躁うつ病(双極性障害)

落ち込みと高揚が交互に訪れる

落ち込みの「うつ状態」と高揚の「そう状態」が交互に訪れるこころの不調です。

 

うつ病やADHDなどと見分けがつきにくいことがありますが、治療法が違うため、慎重に見分けます。

 

気分に合わせつつ、薬物療法と生活面の対策を並行します。薬は続けることが必要です。

  • 躁うつ病(双極性障害)は、落ち込みの「うつ状態」と高揚の「そう状態」が反復します。
  • うつ病、PMS、ADHDなど「似た症状の病気」もあり、慎重に診断します。
  • 気分状態に合わせつつ、気分安定薬などのくすりの治療と、生活面の指導を並行します。
  • 「薬の継続」が、再燃の予防のために非常に重要です。

もくじ

 
  1. はじめに
  2. 躁うつ病の症状
  3. 躁うつ病と似た病気
  4. 躁うつ病の治療法
  5. 気分状態と対応する治療方針
  6. まとめ
  7.  
 

はじめに

落ち込みと高揚が交互に出るこころの不調です。

躁うつ病は、落ち込み(うつ状態)と気分の高揚(そう状態)が、交互に現れるこころの不調です。

そう状態、うつ状態とも、生活、対人面に大きな影響を及ぼしうるため、治療を続けることが重要になります。

うつ病や、ADHDなどの「似た病気」と区別がつきにくい場合がありますが、治療法が異なってくるため、医療機関ではその点を慎重に見極め、治療を行っていきます。

ここでは、躁うつ病(双極性障害)について、症状や治療・対応法などを見ていきます。

  • 躁うつ病とは、落ち込みの「うつ状態」と高揚の「そう状態」が交互に訪れるこころの不調です。
  • うつ病、ADHDなどと時に区別しにくいですが、治療法が変わるため、慎重に見極めます。

躁うつ病の症状

 

落ち込み(うつ症状)と高揚(そう症状)の2つが主です。

  

躁うつ病では、落ち込み(うつ症状)が主体の「うつ状態」と、気分の高揚(そう症状)が主体の「そう状態」の、全く逆の2つの状態が交互に出てきます。

  

なお、人によっては、「そう状態」があまり目立たないタイプの人もおり、その場合は、「うつ病」と似た落ち込みが続くことになります。

  

具体的には、以下のような症状があります。

うつ症状の例

  • 意欲が落ち、動きにくくなる
  • 落ち込み、自信がなくなる
  • 食欲が落ち、体重が落ちる
  • 集中力・記憶力が低下する
  • 自分を責めて、罪悪感にさいなまれる
 

そう症状の例

  • 「何でもできる」全能感が出る
  • 上機嫌で、しゃべりすぎる
  • 無謀な計画をしようとする
  • お金を使いすぎてしまう
  • 高圧的・威圧的になる
 
 

細かくは、そう状態が強いタイプを「双極性障害Ⅰ型」、弱いタイプを「双極性障害Ⅱ型」として分けることもあります。

  • 躁うつ病のおもな症状は、落ち込み(うつ症状)と、気分の高揚(そう症状)の2つ。
  • 気分状態の変化で、真逆にも見える症状が、交互に出現する。

躁うつ病と似た病気

 

うつ病やADHDなどと、見分けにくい場合があります。

  

以前、「うつ病と似ているが、治療法が違う病気」として「躁うつ病」が注目されました。特にそう状態が軽い場合には見分けにくいことがあります。

  

また、最近では、ADHDや月経前症候群(PMS)での気分変動でも、似た状態が生じることが言われます。

  

これらは時に見分けにくいですが、治療法が異なってくるため、慎重に見極めていきます。

「別の病気」の例

  • うつ病
  • ADHD
  • 体の別の病気
 

鑑別:うつ病

  • 基本的には「そう状態がみられない」ことで見極める。
  • ただし、「そう状態が目立ちにくい」場合など、見分けにくい場合もある。
  • 治療法が異なるため、慎重に見極めることが必要。
  • 途中でそう状態など生じ、診断・治療が変更になる場合もある。
 

鑑別:ADHD

  • 不注意・多動・衝動性の3つが特徴的な、生来の「発達障害」
  • 衝動性から強い気分変動が生じること、多動・衝動性が「そう症状」と一見似てることから、時に見分けにくい。
  • 治療法が異なるため、慎重に見極めることが必要。
  • ただし、合併することも少なくないとの説もあり、共通点は多い。
 

