女性ASD男性との違い5つ
女性は受動型が多い
ASDは、女性では男性と比べ10代以降など発見が遅れる傾向があります。
背景には受け身の「受動型」多くトラブル少ない等の男女差があります。
もくじ
- (1)はじめに
- (2)女性のASDは気付かれにくい
- (3)女性のASDの男性との違い5つ
- ①相対的には社会適応がいい
- ②受け身のことが多い
- ③困難が出る時期が遅い
- ④メルトダウンが内側に行く
- ⑤性的なリスク
- (4)まとめ
(1)はじめに
女性の発達障害。今回は「女性のASDの男性との違い5つ」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
発達障害の一つASD(自閉症スペクトラム)は女性には少ないと言われます。
一方、症状の出方の違いから気づかれず、つらさが続いている人の話も聞くところがあります。
女性のASDの男性との違いは何でしょうか。
今回は「女性のASDの男性との違い5つ」について見ていきたいと思います。
(2)女性のASDは気付かれにくい
「一般のイメージとはやや違う出方をする」というところがあります。
<ASD(自閉症スペクトラム)とは>
ASDは「社会性の障害(対人面)」と「こだわり」、この2つが特徴の生来の発達障害です。
男女比は4対1とされ、男性に圧倒的に多いとされます。
女性だと思春期頃の診断が多くあり、男性よりも診断時期が遅いことが多いです。
<なぜ女性のASDが少ない?2つの説>
これは厳密にはまだわかってはいませんが2つの説があります。
1つ目は「本当に少ない」、男性の方が「診断基準を満たしやすい」基本的に男性想定の基準のため、女性だと基準を満たしにくい面があります。
もう一つが「未診断の人が多い」本当はそこまで少なくないが、実際「発見されないという人が多い」説もあります。
<未診断の人が女性だと多い理由>
基本的に男性よりも女性のASDの方のほうがあまり目立ちにくいことが背景です。
まずは「トラブルが目立ちにくい」、そのためあまり発見されにくい面があります。
次に「典型的ではない」男性でよくある典型的なASD症状とは少し違った形で出ます。
そして「男性とは出方に違いがある」。主な時期や症状の出る方向など、いくつか違いがあります。
なので、症状の男女の出方の違いを知ることが女性のASD発見に大事です。
(3)女性のASDの男性との違い5つ
「典型的な症状とは、一部違いがある」ことがポイントです。
①相対的には社会適応がいい
「直接のトラブルは目立ちにくい」です。
<社会適応・女性ASDの特徴>
「ごく限られた関係性」1対1の関係性などは可能なことが多いです。
また、暴力や興奮などの「外に出るようなトラブル」が少ないとされます。
これらを背景に、特に小学校では女性だとあまりASD疑われにくいことが言われます。
②受け身のことが多い
「奇妙な言動が一見目立たない」というところがあります。
<ASDの3つのタイプ>
まずは「積極奇異型」自分ルールでどんどん精力的に動くタイプ。一方で奇異な面が目立ちやすいという意味でもあります。
続いて「受動型」受け身的に限られた人との交流をするというタイプの方です。
もう一つは「孤立型」まるで他に人がはいないかのように、一人で活動するタイプです。
この中で、「受動型」「孤立型」が女性では多いとされます。
<受け身のことが多い>
会話の中で基本的には黙ることが多く、そのため一見奇妙さが目立ちにくいのが特徴です。
そのため「他者に働きかける影響」は目立たず、結果トラブルは少ないです。
ただ一方で要注意なのが他者に「支配・操作・利用」されてしまうリスクの高さです。
③困難が出る時期が遅い
「思春期になって、不適応が目立つ」ことがよく言われます。
<男性との不適応の時期の違い>
男性だと就学前(4-5歳)か小学校低学年(6-9歳)の方が多いです。
一方女性では小学校高学年から中学生ので目立つ方が多いです。
<男性のASDの不適応>
男性のASDは就学前から小学校低学年に目立ちます。
そして人とほぼ関わらず「孤立」が強く目立ちます。
また、一方的な交流を無理やりすることでトラブルが目立つことも多いです。
<女性のASDの不適応>
女性のASDは小学校高学年から中学校で目立ちます。
その時期に同年代との関わりになじめず孤立することが目立ちます。
そして、症状の出方は、うつや体調不良・不登校などが多くなります。
④メルトダウンが内側に行く
「不調が内側に、落ち込みや体の不調で出る」のが特徴です。
<ASDでのメルトダウン>
メルトダウンはASDの方で起こる「ストレス限界時の1種の混乱した状態」です。
メルトダウンになると、自分の状態を制御することが困難になります。
考えが止まる「思考停止」「暴れたり大声が出る」など、さまざまな形をとることがあります。
<男性ASDのメルトダウン>
男性では、基本的には「外への攻撃の形」で出やすいとされます。
例えば興奮や、大声が出ている方がいます。
そして、中には暴力に至ることもあるため、その時は特に注意が必要になります。
<女性のASDでのメルトダウン>
女性では、基本的には「内側に出る」ことが多いとされます。
例えば「思考停止」考えられなくなり、行動が止まるという形でいる方が多いです。
逆に興奮などある場合も、大声で泣くなど「相手よりも自分に対して」出ることが多いとされます。
⑤性的なリスク
「関係はできるが、利用・搾取されるリスク」に注意が必要です。
<男性ASDの場合>
男性の場合は、まず「関係ができない」ことが多いです。
そして交際・結婚後にうまくいかなくなることもあります。
具体的には「こだわりを押しつけるなど」して「加害者的」になってしまうことがむしろ目立ちます。
<女性ASDの場合>
女性の場合は、相手主導で関係自体はできることが多いです。
ただ「断れない」ため相手に支配・操作されてしまうリスクが高いです。
また物事を「真に受けてしまう」ことから、様々に「利用」されるリスクがあります。
(4)まとめ
今回は、女性の発達障害「女性のASDの男性との違い5つ」について見てきました。
ASD(自閉症スペクトラム)は女性では男性と比べ以下の5つのような出方の違いがあります。
●相対的には社会適応がいい
●受け身のことが多い
●困難が出る時期が遅い
●メルトダウンが内側に行く
●性的なリスク
女性のASDはまだ知られていないことも多く、ASDが隠れている可能性を考えていくことが大事になってきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)