職場で分かる大人の発達障害のサイン5つ
職場不適応からの発見
大人の発達障害は、負荷が増える「職場」でしばしば見つかります。
会議・社会マナーなどの苦手からの不適応がASD/ADHDで目立ちます。
もくじ
- (1)はじめに
- (2)なぜ職場で発見されるか?
- (3)職場でわかる大人の発達障害のサイン5つ
- ①指示を忘れる
- ②会議が苦手
- ③マルチタスクが苦手
- ④自分で考えることが苦手
- ⑤社会マナーが苦手
- (4)まとめ
(1)はじめに
発達障害セルフチェック。今回は「職場で分かる大人の発達障害のサイン5つ」についてです。
最近話題になることが多い「大人の発達障害」。
大人でわかる場合、多くは「職場で・仕事で」うまくいかないことが発見のきっかけになります。
では、実際、どんなサインがあったら、発達障害を疑っていくのでしょうか。
今回は「職場で分かる大人の発達障害のサイン5つ」を見ていきたいと思います。
(2)なぜ職場で発見されるか?
これは「負担が増えてカバーが困難になる」ことがポイントです。
<大人の発達障害とは>
本来は「発達障害」は生まれながらの障害で、しばしば幼少期に発見されます。
一方で学生まではあまり目立たず、大人になってからわかる場合があり、これが「大人の発達障害」です。
「仕事などでなかなかうまくいかない」ことがしばしば発見のきっかけになります。
<主な大人の発達障害>
①ADHD
ADHDは、不注意・多動・衝動が特徴の発達障害です。忘れ物や失言が目立ちます。
②ASD(自閉症スペクトラム)
ASDは「社会性の障害」と「こだわり」が特徴の発達障害です。「空気を読めない発言」などが目立ちます。
<なぜ大人でわかることがあるのか?>
ご質問として、「なぜ大人になってわかるのか」というものがあります。
これには「負荷が大きくなってカバーが困難になったから」とお答えします。
<子供でもわかる発達障害の例>
例えば「多動」動き回ってしまったり、衝動的にかっとなってトラブルが目立ってしまうADHDの方。
あとは明らかにもう孤立していて、交流が困難なASDの方。
あとは他者と積極奇異的に働きかけすぎトラブルが目立つASDの方。これらは子供のころ分かります。
<子供ではわかりにくい発達障害の例>
例えば「不注意だけが目立つADHD」の方は目立ちにくいです。
あとは合わせるタイプのいわゆる「受動型」ASDの方も目立ちにくいことが多いです。
あとは勉強は問題ない「成績が優秀な孤立型のASD」の方も学生までは問題ないことが多いです。
<大人と学生までの違い>
学生まではある種「受け身」だとトラブルなどは目立たず、障害も目立ちにくいです。
一方で大人になると「受け身」でも次第に目立ち、大人の発達障害の診断になります。
大人と子供での違いは何か、一番の要点は「仕事をしているか」です。
<仕事で求められることの例>
まずは「自分で考えてやっていく・動いていくこと」が求められます。
あとは「同時並行に・マルチタスクにやっていくこと」が求められてきます。
これらのことがなかなか「受け身」ではカバーしにくい面があります。
<職場で発達障害を考えるケース>
基本的には仕事で「努力してもうまくいかない時」です。
例えば職場で不適応を繰り返し、職を転々とする場合。
あとは仕事関連でのうつ症状が続いてしまう場合。
また、関連して「家の生活が破綻してしまう」場合。
職場の不適応があった時は、時に発達障害のサインのことがあります。
(3)職場でわかる大人の発達障害のサイン5つ
「努力しても困難」が時に発達障害のサインです。
①指示を忘れる
<指示を忘れることの影響>
何か「口頭で言われた指示を忘れてしまう」場合です。
すると「指示がなされないまま放置されてしまう」状態になります。
結果仕事全体「チームレベルで仕事が滞ってしまう」ことになります。
この「指示を忘れる」ことが、発達障害(ASDやADHD)で出やすいです。
<ASD→APD(聴覚情報処理障害)>
ASDの場合の背景はAPD(聴覚情報処理障害)になります。
これは、「聴力は正常」ですが言われたことを「意味を持った音声」として聞き取りにくい症状です。
結果音は聞こえるけれども、それを「意味を持った言葉」として理解しにくい状態になります。
そのため、聴覚的な指示(口頭指示)が「わからない」「間違える」「忘れる」結果になります。
<ADHD→不注意>
ADHDでは、特性上なかなか集中をしていないと聞き取ることは難しくなります。
そして分からない場合でも、つい衝動的に合わせてしまいますが入っておらず、結果指示を忘れます。
特にこれは雑音などが多い時、気が散りやくなり出現しやすくなります。
②会議が苦手
「会議」も、学生まででは体験しにくい仕事ならではのものです。
<会議の特徴>
