大人の発達障害を乗り越えるコツ5つ
一番の土台は「受け入れ」
大人の発達障害は特効薬はなく、特性への地道な取り組みを続けます。
受け入れ・自己信頼・利他を土台に改善への反復練習を継続します。
もくじ
(1)はじめに
発達障害セルフケア。今回は「大人の発達障害を乗り越えるコツ5つ」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
大人になって「発達障害」の診断を受けることがあります。
明確な治療法はなく、子どものようにサポートも受けることはできない。
この現実をどう乗り越えていけばいいでしょうか。
今回は「大人の発達障害を乗り越えるコツ5つ」についてみていきたいと思います。
(2)特効薬はないけれど
「薬で解決する障害ではない」です。
<大人の発達障害とは>
発達障害は本来は「生まれながらの障害」ですが、学生までは目立たず大人になってわかるのが「大人の発達障害」です。
「仕事でうまくいかない」などがきっかけになることが多いとされます。
<主な大人の発達障害>
①ADHD(注意欠如多動症)
ADHDは、不注意・多動・衝動性が特徴の発達障害です。
忘れ物であったり、ついうっかりの失言が目立つことがあります。
②ASD(自閉症スペクトラム)
これは「社会性の障害」と「こだわり」の2つが目立つ発達障害です。
「空気を読まない言動」などが目立ちます。
<大人の発達障害の治療>
まずADHDは薬はありますが、あくまで効果は部分的です。
そして、ASDでは「特性」への治療薬はありません。
両者とも主には「生活面の特性の取り組み」が基本的な対策です。
<発達障害の大人での発見の不利な点>
まずは「療育」等のサポートというのをあまり受けられません。
そして人生経験を重ねたがゆえに「この障害を受け入れる葛藤」が強くなりがちです。
3つ目がうつ・不安などの「二次障害」を合併している場合が多いです。
しかし、一方で、実は有利な面もいくつかあります。
<大人で発見された時の有利な点>
まず症状自体は、学生までは目立たなかったように、相対的には軽いことが多いです。
2つ目が「人生経験を積んでいる」こと。二次障害の背景になる一方、改善のヒントになる経験にもなります。
3つ目が「自発的に取り組める」こと。幼少期発見の場合は家族等が主役になりますが、大人では取り組む主体は自分です。
<特性への取り組み>
まずは「一般的な特性」と「その中で自分の特性」が何かを知ること。
その上で長所を生かしつつ短所をカバーしていきます。
具体的には「改善への行動→結果→反省→修正」の一連の流れの繰り返しになります。
(3)大人の発達障害を乗り越えるコツ5つ
地道な取り組みの継続が必要な大人の発達障害、乗り越えるコツは何でしょうか。
①受け入れる
「受け入れることが取り組みの第1歩」です。
<受け入れが取り組みの第1歩>
発達障害特性改善のためには、実際さまざまな取り組みがあります。
しかし障害を「受け入れていない」状態では、どの取り組みもやりようがありません。
なのでまず「受け入れ」が重要な第1歩です。
一方で、「自分はそんな障害じゃない」との話を聞くことが多くあります。
成人ではこの受け入れに葛藤があることが多い」のが実際です。
<成人での受け入れの葛藤>
まず、「発達障害を受け入れる」ことはある種「自分が障害者」と受け入れる事です。
そして時に自分のこれまでの人生の「自己否定になる部分」が自覚されることがあります。
また、人によってはその障害によって他の人を傷つけた等「他者への影響への罪悪感」が強く出る場合もあります。
ただし、「それでも取り組みは大事」です。
<受け入れをしない発達障害の悪い例>
まずは「カサンドラ症候群の加害者」発達障害と自覚なく、配偶者の人を傷つけるケース。
あとは「パワハラをする上司」衝動的にキレる等を反復し部下が不調に至る場合。
またいわゆる「毒親」的な、子供への高圧的な言動を繰り返す親になる場合もあります。
<受け入れをした後でできること>
一つは衝動への「アンガーマネジメント」一歩抑えて怒りをぶつけるのを減らすこと。
そして「他者のモデリング」他の人の例を見ることで、社会性の面をカバーする方法。
あとは「こだわりの制御」他者にこだわりを強要せず、逆に人の役に立つことにこだわりを生かします。
これらは「すぐに結果を出すのは困難でも改善を続けられる」ところがあります。
②自分を信じる
「逆境での親友は自分自身」です。
<すぐには結果が出ない>
特性に気づいて先ほどのように受け入れたとしても、特性自体すぐには変わることはありません。
その一方で、そこに「直面する葛藤」は取り組む限り続きます。
