身体表現性障害
うつ等の不調が体の症状で出る
身体表現性障害は、うつなどの不調が「体の症状」で出て、それに囚われる精神疾患です。
いわゆる「仮面うつ病」や「自律神経失調症」と似た面が多い病気になります。
治療としては、その体の不調がうつ病等から来ていることを認識し、その治療を行います。
もくじ
(1)はじめに:「身体表現性障害」
今回は、「身体表現性障害」についてまとめていきたいと思います。よろしくお願いします。
体の不調があっても、検査では異常がない。こういった状態を繰り返す方というのは、実際けっこう少なくありません。
そして、いろいろな内科などを訪れて、検査で異常がないことを繰り返した上で、心療内科・メンタルはどうですかと勧められて、そこで「身体表現性障害」という診断をされることがあります。
これはどういうものかというところ。今回はこの「身体表現性障害」についてまとめていきたいと思います。
(2)身体表現性障害の概略と診断基準
<身体表現性障害とは?>
まず、この身体表現性障害は大まかにまとめていきますと、まず1つ目として体の症状が長期間続くんだけども、検査では特に異常がないというものになります。
2つ目としては、体の不調への強い不安があって、考えすぎなどとらわれることが続くというのが特徴です。
3つ目は多くはストレスやうつが関与するんですけれども、精神的な面の原因には、ご自身では目が行きにくいことが多い。この3つが特徴になってきます
<身体表現性障害の診断基準(DSM-5)>
では、診断基準を今度見ていきます。DSM-5では、身体症状症という言い方にもなっています。
まずAとしては、一つ以上の苦痛や混乱を起こす体の症状がある。それはめまいであったり、おなかの不調であったりしますけれども。
Bとしてはそれに対して・症状に対して考え過ぎる・強い不安・あと病院を繰り返し訪れるなど「過度に努力や時間を使ってしまう」、ということのいずれかがあるということがあります。
そして、Cがそのことが主に長期間、主には6か月以上と言われますけれども、続いているということが要件になってきます。
(3)自律神経失調症との関係(共通点と違い)
ここでいわゆる「自律神経失調症」とすごく似ていませんかというご質問を受けることはありまして、実際かなり似ているんですね。
自律神経失調症との関係でいくと、共通点としては非常に多い。ただ、扱う範囲として見ていくと、自律神経失調症よりは身体表現性障害の方がより狭いという特徴があります。
<自律神経失調症との共通点>
まず、「体の症状が長期間続くけれども異常がない」これは共通しています。
2つ目としては、多くはストレスやうつが関与する、うつ病・適応障害が背景にあることが現状大半であるということ。
そのために、治療はうつ病など、背景のこころの治療に準じて行っていく。これも共通しています。
<自律神経失調症との違い>
1つ目としては、身体表現性障害では身体の不調へのとらわれ考え過ぎたり、不安になったりというのが強いというのが条件に入ってきます。自律神経失調だと必ずしも入ってこない。
2つ目としては、身体表現性障害では体に目が行きまして、精神面の原因というのは目が行きにくいというのが定義が入ってきます。これも自律神経失調症だと必ずしもそうではない。
まとめると、自律神経失調症の方が「範囲が」広くて、身体表現性障害はその中で限られた一部というふうな見方になります。
(4)身体表現性障害の治療
治療に関しては、基本的には自律神経失調症に似ています。
まず、身体表現性障害はそれ自体への治療はないというところ。
その上で基本的にはこの身体の症状はメンタル・うつ病や適応障害が背景にあるということをしっかり伝えながら、その背景のうつ病や適応障害の治療をするということになってきます。
<具体的には>
他の症状や病歴・背景というところをお互い振り返っていて、うつ病や適応障害が背景にあることをまず見極めていく。
その上でそういうことがありますよということを説明した上で、もしうつ病という診断が背景にあれば、抗うつ薬の治療などうつ病の治療をしっかりやっていくことになりますし、ストレスの要素が大きい適応障害であれば環境の調整であったり、ストレスのマネジメントであったり、そういうストレス対策を主に行っていくことになります。
(5)まとめ
今回は、「身体表現性障害」について見てきました。
身体表現性障害は、体の不調は続くけれども、検査では異常がないことが続くものになります。
自律神経失調症と非常に似ているんですけれども、身体の症状にとらわれる・精神面に目が行きにくいということが、身体表現性障害の特徴になってきます。
背景にうつ病や適応障害が基本的に想定されまして、そこを見極めた上で背景のうつ病・適応障害の治療を行うのが身体表現性障害の治療にもなってきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)