強迫性障害

「強迫観念」と「確認行為」が特徴

頭から離れない「強迫観念」とその対策の「確認行為」が主な症状のこころの不調です。

 

「確認行為」は長期的には逆効果で、むしろ回数などが増え、生活に強く影響します。

 

抗うつ薬の治療を土台にしつつ、確認しないことに慣らす「暴露反応妨害法」を並行します。

  • 強迫性障害は、不安ごとが頭から離れない「強迫観念」とその対策の「確認行為」が特徴のこころの不調です。
  • 確認でいったん楽になっても再燃し、次第に確認が長期化し、生活への影響が強まります。
  • 治療の柱は、「薬物療法」と、確認しない状態にならす「暴露反応妨害法」の2つです。
  • 薬は主に「抗うつ薬」を、相性を見ながら十分な量を続けて使います。
  • 「暴露反応妨害法」では、あえて確認しないことで生じる不安に徐々に「慣らし」ます。
  • 治療初期は薬主体、次第に暴露反応妨害法を続けて、安定が続くなら薬を徐々に減らします。

もくじ

 
  1. はじめに(強迫性障害とは)
  2. 強迫性障害の症状
  3. 社会生活への影響
  4. 社会不安障害の治療の2つの柱
  5. 治療の柱①薬物療法
  6. 治療の柱②確認しないに慣らす「暴露反応妨害法」
  7. 治療の3段階
  8. まとめ
  9.  
 

はじめに(強迫性障害とは)

「強迫観念」と「確認行為」が特徴のこころの不調です。

たとえば「鍵を閉めていないか」などの不安が頭を離れない「強迫症状」と、不安を打ち消すために何度も確認する「確認行為」の2つが繰り返されるのが強迫性障害です。

症状が悪化すると、次第に確認の時間と範囲が非常に多くなり、結果、生活にも大きな影響が出てきます。

自然には治りにくいため、十分な抗うつ薬を土台に、徐々に「確認しない練習(暴露反応妨害法)」を継続し、徐々に改善を図ります。

ここでは、強迫性障害について、症状や治療法などを見ていきます。

  • 強迫性障害とは、「強迫観念」とその対処の「確認行為」が繰り返されるこころの不調。
  • 自然に任せると悪化が続きやすく、抗うつ薬と「暴露反応妨害法」の併用で治療する。

強迫性障害の症状

 

不安事が消えない「強迫観念」と、自己対処の「確認行為」の2つが主な症状です。

 

強迫性障害の主な症状は、①不安などが頭から離れない「強迫観念」、②自己対処としての「確認行為」、の2つです。

 

①強迫観念

 

不安事などが、消そうとしても頭から離れない状態です。しばしば強い不安を伴い、「解決しないと」との焦りにつながります。

 

②確認行為

 

強迫観念の不安を打ち消すために行う行為です。(例:手が汚い→手洗い)

強迫観念の例

  • 手などが汚れてしまっている
  • 鍵をかけ忘れたのではないか
  • 誰かを傷つけたのではないか
 

確認行為の例

  • くり返し、長時間手を洗う
  • 鍵が閉まってるか、繰り返し確認する
  • 「傷つけてないか」相手にしつこく聞く
 
  • 強迫性障害の主症状は、「強迫観念」と「確認行為」の2つ。

社会生活への影響

 

しばしば悪化が続き、生活に強く影響します。

  

では、この「強迫性障害」があると、どのように、社会生活に影響が出るでしょうか。

  

強迫観念と確認行為の2つが、以下のように悪循環になり、次第に生活への影響が強まっていきます。

 

①強迫観念の不安で落ち着かない

 

強迫観念があると、常に不安で落ち着かない状態になり、物事をリラックスして行えなくなります。また、緊張が続くため、すぐ疲れ切ってしまいます。

 

②確認行為がエスカレートする

こうした強迫観念の不安の自己治療として「確認行為」をしますが、その効果はあくまで一時的で、少しするとすぐ強迫観念の不安が再燃します。

 

