うつ病は治りますか？

もくじ

　

1. （１）ご質問「うつ病は治りますか？」
2. （２）うつ病の振り返り
3. （３）「治る」とは？定義のための3つの用語（寛解・治癒・完治）
4. （４）うつ病は治るのか？
5. （５）うつ病の「寛解」について
6. （６）うつ病の「治癒」について
7. （７）うつ病の「完治」について
8. （８）まとめ
　

（１）ご質問「うつ病は治りますか？」

今回はご質問にお答えします。今回のご質問は「うつ病は治りますか？」になります。よろしくお願いします。

「うつ病は治りますか？」というご質問を実際、診療中の場面でもよくお聞きすることがあります。

なかなかこれは答え方は難しい部分があるんですけれども、まず要点を言うと「多くは治るんだけれども、再燃・ぶり返しには注意が必要」。こういう答えをしたいと思います。

（２）うつ病の振り返り

まず、うつ病についてまとめていきたいと思います。

うつ病は落ち込みや興味減退など、いわゆるうつ症状が一定期間長く続く脳の不調です。

「適応障害」と比べると、脳の不調の側面が強い。具体的にはセロトニンという脳内物質の不足がよく言われます。

治療としては、薬の治療（抗うつ薬の治療）と休養、精神療法（ストレス対策等）、この3本柱になります。

（３）「治る」とは？定義のための3つの用語（寛解・治癒・完治）

ここでもう一つ「治りますか」ということにおいて、「治る」ということの定義を見ていきます。

「治る」に関しいくつか用語があります。

①寛解

これは抗うつ薬などを使った状態で症状がなくなった状態です。

②治癒

これは薬がない状態でも症状がなく「一定期間」安定が続いている状態です。

「一定期間」の定義は、意見が分かれる点もありますが、2カ月程が一つの目安かと思います。

③完治

これは、先ほどの「治癒（治癒薬なしでも症状がない状態が持続）」に、「ぶり返すリスクも低い」が加わった状態です。

（４）うつ病は治るのか？

では、うつ病ではどのレベルでの治癒が望まれるかを見ていきます。

まず寛解に関してはかなり高い確率で望まれるというところ。

次に治癒に関しても同じく高い確率で望まれるが、ちょっと個人差があります。

一方で完治に関しては、どうしても「再発リスク」は残るため、困難と言わざるを得ません。

（５）うつ病の「寛解」について

少し詳しく見ていきます。

まず寛解（薬を使って、症状がない状態）に関しては、抗うつ薬や休養・休職などの標準治療で、大半は達成可能。

厳しく取ると50％との話もありますが、実際の臨床の印象ではもっと高い印象があります。

もし寛解が難しい場合に関しては、抗うつ薬の変更や補助薬追加など、様々な対策をとっていきます。

ただ、確かに一部、これは1割なのか2割なのか議論はありますけれども、症状が残る方は確かにいます。

なお、休職をして復職をされる方、もしくは転職をされる方は、大半はこの寛解の状態でやっていくことになります。

薬は続けていって再燃を防いだ上で、仕事に復帰等をしていきます。

（６）うつ病の「治癒」について

2つ目のうつ病の「治癒」に関して、慎重に検討する一方で、この状態の達成を目指します。

先程の「寛解」の後、症状が安定しても、しばらくは再燃を防ぐために薬を使っていきます。少なくとも半年は症状がなくても再燃予防のため続けます。

それでも安定が続いて、例えば仕事は以前通り残業しても大丈夫の状態であれば、慎重に抗うつ薬を減らしていき、最終的には0を目指していく。

薬が0になり、それでも数カ月は安定が続いていれば、いわゆる「治癒」の状態だと言えると思われます。

ただ、人によっては確かに薬を続けた方がいい場合もあります。具体的には薬を減らすと再燃を繰り返す方は、再燃を防ぐために薬が必要です。

もう一つ減薬・特に中止の際に再燃する場合、これは再燃予防ために薬が必要かもしれません。

（７）うつ病の「完治」について

3つ目のうつ病の「完治」を見ていきます。

この「完治」の条件を考えていくと、どうしても先ほどの「治癒」プラス「再発リスクが低い」ことが必要になってくる。

ただ、どうしてもうつ病はセロトニンが不足する「脳の不調」ということを考えると、やはり再発リスクは発症前より高いという研究が複数あります。

50%,60%といろいろ説はありますけれども、ちょっとリスクは高いとは言わざるを得ないということです。

なので、やはり「完治しますか？」というと、ちょっと言いにくいところがある。

ただ、なるべく防ぐという方法は確かにあり、ストレスを日ごろから対策をしていったり、うまく受け流したり発散したり等で、リスクを減らす余地はあります。

（８）まとめ

今回、「うつ病は治りますか？」ということでお答えしてまいりました。

うつ病の大半は、薬を使っての「寛解」、さらに最終的な薬をなくしても症状が出ない「治癒」の状態にまでは持ち込めます。

ただし、再燃（再発）のリスクは残りますので、「完治」とまでは言いにくいです。

個人差は確かにあり、人によっては薬を継続する必要があったり、薬を使っても症状が残る場合もあります。

著者：春日雄一郎（精神科医、医療法人社団Heart Station理事長）