自閉症スペクトラム(ASD)の顔つき・表情の特徴3つ

ASD特性が顔つき・表情にも

ASD(自閉症スペクトラム)は「社会性の障害」「こだわり」が特徴の発達障害です。

 

この2つの特徴が、顔つき・表情にも出現し、交流等に影響します。

 

動画:自閉症スペクトラム(ASD)の顔つき・表情の特徴3つ

もくじ

 
  1. (1)はじめに
  2. (2)顔つき・表情は対人交流の窓口
  3. (3)自閉症スペクトラム(ASD)の顔つき・表情の特徴3つ
  4. ①表情が乏しい
  5. ②目があわない
  6. ③場にそぐわない表情
  7. (4)もし周りの人にこの特徴が強いとき
  8. (5)もし自分にこの特性が強いとき
  9. (6)まとめ
  10.  

(1)はじめに

ASDセルフチェック。今回は「自閉症スペクトラム(ASD)の顔つき・表情の特徴3つ」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

「社会性の障害」「こだわり」、この2つが特徴のASD(自閉症スペクトラム)。

この中で、特に「社会性」が反映される顔つきや表情において、ASDで出る特徴があります。

一方、これは「本人の改善のため」、及び「周りとの相互理解のため」の情報です。

そのため、一部であるような「差別」や「揶揄」のツールとしてはいけないものです。

今回は、「ASD(自閉症スペクトラム)の顔つき・表情の特徴3つ」を見ていきたいと思います。

(2)顔つき・表情は対人交流の窓口

「交流の苦手さが表情などにも」出ます。

<ASD(自閉症スペクトラム)とは>

ASDは、「社会性の障害」と「こだわり」の2つが特徴の生まれながらの発達障害です。

幼少期で発見されることが多いですが、成人後、不適応などで見つかる場合もあります。

「顔つき」や「表情」など、外への表出にも特徴が出ることがあります。

<ASDの2つの特性>

①社会性の障害

これは他者の感情などを読み取ること及び自分で感情などを表現する事の苦手さが目立つ特性です。

②こだわりの障害

これは一つのことにこだわり「切り替えることが困難」な特性。

<社会性の障害の顔つき・表情への影響>

まず「社会性の障害」で「相手やその場が求める表情」を直感的には把握しにくいことがあります。

そして、自分の表情や感情の「観察(モニタリング)」の苦手さがあります。

3つ目が「自分の感情と表情を連動させにくい」ことが指摘されます。

<こだわりの顔つき・表情への影響>

まず自分の本心とは違う「演技」がしにくいことがあります。

そしてリアルタイムに変わる「状況」に合わせて「表情を柔軟に変化させにくい」面があります。

もう一つが「興味のないことに反応しにくい」ことです。

(3)自閉症スペクトラム(ASD)の顔つき・表情の特徴3つ

ASDの特性が「表情などにも」影響を与えます。

①表情が乏しい

「感情などを表情に連動させにくい」ことがポイントです。

<表情が乏しい>

ASDでは「表情の乏しさ」を指摘されることが多いです。

これは「顔の表情の動きが少ない」ことが一つ。

そしてその表情の「発生が遅れたりずれる」という指摘もあります。

<この特徴の影響>

まずは「対人的な感情等の共有が困難になってしまう」ことがあります。

その結果、対人交流を形成する事が時に困難になります。

そして、表情の乏しさから「周りから誤解を招く」こともあります。

<表情が乏しいことの背景>

厳密にはまだ不明ですが、特性からいくつか説明できる部分があります。

まずは「感情と表情をなかなか連動させにくい」こと。

そして、自分の感情を「無意識に把握(モニタリング)しにくい」点。

そして、「状況に応じた柔軟な表情の切り替えの難しさ」も影響します。

<受けることがある誤解>

まず表情が乏しいことで「感情がなく冷淡な印象」を持たれることがあります。

あとは表情の反応の乏しさから「理解していない」と誤解されることがあります。

もう一つ場によってはマナー違反的で「無礼」だと思われる可能性があります。

②目があわない

「アイコンタクト」に困難があります。

<目が合わない>

ASDで「目が合わない」という指摘が目立ちます。

これは「DSM-5の診断基準の一部」としても考慮されます。

目が合わない結果、「目つきが周りとは違う」思われる場合もあります。

<この特徴の影響>

まずは「感情の読み取りの困難」。見ないことで読み取れず、見られないことで読み取られない面があります。

あとは「対人交流が続きにくくなる」、目線での交流等が途絶えるために交流が続きにくくなることがあります。

3つ目は「誤解を招くことがある」。「目をそらす」ことが拒絶や敵意などとみなされる場合があります。

<目が合わない背景>

これも厳密には不明ですが、いくつかの要素が指摘されます。

まずは、「過度の刺激の回避」、視覚の刺激に過敏な方は、特に表情に関しては過敏になります。

人によっては「聴覚」を優先し、目の刺激を最小限にする場合があります。

また、「対人不安」の合併から目が合わなくなる事もあります。

<受けることがある誤解>

まずは相手に「興味がない」と誤解されることがあります。

あとは「目を合わせられない」ことから「自信がない」人物とみなされる場合があります。

