統合失調症

幻聴・妄想等が特徴の脳の不調

統合失調症は、脳が敏感になる事で、幻聴や妄想等の陽性症状が目立つ脳の不調です。

 

症状改善と再燃予防のために、脳のドーパミン等を抑える「抗精神病薬」を継続します。

 

社会復帰を目標とする中で、段階的なリハビリ等の「心理社会的治療」もまた重要です。

 

動画:統合失調症

もくじ

 
  1. (1)はじめに:「統合失調症」
  2. (2)統合失調症とは
  3. (3)統合失調症の症状
  4. (4)統合失調症の原因・機序
  5. (5)「病期」病気の時期
  6. (6)統合失調症の鑑別疾患
  7. (7)統合失調症の治療
  8. (8)各時期の治療と対策
  9. (9)実際の対処などのコツ
  10. (10)まとめ
  11.  

(1)はじめに:「統合失調症」

今回は「統合失調症」についてです。

統合失調症は約100人に1人がなる、まれではない病気です。

そして治療の中で「お薬の治療」の他に「心理教育」、病気や症状を知り自己対処する事が非常に大事とされます。

ここでは、統合失調症についてまとめています。

当事者の方は、自分の病気を知っている心理教育のツールとして、ご家族や知人の方は、その方が何を苦しんでいて「どう手を差し伸べるか」知るツールとして、一般の方は統合失調症の方とどう向き合うかを知るツールとして、このページを活用していただけたらと思います。

では始めていきましょう。

(2)統合失調症とは

これは「統合」「失調症」と言いまして、統合は「まとめる」、失調は「バランスを崩す」、「何かまとめることの不調の病気」という意味です。

これは脳の病気でして、主には幻聴・妄想・考えがまとまらないことが目立ちます。

約1%の方がなる病気です。15歳から35歳発症が多い慢性疾患です。男女差少なく、遺伝に関しては一部ある要素の一つとされます。

(3)統合失調症の症状

大きく言うと3つ、陽性症状・陰性症状・認知機能障害です。

<陽性症状>

陽性症状は「本来ないものがある」症状、脳の敏感さ・脳のドーパミンの過剰過剰が背景です。

特に急性期に目立ち、薬は効きやすいです。主な陽性症状は、幻聴・妄想・興奮や過敏。

【幻聴】

幻聴は「ないはずの声」が聞こえること。例えば「自分の考えていることが声に出てくる」ような「自分の悪口を言う幻聴」。

中には「命令をするというタイプの幻聴」の方がいてこれは注意が必要です。

【妄想】

妄想は「独特な考えにとりつかれる」こと。独特かつ「訂正不能」です。

例えば「悪い組織に狙われている」「周りの人がバカにしている」等の被害妄想、「自分は神の生まれ変わりだ」等の誇大妄想などがあります。

【興奮・過敏】

興奮や過敏、これはまさにドーパミン過剰由来です。

例はイライラや大声・物を壊す等。特に暴力には注意が必要です。

【その他の陽性症状】

他の陽性症状は、「連合弛緩」言葉や行動がまとまらなくなる。

「作為体験」何かにさせられている体験。

「考想伝播」自分の考えが相手に知れ渡る感覚。

「昏迷」これは強い緊張から逆に固まる状態。

<陰性症状>

これは意欲など「本来あるものがなくなる」症状。

改善後に目立ち持続、生活へ影響します。薬の効果は限定的で、リハビリで対策します。

代表的な症状としては、まずは意欲低下(アパシー)何もやる気がせず疲れ、日常のセルフケアが困難になります。

続いて感情平板化、感情がなかなか動かない、表情や言葉の抑揚が減り、反応も遅くなります。

次は社会的ひきこもり(自閉)、人や外を避けて結果孤立、会話時の言葉も減ります。

<認知機能障害>

記憶や判断など、脳の考える機能の障害です。これも改善後に目立ち持続、社会生活に影響します。これも薬の効果は限られ、リハビリで対策します。

代表例1つ目は記憶力の低下、新しいことを覚えにくく忘れやすくなります。

2つ目は注意力の低下、集中が続かず気がそれます。

3つ目が実行機能の低下、段取りや優先順位・効率的な行動が難しくなります。

(4)統合失調症の原因・機序

基本的にはまだ不明な点が多いですが、3つ代表的な仮説があります。1つ目がドーパミン仮説、2つ目が神経発達障害仮説、3つ目は脆弱性ストレスモデル。

<ドーパミン仮説>

ドーパミン仮説は脳のドーパミンの過剰で様々な症状が出る考えです。

利点としては陽性症状・薬の効果の説明には非常に明快です。

ただ、弱点は認知機能障害等の説明等、一部難しさがあります。

<神経発達障害仮説>

神経発達障害仮説は、は神経の発達段階から微妙な異常がある説です。

認知機能障害の説明としては明快ですが、まだ不明点が多いのも確かです。

<脆弱性ストレスモデル>

脆弱性ストレスモデルは、元来ストレスへの敏感さがあり、それがストレスで悪化するという話です。

これは改善後のリハビリ等にとって大事な考えですが、原因の説明の面では弱点があります。

今のところは、この3つを組み合わせるのが現実的です。

(5)「病期」病気の時期

前駆期→急性期→休養期→回復期、この4段階です。

<前駆期>

「前駆期」これは前触れの段階です。不安・過敏などあまり特異的でない症状が主です。

この時は、急性期にいかに防ぐかが目標です。

<急性期>

次に急性期、この時は幻聴や妄想など陽性症状が強く目立ちます。過敏や興奮もあります。陰性症状や認知機能障害は目立ちません。

<休息期>

休息期では陽性症状は改善、ただ逆に陰性症状が目立ち意欲低下、日常生活の困難が出ます。

<回復期>

回復期には陰性症状も徐々に回復、ただし、認知機能障害はのこり、社会生活上一部困難が残ります。

(6)統合失調症の鑑別疾患

①躁うつ病(双極性障害)

