適応障害
落ち込みや不眠などの「ストレス反応」

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適応障害について
適応障害は、ストレスに反応して起こる、うつ病と似た症状のこころの不調です。休日など、ストレスから離れると改善することが、うつ病との違いを考える手がかりになります。
治療では、休養に加え、環境調整やストレス対処法の見直しを重視します。つらい症状を和らげるだけでなく、同じ環境に戻ったときに再び不調にならないための対策も考えます。
こんな症状に注意
適応障害では、落ち込みや不眠などの症状に加え、「いつ、どのような場面で不調になるか」に特徴があります。次のような変化が続き、仕事や生活に影響している場合は、適応障害の可能性も含めて相談してください。
1.月曜朝の不調

仕事がストレスになっている場合、休日が始まると楽になる一方、日曜の夕方から不調が戻り、月曜の朝に特に強くなることがあります。落ち込みや強いだるさで、出勤の準備が進まないこともあります。
ただ「休み明けは気が重い」という程度を超え、出勤できない、遅刻や欠勤を繰り返すなどの影響が出ます。
2.特定の相手や場面で不調

上司から連絡が来たとき、職場の建物が見えたとき、家族との話し合いが始まったときなど、特定の場面で動悸や吐き気、腹痛が出ます。強い緊張やパニック発作を伴うこともあります。
その場から離れるといったん治まるため、周囲には不調の強さが伝わりにくいことがあります。
3.仕事中に涙が止まらない

仕事の話をしようとしただけで泣いてしまう、通勤中に涙が出るなど、ストレスに関わることをきっかけに涙が止まらなくなります。自分では落ち着いて話したいのに、うまく抑えられないこともあります。
涙だけで適応障害とは判断しませんが、これまでと違う反応が続いている場合は、その背景を確認します。
4.嫌なことを考え眠れない

布団に入ってからも、その日に言われたことや翌日の予定を考え続け、眠れなくなります。夜中に目が覚めて、また同じことを考え始める場合もあります。
眠れない日が続き、日中の疲労や集中しにくさが強くなっている場合は、早めの対応が必要です。
適応障害を詳しく知る
1.はじめに

働く人など、うつ病と並んで多いこころの不調です。
適応障害とは、「ストレスに反応してのこころの不調」、主にうつ状態を指します。こころの健康への理解が進む中で、以前はまとめて「うつ病」と受け取られていた状態についても、適応障害という診断が知られるようになってきました。
適応障害というと、会社での不調を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、学校・家庭・介護・子育てなど、幅広いストレスに対して起こります。
症状や大まかな治療はうつ病と似ていますが、より「ストレスへの反応」の要素が大きいため、治療でもストレスへの対応に重点を置きます。ここでは、うつ病との違いを踏まえ、症状・診断・治療・休職について説明します。
2.うつ状態・適応障害・うつ病の違い

幅広い「うつ状態」の中での「ストレス反応」が適応障害です。
心療内科では、「うつ病」「うつ状態」「適応障害」など、似た状態にいくつかの用語を使います。「落ち込んでいる状態」と、その背景にある病気を分けると、理解しやすくなります。
①うつ状態:落ち込みなどがある状態全般
「うつ状態」は、落ち込みなどの症状がある状態全般を指します。病名というより、そのときの状態を表す言葉です。
うつ病だけでなく、適応障害、双極性障害のうつ状態、甲状腺の不調によるうつ状態なども含まれます。「うつ状態と言われた」ことが、そのまま「うつ病と診断された」ことになるわけではありません。
②適応障害:ストレスへの反応による不調
幅広いうつ状態の中で、ストレスへの反応が中心となって起きる不調が、適応障害です。例えば、職場での負担に反応して落ち込み、そこから離れると改善する、といった出方をします。
うつ状態が中心になることが多い一方、不安やイライラ、体の症状が目立つ場合もあります。
③うつ病:ストレスへの反応だけでは説明しきれない「脳の不調」
うつ病は、セロトニンの不足などの「脳の不調」が背景にある状態として、ストレスへの反応が中心の適応障害と整理して考えます。実際には適応障害とはクリアに分けにくい「中間」の場合も少なくありません。
実際の診察では、脳内のセロトニンを測って診断するのではなく、症状の種類や強さ、2週間以上続いているか、生活への影響などを確認します。ストレスが減ったときにどう変化するかも見ながら、総合的に判断します。
3.適応障害の主な症状

