レビー小体型認知症

幻視が特徴の認知症

レビー小体型認知症は、パーキンソン病と似た原因の認知症で、認知症で3番目に多いです。

 

「幻視」や「症状の変動」の特徴等から、アルツハイマー型認知症と見分けます。

 

動画:レビー小体型認知症

もくじ

 
  1. (1)はじめに:レビー小体型認知症
  2. (2)レビー小体型認知症の例
  3. (3)レビー小体型認知症とは?
  4. (4)レビー小体型認知症の症状
  5. (5)レビー小体型認知症の診断基準
  6. (6)レビー小体型認知症の鑑別疾患
  7. (7)レビー小体型認知症の治療
  8. (8)まとめ
  9.  

(1)はじめに:レビー小体型認知症

心療内科・精神科の病気。今回は「レビー小体型認知症」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

認知症といえば「アルツハイマー型認知症」が有名ですけれども、それと似て非なるもので「レビー小体型認知症」があります。

薬や日頃のケアなど対応が変わってくるため、これを見分けていくことが大事です。

今回は「レビー小体型認知症」について見ていきます。

(2)レビー小体型認知症の例

Aさんは時折、見知らぬ人や動物が見えるようになり、夜に急に飛び起きて叫ぶことがありました。

徐々に歩きにくさや時間により変動する物忘れが目立ち、「物忘れ」で受診をしました。

検査などをした結果、レビー小体型認知症と診断をされました。

(3)レビー小体型認知症とは?

これは「パーキンソン病と似た認知症」です。

<認知症とは>

認知症は、記憶などの認知機能が後天的に低下してくるものです。

主にアルツハイマー型認知症が有名ですが、そのほかの原因でも出ることがあります。

基本的には徐々に進行し、治す薬はありません。

<レビー小体型認知症とは>

レビー小体型認知症は、大脳にタンパクの塊「レビー小体」が多発するタイプの認知症です。

パーキンソン病とメカニズムは似ています。そして、幻視など特徴的な症状が出るのが特徴です。

基本的には徐々に進行し、治す薬はないのが現状です。

<「レビー小体」とその影響>

このレビー小体は「α-シヌクレイン」という「タンパク質の塊」です。

これが神経細胞に付着して神経の機能を妨げ、細胞死をもたらします。

その結果、認知症症状などを来してきます。

<パーキンソン病との関連>

パーキンソン病は「中脳」別の場所に「レビー小体」ができてきます。

場所が違うため、本来は症状は異なります。

しかし病状が進行してきますと、両方の症状が合併することが多くなります。

<レビー小体型認知症の病態生理>

まずは「幻視」なども含め視覚関連の障害が目立つのが特徴。

もう一つは行動などの「前頭葉機能の障害」が優勢です。

一方、アルツハイマー型認知症との共通点は「アセチルコリン」の不足です。

そのため、使う薬が一部共通します。

<レビー小体型認知症の疫学等>

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症についで3番目に多い認知症です。

認知症の全体の中で約10から15%を占めます。

病状としては、5年から7年で徐々に進行することが言われています。

(4)レビー小体型認知症の症状

代表的な症状は、「注意・認知の強い変動」「幻視」「パーキンソニズム」「レム睡眠行動異常症」「抗精神病薬への過敏さ」「自律神経障害の症状」の6つです。

①注意・認知の強い変動

これは時間により注意や記憶などが変動することです。

特にいわゆる視覚関連の障害が目立ってきます。

そして、この変動のために「せん妄」と時に見分けにくいのが特徴です。

②幻視

幻視は「ないはずのものが見える」症状です。

具体的には「人物(知人も見知らぬ人も)」「動物」「虫」が見えることが多いです。

そして、これは繰り返し出現し、例えば虫が這って見えるときなど、不安など精神的な不調をきたす場合が少なくありません。

③パーキンソニズム

このパーキンソニズムは、ほぼパーキンソン病と似た症状です。

動きにくくなったり、生活リズムにも影響が出たりすることがあります。

そして手の震えや「小刻み歩行」などが出現し、転倒リスクが高いので注意が必要です。

④レム睡眠行動異常症

これは夢を見る状態「レム睡眠」の時に筋肉の弛み(弛緩)がうまく行かず、結果大声や身体の動きが出るものです。

症状が重い場合は興奮や暴力が出る場合があり注意が必要です。

そして、この内容は、基本的には「夢の内容と一致するところが多い」とされます。

⑤抗精神病薬への過敏さ

レビー小体型認知症では、抗精神病薬に対し非常に過敏で副作用も出やすいのが特徴です。

なので、この診断があった時は、抗精神病薬の使用は慎重に検討し、使う場合も少量にとどめます。

⑥自律神経障害の症状

レビー小体型認知症では、自律神経障害の症状が出る場合があります。

具体的には、慢性便秘・排尿障害・起立性低血圧などがでることがあります。

(5)レビー小体型認知症の診断基準

DSM-5の基準では、まずは「認知症の診断」があり、その上で「レビー小体型の診断」がある、この2段階の診断になります。

①「認知症」の診断基準

A:記憶・注意等「認知機能領域」の1個以上が有意に低下している(以下の2つ両方満たす)

(1)本人もしくは知っている人(家族等)の懸念(自覚的な部分)

(2)神経心理学的検査等で示される認知障害(客観的な所見)

