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社会不安障害

社交不安障害・社交不安症(SAD)

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社会不安障害について

社会不安障害は、発表や面接、会食などの人前の場面で、強い不安や緊張を繰り返すこころの不調です。頭が真っ白になる、動悸がする、汗が止まらないなど、考えやからだにも変化が出ます。

不安を避けようとして人前の場面を避け続けると、仕事や外出など、生活の幅が狭くなることがあります。性格だと思っていても、実際は社会不安障害の場合があります。

当院では、薬で不安・緊張を和らげることと、苦手な場面に段階的に慣らす取り組みを、治療の柱としています。不安の軽減だけでなく、避けていた活動に取り組めるようになることを目指します。

こんな症状に注意

社会不安障害では、人に見られる場面での強い不安と、その場面を避ける「回避」が目立ちます。次のような困りごとが続いている場合は、相談を考える手がかりになります。症状だけで自己判断せず、どの場面で、何に困っているかを確認していきます。

1.人前で頭が真っ白になる

人前で頭が真っ白になる症状の説明動画。会議で話す前に緊張する人を表した架空のイメージ。

スピーチや会議、面接になると強く緊張し、頭が真っ白になります。準備していたことを話せなかったり、普段なら言わないことを口にしてしまったりすることがあります。

一度だけではなく、似た場面で繰り返すことが特徴です。「またうまく話せないのでは」と、次の予定にも不安を感じるようになります。

2.人の視線への強い不安

人の視線への不安の説明動画。同じ場所にいる人を意識する場面を表した架空のイメージ。

他の人に見られていることが気になり、落ち着いて過ごせなくなります。話しかけられると緊張し、汗が止まらなくなるなど、からだの反応が出ることもあります。

発表をする場面だけでなく、人と同じ場所にいること自体が負担になる場合があります。話しかけられないよう、人との接触を避けるようになることもあります。

3.会食や会話での強い緊張

会食や会話での緊張の説明動画。複数人の会食で緊張する人を表した架空のイメージ。

複数人で食事をするときや、人と会話するときに強く緊張します。食事や会話を楽しむより、緊張に耐えることで精いっぱいになる場合があります。

次第に会食や集まりを断るようになり、人と関わる機会が減っていくことがあります。不安そのものだけでなく、そのために避けていることにも目を向けていきます。

4.人を避ける

人を避ける症状の説明動画。外出を前にためらう人を表した架空のイメージ。

人と接することへの不安から、就職面接を避けたり、買い物へ行くことが難しくなったりします。仕事や生活の選択肢が、以前より狭くなる場合があります。

症状が強いと、周囲が怖くて外に出られなくなることもあります。ただし、すべての方がそこまで進むわけではありません。活動の幅が狭まり始めた段階でも対策を取ることが時に望まれます。

社会不安障害を詳しく知る

ここからは、症状や原因、治療の進め方を詳しく説明します。薬の使い方や、段階的に慣らす取り組み、家族・職場の関わり方など、気になる項目からご覧ください。

1.社会不安障害とは

社会不安障害とはの要点:発表・面接・会食、強い不安や緊張、生活への影響を相談
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人前で強い不安・緊張を繰り返すこころの不調

仕事での発表や面接、パーティーなど、人前の場面で強い不安・緊張を繰り返すのが社会不安障害です。緊張によって普段の力を発揮できなくなったり、その場面を避けるようになったりします。

避けることでその場の不安が軽くなっても、次の対人場面への不安が残ることがあります。症状が慢性化すると、仕事や日常生活にも影響が広がります。

「社会不安障害」「社交不安障害」「社交不安症」の呼び方

社会不安障害は、「社交不安障害」「社交不安症」とも呼ばれます。英語のSocial Anxiety Disorderを略して「SAD」と表記されることもあります。

このページでは、これまで当院で使用してきた「社会不安障害」を主な呼び方としています。

「性格だから仕方ない」と思っていませんか

「人前であがる」「あがり症」という言葉から、性格の問題だと思われがちです。しかし、強い不安や回避で生活に支障が出ている場合は、治療によって改善が期待できます。

長く続いていても、「もともとの性格だから治療できない」とは限りません。何が苦手で、どのような場面を避けているかを整理するところから始めます。

治療で目指すのは、生活の幅を取り戻すこと

治療では、不安や緊張を和らげるだけでなく、避けていた活動に取り組めるようになることを目指します。会食に参加する、面接を受ける、仕事で意見を伝えるなど、取り戻したい活動は人によって異なります。