適応障害では、こころの症状だけでなく、体や行動にも変化が出ます。落ち込みを自覚している方もいれば、「眠れない」「疲れが取れない」「仕事に行けない」という困りごとから気づく方もいます。
こころの症状:落ち込み・不安・涙・イライラ
気分が落ち込む、心配が頭から離れない、涙が出る、少しのことでイライラするなどの症状が出ます。仕事のことを考えるだけで緊張し、気持ちを切り替えられなくなることもあります。
落ち込みよりも、不安や怒りが目立つ場合もあります。本人には「気分が沈んでいる」という感覚が乏しくても、普段との違いを確認することが大切です。
体の症状:不眠・だるさ・動悸・胃腸の不調
寝つけない、途中で目が覚める、食欲が落ちる、疲れやすいなどの症状が出ます。特定の場面で、動悸や息苦しさ、頭痛、吐き気、腹痛などが強くなることもあります。
ただし、体の症状がすべてストレスによるものとは限りません。必要に応じ、内科などで身体の病気がないかも確認します。
行動や生活の変化:出勤できない・避ける・ミスが増える
出勤や登校の準備ができない、遅刻や欠勤が増える、連絡を返せないなどの変化が出ます。集中しにくくなり、普段ならしないミスを繰り返すこともあります。
人と会うことを避けたり、家事が回らなくなったりする場合もあります。「気持ちはつらいが何とか生活できている」のか、「生活そのものが維持しにくい」のかは、治療を考えるうえで重要です。
4.正常なストレス反応との違い

症状の強さ、生活への影響で見分けます。
強いストレスがかかれば、誰でも気分が沈んだり、眠りにくくなったりします。適応障害では、通常のストレス反応の範囲を超えて症状が強くなり、仕事や生活にも影響が出ます。
例えば、仕事のストレスで会社に行けなくなる、嫌なことを考えると涙が止まらない、体の症状が出る、眠れない日が続く、特定の場面でパニック発作が起こる、といった状態です。
「甘えかどうか」ではなく、起きている不調を確認する
周囲と比べて我慢できているか、気合いで出勤できるかを基準にするものではありません。同じ出来事でも、これまでの負担や置かれた状況によって、受ける影響は変わります。
「甘えているだけでは」と考え続けるより、睡眠や食事、出勤、家事がどう変わったかを整理します。生活への影響が強い場合は、ストレスの理由が分かっていても相談してください。
5.適応障害とうつ病の違い

ストレスから離れたときの症状の変化が、大きな手がかりになります。
適応障害の症状は、落ち込み・体の症状・生活面の変化など、うつ病とほぼ共通しています。そのため、症状だけで見分けることは難しく、いつ不調になり、どのようなときに改善するかを確認します。
典型的には、ストレスから離れたときの変化が異なる
適応障害では、ストレスから離れると症状が速やかに改善します。一方、うつ病では、ストレスが減ってもすぐには症状が改善しません。
例えば、仕事がストレスの場合、休日に大きく改善するのが適応障害、休日も不調が続くのがうつ病、というのが典型的な違いです。
実際には、はっきり分けにくいことも多い
休日に部分的によくなる場合や、休日も仕事のことばかり考えて不調が続く場合など、両者の中間に見える状態もあります。休みを取っただけでは、気持ちの上でストレスから離れられていないこともあります。
そのため、「休日に笑えたから適応障害」「休日もつらいからうつ病」と、一つの場面だけで決めることは時に困難です。ストレスへの反応と、そこから離れても残る不調の双方を見ていきます。
適応障害からうつ病に移行することもある
はじめは仕事の日だけ不調だったのが、次第に休日も改善しなくなるなど、経過の中でうつ病へ移行することがあります。ストレスの持続によって、セロトニンの減少などの「脳の不調」が加わる仕組みが推測されるところです。
うつ病の状態になると、回復まで時間がかかったり、薬の治療がより必要になったりする場合があります。以前は休めば戻っていたのに戻らなくなったときは、治療を見直す手がかりになります。
6.仕事以外や休日は元気でも、適応障害?