まず1時間など「じっと長時間話を聞く必要がある」こと。
そして「大人数」で会話が続きかつ「話題がいろいろ変わっていく」面があります。
そして、しばしば「自発的な、しかし空気を読んだ意見を求められる」ことがあります。
これらにおいて、発達障害においては苦手があってつまずくことが多いです。
<ASD→大人数の会議が苦手>
「こだわり」を背景に「話の移り変わり」になかなかついていけない面があります。
そして、人によって「APD」の問題があって、さらに会議の理解が困難になることもあります。
そして、人によっては「空気を読めない発言」をしてしまうこともあります。
また逆に受動型の方だとなかなか意見が言葉にまとまらず「言えない」ことが出てきます。
<ADHD→じっとしにくい>
まず「長時間話を集中して聞く」ことが非常にやりづらいです。
特に「受け身で聞く」ことに関して強く苦手なことがあります。
一方、意見を言う場合は、つい思ったことを言ってしまう「失言のリスク」があります。
③マルチタスクが苦手
仕事の多くは、同時に複数の事をする「マルチタスク」です。
<仕事とマルチタスク>
学生の時は勉強など1個のテーマをやることが多いんですが、仕事ではしばしば「マルチタスク」が求められます。
その中で、さらに相手事情などで「急に予定・内容が変わる」ことも少なくありません。
そして、最近の流れとしては、「IT化・AI化」でさらにマルチタスクが増加することが指摘されます。
<ASD→こだわり>
ASDの場合、「こだわり」の特性から、「切り替え」が非常にやりづらいです。
そして、「複数のことを同時に」(切り替えつつ)やることが非常に難しいです。
さらに「急な変化の対応」にも弱点があるため、非常にここは苦手分野になります。
<ADHD→注意がそれる>
ADHDでは「切り替え」自体は苦手意識なく行うことができます。
しかし途中で「注意が外へそれて」しまって、それが戻らないことがしばしば出てきます。
特に「時間がかかるような課題が複数」ある時には多く出やすいため注意が必要です。
④自分で考えることが苦手
<仕事は「レールがないことが多い」>
学生までは課題・問題があって、どう解くか「方法」は明確なことが多いです。
しかし仕事の場合「自分で方法を考える」場合が多くなり、テーマもあいまいなことが多いです。
そして、教える立場の「上司」の指示や教育があいまい・不明確なことも少なくありません。
<ASD→あいまいに弱い>
ASDではあいまいさに弱く「枠組みが明確でないと動きにくい」面があります。
そのため、「上司の指示や教育があいまい」だと動けなくなってしまうことがあります。
そして、逆に無理して動いた場合、成果物が相手のニーズと大きくずれ、トラブルになる事があります。
<ADHD→先送り>
ADHDでは興味がない場合、どうしても先送りになってしまうことが多くなります。
特に短期目標をうまく作れないと、すぐ興味がそれて「取りかかれない」ことがしばしば発生します。
期限「直前」になると確かに集中できることも多いですが、「間に合わない」ことが多く、問題になります。
⑤社会マナーが苦手
学生ではあまり重視されない「社会マナー」でつまづくことが発達障害では多いです。
<社会人のマナーの特徴>
一つには時間厳守など「ルールが非常に厳格」であるというところ。
あとは有形無形の「さまざまな」社会ルールに合わせる必要が出てきます。
そして「不用意な失言」は、学生なら許されても「社会人で許されない」面があります。
<ASD→社会性+こだわり>
ASDで「こだわり」が強いと、「自分ルール」を周りのルールに合わせることが時に非常に困難になります。
そして「社会常識・社会マナー」の習得が、社会性の問題を背景として苦手です。
そして発言時「空気を読まない問題発言」が出てしまうことがあります。
<ADHD→不注意+衝動>
まずは、「遅刻してしまったり時間を守れない」「約束を忘れてしまう」などが大きな問題になります。
そして、ルールの中でも「興味を持てないルール」はどうしても「おろそか」になってしまいやすいです。
そして発言では「つい衝動的に出てしまう失言」が問題になることが多いです。
(4)まとめ
今回は発達障害セルフチェック「職場で分かる大人の発達障害のサイン5つ」を見てきました。
職場では求められることが増え、そのつまずきで発達障害が分かることがあり、代表的なものが以下の5つです。
- ●指示を忘れる
- ●会議が苦手
- ●マルチタスクが苦手
- ●自分で考えるのが苦手」。
- ●社会マナーが苦手
これらが「努力しても困難」なことがもし続く場合は、背景の発達障害の可能性を視野に入れるのが方法かもしれません。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)