休養による治療

追い詰められたときは、まず「休養」

うつ病の治療など、多くの場面で、「休養」が大事といわれます。

 

けがをしたらそこを休ませるように、脳の不調ならそこを休ませるのが目的です。

 

休職ではまさに休養が重要ですが、働く場合でも、休養をいかに確保するかが大事です。

  • 休養は、その名の通り休みを取って頭を休ませ「こころの不調」の改善を図る治療です。
  • 一見「休養」はシンプルだが、以外にこれがうまくいかず治療がうまくいかないことが多い。
  • 休養の大敵は「不安」と「考えごと」。無意識に頭を使い休養が難しくなってしまう。
  • 対策は、「不安」「考え」と距離を取りつつ、薬も必要に応じ活用すること。
  • 「休養」も、質・効率を求めれば奥が深い。自分に合ったやり方を工夫し見つけていく。
  • 休職・休学ではまずは休養に専念すること。回復後徐々にリハビリする。
  • 仕事しながらでも、すきま時間や土日などを活用し、休養を生活に取り入れていく。

もくじ

 
  1. はじめに
  2. 治療としての休養
  3. 疑問:休むことは簡単?
  4. 休養の大敵は「不安」と「考えごと」
  5. 休養と「くすり」
  6. 自分の効率的な休養方法を探す
  7. 休職(はたらく人の休養)
  8. 休学(まなぶ人の休養)
  9. 休養入院(家で休めないときに)
  10. 働きながら行う「休養」
  11. まとめ
  12.  
 

はじめに

休養は、こころの治療の大事な一部です。

こころの治療の中で、しっかり休むことで頭を休ませ、こころの不調改善をはかる「休養」があります。

けがをしたらその場所を休ませるのと同様に、休養により脳を「休ませる」ことで、状態の改善を図ります。

うつ病の治療など、多くの場面で、この「休養」が大事な意味を持ちますが、具体的な意味や、方法論などは、あまり語られにくい部分でもあります。

ここでは、あまり語られることの少ない「休養」について、全体像と、場面ごとの実際について、見ていきます。

  • 休むことを通じて脳を休ませ、こころの不調の改善を図る方法が「休養」。
  • うつ病の治療など多くの場面で、治療の大事な部分を占める。

治療としての休養

 

漠然とではなく「脳を休ませる」イメージを。

 

「休養」はこころの治療でしばしば重要ですが、実際、どのようなイメージを持つでしょうか?

 

「休む」というと、漠然とはみなさんイメージできると思います。だからこそ逆に、そこにどのような治療的意味があるのか、どのようなコツがあるのか、あまり突き詰めて考えにくくなることもあるのではないでしょうか。

 

その結果、人によっては少し休んだら「もう十分休んだ」と早すぎる復帰をしてぶり返したり、逆に人によっては目的があいまいなまま1年以上休養が長期化してしまうこともあります。

 

こころの治療においての「休養」は、単純に言えば、こころをつかさどる「脳」を休ませることと考えます。

 

例えばねん挫などけがをした場合は、そのけが(炎症)の部分を安静に「休ませる」ことで、徐々に改善することを待ちます。それと同様に、こころの不調(一種の「脳のけが」)の場合は、その不調の部分(脳)を安静に「休ませる」ことで、徐々に改善を図ります。

 

けがの場合、短すぎる休養で無理に動かせば再発してしまいますし、休養だけ長すぎれば機能が弱まって、けがは治っても「しっかり機能しない」状態になってしまいます。

 

脳の「けが」にたとえられるこころの不調でも、短すぎる休養で無理に動かせば再発してしまいますし、休養だけ長すぎてリハビリがなければ、病状は安定しても(仕事などの)負荷に耐えられなくなってしまいます。

 

このような形で、こころの治療の休養は、「脳を休ませる」役割にたとえられるかと思います。

  • 心療内科の「休養」は、(けがと似て)「脳を休ませる」ことで徐々に改善を待つ方法。
  • 短すぎても長すぎても支障が出ること、リハビリとの組み合わせが重要なことはからだと同様。

疑問:休むことは簡単?