仕事から離れたときに元気になることは、適応障害の典型的な出方の一つです。
仕事がストレスの場合、休日に趣味を楽しめたり、友人と会えたりしても、それだけで不調を否定することはできません。本人も「休みの日は動けるのに、なぜ仕事になるとできないのか」と戸惑うことがあります。
元気な時間があっても、仕事への影響は残る
適応障害では、ストレスから離れるといったん改善しても、再び触れると症状が戻ります。休日は食欲があるのに出勤前は食べられない、夜には落ち着いても翌朝また動けない、という変化もあります。
確認したいのは、元気な時間の有無だけでなく、同じ場面で不調を繰り返し、出勤や生活に影響が出ていないかです。
休日に改善していても、受診する意味がある
会社に行けない、不眠が続くなどの影響があれば、受診・治療をしないままでは、同じ困りごとが続く可能性があります。「休日は元気だから、相談するほどではない」と判断する必要はありません。
薬以外にも、休養の確保、業務の調整、職場との相談など、取れる対策はあります。不調が強くなる条件がはっきりしていることは、むしろ対策を考える手がかりになります。
7.適応障害の原因と、ストレスがたまる背景

適応障害では、仕事や人間関係などのストレスが不調のきっかけになります。ただし、同じ環境でも負担の感じ方は異なり、環境の問題と、その人のストレスのたまりやすさの両方を考えます。
外側の要因:仕事・学校・家庭などの負担
業務量が多すぎる、上司との関係がつらい、自分に合わない仕事が続くなどの職場の問題が挙げられます。学校での人間関係や学業、夫婦・家族関係、介護、子育ての負担も原因になります。
一つの出来事だけでなく、小さな負担が重なっている場合もあります。仕事と介護が同時に忙しくなったなど、生活全体を見ないと分かりにくいこともあります。
内側の要因:考えのくせや対処法の偏り
何でも完璧にしようとする、断れずに抱え込む、自分を責め続けるなどのくせによって、ストレスがたまりやすくなる場合があります。休み方が分からない、相談できる相手がいないなど、対処の選択肢が少ないことも影響します。
8.適応障害の診断と、受診の目安

診察では、ストレスと症状の経過を確認する
適応障害の診断では、どのようなストレスがあり、その後いつから症状が出たか、仕事や生活にどの程度影響しているかを確認します。診断基準も踏まえ、うつ病など別の病気で説明される状態ではないかを検討します。
初回で明確に診断がつく場合もあれば、初めての診察では明確な診断が難しい場合もあり、休養や環境の変化、その後の経過を見て判断を整理することもあります。
どこで相談する?
こころの不調が続く場合は、心療内科・精神科が相談先になります。動悸やめまい、胃腸の症状などが強い場合は、身体の病気の確認も必要です。
受診の際は、不調が始まった時期、きっかけになった出来事、仕事の日と休日の違い、睡眠・食欲の変化を伝えてください。うまく説明できない場合は、簡単なメモを用意する方法もあります。
受診を考えたい状態
眠れない日が続く、涙や体の症状が繰り返し出る、出勤・登校が難しい、家事が回らない場合は、受診を検討してください。病名を自分で決めてから受診する必要はありません。
9.適応障害の治療・治し方の基本

うつ病と似た治療を行いますが、中心になるのは「ストレスへの対策」です。
治療の三本柱は、休養、薬物療法、精神療法です。休養には、ストレスからいったん避難し、心身を落ち着かせる意味があります。
適応障害では、ストレスへの反応が強く、うつ病としての「脳の不調」の要素は限定的なことが多いと考えます。そのため、薬だけで解決しようとするより、環境やストレス対処法に目を向けることが重要です。
外側の負担には環境調整、内側の負担には対処法の見直し
特定の職場や人間関係の影響が大きい場合は、環境調整を優先します。一方、環境を変えても同じように抱え込んでしまう場合は、ストレス対処法の見直しが重要になります。
両方の要素がある場合は、両方に取り組みます。不調が強い時期にはまず休養を確保し、落ち着いてから具体的な対策を進めます。
10.治療の方法①環境調整

外的なストレスの影響が強ければ、環境調整が有効です。
特定のストレスの影響が大きい場合は、その負担を減らすために、環境を変えたり調整したりします。うまく調整できると、症状が大きく改善することもあります。
仕事・家庭・介護・子育てでの調整
仕事では、業務量や担当の調整、異動、転職、自分に合う業種を探すことなどが候補になります。いきなり退職するかどうかの二択にせず、現在の職場で変えられる部分も確認します。
家庭では、夫婦・家族関係についての相談や役割分担の見直しを行います。介護サービスの導入・調整、子育てでの親族の協力、関係機関や支援サービスの利用なども、環境調整に当たります。
環境を変えられないときは?
必要だと分かっていても、すぐに異動できない、介護を離れられないなど、環境を変えられない場合は少なくありません。その場合も、すべてを変えられないから何もできない、と考える必要はありません。
担当の一部を減らす、相談先を決める、一人で抱える時間を短くするなど、小さな調整を探します。それでも残る負担には、休養やストレス対処法の見直し、必要に応じた薬の治療を並行します。
11.治療の方法②ストレス対処法の見直し

