うつ病と適応障害は違いますか?
定義違うが中間の事も多い
「うつ病」と「適応障害」は違うのでしょうか?双方とも、うつ症状が出てストレスで悪化するのは共通です。
一方うつ病は「脳の不調」、適応障害は「ストレス反応」であり定義は異なります。
ただし実際は中間の事も多く、脳・ストレスの双方を考慮しつつ状況に合わせ治療していきます。
もくじ
- (1)はじめに:うつ病と適応障害は違いますか?
- (2)うつ病と適応障害の定義
- (3)うつ病と適応障害の共通点と違い
- (4)うつ病と適応障害、分けられない時も多い
- (5)うつ病と適応障害、両者を連続体(スペクトラム)として見る
- (6)うつ病と適応障害、中間の場合の治療の方法論
- (7)まとめ
(1)はじめに:うつ病と適応障害は違いますか?
ご質問にお答えします。今回は「うつ病と適応障害は違いますか?」についてやっていきます。よろしくお願いします。
今回お受けしたご質問は、「うつ病と適応障害は違いますか?」という質問になります。
まず、シンプルな答えをお伝えしますと「定義としては違う。ただし、中間の場合も多い」というふうにお答えします。これについてちょっと見ていきたいと思います。
(2)うつ病と適応障害の定義
まず、うつ病と適応障害の定義を見ていきます。
<うつ病の定義>
うつ病は、うつ状態が2週間以上続くいわゆる「脳の不調」です。
原因としては、脳のセロトニンという物質の不足が言われます。
そのため、抗うつ薬などのお薬、休養、精神療法、この3つで治療していきます。
<適応障害の定義>
適応障害は、ストレスにより悪化するうつ状態です。
なので、ストレスにより悪化していわゆる脳の不調はあまりないことが想定されます。
治療としては、主にはストレス対策が重要になってきます。
(3)うつ病と適応障害の共通点と違い
この両者の共通点と違いを見ていきます。
<うつ病と適応障害の共通点>
まず両者とも、症状はほとんど同じうつ症状が出ます。落ち込み等の狭い意味でうつ症状のほか、体の症状や行動・周りから見ての変化も共通です。
2つ目としては「ストレスにより悪化する」ストレスがかかると、症状が悪くなることは共通しています。
3つ目としては、大まかな治療方針は(何を優先するかはありますが)休養・精神療法・薬物療法、この3つは共通しています。
<うつ病と適応障害の違い>
うつ病と適応障害、まずはメカニズムが違います。うつ病は「脳の不調」、セロトニンが不足する不調ですが、適応障害は「ストレス反応」です。
2つ目が「ストレスが減った時の変化」、うつ病だとストレスが減っても症状が続きますが。適応障害だとすぐに良くなるという違いがあります。
3つ目が「治療の優先順位」になります。うつ病だと薬の治療と休養が優先されますし、適応障害だとストレスの対処など精神療法が優先されます。
<共通点と違いのまとめ>
症状としてはどちらもうつ症状が出てストレスで悪化します。
メカニズムはうつ病は脳の不調、適応障害はストレス反応。
ストレスが減った時にうつ病は症状が続きますが、適応障害は症状が改善します。
治療としては共通ではありますが、うつ病は薬の治療と休養が大事、適応障害はストレスの対策が大事です。
(4)うつ病と適応障害、分けられない時も多い
今、この2つを分けて考えてきましたが、実際はこのうつ病・適応障害、クリアに分けられないことが多くあります。また、移行する場合もあります。その例を見ていきます。
<分けにくい場合の例>
例えば休日に一見よくなるんだけれども、仕事のことを思い出して不調になる場合、これはどっちかという話。
あとは休日不安などは楽になるんだけれども、だるさや興味がないということは残ると言う場合。
後は治療という点では適応障害と言われたけれども、抗うつ薬を飲んでいる場合。
<移行する場合の例>
適応障害からうつ病に移る場合ですと、元は仕事の時だけのうつ症状だったのが、だんだん休日もだるさや落ち込みは続くようになってきた場合。
逆にうつ病から適応障害の移行としては、うつ病の治療をして、普段のうつ症状は改善したが、ストレスが溜まった時のうつ症状だけは残る場合もあります。
(5)うつ病と適応障害、両者を連続体(スペクトラム)として見る
これをどう考えるかというところで、一つの私の価値観なんですけれども、見方としてはよくこのスペクトラム(連続体)的な話。
よく発達障害でスペクトラム、「全くない方」から「非常に強い方」まで段階があるという話をしますが、「うつ病」と「適応障害」でも似た面があるのが臨床的な実感です。
片方では「純粋な適応障害」ストレスを取ると、すごく良くなる方がいらっしゃる。
もう一方で「純粋なうつ病」ストレスを取っても全然変わらず、薬と休養をしっかり行う必要がある方がいます。
ただ多くの方はこの中間にいます。中間のなかで、うつ病寄りの方、適応障害寄りの方、両方いるととらえています。
(6)うつ病と適応障害、中間の場合の治療の方法論
「純粋な適応障害だ」ともうストレスの対策が全て、「純粋なうつ病」だと薬と休養がほぼ全てになります。
一方で、中間の方だと両方の要素がありますので、先程のストレス対策・薬・休養。この3つをその人ごとにバランスを調整しつつやっていく事になります。
うつ病寄りの方だと薬の治療を優先しますし、適応障害よりの方だとよりストレス対策を優先します。
適応障害でもちょっとうつ病の要素があったらその治療もしますし、うつ病でもストレスの要素があれば、その治療を合わせて行ないます。
そういう風に、もう「全か無か」「適応障害(か)うつ病か」というよりは、「中間でどの要素が強いか」の点での治療の調整を、臨床ではよく行います。
(7)まとめ
今回は「うつ病と適応障害は違いますか?」を見ていきました。
うつ病と適応障害、メカニズムなどで見ていきますと違うという定義です。
ただ、実際にはこれをクリアに分けられないことは多くて中間を取ることが臨床場面では多いです。
そして、治療としては特に中間の場合ですと、うつ病・適応障害、両方の要素があることをふまえ、その人に合わせた治療をバランスよく重み付けをして組み合わせていきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)