ストレス反応

ストレスでの過覚醒等

ストレス反応は、強いストレスでの心身の反応、急性ストレス障害などが該当します。

 

対策は基本は自然治癒を図りますが、急性期の混乱と、慢性化に注意が必要です。

 

動画:ストレス反応

もくじ

 
  1. (1)はじめに:ストレス反応
  2. (2)ストレス反応とは?
  3. (3)ストレス反応の症状
  4. (4)ストレス反応の経過
  5. (5)ストレス反応の治療
  6. (6)まとめ
  7.  

(1)はじめに:ストレス反応

心療内科、精神科の病気。今回は「ストレス反応」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

人はストレスがあると緊張と覚醒度を上げて、それに対応していきます。

しかし、ストレスが大きすぎると、ストレス自体のほかに覚醒しすぎる「過覚醒」の影響を受け、「ストレス反応」と言われるさまざまな悪影響が出ます。

今回はこの「ストレス反応」について見ていきます。

(2)ストレス反応とは?

これは「ストレスへの心身の反応」です。

<ストレスによる心身の反応>

ここではストレスに対応するために緊張や覚醒度が上がります。

心拍や呼吸が早まって速く行動・思考をしやすくなります。

結果、その場で対応・反応・行動をしやすくなる面あります。

しかし、反応が強すぎると逆に「ストレス反応」になってしまいます。

<ストレス反応>

ストレス反応は緊張や覚醒が強く上がりすぎてしまった状態。

この状態では、むしろ悪化する影響が強くなります。

そして心身にさまざまな影響や症状が出ます。

<ストレス反応の例>

①心理面の反応

不安やイライラ、緊張などの精神的な症状が出てきます。

②行動面の反応

落ち着かない、怒り・イライラ、衝動的な行動等です。

③身体面の反応

動悸や吐き気・食欲低下、不眠など様々です。

<ストレス反応と似た言葉>

まずは「心因反応」という言葉、2つ目が「急性ストレス障害」、3つ目は「適応障害」になります。

①心因反応

これはほぼ「ストレス反応」と同じ意味の言葉です。

ストレスに反応しての心身の様々な症状一般を指します。

幅広い概念のため、その後より厳密に診断することが基本的には望まれます。

②急性ストレス障害

これは、生命を脅かすような重大なストレスがあったときの反応です。

いわゆる「過覚醒」に伴う幅広い反応が出るのが特徴で、かなり幅の狭い概念です。

時間的には「ストレスがあってから3日以上1カ月以内」です。

③適応障害

先程の「心因反応(ストレス反応)」の中で、急性ストレス障害の条件を満たさないものは、適応障害に分類されます。

「ストレスが生命を脅かすほどではない場合」、「覚醒の症状が基準を満たすほどは幅広くない」場合は、適応障害の診断になります。

<3つの概念をまとめると>

まず一番幅広いところ・全体がストレス反応(心因反応)です。

そのうちの条件を満たす一部が「急性ストレス障害」。

その他の部分が「適応障害」になります。

<ストレス反応が起きやすいリスク>

1つ目は「その人にとっての出来事のストレスの大きさ」

2つ目は「ストレスへの敏感さ」ご本人さんがどのくらい影響を受けやすいかです。

3つ目はストレス時の「状態と余力」その前から不調があると、反応も出やすいです。

(3)ストレス反応の症状

基本的には「落ち込み」と「過覚醒」、この2つになります。

①落ち込み

これは「うつ病に準じた各種のうつ症状」です。

基本的には、ストレスから離れて改善を見込みます。

ただし不眠・不安等で「休めない」と、悪循環のリスクがあります。

②過覚醒

これは覚醒し過ぎることで起こるさまざまな悪影響です。

過覚醒の症状(DSM-5「急性ストレス障害」を参考に)は、まず「侵入症状」。次は「陰性気分・解離症状」、3つ目が「回避症状」、4つ目が「覚醒症状」です。

1)侵入症状

これはいわゆる「フラッシュバック」です。

出来事の記憶のことを時間を空けても鮮明に「まるであったかのように」思い出します。

そして何か関連するようなことをきっかけに、再度思い出すこともあります。

2)陰性気分・解離症状

まず「喜び」「幸福」等の「陽性的な感情」を感じにくくなってしまいます。

次に、自分が自分でないような「離人感」。

そして場面に関して「忘れてしまう」いわゆる「解離性健忘」が出る場合があります。

3)回避症状

まずはストレスの出来事自体に関連した記憶・思考・感情等を回避することがあります。

そして、出来事を思い出させるような「関連すること」も、同様に回避する傾向が出ます。

4)覚醒症状

不眠等の「睡眠障害」、「イライラや混乱した怒り」、「過度の警戒心」、「集中困難」、「過度の驚愕反応」が出現するとされます。