B:認知欠損が毎日の生活の自立を阻害してしまう

C:せん妄では説明できない

D:「他の病気」で説明できない

②「レビー小体型」の基準

A:認知症の基準を満たしている

B:「潜行性」に発症し、緩徐に進む

C:中核的特徴および示唆的特徴の両方を満たす

(確実→中核2つ以上か中核1つ+示唆1つ、疑い→中核1つのみか示唆1つ以上のみ)

1)中核的な診断的特徴

(a)認知の動揺性とともに著しく変動する注意及び覚醒度

(b)よく形作られ詳細な、繰り返し出現する幻聴

(c)認知機能低下の進展に続いて起こる自然発生的なパーキンソニズム

2)示唆的な診断的特徴

(a)レム睡眠行動障害の基準を満たす

(b)神経遮断薬に対する重篤な過敏性

D:他の原因では説明できない

(6)レビー小体型認知症の鑑別疾患

主な鑑別疾患は3つ、まずは「アルツハイマー型認知症」2つ目が「せん妄」、3つ目が「パーキンソン病」です。

①アルツハイマー型認知症

認知症症状・物忘れ等に関しては共通しています。

一方レビー小体型認知症では記憶の障害は軽めの一方で、幻視等の特徴的な症状の出現が違いになります。

抗認知症薬は両者共通して使いますが、レビー小体型認知症では抗精神病薬の過敏性が特徴です。

②せん妄

メカニズムは違いますが、症状の変動の点で共通点が多く、見分けにくい場合があります。

そして、合併することも多く、厳密な鑑別は難しい場合もあります。

まずは環境の調整や薬の整理等でせん妄の改善を図り、その変化で見分けていきます。

③パーキンソン病

メカニズムは類似の病気ですが、発生場所が違うため症状も違いがあります。

ただ、進行時は場所・症状も重なり、鑑別は時に困難になります。

合併時はは「両方がある」と見て治療していきます。

<鑑別等の為の検査>

①長谷川式検査かMMSE検査

これらは認知機能を30点満点で全般的に「スクリーニング」するための検査です。長谷川式だと20点以下で認知症疑いです。

②CT・MRI検査

脳の状態を見ることで、他の器質的な原因の除外などを行っていきます。

③IーMIBG心筋シンチグラフィー

これは特殊な検査ですが、「レビー小型認知症」に特有の所見が出るため、確定診断の助けになります。

(7)レビー小体型認知症の治療

病状は徐々に進行しますが、段階に応じて対応していきます。

治療は主に「症状への治療」と「介護ケア」の2つです。

①症状の治療

主なものは「認知機能障害への治療」「BPSDに対しての治療」「パーキンソニズムに対しての治療」「自律神経障害への治療」の4つです。

1)認知機能障害に対しての治療

抗認知症薬「ドネペジル」が適応になります。

ただし、あくまで「症状を遅らせる」効果で、あくまで個人差があります。

効果がない時は無理して続けず、他の対策を優先します。

2)BPSDに対しての治療

まずは抗認知症薬「ドネペジル」の相性を見ていきます。

改善困難なら、安全な漢方「抑肝散」の効果・相性を見ていきます。

それでも難しい場合は抗精神病薬等を検討しますが「過敏性」あるため、慎重に検討します。

3)パーキンソニズムに対しての治療

少量の抗てんかん薬「ゾニサミド」が有効な場合があります。

無効な場合は、他のパーキンソン病関連の薬も検討していきます。

ただし「抗コリン薬」は認知機能等逆効果なことが多いため、なるべく避けていきます。

4)自律神経障害への治療

便秘に関しては、食事や運動など調整しながら、下剤を検討していきます。

そして頻尿に関しては、抗コリン薬以外の薬の対策を考えていきます。

そして、起立性低血圧がある方もいますので、その薬も検討していきます。

②介護ケア

薬と並んで「介護ケア」が大事です。

<基本の考え「パーソンセンタードケア」>

これは、「個々の患者さんのニーズに沿ってのケアをやっていく」考えです。

本人の尊厳と生活の質を守りつつ、家族・介護者とも協力してケアを続けていきます。

<日本では「介護保険制度」>

日本では介護保険制度を活用し、ケアマネジャーが個々のケアプランを立てます。

そして家族・支援者と協力して各種介護サービスを提供していきます。

時に資源が不足している場合あり、その時は状態を見て次善策を模索していきます。

<主な提供サービス>

「デイサービス」:定期的に通所し、活動を維持しつつ体・脳両面のリハビリ活動等を行います。

「ショートステイ」:短期間宿泊するもので、介護者の負荷軽減にもなります。

「訪問介護」:介護士が家に訪問し、家で介護サービスを提供します。

<レビー小体型認知症のケアの注意点>

まず「転倒・骨折のリスク」が高いことに注意が必要です。

そして「症状の変動に合わせたケア」が必要になります。

また、「幻視の影響」への対応が必要になる事があります。

<介護者も自分を守る>

介護に無理が続くと、介護者が「介護うつ」になる等「共倒れ」のリスクがあります。

そのため介護者も時には休養するなど「持続可能なケア」を目指します。

そのために必要時は「デイサービス」「ショートケア」なども活用し、介護者の負荷軽減も図っていきます。

(8)まとめ

今回は、心療内科・精神科の病気「レビー小体型認知症」について見てきました。

「レビー小体型認知症」はパーキンソン病と類似点の多い認知症で、「幻視」や「状態の変化」などが特徴的です。

「アルツハイマー型(認知症)」との鑑別が大事です。症状等で見分け、必要時精査して診断確定します。

症状は徐々に進行しますが、各症状への改善薬などを使いつつ、介護保険等を活用し「持続可能なケア」を続けます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)