症状の強さとあわせて、生活・行動範囲がどのくらい戻っているかも、治療の経過を見る大切な目安です。

2.社会不安障害のおもな症状

社会不安障害のおもな症状の要点:強い不安・緊張、動悸・汗・震え、予期不安・回避
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社会不安障害の主な症状は、人前での強い不安・緊張と、人前の場面を避ける「回避」です。その間をつなぐように、予定の前から不安になる「予期不安」が目立つこともあります。

人前での強い不安・緊張

発表や面接など、人に見られる場面で強い不安や緊張が生じます。頭が真っ白になり、話す内容を思い出せなくなるなど、普段どおりに行動しにくくなります。

似た場面になると、同じような反応を繰り返します。本人が準備を重ねていても、緊張のために本来の力を出しにくいことがあります。

動悸・吐き気・発汗・震えなどのからだの症状

不安や緊張に伴って、動悸、吐き気、発汗などが出ることがあります。顔が赤くなる、手や声が震えるなどの変化が目立つ人もいます。

「震えに気づかれたらどうしよう」と考え、からだの反応そのものを強く気にする場合もあります。気持ちの問題としてではなく、汗や動悸などの症状をきっかけに相談する方もいます。

予定が近づく前から不安になる「予期不安」

人前で強い不安が出ることを繰り返すと、「次も同じことが起こるのでは」と、予定の前から不安になります。これを予期不安といいます。

例えば、来週の発表を考えるだけで緊張し、まだその場にいないのに気持ちが休まらなくなります。予定を断りたい、欠席したいという気持ちが強くなることもあります。

人前の場面を避ける「回避」

不安を避けるために、発表や会食、人が多くいる場面を避けるようになります。話しかけられないように人と距離を取る、就職面接を受けないといった行動も回避に含まれます。

本人にとっては、つらい思いをしないための行動です。ただし、回避が増えるほど、生活や仕事の選択肢も狭くなっていきます。

3.不安が強くなりやすい場面

不安が強くなりやすい場面の要点:発表・面接、会食・会話、視線・人前の行動
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発表・スピーチ・面接での緊張

人前で話したり、評価を受けたりする場面は、強い不安が出やすい場面です。スピーチで頭が真っ白になる、面接で緊張して思いもしないことを言ってしまうなどの困りごとがあります。

その結果、発表の役割を避けたり、面接への応募をためらったりするようになります。話す技術だけでなく、その場に立つことへの不安を扱う必要があります。

会食・雑談・初対面の人との会話

複数人での会食や、あまり親しくない人との会話が負担になることがあります。話しかけられると緊張し、会話を続けるより、その場を早く終えることに気持ちが向いてしまう場合もあります。

大勢の前ではなくても、相手や関係性によって緊張は変わります。親しい人とは話せる一方、職場の同僚や初対面の人とのやり取りが難しい場合もあります。

視線が集まる場面や、人に見られながら行動する場面

話していなくても、人に見られながら食事をしたり、字を書いたりするときに緊張することがあります。「手が震えているのでは」「不自然に見えるのでは」と気になり、動作をしにくくなる場合があります。

何をするかだけでなく、「誰かに見られている」という状況が不安につながっていないかを確認します。

発表のときだけ困る場合と、日常の対人場面にも困る場合

不安が強くなる範囲には違いがあります。発表や演奏などの場面に限られる場合もあれば、会話や会食など日常の対人場面にも広がっている場合もあります。

人前で話す・演じるなどの場面に限られる場合は、「パフォーマンス限局型」と呼ばれます。場面の数だけで判断せず、その方の生活にどのような影響が出ているかを見ます。

4.社会不安障害の原因と、不安が続く仕組み

社会不安障害の原因と、不安が続く仕組みの要点:体質・経験・環境、不安から回避へ、次の場面が不安に
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体質・気質・脳の働きとの関係

