分離不安症

家や家族と離れるときの強い不安

分離不安症は、家や家族等から離れるときに強烈な不安が出る事を繰り返す精神疾患です。

 

10代までに多いですが、成人後も症状が持続し、生活に影響することがあります。

 

治療としては、抗うつ薬などの薬の治療や、認知行動療法等を適宜検討します。

 

動画:分離不安症

もくじ

 
  1. (1)はじめに:分離不安症(分離不安障害)
  2. (2)分離不安症を考える場面
  3. (3)分離不安症とは?
  4. (4)分離不安症の症状と診断基準
  5. (5)分離不安症の鑑別疾患・併存症
  6. (6)分離不安症の治療
  7. (7)まとめ
  8.  

(1)はじめに:分離不安症(分離不安障害)

心療内科、精神科の病気。今回は「分離不安症」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

分離不安症とは家・家族などから離れるときに起こる過剰な恐怖もしくは不安ということになります。

これは、主に小学生の方や10代の方で起こることが多いんですが、一方で大人になっても症状が続くということが少なくないということも指摘されています。

今回はこの分離不安症について見ていきたいと思います。

(2)分離不安症を考える場面

まずは分離不安症を考える時です。幼少期から登校渋りなど、家族から離れるときに強い不安があった。

それが大人になっても続いて、家族から離れるのは怖くてひとり暮らしが困難であったと。

そして交際相手と別れる際にも強い不安があって混乱するということが見られた。こういった例になります。

(3)分離不安症とは?

この「分離不安症とは」次に見ていきますと、これは家族等との別れに関して、「発達的に不適切」でかつ「過剰な」恐怖や不安があるということになります。年齢不相応な恐怖や不安があるということです。

少し詳しく見ていきますと、幼少期では自然であります、この分離・別れる時の不安が、成長してからも・大人になってからも持続したりするというところ、そしてその程度が過剰でかつ影響が強いものということになってきます。

(4)分離不安症の症状と診断基準

次に、この症状と診断基準ということを見ていきます。

<基準A>

基準Aとしては、愛着ある人物などとの分離に関して「発達的に不適切で(年齢不相応で)」かつ「過剰な」恐怖または不安がある、というところです。

基準が8つありまして、これは3つ以上というのが基準になってきます。順番に見ていきます。

  • 1つ目としては、分離が予想・経験される時への反復的・繰り返しての過剰な苦痛というところになります。
  • 2つ目としては、愛着あるものを失うかもしれない、病気などで失ってしまうかもしれないということの持続的でかつ過剰な心配がある、というところであります。
  • 3つ目としては「分離される運の悪い出来事を経験する」という持続的で過剰な心配ということになります。
  • 4つ目としては、この分離の恐怖のために「家から離れるなどに関しての持続的な抵抗もしくは拒否」があるというところであります。
  • 5つ目としては、人もしくは分離して過ごすことに対しての持続的な恐怖もしくは抵抗というところが、これが過剰であるというところになります。
  • 6つ目としては、家などを離れて寝ることに対しての持続的な抵抗または拒否あまり寝られないというところです。
  • 7つ目に関しては、この分離を主題とした・分離に関してのことの悪夢が繰り返される・反復するというところです。
  • 8つ目は分離した時に、もしくはその予想がされた時に生じる反復・繰り返す「身体の症状」が出ます。頭痛や胃の痛み(胃痛)などが出ることがあります。

<基準BーD>

次いで基準のBですけれども、これは子供や青年では4週以上、大人ですと半年以上というのが要件になってきます。

なお基準Cは、社会生活に影響が出ていること。基準Dは、他の精神疾患等で説明できないことです。

<診断基準まとめ>

この診断基準をまとめますと、まずAとしては分離することに関しての「年齢不相応かつ過剰な」恐怖・不安があるというところ。

Bとしては「青年までだと4週以上」「大人だと半年以上」持続しているというところになります。

Cとしては社会生活に影響が出てきているところ。

Dとしては、他の精神疾患などで説明ができないというところになります。

(5)分離不安症の鑑別疾患・併存症

続いて、この分離不安症の鑑別及び併存症になります。

1つ目としては各種の不安症になります。これは細かくは違いがあるんですけれども、しばしば合併・併存することが多いものになります。

2つ目が境界性パーソナリティ障害です。いわゆる見捨てられる不安というところと、厳密には違う場合もあるんですけれども、これは併存・合併することが多いということがあります。特に大人の方だと合併することが多いです。

続いてが依存性パーソナリティ障害になります。特定の相手に依存するかどうかというところが鑑別はするんですけれども、現実的な臨床では併存・合併することが非常に多いというところになります。

(6)分離不安症の治療

続いて、この分離不安症の治療ということですけれども、大きく言うと2つになります。薬物療法と精神療法になります。

<薬物療法>

まずは薬物療法ですけれども、抗うつ薬SSRIが他の不安症同様、選択肢にはなってきます。

ただ、効果に関しては分離不安症だけであると個人差があるというところがあります。

安全性を重視する場合に関しては、漢方薬を使ったり、依存のない抗不安薬「タンドスピロン」を使うというのが選択肢になってきます。

<精神療法>

精神療法に関して言うと、まずはこの不安をもたらすような認知(考え方)のくせに対しての認知再構成というのをすることがあります。

そして、もう一つはその分離する・分かれる不安に対して、段階的な脱感作・暴露療法的な脱感作というのを繰り返しやっていくということがあり得ます。

なお、しばしば背景にパーソナリティ障害障害を合併することがあります。その場合は、このパーソナリティ障害に対しての治療というのを優先して行うことが少なくありません。

(7)まとめ

今回は「分離不安症」について見てきました。

分離不安症は、家や家族など親しいものに対しての別れるということに関して、年齢に不相応かつ程度が過剰な不安や恐怖がある状態になります。

青年までで起こることが多いんですけれども、これは大人になっても生じる場合に関しては、パーソナリティ障害との併存・合併に注意が必要になります。

治療としては、不安障害に準じて抗うつ薬を使用することがあります。

あと認知行動療法の中でも認知再構成・考え方のくせを見たり、行動療法・曝露法でみていくことはありますけれども、背景にパーソナリティ障害がある場合は、それを優先して対処することが少なくありません。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)