妄想などが躁状態などで出ることがありますが、「気分に一致しているか」等で見分けます。

②自閉症スペクトラム

強いストレス時に統合失調症と似た混乱が出る事があります。

③器質性疾患

甲状腺の異常など、体の原因の場合があります。

(7)統合失調症の治療

大きくは「薬物療法」「心理社会的治療」の2本柱です。

<薬物療法>

主にはドーパミンなどを抑える抗精神病薬を使います。

症状改善のほか再燃予防も見込み、中断時の再燃リスク高く、継続が必要です。

分類としては、大きくは3つ。

  • ①ドーパミンを主に抑えるもの(以前の定型薬、部分作動薬アリピプラゾール等)
  • ②SDA(ドーパミンとセロトニンを抑える、リスペリドン等)
  • ③MARTA(様々な受容体を調整、オランザピン等)

相性などの違いもあるため、合う薬を探しつつ、副作用の点から、なるべく単剤、少量が望ましいです。

<心理社会的治療:薬以外の心理面や社会的な面での治療>

目的はまず薬でカバーをしきれない症状への対策、陰性症状や認知機能障害の対策です。

あと、自分の症状や病状を知り、自発的に治療に取り組んでいくというところ。

3つ目は段階的には社会復帰、社会参加につなげていくこと。

具体的には「心理教育」「生活支援」「日中活動・就労支援」の3つ。

①心理教育

自分の病気・症状・治療を学ぶことで自発的に治療をしつつ、症状等自己管理を目指します。

その中で、「家族心理教育」も本人へのケアの改善に有効とされます。

②生活支援

陰性症状などが強い時に日常生活の困難が強くなることがあります。

その時に生活面をサポートし、生活改善、再燃予防を図ります。

看護師(訪問看護)ヘルパーの定期訪問があります。

③日中活動・就労支援

陰性症状や認知機能障害は、定期的な日中活動がリハビリとして有効です。

デイケア・作業所などに定期的に通いリハビリします。

その中で仕事を目指す場合は2年間集中して行う「就労移行支援」が選択肢です。

(8)各時期の治療と対策

①前駆期

一番に「急性期への移行を防ぐ」が目標です。

初発の時は無理せずやっていって経過を見ていく(薬は医師と相談)

再燃の前駆期の時は、まずしっかり休養しながら必要に応じて薬を調整します。

②急性期

脳の興奮と症状を抑えるのが最優先→薬の治療が最優先。

その中でなるべく頭を休ませる休養に専念します。

中には、外来が困難で入院を要する場合があります。

③休息期

再燃を防ぎつつも、ゆっくりと意欲などの改善を図ります。

薬は続けながらも、無理のない範囲で徐々に活動を増やします。

生活困難が強い場合は、訪問看護なども検討します。

④回復期

再燃を防ぎながら段階的な社会参加を目指します。

通所などでリハビリし、「就労移行支援」も検討します。

薬は続けつつ、ストレス対策を並行します。

(9)実際の対処などのコツ

①幻聴への対処

要点は「聞こえても巻き込まれない」

まず聞こえたら幻聴か幻聴じゃないかを見極め、幻聴なら「距離を取って受け流す」。

②妄想への対処

妄想は「強い極端な考え」。

まずは一歩引いて客観的に見て、その上で「何か別の見方はないか」探ります。

③再燃を防ぐ

薬の継続を前提に「前触れ」に気付くことが大事。

自分にとっての前触れを把握して、それが出たら早め休養や薬の相談をして再燃を防ぎます。

④副作用の対策

安定した後も薬は必要ですが副作用が気になる事多く、一方で中止すると、強い再燃リスクが危険です。

なので医師とよく相談しつつ「薬を続けやすいバランス」を模索します。

⑤受け入れと抑うつ

統合失調症の受け入れの負担は大きく、その中でうつになることがあります。

「うつ」は直面してこそ生じるため、まずそこの自分を認めた上で、焦らず、徐々に受け入れと気持ちの整理を進めます。

⑥ご家族の対応

強い感情をぶつける「High-EE」は避け、穏やかな対応をお願いします。

背景にご家族の統合失調症の受け入れの葛藤がしばしばあり、徐々に受け入れが大事です。

病気の勉強や症状の対策・関わり方を勉強し、「相談者」になること、そして状況によっては同じ悩みを持った方同士の「家族会」も選択肢です。

(10)まとめ

今回は「統合失調症」についてまとめてきました。

統合失調症は約100人に一人がなる脳の不調かつ慢性疾患です。再燃予防をしながら生活していくことが大事になります。

症状は、幻聴や妄想などの陽性症状以外に陰性症状、認知機能障害がありまして、幅広い対策が必要になります。

治療の2本柱は、薬物療法と心理社会的治療になります。

再燃を防ぎながら、リハビリ・対処・受け入れなどを行っていきまして、段階的な社会参加を目指していきます。

ご注意

幻覚・妄想が目立つ、統合失調症の「急性期」の状態や、自分に統合失調症があるという「病識」を欠いた状態になったときは、当院も含め、入院治療ができない診療所(メンタルクリニック)での治療は困難です。そうした病状の場合は、入院も含めて集中的な対応が可能な「精神科病院」出の治療をお勧めいたします。

記事内容に関しては「医学知識」としてご参考にしていただけますと幸いです。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)