社会不安障害の原因は、一つには決められません。不安を感じやすい気質や、恐怖・不安に関わる脳の働き、遺伝的な要因などの関与が考えられています。

例えば、初めての人や状況に強く反応しやすい傾向が、背景にある場合があります。ただし、そのような傾向があれば必ず発症するというものではありません。

経験や環境の変化との関係

過去の対人経験や、その後の環境も、不安の現れ方に関わります。強いストレスのある出来事や、昇進などで人前に立つ機会が増えたことをきっかけに、困りごとが目立つ場合があります。

原因探しだけにとどまらず、今どのような場面で不安が強くなるかを整理します。同じ緊張でも、求められる役割によって生活への影響が変わるためです。

「不安 → 回避 → また不安になる」という悪循環

苦手な場面を避ければ、その場の不安はいったん軽くなります。しかし、避けている間は、その場面に慣れる機会も得られません。

そのため、次に人前へ出る必要が生じたとき、また強い不安を感じることがあります。避けるほど苦手な場面が残り、さらに避けたくなるという悪循環が、症状の持続に関わります。

自分の緊張への注目や、終わった後の反省が続くとき

「顔が赤くなっていないか」「声が震えていないか」と自分の状態ばかりを確認すると、相手の話や実際の反応を捉えにくくなります。会話が終わった後も、自分の失敗だと思う点を繰り返し考え、次の場面への不安が強くなることがあります。

こうした注意の向き方や、出来事の前後の考え方も、治療で振り返る対象になります。

5.社会生活への影響――仕事・学校・外出

社会生活への影響――仕事・学校・外出の要点:発表や会話が負担、活動範囲が狭まる、自信が揺らぐ
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緊張によって本来の力を発揮しにくくなる

発表などで強く緊張すると、本来の力を発揮できなかったり、想定外のミスをしたりすることがあります。その結果、周囲から実力に見合う評価を受けにくくなる場合があります。

また、失敗しなかったとしても、本人にとっては強い緊張を伴う「いやな経験」になることがあります。周囲から問題なく見えていても、本人の負担が小さいとは限りません。

回避によって活動や仕事の選択肢が狭まる

緊張や失敗を繰り返すと、苦手な場面を避けるようになり、活動や仕事の選択肢が狭くなります。就職面接を受けられない、人と関わる役割を避けるなど、仕事を始めるときや続けるときに影響が出ます。

学校でも、発表や集団での活動を避けるなどの困難が生じる場合があります。不安の強さだけでなく、参加できなくなった活動を確認することが大切です。

自信を失い、挑戦することが難しくなる

失敗が重なると、自分への評価が下がり、「また失敗するだろう」と考えるようになることがあります。その思いから挑戦を避け、さらに活動範囲が狭まっていきます。

この段階では、不安そのものに加えて、失った自信や意欲にも目を向けます。できなかったことだけでなく、今なら取り組めそうなことを探していきます。

買い物や外出にも影響し、引きこもりに至る場合

症状が慢性化すると、「人が怖くて買い物に行けない」など、生活全般に影響が出ることがあります。周囲が怖くて外に出られず、引きこもりの状態に至る場合もあります。

実際には、そこまで至らない場合の方が多くあります。それでも、社会不安のために本来の活躍ができなくなることは多く、生活が大きく制限される前から治療を考える意味があります。

6.あがり症や、ほかの不調との違い

あがり症や、ほかの不調との違いの要点:生活への支障を確認、似た症状を整理、身体・薬の影響も確認
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一般的な緊張・人見知りとの違い

人前で緊張すること自体は、誰にでもあります。社会不安障害を考えるときは、不安の強さや続き方に加え、避ける行動や生活への支障がどのくらいあるかを確認します。

例えば、緊張しながらも必要な活動に取り組める場合と、面接や会食を避け続けて生活が制限される場合では、困りごとの大きさが異なります。「内向的かどうか」だけで病気を判断するものではありません。