すると確認→強迫観念→確認の悪循環になり、次第に確認の効果が弱まり、確認の頻度・時間が多くなります。その結果、生活に大きな影響が出たり、長い手洗いで手が荒れるなど、健康上の被害も出てきます。

 

他の不安障害と比べても、強迫性障害は、生活への影響が出やすいとされるため、しばしば早期の治療を必要とします。

  • 強迫性障害があると、「強迫観念の不安」「確認行為のエスカレート」が起こり、悪化が続き生活に強く影響する。

強迫性障害の治療の2つの柱

 

「薬の治療」と、確認しない「暴露反応妨害法」の2本柱です。

  

強迫性障害は、進行すると幅広い範囲で影響が出るため、早めの治療が重要です。

  

では、どのように治療するのでしょうか?

治療の2つの柱は、「薬の治療」と、確認しないことで不安にならす「暴露反応妨害法」です。

薬でもとの不安・緊張をやわらげていき、その土台の下で、徐々に確認しない治療(暴露反応妨害法)を並行していきます。

  • 社会不安障害の治療は、「薬の治療」と、あえて確認しない「暴露反応妨害法」が2本柱。

治療の柱①薬物療法

 

定期的に「抗うつ薬」を、十分な量使います。

  

薬の治療(薬物療法)では、定期的に「抗うつ薬」を使うことが一般的です。落ち着かないときに、抗不安薬を頓服で使いますが、依存に注意します。

 

①抗うつ薬(SSRI)

  

強迫性障害も、うつ病同様、脳の物質「セロトニン」の不足が影響するとされます。それを補正するのが抗うつ薬(SSRI)です。

  

効果が出るまで2-4週かかりますが、徐々に強迫観念と、それに伴う不安が軽減します。

  

他の不安障害と比べると、多い量が必要とされるため、副作用に注意しつつ、十分な量の使用を模索します。

 

②抗不安薬(頓服)

  

飲むと15-30分ほどで効果が出て、緊張・不安を和らげる薬です。種類にもよりますが、4-6時間ほど効果が続きます。

  

「強い不安が起こりそう」な時に飲むと有効です。本当にまずい場合の一種の「お守り」として持っておく方法もあります。ただし、とくに強迫性障害では、抗不安薬が「確認行為」の代わりになるリスクも高いため、使うのは本当に必要な場合に限ります。

  • 定期的にはSSRIなどの「抗うつ薬」を続けて、強迫観念とそれに伴う不安の改善を図る。
  • 不安が非常に強い時は頓服の「抗不安薬」を用いて悪化を防ぐが、本当に必要な時のみとする。

治療の柱②あえて確認しない「暴露反応妨害法」

 

あえて確認しないことで、不安への「脱感作」を図ります。

  

もう一つの治療の柱が、あえて確認行為をしない「暴露反応妨害法」です。

  

たとえば手が汚いとの強迫観念で強い不安が出る場合、手を洗う(確認行為)と一見不安はなくなりますが、その後すぐ強迫観念と不安が再燃し、次第に確認行為がエスカレートしての悪循環になります

  

暴露反応妨害法では、その逆をします。「確認行為」をあえてしないことで、強迫観念に伴う不安への「脱感作(慣らすこと)」を図り、結果として強迫観念の不安・確認行為双方の改善を図ります。

  

「苦手だが、何とかやり切れる」レベルで、確認しないことに徐々に慣らすことで、徐々に強迫観念を減らしていき、慣れてきたら徐々に「確認しない程度」を上げていき、その繰り返しで、最終的には確認行為なしで、強迫観念に持ちこたえられる状態を目指します。

  

この方法は薬と並んで強力ですが、もし「強すぎる不安」が起きるとかえって逆効果になるため、原則は薬(抗うつ薬)を土台として、主治医と相談しながら行ってください。

  • 社会不安障害の第2の治療は、あえて確認行為をしない「暴露反応妨害法」
  • 「苦手だが、何とかやり切れる」長さで確認しない時間を作り、不安に慣らすことを反復していく。
  •  
  • 一歩間違えると逆効果になるため、薬と並行し、主治医と相談して行っていく。

