不安障害(総論)

強い不安が出る様々な不調

強い不安・恐怖が様々な形で出る精神疾患で、社会不安障害・全般性不安障害が代表的です。

 

パニック障害、強迫性障害も不安障害の中に含まれます。

 

治療はSSRI等抗うつ薬を柱に、不安への認知行動療法を並行します。

 

動画:不安障害(総論)

もくじ

 
  1. (1)はじめに:不安障害(不安症)
  2. (2)総論①不安障害とは
  3. (3)総論②主な不安障害の例
  4. (4)総論③不安障害と似た病気
  5. (5)総論④不安障害のメカニズム
  6. (6)総論⑤不安障害の治療(抗うつ薬SSRI+系統的脱感作法)
  7. (7)各論①社会不安障害
  8. (8)各論②全般性不安障害
  9. (9)各論③パニック障害
  10. (10)各論④強迫性障害
  11. (11)まとめ
  12.  

(1)はじめに:不安障害(不安症)

心療内科、精神科の病気。今回は不安障害(不安症)についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

不安障害(不安症)は、主に不安が強くなる心の不調になります。

人によっては人が怖くなることもありますし、人によっては閉所・閉じた場所が怖くなるということもありますし、また人によってはいろいろなもの、全部が怖いとなることもあります。

不安障害は細かく分けるといろいろ細かく分類されるんですけれども、メカニズムや治療法に関してはだいたい共通しているところが多いものになります。

なので、今回は不安障害に関して全般的に見ていきたいと思います。

話の流れとしては、まずは総論・全般的なメカニズムや治療の話をしていきます。その上で、後半は各論・代表的な各種の不安障害4つに対して見ていきます。

(2)総論①不安障害とは

まず総論になります。不安障害は不安が強くなりすぎる不調です。

不安に関しては、人は緊張している場面とか、いわゆるピンチの場面になりますと、緊張や不安から交感神経の作用を高めて対応するというところがあります。

ある種自然な反応・正常な反応ではあるんです。

ただし、これが行き過ぎてしまって強くなってしまうと逆効果になりますし、本来はリラックスする場面でもある種「誤作動」を起こして不安や緊張が強くなってしまう。

こうなってしまうと生活に影響が出てしまいますので、これが不安障害ということになります。

(3)総論②主な不安障害の例

主な不安障害の例を4つ見ていきます。

1)社会不安障害

これは人や対人的な場面に対しての強い不安になります。

2)パニック障害

主に閉じた場所(閉所)で起こる急性の不安になります。

3)強迫性障害

強い不安から強迫観念が出てきて、それに伴って確認を繰り返してしまうというものになります。

4)全般性不安障害

対人的な場面以外でも、いろいろな場面が不安になってしまうというものになります。

(4)総論③不安障害と似た病気

参考にメカニズムが似たものというのを4つ挙げていきます。

1)限局性恐怖症

これはあるもの・特定のものに対しての恐怖・不安ということになります。

2)分離不安症

これはお子さんで多いんですけれども、人と離れた時に強く出る不安になります。

3)場面寡黙症

強い不安が出ることを背景に、ある場面でだけ黙ってしまうというものであります。

4)醜形恐怖

自分の姿が醜いんじゃないかという強い不安ということになってきます。

(5)総論④不安障害のメカニズム

実際、これは要素はかなり複合・絡み合っていて不明な点も多くあります。

性格的なところもありましょうし、出来事があってからということもあります。後はうつに合併してということもあります。

ただ、共通点としてあるのが、セロトニン・脳のセロトニンの不足の関与ということは示唆されるところが少なからずあります。

なのでうつ病と合併することも多いですし、治療に関してもうつ病と共通点が多いものになります。

(6)総論⑤不安障害の治療(抗うつ薬SSRI+系統的脱感作法)

不安障害の治療の2つの土台ですけれども、1つ目は抗うつ薬SSRI、2つ目が系統的脱感作法になります。

1)抗うつ薬SSRI

1つ目の抗うつ薬SSRIですけれども、脳のセロトニンを増やす薬。それによってうつのほか、不安も改善するということも見込めます。

効くまでが2から4週、徐々に改善を見込むものになります。

病名によって、あとはその人の個性によって効果や適量・適した量に関してはかなり差があるものになります。

2)系統的脱感作法

これは不安なことに回避せず、むしろ触れて慣らしていくという治療法になってきます。

これはただ慣らせばいいという話じゃなくて、いきなり強くやり過ぎると逆効果なってしまいます。

なのでコツとしては「無理のない強さで」、かつ「徐々に」負荷を増やして慣らすことによって結果、次第に不安を減らしていくものになります。

体調の管理であったり、リラックスの方法を一緒に行うなど、周辺の対策を組み合わせて行うことがうまくいくコツになってきます。

(7)各論①社会不安障害

これは人であったり、対人場面に対して強い不安が出るものになります。

この場面を回避してしまうと、どんどん活動できる範囲が狭まってしまって、人によっては「引きこもり」になってしまうリスクもありますので注意が必要です。

治療としては、まずはSSRI抗うつ薬で不安の土台を減らしていきながら、それを土台にして対人的な場面に対して徐々にならす「系統的脱感作法」を並行していきます。

(8)各論②全般性不安障害

これは対人場面に限らず、さまざまな物事へ強い不安が出てくるものになります。

これも苦手な場面を回避してしまうと、できることはどんどん減ってしまって生活に影響が出ます。

治療法としては、まず土台としてSSRIで不安のベースを減らした上で、苦手なことへの「系統的脱感作法」を並行して行っていきます。

(9)各論③パニック障害

3つ目のパニック障害です。これは急な不安発作、あと「また起こるんじゃないか」という予期不安というのが特徴的です。

発作は主に閉所(閉じた場面)で起きやすいです。

なので電車など閉じた場面で起きやすいんですけれども、人によっては家で夜に起こる人というのも少なくないです。

治療としては、抗うつ薬SSRIで、まず発作を抑えて予期不安も減らしていく。

その上で残った不安に対して脱感作法・系統的脱感作法を徐々に行って、もう1段階改善を図っていきます。

(10)各論④強迫性障害

分かっていても止められない強迫観念・考え事と、その自己対処としての確認行為。この2つが特徴的な不安障害になります。

生活への影響は強くて、一種の「確認依存」という背景もあります。

そして、人を巻き込んでしまう「巻き込み型」の時に特に注意が必要になります。

治療としては、SSRIで土台を作ってあとは脱感作の1種であります、確認をしない練習「曝露反応妨害法」を並行していきます。

ただ、なかなか薬が多い量・多量必要なことも多いですし、治療はなかなか苦労することが多いものになります。

(11)まとめ

今回は「不安障害」について見てまいりました。

不安障害は不安が強くなりすぎたり、本来違う場面で誤作動的に出てしまう不調でありまして、生活への影響も少なくありません。

不安障害に関しては、うつ病と似たメカニズムが多くあります。そして細かく分類されるんですけども、メカニズムは共通しているところが多くあります。

対策の基本は、抗うつ薬SSRIと「系統的脱感作法」徐々に慣らしていくことをセットにやります。

脱感作法に関しては、一気にやってしまうと逆効果になるので、徐々に慣らしていきまして、段階的に増やしていくということをしていきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)