気分変調症
「うつ病未満」が続く不調
「うつ病未満」のうつ状態が長期間続く精神疾患です。
中には、発達障害やパーソナリティ障害等が背景の事もあります。
治療はSSRI等抗うつ薬を検討しつつ、「認知の偏り」にも必要時アプローチします。
もくじ
(1)はじめに:うつ病と似た病気「気分変調症」
今回は、「気分変調症」についてまとめていきたいと思います。よろしくお願いします。
うつ病に似たものとして気分変調症というものがあります。人によっては、うつ病から途中で「気分変調症」に変わったりなどする方もいらっしゃって、ちょっと診断に関しては混乱をするという話も聞くことがあります。
なので、今回はこの「気分変調症」とはどういうものかということについて、症状などについてまとめていきたいと思います。
(2)気分変調症の要点と診断基準、鑑別疾患
この気分変調症ですけれども、大まかにいうとどういうものかというと、「うつ病まではいかない軽めのうつ症状が長く続いているもの」というふうに見ることができます。
例えば、5年前からあまり楽しくない状態が続いているとか、3年前からなかなか集中できない状態が続いているとか、無気力や絶望感を感じる状態がそれこそ10年ぐらい続いているとか、こういったことは例になってきます。
<気分変調症の診断基準DSM5の要点>
①2年以上うつ症状が原則続いている(青年期までだと1年間)
②次から挙げる6つの症状のうち2つ以上ある
- 食欲の減退もしくは過食
- 不眠もしくは過眠
- 気力の減退もしくは疲労感
- 自尊心の低下
- 集中力の低下
- 絶望感
<代表的な鑑別疾患>
●うつ病
これは症状の強さ、基本的にはうつ病ほどは強くないというのが原則にはなってきます。
●躁うつ病・気分循環症
この違いはいわゆる躁だったり、軽躁的な気分が上がりすぎるということがないというところで見分けていきます。
●発達障害
これは背景に合併していることがあります。
(3)気分変調症の治療:薬物療法と精神療法
治療をどうするかということですけれども、基本うつ病に準じるんですけれども、長く続いていますので、休養というところはちょっと外れてきます。残りの2つ、薬物療法と精神療法というところになってきます。
①薬物療法
これは以前はあまり薬を使わないことが多かったんですけど、最近ですと抗うつ薬SSRIを使うことが第1選択というふうにはされています。
正直、臨床的にはストレスの反応が強い適応障害の方よりも、経過が続いている方ですと効果は実感しやすいというのは臨床的印象ですけれどもあります。
実際使うかどうかに関しては、生活の困難度合い、薬の効果や副作用、こういったところを見極めていって続けていくかどうかを判断していくことになるかと思います。
②精神療法
この慢性的なうつ状態が、ストレスのたまりやすさや考えのクセなどで出ているとしたら、そこに対する対策・別の見方を探したい。そういった認知行動療法的なことをすることがあります。
そして、環境のストレスによる影響が大きければ、環境の調整をするということもあると思います。
もし背景に発達障害があってうつ症状が続いているとあれば、それは発達障害の診断であったり、対策をとっていくということになるかと思います。
(4)まとめ
今回、気分変調症についてまとめていきました。
気分変調症は、大まかにはうつ病未満のうつ症状が2年以上長く続くものになります。
抗うつ薬は有効なことがありまして、一度は検討するというのが選択肢になると思います。
精神療法としては、ストレス・考え方・環境を調整しながら、もし背景に発達障害があれば、その対応を優先するということになります。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)