パニック障害・広場恐怖症・全般不安症との違い

社会不安障害では、人に見られることや、対人場面での失敗などが不安の中心になります。一方、パニック障害では、予期しない強い発作を繰り返し、再び発作が起こることを恐れる点が特徴です。

広場恐怖症では、具合が悪くなったときに逃げにくい、助けを得にくい場所への不安が目立ちます。同じ「外に出られない」でも、何を怖いと感じているかを確認します。

全般不安症では、仕事、健康、家族、お金など、複数のことへの心配が広く続きます。これらが重なる場合もあるため、一つの症状だけで区別せず、経過を合わせて考えます。

うつ病・適応障害との違いと重なり

うつ病では、気分の落ち込みや興味・意欲の低下などから、人に会えなくなることがあります。適応障害では、仕事上の出来事など、特定のストレスに関連して不安や落ち込みが生じます。

社会不安障害が先にあり、その後に落ち込みが強くなる場合もあります。診察では、人前の不安がいつからあったか、気分の変化やストレスとの関係を確認します。

発達特性による対人の難しさとの関係

自閉スペクトラム症などの発達特性がある場合も、会話のやり取りや相手の意図を理解することに難しさを感じる場合があります。人と関わることが苦手という点だけでは、社会不安障害と区別できません。

子どものころからの対人関係や生活上の特徴を確認し、不安以外の困りごとも整理します。発達特性と社会不安障害が併存する場合もあるため、双方の観点から見ることが大切です。

からだの病気や薬の影響を確認する場合

動悸、発汗、震え、不安などは、甲状腺機能亢進症などでもみられます。対人場面以外でも症状が続く場合や、体重の変化などを伴う場合は、からだの原因も確認します。

現在使っている薬やサプリメント、飲酒などについても診察でお伝えください。必要に応じて血液検査などを検討します。

7.受診の目安と、診察で確認すること

受診の目安と、診察で確認することの要点:苦手な場面と経過、身体症状・回避、メモで伝えても大丈夫
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不安や回避が、仕事・学校・日常生活に影響しているとき

不安のために発表や面接を避ける、会食に参加できない、外出が難しくなるなど、生活への影響があるときは相談の目安です。何とか参加できていても、毎回強い苦痛がある場合は、そのつらさも伝えてください。

「もっと重くなってからでないと受診できない」ということはありません。困っている段階で相談し、治療が必要かを一緒に考えます。

診察では、苦手な場面・経過・生活への影響を確認する

診察では、どの場面が苦手か、そこで何が起こることを恐れているか、いつから続いているかを確認します。実際に起こる症状と、そのために避けている行動の両方をお聞きします。

また、落ち込みやほかの不安症状がないか、仕事や家庭での事情も確認します。現在の症状だけでなく、これまでの経過を合わせて診断を考えます。

診察で話すことにも緊張する方へ

診察も人と話す場面なので、緊張して言葉が出にくくなることがあります。最初からうまく説明しようとせず、「話すことに緊張します」と伝えるところからで構いません。

例えば、苦手な場面、からだに出る症状、避けていることを短いメモにしておくと、伝える内容を整理できます。これは受診準備の一例であり、詳しい文章を作る必要はありません。

8.社会不安障害の治療の2つの柱

社会不安障害の治療の2つの柱の要点:不安を和らげる、取り組める段階から、生活の目標を共有
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薬物療法と、段階的に不安に慣らす取り組み

当院では、薬物療法と、苦手な場面に段階的に慣らす取り組み「脱感作」を治療の2つの柱としています。薬でもとの不安・緊張を和らげ、その土台の上で、少しずつ苦手な場面に取り組んでいきます。

薬の治療だけでなく、避けてきた場面への関わり方も扱います。具体的な進め方は、症状の強さや薬との相性、生活の状況を踏まえて考えます。

不安の軽減と、回避・活動範囲の改善を目指す

不安が軽くなっても、人前の場面を避け続けていれば、生活の幅は戻りにくくなります。そのため、症状の改善と、実際に取り組める活動が増えているかを分けて確認します。

薬で不安を減らすことと、取り組めた経験を重ねることを組み合わせ、本人が望む生活・行動範囲を取り戻していきます。

9.薬物療法――抗うつ薬と頓服の使い方

社会不安障害の「薬物療法――抗うつ薬と頓服の使い方」の要点図解。抗うつ薬は定期的に、頓服は必要時に、効果・副作用を確認、減薬は主治医と相談。
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定期的に使う抗うつ薬(SSRI)

