてほしい」のように、行動と時刻を具体的にします。共有の予定表などを使い、口頭で何度も注意する負担を減らします。
本人が工夫してできたことは、具体的に伝えます。本人の努力と、家族が困っていることの両方を整理し、担当する家事や確認方法を相談します。
家族がすべてを管理すると、支える側も疲れます。本人が使える仕組みを増やしながら、必要な支援を分担していきます。
15.ADHDについてよくある質問

ADHDは治りますか?
治療では、不注意や衝動性による支障を減らし、生活のしやすさを高めることを目指します。薬と工夫が合えば、仕事のミスや対人面のトラブルが減り、自信を取り戻すことが期待できます。
症状の現れ方は、年齢や環境によって変わります。その時期に必要な対策と薬の役割を見直しながら、無理なく続けられる生活を作ります。
好きなことには長く集中できます。診察ではどう伝えますか?
興味のある作業に深く集中する一方、ほかの作業への切り替えや、必要なことに注意を向ける場面で困る方がいます。時間を忘れて取り組む状態は、「過集中」と呼ばれます。
診察では、集中できる活動と難しい活動、途中で切り上げられるか、睡眠や予定への影響を伝えてください。集中の長さだけでなく、注意を必要な場面へ向け直せるかを確認します。
子どもの頃の資料や、親の同伴が難しい場合は?
自分が覚えている学校や家庭での様子、これまでの仕事で困ったことから話してください。残っている通知表や過去の検査結果、家族から聞いた話があれば参考になります。
幼少期の経過は大切な診断材料です。どの情報を補えるかを、診察の中で相談します。
子どものADHDは、どこで相談できますか?
発達の診療に対応する小児科、児童精神科、自治体の発達相談窓口などが相談先です。家庭での様子と、園や学校から聞いていることを合わせて伝えます。
対象年齢や検査の体制は医療機関によって異なるため、予約前に確認してください。
16.まとめ

薬と生活の工夫で、特性による困りごとと二次障害の改善を図ります。
ADHDは、子どもの頃から不注意・多動・衝動性が続く発達障害です。大人になって困りごとが目立つ場合もあり、診察では発達の経過と現在の生活への影響を整理します。
治療では、必要な薬で症状を和らげながら、メモ、時間管理、一呼吸置く練習などを続けます。「うまくいった」経験を増やし、落ち込みや不安などの二次障害を和らげます。
生活が安定した後も、薬と工夫の役割を見直しながら、自分の長所を生かせる状態を目指します。
17.吉祥寺でADHDの相談をお考えの方へ

こころ診療所吉祥寺駅前は、東京都武蔵野市、吉祥寺駅近くの心療内科・精神科です。忘れ物やミスを繰り返す、段取りや片付けが難しい、衝動的な行動で生活に困るなどのご相談を受けています。
診察では、子どもの頃からの特徴、現在の生活への影響、これまでの治療を確認します。必要に応じて提携する心理機関での検査も組み合わせ、薬と生活の工夫を相談します。
当院では、メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)の処方は行っていません。 お薬手帳や過去の検査結果、通知表など、参考になる資料があればお持ちください。
ADHD:動画での説明
不注意・多動・衝動性の特徴、診断で確認すること、薬と生活面の工夫、治療の3段階について、動画でも説明しています。
主な参考文献
- 尾崎紀夫・三村將 監修ほか:『標準精神医学 第9版』医学書院、2024年。
- 大熊輝雄 原著:『現代臨床精神医学 改訂第12版』金原出版、2013年。
- 米国精神医学会 原著、髙橋三郎・大野裕 監訳:『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年。
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト:発達障害(神経発達症)」。

