孤立型ASD
他者と交わらず生きる
孤立型ASDは、独特な自分の世界に一人で生きるタイプの発達障害です。
自分の興味と社会のニーズの接点を見出すことが社会適応の鍵です。
もくじ
- (1)はじめに:孤立型ASD
- (2)孤立型ASDの例
- (3)孤立型ASDとは
- (4)孤立型ASDの特徴
- (5)孤立型ASDの長所
- (6)孤立型ASDの短所
- (7)他の型への移行
- (8)弱点をカバーするには
- (9)周りの人の孤立型ASDとの関わり方
- (10)まとめ
(1)はじめに:孤立型ASD
ASDセルフチェック。今回は「孤立型ASD」についてやっていきたいと思います。よろしいくお願いします。
発達障害の一つ「ASD(自閉症スペクトラム)」。「自閉症」という言葉で、特に連想されがちな「自分一人の世界で、誰とも関わらず生活する」。
このイメージに非常に近いのが今回ご紹介します「孤立型ASD」になります。
今回は人に関わらず一人で生きる「孤立型ASD」について見ていきたいと思います。
(2)孤立型ASDの例
Aさんは、子供の頃から一人遊びが好きで、周りから浮いていました。早い段階でASDの診断がありました。
雰囲気や服などの独特さからいじめられ、不登校になりました。
しかし、コンピューターを使っての作曲など詳しくありまして、匿名で作曲した曲が続けてヒットして、気が付けば社会に居場所ができていました。
(3)孤立型ASDとは
孤立型ASDは「人と関わらず、自分の世界で生きるASD」です。
<ASD(自閉症スペクトラム)とは>
これは「社会性の障害(対人面)」と「こだわり」、この2つが目立つ生まれながらの発達障害です。
幼少期の発見が多いですが、10代から大人に見つかる方もいます。
様々な種類がある中、「自閉」自分の世界で生きるイメージが一番強いのがこの「孤立型」です。
<孤立型ASDとは>
孤立型ASDは「まるで他人がいないように、一人の世界で生きる」というASDです。
表情・雰囲気・服装などの独特さが目立ります。
また、雑談が特に苦手で一人の生活を好むところがあります。
<ASDの他の4タイプ>
まずは「積極奇異型」自分ルールで動きすぎる方。
「受動型」合わせすぎて流されやすい方。
「尊大型」人を見下し押し付けるタイプの方。
「大仰型」礼儀正しくて大げささが目立つ方がいらっしゃいます。
<孤立型の気づかれ方>
孤立型ASDは、基本的には幼少期から気付かれやすいところがあります。
周りからの様子の独特さや孤立など、外からの様子で気づかれることが多いです。
また、学校で明らかな孤立などがあって気づかれることもあります。
(4)孤立型ASDの特徴
「自分一人の世界で生きる」というところです。
具体的には「他者と関わらない」「表出の独特さ」「パターンが決まっている」の3つが特徴です。
①他者と関わらない
基本的に他者と交流しないで一人でいることが多いです。
そして、あまり交流を求めない。特に曖昧さの多い交流は求めない面があります。
そして、外から無理して関わらせると逆に不安定になってしまうことがあります。
②表出の独特さ
興味がないことに関しては「非常に雑になってしまう」ことがあります。
一方、興味があることは作り込む一方ある種「独特」になる事が目立ちます。
結果表出が独特だったり、マナーに反する場合があり、対人面の困難や迫害を受けるリスクになります。
③パターンが決まっている
生活の多くのことは「ルーチン的な行動が決まっている」というところです。
逆に変化があると不安定になりやすい面があります。
そして、服や食事なども種類が少ないことが目立ちます。
(5)孤立型ASDの長所
「大事に思うことをやりきる力」です。
具体的には「興味があることへの集中力」「周りに流されにくい」「他者を害さない」この3つになります。
①興味あることへの集中力
興味を持ったこと、「こだわり」になることに関しては強い集中力があります。
そして決めたことに関しては、その集中力や行動が続き・反復実践しやすいというところです。
結果やろうと思ったことに関しては、高水準の成果物が期待できます。
②周りに流されない
周りからの影響を受けにくいというところ。
裏を返せば、悪い意味でも周りからの影響も受けない面があります。
そして、周りに無理して合わせようとしての二次障害は出にくいです。
③他者を害さない
よくも悪くも他者への興味が薄いです。
そのため少なくとも自分から他者を落としたり害したりすることはないというところ。
ただし、いろいろいじめ・迫害にあうことが続くと変化が出る事があり、そこは注意が必要です。
(6)孤立型ASDの短所
「他者からの迫害に注意」というところです。
具体的には「他者からの交流困難」「からかい・いじめ」「ライフスキルの課題」の3つです。
①他者との交流困難
これは「他者との交流には構造的な困難がある」ことです。
ここで無理して交流をすると、不調になったり、トラブルになったりする危険があります。