社会不安障害では、定期的に使う薬としてSSRIなどの抗うつ薬が選ばれます。「抗うつ薬」という名前ですが、うつ病だけでなく、不安の治療にも使う薬です。

SSRIは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きに作用します。不安や緊張、予定の前から続く予期不安を和らげることを目指します。

効果が出るまでの経過と、続けて使う意味

抗うつ薬は、飲んですぐに不安を止める薬ではありません。効果が出てくるまで2〜4週間ほどを目安にしながら、徐々に不安・緊張が和らぐかを見ます。

これは治療全体が終わるまでの期間ではありません。薬の量や相性を確認し、苦手な場面に取り組みやすくなっているかも見ながら治療を続けます。

強い不安に対して使う抗不安薬・頓服

強い不安が起こりそうなときに、頓服として抗不安薬を使うことがあります。比較的速く効き、薬によっては服用後15〜30分ほどで効果が出て、4〜6時間ほど続くものがあります。

一種の「お守り」として持っておく方法もあります。ただし、使いすぎによる依存などに注意が必要です。必要なときの使用は主治医と決め、「持っているが使わずに過ごせる」状態を目指します。

副作用や相性が合わない場合の相談

SSRIでは、吐き気、眠気、不眠、落ち着かなさなどが出る場合があります。副作用の現れ方や、続けやすい薬は人によって異なります。

初めの数日に強く出てその後慣れてくることが多い一方、どうしても続けにくい場合もあります。相性が合わなければ、薬の量や種類を見直し、ほかの抗うつ薬や漢方薬などを検討することがあります。

薬の使いすぎへの注意と、減薬を相談するタイミング

頓服が必要な回数が増えた場合は、その都度薬を増やすだけでなく、普段の不安や治療全体を見直します。使用する量や回数は、処方時の指示に従ってください。

抗うつ薬の減薬は、不安が軽くなり、生活・行動範囲も安定してから相談します。急な中止では離脱症状が出る場合があるため、自分の判断で止めず、減らし方を主治医と決めます。

10.段階的に慣らす「系統的脱感作法」

社会不安障害の「段階的に慣らす「系統的脱感作法」」の要点図解。取り組める段階から、繰り返し少しずつ、負荷は主治医と相談。
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苦手な場面を避けることと、慣らしていくことの違い

もう一つの治療の柱が、苦手な場面に少しずつ慣らしていく取り組みです。人前での発表を避けると、一見不安はなくなりますが、何かの機会に発表が必要になると、再び強い不安が出ることがあります。

慣らす治療では、避けることとは逆に、取り組める場面を体験していきます。ここでは、苦手な場面への取り組み方を「脱感作法」として説明します。

「苦手だが、何とかやり切れる」段階から始める

最初から最も苦手な場面に飛び込むのではなく、「苦手だが、何とかやり切れる」レベルを選びます。その場面を繰り返し体験し、次の機会への予期不安を少しずつ減らしていきます。