内的な要素が強ければ、その人の背景に合った対処法を考えます。
様々な環境でストレスがたまり、適応障害を繰り返す場合には、ストレスのたまりやすさや考えのくせが関わっている可能性があります。その場合は、環境調整とともに、自分の対処の仕方を振り返ります。
自分を追い詰める考えのくせを見直す
「少しでも失敗したら駄目」「頼まれたことは全部引き受けなければ」と考えると、負担が増えても止まりにくくなります。その場面で本当に必要なことと、自分に厳しく求めすぎていることを分けて考えます。
単に前向きに考え直すのではなく、ほかの見方がないかを探す取り組みです。弱点を含めて自分を受け入れ、できる範囲で対応することも課題になります。
対処法を増やし、休み方や自己主張を練習する
ストレスへの対処が「我慢する」だけになっている場合は、人に相談する、作業を分ける、助けを求めるなど、別の方法を増やします。いつも緊張して休まらない方は、休養やリラックスの取り方から練習します。
また、主張できず抱え込みやすい方には、程よい自己主張の練習が役立ちます。「全部できません」だけでなく、「今日はここまでならできます」と伝えるなど、具体的な場面で考えていきます。
カウンセリングやリワークで取り組むこともある
こうした対処法は、一度説明を聞くだけでは身につきにくく、練習に時間がかかります。休職中など、取り組む時間を確保できる場合には、カウンセリングやリワークプログラムを利用することもあります。
休めば症状は改善するものの、戻るとまた同じように抱え込む場合は、症状の改善とは別に、対処法を身につける時間を設けることが大切です。
12.治療の方法③薬物療法

ストレス対策を中心にしながら、必要に応じて薬を併用します。
適応障害では、薬を使わずに治療する場合もあります。ただし、ストレスへの対策だけではうまくいかない場合や、不安・不眠が強い場合には、薬を使って症状の改善を図ります。
①抗うつ薬
適応障害では、抗うつ薬が必要ない場合もあります。一方で、「ストレスの要素が強いが、うつ病の要素もある」「ストレスの原因は明確だが、現実的に対策が取れない」といった場合には、抗うつ薬を使うことが望まれる場合があります。
②睡眠薬
睡眠が取れない状態が続くと、症状の悪化や、うつ病への移行につながる場合があります。そのため、必要に応じて睡眠薬を用い、まず眠れる状態を整えることがあります。
眠れるようになった後も、不眠のきっかけになっている負担を確認します。状況が安定して眠れるようになれば、可能な範囲で減薬や中止を検討します。
③抗不安薬
ストレスの原因が明確でも、解決が難しく、考えすぎて不安や緊張が強まる場合などに使います。症状を和らげながら、環境調整や気持ちの整理を進めるための補助になります。
薬によっては眠気や依存などに注意が必要です。使用する量や回数は、主治医と相談して決めていきます。
④漢方薬
ストレスの解決がすぐには難しく、不安や体の不調が続く場合には、より穏やかな効果を期待して漢方薬を使うことがあります。症状や体質などを見て、使用する薬を考えます。
漢方薬にも副作用や飲み合わせの問題はあります。市販薬やほかの医療機関の薬を使っている場合も、主治医や薬剤師に伝えてください。
薬が効かないとき・いつまで飲むか
薬を使っても不調が残る場合は、薬の効果だけでなく、ストレスがどの程度続いているかも確認します。環境の負担が強いままでは、薬だけを増やしても十分な改善につながらない場合があります。
服用期間は、使う薬や症状、回復の経過によって異なります。「適応障害だから何週間」とは決めず、環境や生活が安定しているかも見ながら相談します。自己判断で急に中止しないでください。
13.適応障害と休職・休職期間

