急性一過性精神病

急性に発症、短期で改善

急性一過性精神病は、急性の幻覚妄想等が目立ちますが、短期で改善する疾患です。

 

特に急性期では安全確保が求められ、時に入院が必要になります。

 

動画:急性一過性精神病

もくじ

 
  1. (1)はじめに:急性一過性精神病
  2. (2)急性一過性精神病の例
  3. (3)急性一過性精神病とは?
  4. (4)急性一過性精神病の診断
  5. (5)急性一過性精神病の鑑別疾患と併存症
  6. (6)急性一過性精神病の治療
  7. (7)まとめ
  8.  

(1)はじめに:急性一過性精神病

心療内科、精神科の病気。今回は「急性一過性精神病」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

幻聴や妄想が目立つ病気、代表的なものは「統合失調症」これは治療しないと持続・悪化してしまう病気です。

一方、一時期だけ似た症状が出る病気がありまして、これを「急性一過性精神病」と言います。

今回は、この「急性一過性精神病」について見ていきたいと思います。

(2)急性一過性精神病の例

Aさんは人間関係でストレスが続く中、ある日急に混乱し、幻聴などが目立つようになりました。

受診をして薬の治療と休養を行ったところ、2週間ほどで普段の状態に戻りました。

(3)急性一過性精神病とは?

これは「急に一時的に混乱する病気」です。

<急性一過性精神病とは>

急性一過性精神病は急に統合失調症のような強い混乱や幻聴などの症状が出る病気です。

そして、短期間で改善をして治った後は、以前の状態に戻ります。

ただし、繰り返すこともあり、強いストレスが関与することが多いのが特徴です。

<主な急性一過性精神病の症状>

基本的には統合失調症と似たところがあります。

まずは「幻覚」幻聴などが出ることがあります。

続いて「妄想」被害妄想など比較的強いものが出ることがあります。

続いてが「発言の混乱」言う内容が「連合弛緩」混乱しまとまりを欠きます。

続いてが「行動の混乱及び混迷」行動もまとまりを欠き、時に「昏迷」逆に動かなくなります。

<急性一過性精神病になりやすい背景>

まずは強いストレスがあった時。

あとは「10代」ストレスの対処がまだ苦手の場合に出現します。

後は「発達障害」でストレスをダイレクトに受けてしまう場合。

また、「パーソナリティ障害」感情が強く動くことを背景に発生することがあります。

(4)急性一過性精神病の診断

この急性一過性精神病の診断は、DSM-5では「短期精神病性障害」と「統合失調症様障害」の2つに分かれます。

<短期精神病性障害の診断の要点>

A:幻覚・妄想・発言の混乱・行動の混乱のうち1個以上

B:持続期間が1日以上1カ月未満、改善後は以前の状態の水準に戻る

C:他の精神疾患等では説明できない

<統合失調症様障害の診断の要点>

A:幻覚・妄想・発言の混乱・行動の混乱・陰性症状のうち2個以上が1か月以上持続

B:エピソード持続が1か月以上6か月未満

C,D:他の精神疾患等では説明できない

(5)急性一過性精神病の鑑別疾患と併存症

<急性一過性精神病の鑑別疾患>

①統合失調症

症状はほぼ同じ。ただ、期間と経過の違いがあり、そこで見分けます。

②躁うつ病

強い躁やうつの時に、この急性一過性精神病と似た急性の混乱が時に出ます。

③うつ病

強い不安焦燥がある時に、妄想なども伴い、似た症状が出ることがあります。

<急性一過性精神病の併存症>

いずれもストレスに対して強く反応しやすいところが背景です。

まずは「発達障害(ASD・ADHD)」。

続いてが「知的障害」どうしてもストレスの対処が難しい場合があります。

続いてが「パーソナリティ障害」感情が強く動くことにより生じる事があります。

(6)急性一過性精神病の治療

特に急性期には、「安全の確保」が要点になります。

急性期の治療は2つ、「薬物療法」と「休養及び安全確保」です。

<治療①薬物療法>

基本的には統合失調症に準じて抗精神病薬を用います。

そして、不眠など続くと急に悪化するため、不眠への睡眠薬など補助薬の併用を検討します。

そして、まず「安全に休める」という状態を薬の治療でも目指していきます。

<治療②休養と安全確保>

休養が結果、しっかりできていれば早い時期での改善を見込むことができます。

一方で、症状の強さから休養できず、トラブル等の危険が大きいこともあります。

そこで、休養や安全確保が難しい場合には、入院治療が必要な場合もあります。

<入院が必要になる例>

まず一つは「他害のリスク」混乱の結果、他の人に影響を与えてしまう可能性がある時。

2つ目が「自傷リスク」混乱の結果自分を傷つけてしまうおそれがある時。

3つ目は「健康を損ねるリスク」、例えば「昏迷状態」での脱水からの不調等です。

<改善後の治療>

改善した後、薬の継続が必要かどうかに関してはかなり議論があるところです。

「本当にこれは一過性かどうか」でどうすべきか判断が分かれてきます。

そして、急性の症状を考えると、再発時のリスクはしばしば高い点も注意が必要です。

<薬の継続が望まれることが多い時>

①反復する時

反復したときのリスクも踏まえ、予防に薬を使うべき場合が多いと思われます。

②他の精神疾患が疑われる時

確かに一過性でも、統合失調症や躁うつ病などが疑われる場合は、その診断に準じて改善後も、再発予防のために治療の継続が望まれます。

③悪化した時のリスクが高い時

再発時に急性でかつ危険が強いことが想定される場合は予防の重要性が上がります。

(7)まとめ

今回は心療内科・精神科の病気「急性一過性精神病」について見てきました。

この急性一過性精神病は、急性に幻覚や妄想などの強い症状が出ますが、一方で短期で改善を見込む病気になります。

ストレスが関与することが多く、ストレスに敏感な場合には特に注意が必要です。

そして統合失調症など、他の精神疾患と時に見分けにくいことがあります。

急性期の治療は統合失調症に準じ、安全の確保に特に注意をします。

改善した後、薬の継続の有無は経過などから慎重に判断をしていきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)