これは重症だと社会生活が難しくなってサポートが必要な場合があります。
②からかい・いじめ
表出などの独特さから、いじめやからかいの標的になりやすいところがあります。
さらに、なかなか交流・反論が困難であったり、孤立しているため、影響が強くなりやすいです。
これは「二次障害」や「尊大型への移行」のリスクになるため非常に注意が必要ですす。
③ライフスキルの課題
「全般的な生活能力の課題」というところ、得意・苦手のばらつきが大きいため課題が大きいです。
その中でも、特に「マルチタスク」的に、やることが複数になった時には困難が強くなります。
また、「対人的なやり取り」がどうしても必要な場合も強く困難が出てきます。
(7)他の型への変化
「出来事の影響で変化の方向が変わる」というところ。
「孤立型からの移行」、代表的には「大仰型」「尊大型」の2つに移行することがあります。
<大仰型への変化>
これはある種認められた時に出やすい変化です。
「最低限の交流」程度をスキルとして獲得して交流をしていく。
他者やマニュアル等から自分なりにやり方を構築していきます。
実際不自然さは残りますが、強みの「成果物」などを生かし社会に適応していくタイプです。
<尊大型への変化>
これは先ほどの逆で、いじめ等の迫害の影響から他者不信になります。
結果「自分を信じ、他者を信じない」という「尊大型」の思考パターンになります。
ただこのパターンが強くなると、社会と更に不仲になり、悪循環にりやすく注意が必要です。
(8)弱点をカバーするには
「最低限をカバーして強みを生かす」というところです。
具体的には「最低限の交流スキルの獲得」「興味と社会ニーズの接点を見つける」「社会のプラスににこだわっての適応」の3つです。
①最低限の交流スキルの獲得
どうしても「最低限の関わり」は社会生活上必要になります。
そこを他者からモデリングしたり、マニュアル等から学習して最低限のところを実践します。
不自然さは当然に残りますが、それは気にせずあとは本来の「強み」で勝負していきます。
②興味と社会ニーズの接点を見つける
孤立型のかたは、特に「こだわり」というところが強い。
そうすると「何にこだわるか」というところが社会適応の生命線になります。
「社会で困っていることは何か」というのを把握しておくということが大事。
見つかったら、「自分の興味」と「社会の困りごと」の接点を見つけることが非常に大事です。
③社会のプラスにこだわっての適応
孤立型の場合、コミュニケーションで色々適応していくのは正直構造的に困難があります。
なので、先程の「興味と社会ニーズの接点」にこだわり持ち取り組み、その「成果物」を通じ社会と繋がります。
そして、うまくいった時の様々な誘惑等は「苦手な部分」なので、その「雑音には惑わされない」ことも大事です。
(9)周りの人のかかわり方
「明確な個性として違いを尊重する」というところです。
具体的な方向性は「相手の世界を尊重する」「独特さを真に受けない」「実害がある時のみに限定して注意」の3つです。
①相手の世界を尊重する
孤立型の人の表出は一見「変」に見えても、それは本人なりのいろいろな理由があります。
そして、そこをリスペクトせず介入することは非常に危険のため、リスペクトなしには不用意に介入しないことです。
そしてあまり実害がない場合は本人なりに考えて動きますので、「見守る」のが原則かと思われます。
②独特さを真に受けない
孤立型の場合、どうしても発言内容が独特で、ともすると不配慮に見えることがあります。
その発言を真に受けてしまうと、トラブルになったり、関係が悪化してしまいます。
これは、まさに「特性が影響しての発言」であるところを理解することが大事です。
「独特なので」と割り切りつつ、交流に関してはリードして相手の良さを引き出すことが大事です。
③実害ある時のみ限定して注意
どうしても実害がある時は、介入が必要になってしまいます。
これに関しては、人格否定の方向ではなく、本当に必要なところに絞って具体的に伝える。
ただ、相手へのリスペクトは持ったうえで具体的に伝えることが大事です。
現実的には本人が変わるのはしばしば難しく、可能なら周りが変化・調整した方が現実的なことも多いです。
(10)まとめ
今回はASDセルフチェック「孤立型ASD」について見てきました。
「孤立型ASD」は自分の世界で生きるASDです。交流は苦手でかつ望みません。
物事に熱量を持って集中して続けられるというのが長所になります。
ただし、交流に関しては弱点は非常に強く、いじめ等の迫害のリスクには注意が必要になります。
「最低限の交流スキルの獲得」がまず大事です。
その上で、「興味と社会のニーズの接点」を見つけて取り組み、「成果物」を通じて社会と繋がっていくのが方向性です。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)