休職の場合も、環境調整とストレス対策に重点を置きます。
適応障害でも、仕事を続けながらの調整では改善が難しい場合には、休職して治療します。短すぎない期間を確保し、休養期、リハビリ期、復帰準備期と進める点は、うつ病と共通しています。
休職するかは、症状と仕事への影響から考える
出勤すると強く悪化する、眠れず業務を続けるのが難しい、仕事を休んでも短い休日だけでは立て直せない場合などに、休職を検討します。一方、業務量や担当の調整によって働き続けられる場合もあります。
休職は、会社を辞めるかどうかとは別の判断です。まず治療に必要な休養を確保し、そのうえで今後の働き方を考える方法もあります。
休職期間は、取り組む課題によって変わる
当院の説明では、うつ病の休職は3か月を一つの目安にしています。適応障害では、環境調整が主体の場合、1〜2か月と短くなる場合もあります。
一方、ストレス対処法の見直しをしっかり行う場合は、リワークなどを活用し、4〜6か月と、むしろ長く休職して再燃予防を図ることもあります。また、職場とのやり取りの状況や異動の有無などで変動します。
復職時の異動は、二つの負担を比べて考える
うつ病では、環境変化のストレスを避けるため、元の部署への復帰を基本に考えることがあります。一方、適応障害では、環境と本人との相性が大きい場合があり、異動も選択肢になります。
元の環境に戻る負担と、新しい環境に慣れる負担の双方を比べ、より負担の少ない方法を検討します。職場の規定や調整できる範囲も踏まえ、本人・職場・医療側で相談していきます。
診断書や、休職中のお金の相談
休職の手続きでは、医師の診断書を求められることがあります。必要な休養期間や仕事上の配慮は診察で判断し、職場に提出する書類や手続きを確認します。
健康保険の被保険者で、業務外の病気やけがの療養のために働けず、給与が十分に支払われない場合などには、傷病手当金の対象になることがあります。病名だけで支給が決まるものではなく、加入先の健康保険や勤務先への確認が必要です。
14.回復期の過ごし方と、復職の判断

①休養期:まずストレスから離れ、休む
不調が強い時期は、まずストレスから距離を取り、睡眠や食事を整えます。休み始めから、原因の分析や復職準備を一度に進める必要はありません。
適応障害では、うつ病と比べて脳のレベルでの変調が少ないことが多く、ストレスから離れると、休養や活動の回復が比較的スムーズな場合があります。ただし、回復の速さは人によって異なります。
②リハビリ期:日常の活動を少しずつ戻す
症状が落ち着いてきたら、散歩、買い物、短い外出など、無理のない活動を戻していきます。活動できた日だけでなく、その後に疲れや不眠が強く残らないかも確認します。
当院の説明では、うつ病の休養期・リハビリ期は各1か月を目安とする一方、適応障害では各1〜3週と短くなる場合があります。日数だけで次の段階に進まず、状態を見ながら調整します。
③復帰準備期:環境と対処法の見直しに時間をかける
適応障害では、復帰準備期の課題である「環境調整」「ストレス対処法の見直し」が特に重要です。症状が早く改善しても、この部分は時間をかけて取り組む必要があります。
業務量や担当がどう変わるか、困ったとき誰に相談するか、以前と同じように抱え込まないために何をするかを具体化します。仕事の話をしたときの不調や、活動を続けたときの疲れも確認しながら、主治医や職場と復職を相談します。
休職して1週間で元気になったら、復帰してよい?
特に環境を変えられない場合は、慎重に考える必要があります。「家で症状がない」ことと、「仕事のストレスがかかっても症状が再燃しない」ことは別です。
早期に復帰する場合は、環境が十分に変わること、あるいは職場への葛藤が十分に整理できていることが重要になります。元気になった日の感覚だけで決めず、事前に職場と話し合い、復職後の見通しを確認します。
15.再発・再燃を繰り返すとき

復帰後に、以前のストレスが十分に減っているか
再燃予防では、休職前のストレスが、復職後に十分減っていることが重要です。職場と話し合って環境を調整し、職場への葛藤も整理しておきます。
復職すると、つい以前と同じ働き方に戻ってしまうことがあります。不眠や出勤前の不調が戻ってきたら、大きく悪化するまで待たず、業務量や対処法を見直します。
転職や異動をしても繰り返す場合
環境を変えても再燃する場合は、自分を追い詰める考え方や、抱え込みやすさなどの内的な要因を検討します。カウンセリングやリワークで、繰り返しているパターンを振り返ることが対策になります。
もう一つの可能性として、成人になってから目立つADHDなどの発達障害が背景にある場合もあります。必要に応じ、これまでの生活歴や心理検査なども参考に、診断と対応を考えます。
16.家族や周囲の方の関わり方