そして結果が出る前は、なかなか理解をしていただける他者は少ないのが現実です。
しばらくの間は逆境が続きます。
そのなかで取り組みを続ける鍵は、自分自身です。
<1人目の友は自分>
逆境で人が離れても、自分は常に共ににいることがあります。
そして、結果が出ない取り組みでは、しばしば応援する人も離れていきます。
そんな中でも「自分は自分を応援することはできる」、ここが大事です。
<あくまで「向き合えている自分」を信じる>
信じるという事ですが、これは「間違ってても信じる」ということではありません。
あくまで「直面をしてつらいけれども取り組めている」ことを根拠に信じます。
逆にそこから「逃げて」誇大的になるなどは信じるべきことではなく、必要なのは修正です。
間違っていたら、そこに「修正を促す」ことは自分自身でしていきます。
③誰かのために
「発達障害での自分本位は嫌われる」ことに注意が必要です。
<信頼残高>
他者に対し「与える」「奪う」こよは、「貯金」と「借金」の関係に似ています。
「奪う」ことが多いと、いわば借金のような状態で、基本的には嫌われます。
「与える」ことが多ければ、「貯金」のような状態で、基本的には好かれます。
これは発達障害に限らず人間関係の大原則です。
<特に発達障害では>
発達障害(ADHD・ASD)の特性として「取りつくろいが苦手」ということがあります。
そのため、例えば利己的で相手から奪う価値観の場合も、「それを隠して親切の皮を被る」事は困難です。
むしろ「利己的だと、それが露骨に出てしまう」、そしてまず嫌われる結果になります。
そのため特に発達障害では、誰かのため「利他」の精神を持つことが、戦略的な観点でも大事になります。
<「テイカー」には注意>
基本的には今のような「利他」の姿勢でうまくいきますが、例外的に注意を要するのが「テイカ―」の存在です。
「テイカ―」は、人から利用して奪うような人です。
「テイカ―」に目をつけられると、「与える」ことが利用されて搾取されるリスクが高いです。
対策はその「テイカ―」を見分けていくこと、そして見分けたら「距離を取る」事につきます。
④反復練習
「特性改善もPDCAサイクル」です。
<取り組みは「手数勝負」>
特性の修正の取り組みをする時、一個一個の修正はそこまで難しくないことが多いです。
ただし、修正点が実生活いろいろ見ていくと「非常に膨大に」なります。
全部はもちろん困難ですが、その中で「どれだけ多く修正を続けていけるか」、いわば「手数勝負」になります。
いわゆる「PDCAサイクル」、「計画→実行→検証→修正」の回路をいかに早く回していくかがカギになります。
<取組み成功のコツ>
1)「熱量」と「軸」
続けるためには熱量が必要です。そして、熱量を出すためには、自分が大事にするぶれない「軸」が必要です。
2)自己信頼
仮に早くPDCAを回しても「すぐには結果が出ない」のは同じ、そこで「ぶれない」自分を信じることが大事です。
3)俯瞰の視点
熱量や自己信頼が大事な一方で、もしやり方があまりに間違っていたら、PDCAも逆効果になってしまいます。
そのため一旦「俯瞰して」正しい方向を「冷静に分析する」視点も同時に大事になります。
⑤困難ならサポートを
「努力に限界があればサポートを活用」します。
<障害の重さは人それぞれ>
これまでの「受け入れ」「自己信頼」「利他」「練習」は、取り組む人すべてに大事と思われます。
一方で、障害の重さは人によって違うところがあります。
そのため、場合によってはどんなに取り組んでも限界がある場合もあります。
そして「やっても限界であれば、ちゅうちょなくサポートを活用する」ことが大事です。
<受けるサポートの例>
まずは仕事への訓練では「就労移行支援」、2年間集中的に訓練しつつ特性の生かし方を模索するものがあります。
また仕事では「障害者雇用」といって障害特性の理解とサポートを受けつつ仕事をする方法があります。
あと、生活自体の困難が強い場合は「訪問看護」の中で相談する方法もあります。
(4)まとめ
今回は、発達障害セルフケア「大人の発達障害を乗り越えるコツ5つ」について見てきました。
大人の発達障害は治療法がないなど困難が多いですが、以下の5つが乗り越えるためのコツになります。
- ①受け入れる
- ②自分を信じる
- ③誰かのために
- ④反復練習
- ⑤困難ならサポートを
まず、受け入れつつ熱量を持って反復練習しますが、それでも困難強い場合はちゅうちょなくサポートを活用する事を検討します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)