治療の3段階

 

はじめは薬主体、その後は「暴露反応妨害法」を並行します。

  

治療の経過は、大まかに、以下のような3段階に分かれます。はじめは薬の治療を重視し、改善してきたら、あえて確認しない「暴露反応妨害法」を重視していきます。

 

①治療初期

  

初期は、まず「強迫観念に伴う不安・緊張を減らす」ことが、その後の「暴露反応妨害法」につなげるためにも重要です。

  

そのために、抗うつ薬を始めて、量を調整しながら効果を見ます。

  

この段階では、まだ準備ができていないため、あまり「暴露反応妨害法」は行いません。

  

薬が効いてきて、以前より、強迫観念に伴う不安が減ってきたら、「治療中期」に進みます。

 

②治療中期

  

中期では、抗うつ薬は続けながら、あえて確認しない「暴露反応妨害法」を徐々に行っていきます。

  

はじめは短時間から練習し、慣れてきたら、確認しない程度を徐々に増やしていきます。

  

その結果、強迫観念に伴う不安が減るのみならず、確認行為も減って、生活・行動範囲も徐々に本来に戻ってきます。

  

十分に強迫観念に伴う不安と確認行為が減り、生活・行動範囲も望んだレベルまで拡大したら、治療後期に進みます。

 

③治療後期

  

後期では、再燃を防ぎながら、徐々に抗うつ薬を減らしていき、最終的には中止を目指します。

  

抗うつ薬を減薬すると、効果が弱まるため、いったん強迫観念と不安がややぶり返します。この不安を、再度「暴露反応妨害法」を行うことで、「確認行為を増やさずに減薬できている」状態に持っていきます。

  

うまくいったら、再度減薬し、暴露反応妨害法で不安を抑えることをくり返していき、最終的には中止を目指します。

  

理想的には薬を中止して普段の生活に戻ることが望まれます。ただし、中止まですると強迫観念とそれに伴う不安がぶり返してしまうこともあり、その場合は「必要量の抗うつ薬を続けて」再燃予防しながら、社会生活を続ける場合もあります。

治療前期

  • 目標:土台の緊張を減らす
  • 抗うつ薬開始
  • 必要時のみ抗不安薬を使う
  • 効果が出るまで待つ
 

治療中期

  • 目標①:強迫観念の不安の改善
  • 目標②:確認行為の改善
  • 抗うつ薬は継続
  • 「暴露反応妨害法」をくり返す
  • 不安改善・確認減少を図る
 

治療後期

  • 目標:抗うつ薬中止(減薬)
  • 徐々に抗うつ薬を減らす
  • 不安へ暴露反応妨害法で対応
  • 確認行為を増やさず薬を減らす
 
  • 治療初期は「不安・緊張を減らす」が目標。抗うつ薬開始しつつ効果が出るまで待つ。
  • 治療中期は「強迫観念の不安改善」「確認行為改善」が目標。徐々に「暴露反応妨害法」を継続する。
  • 治療後期は「減薬・中止」が目標。暴露反応妨害法を合わせつつ、徐々に減薬する。

まとめ

 

薬の治療と暴露反応妨害法で改善を図ります。

  

強迫性障害は、強い不安を伴う強迫観念と、自己治療としての「確認行為」が特徴で、次第に悪循環になり、強い不安や長い確認行為などで、生活に強い影響が出ます。

  

抗うつ薬を主体とした「薬物療法」と、あえて確認しない「暴露反応妨害法」が治療の2本柱です。治療には時間がかかりますが、徐々に改善を見込みます。

  • 強迫性障害は、強い不安伴う強迫観念と「確認行為」が特徴。悪循環になると生活に強い影響。
  • 治療法は抗うつ薬等の「薬物療法」と、あえて確認しない「暴露反応妨害法」が2本柱。
  • 初期は薬主体、中期から暴露反応妨害法を続け、後期で薬を徐々に減らすことを目指す。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)