全般性不安障害

様々なことが強く不安になる

様々なことに対して強い不安・恐怖が出現する事が続く精神疾患です。

 

パニック障害、強迫性障害など、他の不安障害がしばしば合併します。

 

治療はSSRI等抗うつ薬を柱に、不安への認知行動療法を並行します。

 

動画:全般性不安障害

もくじ

 
  1. (1)はじめに:全般性不安障害
  2. (2)全般性不安障害を考える例
  3. (3)全般性不安障害とは
  4. (4)全般性不安障害の症状と診断基準(DSM-5)
  5. (5)全般性不安障害のメカニズム
  6. (6)全般性不安障害の鑑別疾患と並存症
  7. (7)全般性不安障害の治療
  8. (8)まとめ
  9.  

(1)はじめに:全般性不安障害

心療内科、精神科の病気。今回は全般性不安障害についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

全般性不安障害はその名の通り、「日常のさまざまな場面で不安を感じ続ける」タイプの精神疾患です。

経過が長いことや、うつ病ほど幅広い症状は出ないことから、なかなか受診にはつながりにくい精神疾患とも言われます。

一方で、これは続くことで社会生活に大きな影響が出てくることと、続くとうつ病や他の不安障害を合併することも多いとされまして、適切な治療が必要です。

今回は、この全般性不安障害について全体的に見ていきたいと思います。

(2)全般性不安障害を考える例

まずは、全般性不安障害を考える例ということで見ていきます。

幼少期の頃から不安を感じやすかったんだけども、特に不登校など大きな問題まではならなかったと。

仕事に就いてからも不安が続いた中でミスをすることがあって、それからさまざまなことが不安になるようになったと。

そして頭痛であったり、不眠症を合併しまして、不眠の治療のためにメンタルクリニックを受診したと。

そこでさまざまなことで不安が強くなっていることがわかりまして、全部不安障害の診断になった。そういったことになります。

(3)全般性不安障害とは

これは文字で見ていくと「全般性」「不安」「障害」となりまして、これは「全般性」というのは「全体的に」不安が「障害」過剰に強く感じ過ぎると。

まとめると、「全般的に不安を感じ過ぎる」となります。

<詳しくみると>

少し詳しく見ていきますと、これはさまざまな出来事などが過剰に不安になるというものです。

基本的には、慢性的に長期間続くことが多いとされます。

そして、他の不安障害やうつ病を合併することが多いです。

<全般性不安障害の疫学等>

疫学などということで見ていきますと「生涯発症率」これはアメリカでは約9%と言われます。日本では3%と言われますけども、判明していない方もいると推測されます。

男女比でいくと、女性の方が多く、男女比1:2という統計があります。

そして、男性では、アルコールなどの物質依存との関連が指摘されています。

(4)全般性不安障害の症状と診断基準(DSM-5)

続いて、全般性不安障害の症状と診断基準ということを見ていきます。

<A.さまざまな出来事・活動に対しての過剰な心配・不安が続く>

この中で、「不安の方が過剰な状態がある日」が「それがあまりない日」よりも多い状態が「6カ月以上」続くのが基準です。

<B.心配を抑えられないと感じる>

制御できないと感じるというところです。

Cの具体的症状は6つあります(うち3つ以上6か月以上が基準)

<C1.落ち着きのなさや緊張感>

交感神経が優位でリラックスが難しい。神経の高まりで出る方もいます。

<C2.疲労しやすい・疲れやすい>

これは緊張や気疲れなどがあってある種「頭が疲れる」ことです。

<C3.集中困難>

不安や緊張があって、なかなか集中することができない。ある種頭が真っ白になるという体験をする方もいます。

<C4.易怒性>

怒りやすいというところ、イライラしたり怒りやすくなるというところ。これも交感神経が優位なことから出てきます。

<C5.筋肉の緊張>

交感神経優位になった結果、頭痛や肩こりなど「体の症状」が目立つという方もいます。

<C6.睡眠障害>

これは入眠困難(寝付けない)、中途覚醒(途中で目が覚める)、浅眠(眠りが浅い)あります。

<全般性不安障害のDSM-5の診断基準の要点>

  • A.この6カ月で「過剰な不安がある日」の方が「ない日」よりも多い
  • B.不安・心配を抑えられない実感がある
  • C.C1-6の6つの症状のうち、3つ以上が6か月以上持続
  • D.社会生活などに大きな影響がある
  • E.F.他の原因や、他の精神疾患が原因ではない