 

特に不調な時は、休養は必ずしも簡単ではありません。

  

たとえば認知行動療法など、「専門的な方法」と比べると、どうも「休養」は、専門性に乏しいように見えるとの声を聴きます。「休むなんて、誰でも簡単にできる」など。

  

しかし、実際治療する中で、特に症状が重い人ほど、この「休養」がなかなか簡単にはいかないことを経験します。逆に言えば、うつの治療がうまくいかない時、かなりの割合で、この「休養」がうまくいかないのです。

  

うつ病の症状で「罪悪感」があり、自分を責める考えが繰り返され休めない場合があります。また、もとより不安を感じやすい人だと、不安に飲まれてなかなか気持ちが休まらず休養できないということが起こります。

  

こうした場合は、このままではなかなか改善に向かいにくくなります。何とか休養を確保することを、目指していく必要があります。

  • 「休養」は一見簡単だが、特に症状が重い場合は、休養が難しく治療がつまづく場合が少なくない。
  • 特に「罪悪感」で考えすぎたり、不安に飲まれたりすると、休養が難しくなりやすい。

休養の大敵は「不安」と「考えごと」

 

「不安」「考えごと」に飲まれると脳は休めません。

  

「休養」できない原因はいくつかありますが、主なものは「不安」「考えごと」の2つです。

  

これは、「うつ病の罪悪感」など「脳レベルの不調」のこともありますし、「不安になりやすい」など性格関連の場合もあります。

  

いずれにしても、「不安」で落ち着かなかったり「考えごと」で考えすぎたりすれば脳は休まらず、(物理的に休職などしていても)なかなか改善を期待しにくい状態になってしまいます。

  

論理的にこれらを説明し「考え事や不安はマイナスだからそれに飲まれないよう」助言をしますが、症状が重い時ほど、「理屈ではわかっても」実践しにくいことは少なくありません。

  

よく勧めるのは(マインドフルネス的な考えですが)「不安」「考えごと」となるべく距離を取り、なるべく受け流して影響を減らすことです。不安や考え事が出てくるのはおそらく防げませんが、その後の悪循環を防ぎたいとの考えです。

  

ただしそれだけでは難しいことも多く、補助的に「くすり」を使い、不安をやわらげて休養を図ることもあります。

  

なお、それでも難しい場合もあり、その時は、「休養に専念できる環境にうつる」休養入院を勧めることも検討します。

  • 「不安」「考えごと」に飲まれることが、休養にとっての一番の大敵。
  • 出てきた「不安」「考え事」と距離を取り、巻き込まれを防ぐのが生活レベルでの対策。
  • それだけでは難しい時は薬も活用し、それでも困難な時は休養入院も選択肢になる。

休養と「くすり」

 

自然な休養が難しいとき、くすりを活用することがあります。

  

休養が大事だがそれがどうしても難しい場合に、「くすり」を補助的に使い、休養を促して、治療を軌道に乗せることを目指す場合があります。具体的には、以下のような薬を使うことがあります。

  

①抗うつ薬

  

うつ・不安の治療のくすりであり、休養と並行するだけでなく、効果が出れば休養を促す作用があります。ただし、効くまで時間差があるため、不安の強い治療初期にはあまり効果が期待できず、他の薬の併用が時に必要になります。

  

②抗不安薬

  

即効性のある「不安を和らげるくすり」です。長期に使うと依存の問題がありますが、一方で、治療初期の不安に対しては、休養を軌道に乗せるために重要なことが少なくありません。使う場合は、抗うつ薬と併用し、抗うつ薬がきいて落ち着いてきたら、早い段階で減らしていくことを目指します。

  

③睡眠薬

  

「休養」の土台は何といっても睡眠です。不眠が続くと、なかなか休養になりません。そのため、不眠やその傾向がある場合には、休養をしっかり助ける意味で、睡眠薬を使用する場合があります。特に依存リスクのある睡眠薬の場合は、安定後速やかに減らすことを目指します。

  

④抗精神病薬

  

①ー③までのくすりが効きにくい場合などに、より強めの「抗精神病薬」を一部使う場合があります。だるさなど、副作用や体の負担が懸念されるため、あくまで必要な量に絞って用います。

  • 自然な休養が難しい場合、補助的に「くすり」を用いて休養を促すことがある。
  • 具体的には抗うつ薬の他、「抗不安薬」や「睡眠薬」を用いることがある。

自分の効率的な休養方法を探す

 

「休養」も突き詰めると奥が深いものです。

  

もうひとつ「休養が簡単」といった意見のさいに、「ただ休めばいい」との話を聞きます。確かに一理はあるのですが、もう少し「奥が深い」ものと考えます。

  