取り組む内容や負荷は、主治医と相談して決めます。症状が強い時期に、気合いだけで押し切る練習ではありません。

具体例:友人との会話から、会議・発表へ

発表への不安が強い場合には、例えば次のように段階を分けます。いきなり大人数の前に立つのではなく、今の状態で取り組めるところから始めます。

慣れた友人との会話 → 5人くらいのミーティング → 20人くらいの発表

これは進め方の一例です。慣れてきたことを確認しながら、次の段階に進みます。

慣れてきたら、少しずつ負荷を上げる

同じ場面での不安が軽くなったら、少しずつ負荷を上げます。一度うまくできたかだけでなく、繰り返して取り組めるかを見ながら進めます。

苦手な場面が減り、回避も減ることで、生活・行動範囲を広げていきます。練習そのものを目的にせず、仕事や日常で必要な活動につなげます。

強すぎる緊張を避け、主治医と相談しながら進める

強すぎる緊張が起こると、かえって苦手意識が強まる場合があります。うまくいかないときは、「努力が足りない」と考えるのではなく、取り組む段階や負荷を確認します。

当院で薬を使いながら治療する場合は、原則として、抗うつ薬で不安を和らげた土台の上で進めます。自己判断で無理に負荷を増やさず、主治医と相談してください。

11.認知行動療法で取り組むこと

社会不安障害の「認知行動療法で取り組むこと」の要点図解。予想と実際を比べる、注意の向け方を見直す、行動で経験を重ねる。
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認知療法と、段階的に慣らす脱感作の関係

認知療法は、不安に関わる考え方を振り返り、実際の経験を通じて変化を目指す治療です。そして脱感作は行動療法の1つとされ、行動から改善を図る治療です。

認知療法的には、段階的に場面へ取り組むことに加え「何が起こると予想しているか」「実際にはどうだったか」を確認します。ここで紹介するのは一般的な治療内容であり、実施方法や提供体制は医療機関によって異なります。

「失敗したと思われる」などの考えを振り返る

例えば、「少し言葉に詰まったら、相手は自分を否定する」と考えていないかを確認します。単に前向きに考え直すのではなく、予想と実際の相手の反応を比べます。

「緊張があっても、考えていたほど悪い結果にはならなかった」という経験を、治療の中で確かめていきます。

自分の緊張ばかりに向く注意を見直す

自分の声や汗を確認することに注意を使いすぎると、会話の内容や相手の様子を捉えにくくなります。治療では、相手の話や周囲の状況にも注意を向けられるよう練習します。

不安を無理に追い払うというより、注意を向ける先を柔軟にする取り組みです。

緊張を隠すための工夫や、繰り返す反省を振り返る

不安を隠すために、話す内容を決めすぎたり、目立たないよう発言を控えたりすることがあります。こうした工夫が、その人にとって本当に役立っているかを確認します。

会話後に失敗ばかりを振り返ることも、検討する対象です。必要な準備や振り返りまでなくすのではなく、不安を強めている部分を見直します。

12.治療の経過――初期・中期・後期

社会不安障害の「治療の経過――初期・中期・後期」の要点図解。初期:不安を和らげる、中期:活動範囲を広げる、後期:生活を保ち減薬を相談。薬を続ける選択肢もあります。
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ここでは、薬の治療を土台に、段階的に慣らす取り組みを組み合わせる場合の流れを説明します。大まかに、初期・中期・後期の3段階に分かれます。

治療初期:薬で不安・緊張を和らげる

初期は、まず不安・緊張を減らすことを重視します。その後の慣らす取り組みにつなげるためにも、抗うつ薬を開始し、量を調整しながら効果を見ます。

この段階では準備が整っていないため、脱感作法を積極的には進めません。薬の効果が現れ、似た場面で以前より緊張が減ってきたら、中期へ進みます。

治療中期:段階的に慣らし、活動範囲を広げる

中期では、抗うつ薬を続けながら、苦手な場面への取り組みを徐々に進めます。これまで避けてきた場面のうち、比較的取り組めそうなものから始め、範囲を広げます。

目標は、対人場面への不安を減らすことと、活動範囲を取り戻すことです。十分に緊張が減り、生活・行動範囲も望むところまで戻ってきたら、後期へ進みます。

治療後期:生活範囲を保ちながら減薬を目指す

後期では、再燃を防ぎながら抗うつ薬を少しずつ減らし、可能であれば中止を目指します。減薬後に不安がややぶり返す場合は、苦手な場面への取り組みを続けながら、生活範囲を狭めずに減薬できているかを確認します。

一方、減薬後の不調には、もとの不安の再燃とは別に離脱症状が関わる場合もあります。つらさを練習だけで乗り切ろうとせず、主治医と減薬の速さや進め方を相談します。

中止すると不安がぶり返す場合の治療継続

薬を中止して普段の生活へ戻ることが望まれますが、中止すると人前の強い不安がぶり返す場合もあります。その場合は、少量の抗うつ薬を続けて再燃を防ぎながら、社会生活を続けることがあります。