鑑別:体の別の病気

  • 下記のような体の病気が原因で似た症状が出る場合がある。
  • 月経前症候群(PMS)→生理周期に沿った気分変動が生じることがある。
  • 甲状腺機能亢進症→うつ症状、そう症状、気分変動などが生じることがある。
 
  • うつ病と躁うつ病は時に見分けが難しく、治療途中で診断が変わることもある。
  • その他、ADHD、PMS、甲状腺の異常の可能性も見極めていく必要がある。

躁うつ病の治療法

 

薬の治療と生活面の対策を、状態に合わせ組み合わせます。

  

躁うつ病では、気分の波を抑えるための「薬の治療」が中心ですが、生活面の対策をそこに組み合わせます。その中で、状態により、薬の組み合わせや生活の方法が違ってきます。

  

主に行う内容をまとめると下のようになります。

躁うつ病:薬の治療

  • 基本は「リチウム」「バルプロ酸」などの「気分安定薬」を用い、気分の波自体を減らし、改善・再燃予防の双方を図る。
  • そう状態のときは抗精神病薬を、うつ状態のときは抗うつ薬等を、慎重に追加する場合がある。
  • 安定しても薬をやめると再燃するとされる。葛藤はあっても、薬を継続することが大事。
  •  
  • 気分安定薬には妊娠に影響する薬が多い。妊娠を考える場合は主治医との相談が重要。
 

躁うつ病:生活面の対策

  • 基本的は「気分の逆をする」。うつ状態のときは動くように、そう状態のときは休むよう心がける。
  • 特に安定すると「薬への葛藤」が生じるが、気持ちを整理しつつ薬は継続する。
  • 「軽いうつ状態」での安定が多いが、「高揚」よりも「安全」を目標にする。
  • 「対人関係」「生活リズム」の2つが影響しやすく、その整理を心がける。
 
  • 躁うつ病の治療では、気分の波を抑える「気分安定薬」を続けることが基本になる。
  • そこに、気分状態に合わせた生活面の対策を組み合わせ、改善と再燃予防を図る。

気分状態と対応する治療方針

 

状態によって、特に生活面の対策は異なります。

  

そう状態ではなるべく休養する一方、慢性的なうつ状態では活動に努めるなど、状態により対策は変わります。

  

一方で、治療の主体である「気分安定薬」は状態を問わず続けることが重要です。

  

気分状態と、対策の要点は以下のようになります。

急性期
(そう状態)

  • 放置するとトラブルになり、早い治療が必要。
  • 気分安定薬と、そう状態への抗精神病薬を使う。
  • 動くと刺激で悪循環のため、刺激を減らし休養に専念する。
  • 休養などが難しければ、入院が望まれる場合がある。
 

急性期
(うつ状態)

  • 悪化すると自傷などリスクあり、早い治療が必要。
  • 気分安定薬は継続、気分を上げる薬を慎重に検討する。
  • 急性期は「頭を休ませる」ことが重要、休養に専念する。
  • 休養困難、悪化続く場合は、入院を要する場合がある。
 

安定期
(再燃予防)

  • 再燃予防のために、気分安定薬の治療は継続する。
  • 軽うつなら動き、軽躁なら休むなど、行動量を調整する。
  • 対人関係・生活リズム面の対策を継続する。
  • 薬の継続が大事。こころの葛藤を整理しつつ治療を続ける。
 
  • 急性期は薬の治療+休養が中心。考えごと・動きすぎを避けることが重要。
  • 安定期では、気分安定薬は続けつつ、対人面・行動量・生活リズムを整え続ける。
  • 安定期でも再燃予防のため薬の継続が必要。心理面も整理しつつ治療を続ける。

まとめ

 

しっかり診断、しっかり治療が大事です。

  

躁うつ病は、落ち込みの「うつ状態」と高揚の「そう状態」が反復しますが、時にうつ病などと見分けがつきにくく、診察を受けて、慎重に診断を受けていくことが大事です。

  

診断がつけば、薬と生活面の対策を合わせて治療していきます。安定しても再燃予防を大事に、しっかり薬などの治療を続けることが大事です。

  • 躁うつ病は時にうつ病などと区別しにくく、しっかり見極めて、診断を受けることが大事。
  • 薬と生活面の治療の継続が大事。安定しても治療をしっかり続けることが重要です。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)