(4)ストレス反応の経過

<基本的には自然軽快>

ストレスから離れて休養することで、徐々に症状の改善を見込んでいきます。

一つ「4週間(1カ月)」というのが一つの基準にはなってきます。

経過中に2つのリスクがあります。まずは「悪化時の混乱」、そして「慢性化」です。

①悪化時の混乱

症状が一番重い時はかなり過覚醒が強くあって「混乱した状態」になることがあります。

特に不眠や不安が強い時にこうした状態になりやすいので注意が必要です。

この時、混乱した結果、自分や他者への「衝動行為」に注意が必要です。

②慢性化

<慢性化について>

自然な回復のプロセスが滞った場合に、期間経過後も症状が続くことがあります。

その場合は、残った症状に対しての治療や対応が必要です。

<慢性化するリスク>

まずは「ストレスが重なってしまう」、大きなストレス後もずっとストレスが重なって休めない時。

2つ目は「休養不十分」。環境もしくは不安等で休めなかったとき。

3つ目が「不眠や強い不安」、これらが休養と改善を妨げる事があります。

慢性化したときの病名は、大きくは、「PTSD」、「うつ病」、「適応障害」の3つです。

1)PTSD

PTSDでは急性ストレス障害同様の「フラッシュバック」などの症状が慢性的に続きます。

症状の要件は厳しく狭く定義されています。

この場合は大学病院等の専門性が高い医療機関での加療が、しばしば求められます。

2)うつ病

ストレスからしばらくしても、各種のうつ状態が続く状態です。

結果DSM-5の「うつ病」の基準を満たした場合です。

この場合は「うつ病」のの標準的な治療(休養・薬物療法・精神療法)を行います。

3)適応障害

不調自体は続く一方、PTSDやうつ病の要件を満たさない状態です。

基本的には6カ月以内で改善するのが要件です。

この場合は、「環境調整」や「ストレスマネジメント」が対策になります。

(5)ストレス反応の治療

基本は「自然治癒を促していく」ことです。

治療の方向性、1つ目は「自然治癒を促して慢性化を防いでいく」こと、2つ目が「急性期のトラブルを防ぐ」こと、3つ目が「慢性化した時の治療」です。

①自然治癒を促し慢性化を防ぐ

<自然治癒を促す>

基本的にはストレスを避けて休養することで、自然と改善してくるのを待ちます。

そして、改善が順調な時は、特に外からの介入は不要です。

ただし、改善が滞った場合は、慢性化を防ぐために介入が必要です。

<介入が必要な場面の例>

まずは「ストレスが続く」時、ストレスを減らす介入が必要です。

続いて「不眠が続く時」、改善を妨げる不眠への対策が必要です。

3つ目が「不安が続き休まらない時」、不安改善を図り休養を促します。

<介入の方法>

まずは「環境の調整」、次は「睡眠薬」3つ目は「抗不安薬」になります。

<受診を要する場面>

まずは休職等の意思による介入が必要な場面。

次に前述の睡眠薬・抗不安薬等の「薬での介入」が必要な場面。

3つ目が「安全性の確保が難しい時」です。

②急性期のトラブルを防ぐ

<急性期のリスク>

急性期はかなり過覚醒が強くて混乱している場合があります。

その結果、混乱した言動によるトラブルにまず注意が必要です。

そして自分に向かった「衝動性」としての自傷などのリスクは注意が必要です。

そして、他者に衝動が向かった場合のトラブルにも注意が必要です。

<急性期の混乱を乗り切る対策>

まずは休養に専念しなるべく安定化を図ります。

それだけで難しければ受診して睡眠薬・抗不安薬を必要時活用しての休養を模索します。

それでも安全の確保が困難な場合、また緊急の場合は、入院を想定し、入院可能な医療機関の相談を検討します。

③慢性化した時の対策

この場合は、慢性化した状態への治療をしていきます。

1)PTSD

まずは落ち着いた環境を作っり「徐々に」改善を図ります。

それでも難しい場合は「大学病院などでの専門治療を検討する」ことが想定されます。

2)うつ病

抗うつ薬の治療・休養・精神療法など、うつ病の標準治療を行います。

3)適応障害

「全般的なストレス対策」、外的なら「環境調整」、内的なら「ストレスマネジメント」をしていきます。

(6)まとめ

今回は心療内科・精神科の病気「ストレス反応」について見てきました。

「ストレス反応」は本来は危機的状況への対応ですが、強すぎる場合は心身に悪影響が出ることがあります。

経過は休養などを通じて自然軽快することが多いですが、「悪化時の混乱」と休養が滞った時の「慢性化」には注意が必要です。

治療の基本は「自然治癒」。「ストレスの持続」や「不眠」から自然治癒が難しい時は、介入をして治癒を促していきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)