(5)全般性不安障害のメカニズム

まだ不明な点は多いとされますが、3つ大事な要素を挙げていきます。

1)素因・素質

元から緊張しやすいというところを持っている方はいらっしゃいます。

2)経験

これは、幼少期などに緊張を強いられる体験をしたという方も、大人になってからそういう体験をしたという方もいます。

3)脳のセロトニンの不足

これはうつ病とメカニズムの共通点が言われまして、治療薬も類似する事の背景になります。

(6)全般性不安障害の鑑別疾患と並存症

<鑑別疾患>

1)正常な不安

これをどう見分けるか。「程度の強さ(過剰な不安)」の点と、あと「社会生活に影響が出ている」点、この2点が主な見分けるポイント。

2)他の原因による不安

甲状腺の不調など体の原因という場合もありますし、カフェインの取り過ぎなど、そういう物質的なものが原因の場合もあります。

3)統合失調症など他の精神疾患

例えば、統合失調症であれば、強い不安の他に幻聴などが出たりすることがあるので、他の症状などを見て見極めていきます。

<併存症(合併症)>

1)うつ病

特に長期経過した時に非常に合併しやすいというところ。治療法も共通点があります。

2)各種の不安障害

これはパニック障害、社会不安障害、強迫性障害など。ベースに全般性不安障害があって、さらに特異的なこれらの不安障害を合併します。

3)アルコール依存症

これは特に男性に関して指摘されることが多いというふうにされます。

(7)全般性不安障害の治療

大まかに言うと「薬物療法」「精神療法」の2つになります。

<薬物療法>

主に候補になるのが「抗うつ薬」「抗不安薬」「漢方薬」この3つになります。

【抗うつ薬】

まず「抗うつ薬」一般的にSSRIという薬になります。これは基本的には第1選択になってきます。

効くまでが2から8週、特に不安障害・全般性不安障害だと時間がかかることは想定されます。

初期にお腹の副作用が出ることがある。あと急に減らし過ぎたりすると「離脱症状」として体が慣れないことでしびれなどが出ることがある。これに注意が必要になります。

効果に関しては、(全般性不安障害の)メカニズムが混じっていることがあることもありまして、個人差は確かにあるところになります。

【抗不安薬】

続いてが抗不安薬になります。その場で効く「不安を取る薬」です。頓服と言って強い不安がある時にだけ使うということはすることがあります。

一方で、定期的に使うことに関しては、これは対症療法に過ぎなかったり、依存があるというところがありますので、慎重に考える必要があります。

一方で、依存がないタイプの抗不安薬「タンドピロン」という薬がありまして、これは効果は弱めではあるんですけども、安全性という意味で選択肢になるかと思われます。

【漢方薬】

次いで漢方薬になります。これは効果は弱くゆっくりなんですけれども、安全性は高くて候補になり得る薬になります。

半夏厚朴湯・抑肝散など、さまざまな種類のものがあります。

粉で飲みにくいという方がいらっしゃいます。一部の薬だと、粒(錠剤)のものもあるので、選択肢になるかと思います。

<精神療法>

続いてが精神療法になります。基本的な方法として3つ挙げると、「認知再構成」「リラックス法」「脱感作法(もしくは曝露療法)」。

【認知再構成】

まず認知再構成ですけども、これは考えのくせに注目して、その考えに対して別の考え、別の視点がないかを探していくものになります。

全般性不安障害に関しては、「もう駄目だ」というような「破局視」、その不安に結び付く考えに注目をしまして、一歩引いて「別の考え(見方)はないか」というところを繰り返し練習するものになります。

【リラックス法】

次いでが「リラックス」になります。緊張の逆「リラックス」をさまざまな方法で模索していくことになります。

呼吸法であったり、力を入れてからリラックスを図るような方法もあります。

また近年ではいわゆるマインドフルネスといって、「状態に注目することからリラックスを図る」という方法も選択肢になります。

【脱感作法(暴露療法)】

続いてが脱感作法(もしくは暴露療法)になります。

不安を「回避」かわしてしまうと、その場は楽だけども克服は難しい。

その対策として不安を回避し過ぎずに、徐々にですけども慣らしていって克服を図るというものになります。

これは症状がなくなるということを目指すというよりは、症状がありながらも「受け入れて共存する」というところを念頭に慣らしていきます。

これは無理して一気に慣らそうとすると逆効果になる危険があるので慎重に、もし受診されている方でしたら相談しながらやっていくのがいいんじゃないかと思います。

(8)まとめ

今回は「全般性不安障害」について見てきました。

「全般不安障害」は様々なことに対しての過剰な不安が慢性的に続くものになります。

人によっては、頭痛や肩こりなど「体の症状」が目立つ方もいらっしゃいます。

他の不安障害やうつ病等を合併することが多くあります。

そして、男性の場合は、自己治療・自分で治療として出てしまう「アルコール依存症」の合併には注意が必要になります。

治療の基本は「SSRI」と言われる抗うつ薬の継続になります。

その上で、考え方やリラックス、脱感作(慣らす)ということに着目した「精神療法」を適宜並行していくことになります。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)