例えば陸上選手は「走る」のがテーマです。「ただ走ればいい、誰でもできる」との話もあるかもしれませんが、実際に記録を目指すなら、足の運び方から筋肉の付け方、食事や生活リズム、体調管理など、様々な分野のことを緻密に組み立てていくことが必要になります。

  

休養も同じと考えます。「ただ休めばいい、誰でもできる」との話もありましょうが、実際に「深い、効率のいい」休養を目指すなら、呼吸の在り方や身体の状態の模索(ストレッチ等)、休養の時間を作るための仕事の工夫など、周辺の様々な分野のことも含めて緻密に組み立て、改善を模索する余地があると考えます。

  

実際どうすれば「深く、効率よく」休めるかは、(呼吸法など)いくつかセオリーはありますが、その人や状況ごとに、ベストの在り方は違ってきます。それを試行錯誤しながら模索していくことは、不調の治療のみならず、再燃予防などにも、有力な武器になると思われます。

  • 休養も、運動と同様に、突き詰めれば「一見シンプルだが、奥深い」部分が示唆される。
  • 周辺分野も含め、「今の自分に合っている休養の方法論」を模索することは重要と思われる。

休職(はたらく人の休養)

 

初期は休養に専念、改善後、徐々にリハビリに移行します。

  

ここからは、具体的な休養の場面と、その時のコツ等を見ていきます。

  

まず、休養を一番考えることが多いのが、仕事を休職して、休養に専念する場合です。

  

この場合は、「働き続けることが難しい」もしくは「働きながらでは改善が難しい」ために、一旦休養に専念するために休職を行っています。

  

特に治療初期では、「休養に専念する」ことが何より重要です。しばしば抗うつ薬を使用し、時間差で効果が出てきますが、初期に休養が難しい場合は、抗不安薬や睡眠薬を併用することで、深い休養を目指します。

  

この時期に、「むしろ休養前よりだるくなり」不安になる方もいますが、この「だるさ」は基本的には正常な反応です。「無理して気を張る必要がなくなった」ため、これまで意識しなかった疲労が実感できていると考えてもらうといいでしょう。

  

しばらく(1か月が目安ですが個人差大きくあります)休むと、このだるさ・疲労感が取れてきます。そのときは休養がほぼできたとみなせるため、徐々にリハビリに移っていき、段階的に復帰に向けて準備していくことになります。

  

ここで、休職期間は、比較的長めにとるのが、プレッシャーを減らし「深い休養」を促すために有効と思われます。

  • 休職の初期は「休養」が最重要。必要なら薬も使って、深い休養を目指す。
  • 初期の「強いだるさ」などが十分取れてきたら休養は有効。次第にリハビリに移る。

休学(まなぶ人の休養)

 

原則半年ごと。休養後の今後の方向性の整理が大事。

  

大学生・大学院生の方の場合は、「休職」の代わりに「休学」して、休養に専念する場合があります。

  

初期は休養に専念、改善後徐々にリハビリ、復帰を目指す方向は、休職とほぼ同様です。

  

一方で、休学の場合は原則「半年ごと」になること、収入面の影響は少ない一方、進級・卒業に年単位での影響が出うることが違いになります。

  

まず、大学の場合「単位ごとに出席するか選ぶ」ため、休学以外に「特定の少ない科目だけ出る」「一定期間(休学せず)休み、その後徐々に授業に出る」などの選択肢があります。それらは一長一短のため、症状やライフプランを踏まえて、療養の形式を選ぶことになります。

  

また、休学してから卒業する場合、卒業が1-数年遅れることになります。休養、回復後に、どのようなライフプランを立てていくか(卒業から就職、中退して道を模索など)が重要になります。

  • 休学でも、休養と治療のプロセスは休学とほぼ同じ。
  • ただし、ライフプランへの影響は強く、休み方、復帰後の在り方の検討が重要。

休養入院(家で休めないときに)

 

どうしても休養が難しい場合、選択肢になります。

  

うつ病などの「急性期」の治療に「休養」はとても大事ですが、薬を用いても休養が難しい場合が時にあります。その場合は、「休養と治療に専念するための」休養入院が選択肢になります。

  

どうしても多くの場合入院は共同生活になること、および入院費の問題などもあり、原則は「家で休養する」ことが望まれます。ただし、「家では改善が見込みにくい場合」「症状が不安定で、家では危険が否定しきれない」場合などは、入院の方が望ましい場合があります。