薬をやめたかどうかだけでなく、必要な生活を続けられているかを重視します。経過を見ながら、その方に合う治療の続け方を相談します。

13.日常生活でできる工夫

社会不安障害の「日常生活でできる工夫」の要点図解。苦手な場面を整理、睡眠・運動・食事、できたことを共有。治療と日常の工夫を並行。
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苦手な場面と、取り組めたことを整理する

苦手な場面をひとまとめにせず、どこで何がつらいのかを書き出してみます。例えば、同じ会話でも、親しい相手との会話と職場の会議では、負担が違うことがあります。

記録は、自分の失敗を採点するためではありません。主治医と相談するときに、困る場面や、取り組めたことを共有するための材料にします。

睡眠・運動など、生活の土台を整える

十分な睡眠、無理のない運動、食事など、普段の生活も大切にします。生活習慣を整えることは、不安への対処を支える助けになります。

ただし、生活を整えるだけで治療の代わりになるわけではありません。強い不安や回避が続く場合は、日常の工夫と治療を並行して考えます。

一人で抱え込まず、治療と日常の取り組みをつなげる

薬の効果や診察中の状態だけでなく、日常で何ができたか、どこで難しかったかを主治医に伝えます。うまくいかなかった場合も、次にどの段階へ戻すかを考える材料になります。

「まだできない」と責め続けるより、取り組む負荷が合っているかを確認します。小さな段階から繰り返す方針を、日常生活にもつなげていきます。

14.ご家族・職場・学校の方の関わり方

社会不安障害の「ご家族・職場・学校の方の関わり方」の要点図解。つらさを聞く、取り組める段階を共有、配慮と練習を相談。
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「気にしすぎ」「慣れれば大丈夫」で片づけない

強い不安や回避がある人に、「気にしすぎ」「気持ちを強く持てばよい」と伝えても、困りごとが解決するとは限りません。励ましたつもりの言葉が、本人を苦しめる場合もあります。

まずは、どの場面で、どのくらいつらいのかを聞いてください。性格の問題として片づけず、治療で扱える不安がないかを考えます。

本人が何に困っているか、どこまで取り組めるかを共有する

家族とは普通に話せても、家の外では強く緊張する場合があります。家庭での様子だけを見て、「外でも同じように話せるはず」と判断しないことが大切です。

本人が望む場合は、受診時に困りごとを一緒に伝える方法もあります。周囲が想像する苦手と、本人が感じている苦手の違いを確認します。

必要な配慮と、段階的な取り組みを相談する

苦手なことをすべて代わりに行うか、無理に経験させるかの二択ではありません。本人の状態と治療段階を踏まえ、今取り組むことと、負担を調整することを分けて考えます。

例えば、発表が必要な場合に、いきなり大人数ではなく少人数から取り組む方法があります。実際の配慮は、本人・主治医と相談しながら決めていきます。

15.社会不安障害についてよくあるご質問

社会不安障害の「社会不安障害についてよくあるご質問」の要点図解。症状・受診、薬・治療、練習・経過。気になることは、診察で相談。
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Q1.人見知りやあがり症でも、受診してよいですか?

不安や回避のために困っている場合は、ご相談ください。一般的な緊張か、治療が必要な状態かを、自分だけで決める必要はありません。

仕事や外出に支障がある、必要なことはできても毎回強い苦痛があるなど、困っている内容を伝えてください。

Q2.大勢の前では話せませんが、親しい人とは話せます。社会不安障害でしょうか?

親しい人と話せることだけでは、社会不安障害を否定できません。不安は、人数や相手との関係によって異なります。

どの場面で強く緊張し、そのためにどのような支障が出るかを確認して判断します。親しい人とは会話できる一方、面接や発表が難しいという場合も、相談の対象になります。

Q3.不安より、汗・動悸・震えなどが目立つことはありますか?

あります。対人場面で不安が高まると、動悸や発汗などのからだの症状が出ることがあります。その反応を人に気づかれることが、さらに不安になる場合もあります。

ただし、からだの症状には別の原因もあります。人前以外でも症状が続く場合などは、身体的な原因も含めて確認します。

Q4.仕事や外出を避けるようになっています。どこから治療を始めますか?

