心身症
ストレスでの身体疾患
心身症は、ストレスが発症・悪化に大きく関わる身体疾患の状態です。
自律神経失調症は身体疾患の有無で区別しますが、区別困難なことも多いです。
もくじ
(1)はじめに:心身症
心療内科、精神科の病気。今回は「心身症」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
「心のストレスが体にくる」という話はよくありまして、その文脈の中で「心身症」という言葉も出てきます。
一方で、似た言葉がいくつかあったり、本来と違う意味で「心身症」という言葉が使われる場合もあります。
今回はこの「心身症」について全般的に見ていきます。
(2)心身症とは?
質問として「心身症とは心の不調が体に出ることですね?」という話があります。
これは大体は合ってるんだけども、厳密な話をするとやや違うところがあります。
<心身症の定義(心身症学会)>
「発症や経過に心理社会的な因子が密接にかかわっていること。
そして身体の器質的もしくは機能的な障害がある状態」、との定義です。
この定義上は、「(神経症やうつ病など)精神障害に伴う身体症状」除外するとされます。
まずストレスがあって、それによって身体の病気が何か出てきてしまっている。この状態が心身症になります。
<心身症で出る身体疾患>
これはストレスで悪化するもの一般が言えます。
逆流性食道炎であったり、胃潰瘍であったり、アトピー性皮膚炎・じんましんなどもあったりします。
(3)似た疾患・言葉とその鑑別
「心身症」似た言葉がいくつかあります。
①心気症
心気症は、体の症状や病気の不安にとらわれるが、何か該当する身体疾患は実際にはない状態です。
しばしば背景にはうつ病や適応障害、不安障害などがあります。
②身体表現性障害
これは一つ以上の体の症状の自覚が続いている状態です。
そしてそれを考えすぎたり、強く不安になったりします。
しかし検査などしても特に異常はないというものになります。
③自律神経失調症
これは、体の「自律神経」交感神経・副交感神経のバランスを崩した状態です。
その結果狭い意味の身体疾患はないが、様々な体の症状が出る状態です。
これはしばしばストレスやうつ病などが関与しています。
<これらと心身症の共通点及び違い>
共通点としてはストレスが強く関与しているというところ。
違いは、実際に「身体疾患」身体の病気があるかないかです。
<典型的な心身症の例>
まずはストレスによる悪化する逆流性食道炎。
2つ目は、ストレスによる悪化するアトピー性皮膚炎。
あとはストレスの時に発生するじんましん。
これらはストレスがあって、身体疾患が明確に発生しているため「心身症」です。
<判断が割れる場合の例>
①過敏性腸症候群
これはストレスによってのお腹の不調です。
あくまでそれはストレスの反応による症状だから、身体表現性障害か自律神経失調症ととらえる考え方があります。
一方で、これは「機能的な身体疾患」だから「心身症」だという捉える見方もあります。
②ストレスで悪化する慢性疼痛
確かに慢性疼痛を身体疾患と捉えれば「心身症」になります。
一方、疼痛は原因の不明確な身体症状の一つとして捉え、自律神経失調症とみる方法もあり得ます。
③ストレスの時に目立つ動悸
「動悸」は、パニック障害等精神疾患に伴う症状の場合も多いです。
一方で動悸を「不整脈の一つ」ととらえれば「心身症」と解釈される場合もあります。。
このように、実際には結構重なる部分や、どっちか切り分けにくい部分は少なからずあります。
(4)心身症の診断
基本的には臨床的な診断になります。
<心身症診断の3段階>
まずは「体の病気を確認する」こと。
そして標準的な治療が何か「うまくいかない」難航するということ。
その上で「ストレスや精神不調と連動している」ということ。
この3段階で見ると臨床的に診断しやすいかと思います。
<例:逆流性食道炎(心身症)>
まずは胸焼けがあって、胃カメラで逆流性食道炎の所見があってその確定診断になります。
一方で、内科の薬(胃薬)を使っても症状が良くならない。
よく聞いてみると、ストレスが時に胸焼けが強く悪化するなど、ストレスとの強い連動が確認されました。
これらの3つを合わせることで、これは「心身症」との臨床的な診断になります。
(5)心身症の治療
「メンタルの対策を併せて行う」というのがポイントです。
「心身症」治療の基本は、まず「身体疾患の治療」はしたうえで、そこに「メンタルの対策」を並行します。
①身体疾患の治療
必要な身体疾患の治療は、先程の逆流性食道炎への胃薬など、標準的なものがあります。
ただし、効果はやっぱりストレスが絡むため、本来と比べると限定的になりがちです。
なので、メンタル面の対策はやっぱり並行してやっていきましょうということになります。
②メンタル対策
これは背景の精神的な対策一般をすることになります。
<実際に行う事>
基本的にはいわゆる「うつ圏」うつ病・適応障害の治療とかなりかぶるところが大きいです。
具体的に見ていきますと、「薬物療法」「環境調整」、あとはいわゆる「ストレスマネジメント」になります。
<対策①薬物療法>
具体的には、抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬などが候補になってきます。
うつ病など背景の精神疾患が実際問題としてあった場合は、その標準治療が第一選択です。
より「ストレス反応」的な要素が強い場合は、薬は補助的に使う事になります。
<対策②環境調整>
これは、ストレスの中でも「外的なストレス」外側からのストレスが大きい場合には特に有効です。
職場・家・プライベートなグループなど、ストレス実感が大きい場に対し適宜介入を検討します。
そして中には休職しての休養も、症状が重い時は選択肢の1つです。
<対策③ストレスマネジメント>
これはストレスをためやすい等「内的(内側)のストレス」が大きい時に特に有効です。
基本は、「ストレスの発散」や「疲労の回復」の方法を整理し増やすこと。
その上で、もし考え方・対人面のくせが影響する場合は、その振り返りと調整をします。
(6)まとめ
今回は、心療内科・精神科の病気「心身症」について見てきました。
心身症とは、ストレスを背景に発症・悪化する身体疾患で、逆流性食道炎や蕁麻疹などが典型的です。
身体疾患の有無で、心身症や自律神経失調症などと区別されますが、実際には見分けにくい場合も多いです。
治療は身体疾患の治療とメンタル対策を並行します。メンタル対策は基本「うつ」の治療に準じます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)