そして「あえて目を合わせない」との判定から「無礼」「反抗的」とみなされる場合があります。

③場にそぐわない表情

「場のニーズ」と「表情」がずれることがあります。

<場にそぐわない表情>

ASDで「場にそぐわない表情」がよく指摘されます。

「文脈に合わない表情」が出てしまう場合があります。

そして何かをされた時のリアクションの表情が不自然になることも指摘されます。

<この特徴の影響>

まずは社会的に不適切なふるまいだと「誤解を受けやすい」面があります。

そして「交流や関係性の形成が」誤解を背景に困難なる事があります。

そして、ある種「悪い先入観(レッテル)」を貼られてしまうこともあります。

<場にそぐわない表情の背景>

これも明確ではないですが、ASDの特性の影響が示唆されます。

まずは「社会ルールの理解の困難」、「場面ごとに求められる表情」が理解できないと、適切な表情を出すことは困難です。

また「自分の感情の認識と表現の困難」自分の感情やその表現法がわからず、ずれる事があります。

そして「変化への対応の困難」状況での求められる表情の変化に柔軟に対応できない場合があります。

<受けることがある誤解>

まずは場面により「無礼な人間だ」と誤解される場合があります。

あとはある種「反抗的・挑戦的」とみなされる場合があります。

そして「変わった人」とみなされ「距離をとられてしまう」場合も出てきます。

(4)もし周りの人にこの特徴が強いとき

大事なことは「差別ではなく理解を」。

周りの対応の主な方向性は、「額面通りに取らない」「差別しない」「(可能なら)表情と交流のことについて話し合う」の3つです。

①額面通りに取らない

例えばASDの人の「場にそぐわない表情」を額面通りに取ると、「挑戦的」などの「陰性感情」が生じるリスクがあります。

ここで「表情とASDの特性の関係」を結びつけて状況の理解を図ることが非常に大事です。

それにより、第一印象的な「感覚的な違和感」を理論的にとらえ直し、冷静に交流する助けになります。

②差別しない

一部から「表情」のみから「陰キャ顔」等の「差別的」「揶揄する」ようなレッテル貼りの話を聞きます。

これはもう「他の障害の差別」と同じことなので、あってはならないことです。

一方で実際に「尊大型ASDの一部」で見られるような「本当に相手を見下し道具のように扱う」、他害的な場合も時にはあります。

そうした相手と「表情だけは苦手な人」の違いはしっかり見分けていくことが必要です。

対策としては表情のみでなくその人の「行動」の「積み重ね」で判断していくのが現実的です。

③(可能なら)表情と交流について話し合う

ASDで表情等が独特な方の多くは意図的でなく「無意識に」不自然な表情などをしています。

そして低くみられるなどの不利益をしばしばこうむっています。

関係性ができた上でもし可能ならですが、この「表情の対人交流への強い影響と対策」を話し合えるといいと思われます。

ASD本人も、もし「必要性」と(表情を意識的に強めるなど)「ある程度レベルの正解」が分かれば、改善策を打てる面があります。

(5)もし自分にこの特性が強いとき

「必要性に気付けば」改善の余地があります。

「自分の取り組みの主な方向性」は、「特徴に気づく」「練習とモデリング」「環境調整」の3つです。

①特徴に気付く

まずは「自分の表情の特徴に気づく」表情が乏しい、目が合わないなどの「自分の特徴」にまず気づきます。

続いてそのことでの「対人面への影響に気付く」。表情から奇妙がられた、低く扱われた等の経験などを振り返ります。

そして「改善の必要性に気付く」現状で受けている誤解と、改善により取り戻せる名誉等に気づくことです。

②練習とモデリング

まずは「物理的に表情を動かす練習」舞台俳優さんが行うように、顔の筋肉などを繰り返し動かし、土台の可動性を高めます。

次に「モデリング」表情が豊かな人をモデルに「真似をする」ことを反復練習し、技術として表情を身につけていきます。

そして「感情と表情を連動させる練習」。自分の感情を観察し、意識的に技術として習得した表情と紐づけしていきます。

③環境調整

先程の練習・モデリングの取り組みは非常に大事で、改善も見込みます。

しかし特性・障害の壁はあり、取り組みを経ても一部不自然さなどは残ります。

そのため、「表情が重視されすぎる」環境や職種ではやはり不利は否めず、そうではない環境を選ぶのが現実的な戦略です。

あとは「24時間表情豊か」は難しくても、「必要な時だけ集中して表情豊かに表現をやり切る」ことは、誇りを守る点でも大事な方法です。

(6)まとめ

今回はASDセルフチェック「ASD(自閉症スペクトラム)の顔つき・表情の特徴3つ」について見てきました。

ASD(自閉症スペクトラム)では「社会性の障害」「こだわり」を背景に、主に以下3つの「顔つき」「表情」の特徴が出ます。

  • ①表情が乏しい
  • ②目があわない
  • ③場にそぐわない表情

周りの方としては、その特徴を額面通り取らず、「表情よりも行動」でその相手を判断していただけると幸いです。

もし自分にその特性があったら、その特徴に気づき、モデリング等の反復練習に取り組みつつも「合う環境を探していく」ことが大事です。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)