まず、現在の不安の強さと、生活がどのくらい制限されているかを確認します。当院では、不安が強い初期は薬の治療を重視し、取り組める土台ができてから、苦手な場面に少しずつ慣らしていきます。

いきなり外出や仕事の場面を増やすのではなく、今の状態で取り組める段階を主治医と相談します。

Q5.うつ病ではないのに、抗うつ薬を使うのはなぜですか?

抗うつ薬は、うつ病以外の不安の治療にも使われます。社会不安障害では、SSRIなどを使い、人前の不安・緊張や予期不安を和らげることを目指します。

抗うつ薬を処方されたことだけで、うつ病と診断されたという意味にはなりません。何を改善するために使う薬か、主治医に確認してください。

Q6.発表や面接のときだけ、頓服を使えばよいですか?

強い不安が起こりそうな場面で、頓服を使うことはあります。ただし、普段から予期不安が続く、回避が広がっているという場合は、頓服だけで十分かを検討します。

頓服の回数が増えているときは、そのことも主治医に伝えてください。定期薬や段階的な取り組みを含め、治療全体を考えます。

Q7.薬を使わずに治療する方法はありますか?

認知行動療法など、薬を使わない治療も選択肢です。一般的な治療としては、薬物療法、認知行動療法、両者の組み合わせがあり、症状や希望を踏まえて検討します。

当院のこのページでは、薬で不安を和らげてから段階的に慣らす進め方を中心に説明しています。副作用への心配や、薬を使わない治療への希望がある場合も、診察でお伝えください。

Q8.人前に出る練習をしたら、かえってつらくなりました。どうすればよいですか?

取り組んだ場面の負荷が強すぎなかったかを確認します。「慣れるまで我慢する」と無理に同じ練習を続けるのではなく、一つ前の段階へ戻すなど、進め方を主治医と相談してください。

薬の効果や準備が十分でない時期もあります。本人の努力不足と決めつけず、取り組む時期・場面・強さを見直します。

Q9.治療にはどのくらいの期間がかかり、薬はいつやめられますか?

治療全体の期間は、薬の効果、苦手な場面の広さ、生活・行動範囲の回復などによって異なります。SSRIの効果が出てくる2〜4週間という目安と、治療が終わるまでの期間は別です。

人前の不安が十分に減り、生活が安定したところで、主治医と減薬を相談します。中止すると不安がぶり返す場合には、少量の薬を続けることもあります。

Q10.診察で話すことにも緊張しますが、相談できますか?

ご相談ください。診察で緊張することも、伝えていただきたい困りごとの一つです。話す内容を短いメモにしておく方法もあります。

例えば、「面接が怖くて応募できない」「会食を断ることが増えた」など、実際に困っている場面が分かるだけでも、相談の出発点になります。受診準備の例として、無理のない範囲で整理してください。

16.吉祥寺で社会不安障害の相談をお考えの方へ

社会不安障害の「吉祥寺で社会不安障害の相談をお考えの方へ」の要点図解。心療内科・精神科、状況に合わせた治療、初診はネット予約。吉祥寺駅井の頭口前。
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こころ診療所吉祥寺駅前は、吉祥寺駅井の頭口前の心療内科・精神科です。人前での不安や緊張、会食・面接の回避、外出の難しさなどでお困りの方は、ご相談ください。

当院では、薬で不安・緊張を和らげることと、段階的に苦手な場面に慣らす取り組みを組み合わせて治療を進めます。症状だけでなく、仕事や日常生活でどのようなことができなくなっているかも確認します。

「性格だから仕方ない」と思っていた部分でも、治療によって改善を目指せることがあります。初診のご予約は、ネット予約からお申し込みいただけます。

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動画で見る社交不安障害

社会不安障害の症状や治療について、動画でも説明しています。文章とあわせて確認したい方は、こちらをご覧ください。

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この記事の著者

春日雄一郎

精神科医・精神保健指定医

医療法人社団Heart Station理事長。YouTubeチャンネル「こころ診療所チャンネル」運営。

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