圧力をかけず、まず話を聞く
「圧力をかけず、見守る」という基本方針は、うつ病と共通です。そのうえで、適応障害では、自分自身や会社への葛藤など、気持ちを整理することも重要になります。
「もう元気そうだから働ける」「気にしなければよい」と結論を急がず、何がつらく、どの場面で不調になるのかを聞いてください。助言をする場合も、本人が何に困り、どのような助けを求めているかを確認してから考えます。
家族だけで抱えきろうとしない
ご家族が、本人の葛藤をすべて受け止めたり、職場の問題を解決したりすることは難しい場合があります。支える側の負担が大きくなっているときは、専門家にも相談してください。
カウンセリングやリワークなどを利用し、家族以外にも気持ちを整理できる場を持つ方法があります。本人への支援とともに、家族が休める時間も確保します。
17.適応障害についてよくある質問

医療機関によって「適応障害」「うつ病」と診断が変わるのはなぜ?
ストレスへの反応と、反応だけでは説明できない脳の不調との区別がつきにくい場合があるためです。診察時にどちらが目立つか、また経過によって、診断名が違ったり変わったりすることがあります。
ただし、治療の方向がまったく別になるとは限りません。それぞれの要素を見ながら、休養・環境調整・ストレス対処・薬の治療のどこに重点を置くかを考えます。
適応障害は、うつ病より軽症なのですか?
脳の不調が目立たないという面では、うつ病より軽い状態と捉えられることがあります。ただし、経過や生活への影響まで含めて、必ず軽症とは言い切れません。
うつ病でも薬の治療で大きく改善し再燃しない方がいる一方、適応障害でも再燃を繰り返す場合があります。単純な軽い・重いの比較より、うつ病では薬と休養、適応障害では環境調整とストレス対処が、治療の重点になりやすいという違いを考えます。
「新型うつ病」と適応障害は関係がありますか?
場面によって症状が変わる、趣味は楽しめるなど、従来の典型的なうつ病とは違う出方を「新型うつ病」と呼ぶことがあります。ただし、正式な診断名ではありません。
臨床的には、適応障害とほぼ同じ状態を指している場合も多いと考えます。その場合には適応障害に準じた治療・対策を行いますが、言葉だけで判断せず、実際の症状と経過を確認します。
どれくらいで治りますか?
ストレスから離れると比較的早く症状が改善する方もいますが、症状の改善と、再燃せず生活できる状態になるまでの時間は異なります。環境調整で大きく改善する場合もあれば、ストレス対処法の見直しに時間がかかる場合もあります。
ストレスやその影響が続いている場合は、不調が長引くこともあります。日数だけで治ったと判断せず、生活や仕事の負担にどう対応できているかを見ていきます。
薬なしで治療できますか?
典型的な適応障害では、薬を使わずに治療する場合は少なくありません。ただし、不眠や不安が強い場合や、うつ病に近い状態では、薬を勧めることがあります。
「薬を使わないこと」自体を目標にするのではなく、休養とストレス対策を進めるために、いま何が必要かを考えます。
18.まとめ

適応障害では、環境調整とストレス対策が大事です。
適応障害は、うつ病と症状が似ているうつ状態の一つですが、よりストレスへの反応の要素が強い不調です。典型的には、ストレスから離れると改善するものの、同じ場面に戻ると症状が再び出ます。
治療では、環境の負担が大きければ環境調整を、ストレスのたまりやすさが強ければ対処法の見直しを重視します。薬の優先順位はうつ病より下がりますが、必要に応じて使います。
休職した場合も、症状が治まっただけで終わりではありません。復帰後の環境と、同じ負担を抱え込まないための対策を整え、安定した生活につなげていきます。
19.吉祥寺で適応障害の相談をお考えの方へ

こころ診療所吉祥寺駅前は、吉祥寺駅前の心療内科・精神科です。仕事や学校、家庭のストレスによる不眠・落ち込み・体の不調、出勤や生活への影響などについてご相談ください。
診察では、症状だけでなく、ストレスの背景と生活への影響を確認し、休養・環境調整・ストレス対処法・薬の治療を考えます。休職や復職についても、状態や職場の状況を踏まえて相談していきます。
カウンセリングやリワークなどの専門プログラムは、当院内では行っていません。必要に応じて、提携機関などへのご紹介を通じて対応します。
適応障害:動画での説明
適応障害とうつ病の違い、環境調整、ストレス対処法、休職中の取り組みについて、動画でも説明しています。
主な参考文献
- 尾崎紀夫・三村將 監修ほか:『標準精神医学 第9版』医学書院、2024年。
- 大熊輝雄 原著:『現代臨床精神医学 改訂第12版』金原出版、2013年。
- 米国精神医学会 原著、髙橋三郎・大野裕 監訳:『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年。
- 厚生労働省「こころの耳:メンタルヘルス不調の治療と休業」。
