気分循環性障害
「うつ・躁未満」の変動が続く不調
「軽いうつ」と「軽い躁傾向」が交互に変動しつつ続く精神疾患です。
うつ病・躁うつ病・気分変調症と見分けがつきにくい場合あり、慎重に判断します。
治療は必要時「気分安定薬」検討しつつ、「気分の逆をする」等の生活面の対策を並行します。
もくじ
(1)はじめに:うつ病、躁うつ病に似た「気分循環性障害」
今回は、「気分循環性障害」についてまとめていきたいと思います。よろしくお願いします。
うつ病や躁うつ病に似たものとして「気分循環性障害」というものがあります。
これは人によっては途中で診断が変わって躁うつ病から気分循環性障害になったり、その逆だったりという方もいらっしゃって、診断について混乱も出ていることも時としてありますので、今回、この「気分循環性障害」について少しまとめていきたいと思います。
(2)気分循環性障害の概要、例、診断基準の要点、鑑別疾患
この「気分循環性障害」を大まかにまとめて言いますと躁、うつまでいかない「気分の波」が長く続いているものになってきます。
例えば、3年前から気分の波が続いていると、後はトラブルはないんだけれども、気分が上下するということが続いていると、あとは元気な時と落ち込んでいる時の差が大きいと、周りの人から言われるというところが例になるかと思います。
この診断基準の要点
まず2年以上躁や軽躁までいかない気分のあがり、及びうつまでいかない落ち込みのどちらかが基本的には続いているというような基準になってきます。その中で、苦痛や社会的影響が出てくるということが基準の要点になってきます。
鑑別疾患
まず双極性障害・躁うつ病ですけど、これは症状の強さ、その上がり下がりの強さが躁とかうつまでいくかどうか、というところで見分けていきます。
うつ病や気分変調症ということに対しては、そういう上がっていく気分の上がりというのがあるかないかで見きわめていきます。
あと、発達障害は少なくともADHDに関してはかなり合併が多いとも言われています。
(3)気分循環性障害の治療:薬物療法と精神療法
治療としては基本は躁うつ病に準じた治療をしていきますが、薬は相談して検討するということになります。薬物療法と精神療法が主です。
薬物療法
もし使うとしていれば、リチウムなどの気分安定薬を用いるということが基本になってきます。そして、不安や不眠などに補助的に何か薬を使うこともあるかと思います。
薬を使うかどうかこれに関しては、生活の困難の度合い、あと薬の作用や副作用というところ、これをもとに続けて使っていくかを検討していくことになると思います。
精神療法
これもある種躁うつ病に若干準じたところがありますが、まずは気分の逆をするというところ、落ち込んだ時は逆に動くようにして、上がっている時は動きたいけどむしろ休むようにするというのが基本になってきます。
あと、生活リズムがやはりずれたりしやすいので、これをなるべく、やることも含めて一定にするということに重点を置いていく。この2つを土台しながら、ストレスや疲れへの対策を並行してやっていくということになります。
(4)まとめ
今回は、気分循環性障害について見てきました。気分循環性障害は躁うつ病までいかない気分変動が2年以上続くものになってきます。
薬としては、気分安定薬が選択肢になります。生活の困難や作用、副作用から続けるかどうかを検討していきます。
精神療法としては、気分の逆をする・生活リズムを安定する、この2つを柱にしながら、ストレスや疲労の対策を並行してやっていきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)