  

入院でのメリットは、「安全を確保できること」「生活環境を離れ、考えごとの余地を減らせること」「観察の下で、積極的に薬の治療・調整ができること」です。最近は、以前のような長期入院は目立たず、数週の入院期間が主体になっています。

  • どうしても「休養」が難しく病状不安定のときは、「休養入院」が選択肢になる。

働きながら行う「休養」

 

働きながらでも、「休養」の確保が治療に重要です。

  

休職の場合は、「休養に専念して」の治療でしたが、働きながら治療する場合は「休養の専念」は難しく、さらに常にある程度の「仕事のストレス」が続く状態での治療になります。

  

この場合は、次善の策として、できる範囲で「休養」を確保することが重要になります。まとまった時間の確保ができない分、隙間の時間や休日などを活用して、限られた時間でも「効率的に・深く」休養を確保することが大事になります。

  

具体例としては、以下のように、場面ごとに、休養の確保を目指します。その中で、「状況的に可能で」「自分に合っている」方法論を模索、構築していきます。

  

①仕事中

  

まずは、休憩時間を、いかに「休養」としてしっかり有効利用するかが課題になります。話すといい人、一人で休むのがあっている人などあります。

  

また、仕事中でも、少しの隙間時間に呼吸を整えるなど、ごく短時間での「小休止」の確保・工夫が、積み重ねると大事になります。

  

②通勤中

  

通勤電車をどうするかも大事な点です。もし時間がずらせるなら、混んでいない電車を使うのも一案です。仮に混んでいても、音楽ツールを活用するなど、通勤時間にうまく「休養を確保」することが大事です。

  

また、帰りの電車は、仕事から寝る前のリラックスに「移行」するために非常に重要な時間です。やはり混んでいることもありますが、その中でいかにリラックスできる方法を見つけるかが、カギになると思われます。

  

③在宅勤務の場合

  

在学勤務の場合は、通勤時間が無くなることで、休養時間を確保しやすくなる面があります。一方で、「仕事」と「オフ」のメリハリがつきにくいこと、「通勤運動」がなくなることでの運動量の減少が課題です。

  

この課題の面を、例えば朝や休憩時間に散歩などの運動を入れたり、仕事終了後散歩などをして意識的に切り替えを行うなどして、対策することが大事になると思われます。

  

④仕事後

  

仕事終了後いかに「ゆったりできるか」が、休養の面および睡眠の質にとって重要になります。特に残業が多い場合は、以下に短時間で効率的に「切り替え」「ゆっくりするか」の模索が重要です。

  

⑤休日

  

どんなに工夫しても、平日には十分に休養することは難しいことが多いです。その分を、休日でしっかり休養を確保して、1週間トータルでバランスをとることが、仕事継続にとって大事です。

  

隙間時間よりはまとまっている一方、休職のように長期間とはいきません。ある程度まとまった中で、やはり「効率性」が求められます。よりしっかり休養できる行動パターンは何か、試行錯誤を重ねていくことが重要です。

  

⑥有給休暇の活用

  

特に祭日が少ない月だと、休日のみでは休養を確保しにくいこともあります。その場合、状況の許す範囲で有給休暇を活用し、休養を確保する方法もありうると思われます。

これらの「働きながらの休養確保」は、休職からの復職後、再燃を防ぐためにも、重要な方法になります。

  • 働きながらの場合は、「まとまっての休養」が難しいのが現状。
  • 次善策として、隙間時間や休日を活用しての休養の確保が大事になる。
  • 短時間・長時間の休養を組み合わせ、状況・自分に合う形での休養実践を模索する。
  •  
  • 「働きながらの休養確保」は、復職後の再燃予防においても重要な方法になる。

まとめ

 

  

休養は、うつ病などの治療において、くすりの治療と同様、大きな比重を占める治療の方法です。

  

一見シンプルですが奥が深く、休職の場合も仕事しながらの場合も、工夫しながら、いかに自分に合った「効率的な・深い」休養を取っていけるかが、治療や再燃予防にとって重要になります。

  • 休養は、くすりの治療などと並んで、大きな比重を占める治療法の一つ。
  • 休職した場合は、まず休養に専念し、改善後徐々にリハビリに移る。
  • 仕事しながらの場合は、隙間時間や土日などを活用して、効率的な休養確保を図る。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)