女性のASD困難なライフイベント6つ
同年代・職場・結婚など
女性ASDでは、雑談・共感・マルチタスクに明確な弱点があります。
関連する同年代・恋愛・結婚などのライフイベントで困難が出ます。
もくじ
(1)はじめに
女性の発達障害。今回は「女性のASD困難なライフイベント6つ」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
女性のASD(自閉症スペクトラム)では、日常でも困難がありますが、その中で特に苦手困難なライフイベントがいくつかあります。
今回は、「女性のASD困難なライフイベント6つ」についてやっていきたいと思います。
(2)女性のASDを取り巻く環境
「社会から苦手を求められることもある」ということです。
<自閉症スペクトラム(ASD)>
ASDは「社会性の障害」と「こだわり」の2つが特徴的な生まれながらの発達障害です。
男女比は4対1とされまして、女性ですと10代での診断が多いです。
薬は特になくて特性への対処の継続が対策になってきます。
<女性のASDの特徴>
女性のASDでは「受動型」が多く、トラブルは少ない一方「巻き込まれやすい」事に注意が必要です。
10代に入って不適応になって診断されやすいのが特徴です。
そして、ストレスが内側に向いて「うつ」や「体調不良」などの形で出やすいところがあります。
<女性の環境の特徴>
男性と比べ、同年代同性での「雑談」を求められやすいところがあります。
そして、社会でも「合わせる」こと、「共感」をより求められやすい面があります。
また、育児や家事である種「マルチタスク」を求められることが多いです。
ここを見ていくと特性上「ASDの特性上苦手な場面が少なくない」です。
(3)女性のASD・困難なライフイベント6つ
特性と相性が悪いライフイベントに注意が必要です。
①思春期の同性集団
同年代の同性の集団が強いストレスになる場合があります。
<ガールズトーク>
これは10代で活発化します、同性同年代の雑談になります。
論理性よりは、その場の雰囲気と共感が求められて、話題がいろいろ変わるものになります。
時に悪口やいじめなどと連動することもあるので、注意が必要な部分もあります。
<女性のASDの苦手分野>
「集団での会話が苦手」というところが1つ目。
そして「共感と同調が苦手」というところ。
3つ目は「空気を読まない発言をしてしまう」ことです。
先程のガールズトークとは、非常に相性が悪いところがあります。
<現実的な対策>
まずは無理に会話に参加しないこと。
そして少数でいいので気を許せる友人を大事にして「孤立をなるべく避ける」こと。
そして参加する場合は基本は「うなずいておく」、一方無理筋要求に対しては「しっかり断る」ことが大事です。
②仕事への適応
職場に合わせ、同僚に合わせることが求められます。
<困難①職場に合わせる>
まずは社会的なマナーが求められます。
2つ目はいわゆる「マルチタスク」が求められます。
3つ目が「変化への対応」が求められる面があります。
<困難②同僚に合わせる>
その職場の「場の雰囲気」に合わせる必要があるというところ。
その中である種「テイカー」のような人がいますので、そこで必要な主張をうまくする等の対策が必要なこと。
そして飲み会等の「付き合い事への対応」が必要にあることがあります。
<現実的な対策>
まずは社会マナーなどは「技術として身につけていく」こと。
そして対人面は「支障ない範囲で最小化する」ことです。
それでも難しい場合は「合う環境を選んでいく」ことも現実的です。
③恋愛
利用・搾取されるリスクに注意が必要です。
<相手に利用・支配されるリスク>
ASD男性と少し違い「相手主導」であれば関係が生じることは少なくないです。
ただし、中には利用したり支配する為に近付く人もいます。
その中で「断る」ことがしっかりできないと、どうしても相手に操作される危険が出てきます。
<相手から奪ってしまうリスク>
自分の「こだわり」を相手に押し付けてしまうことがあります。
そして、共感のない発言で相手を傷つけてしまうことがあります。
そうすると、相手が疲弊し、時に心身に不調が出る場合もあります。
<現実的な対策>
まず「相手の意図を一歩引いて冷静に見極める」こと。
そして「理不尽な要求などははっきりと断る」ことが大事です。
一方で、相手にも「価値観や個性」があり、これを意識し「こだわりを押し付けない」ことが大事です。
④結婚生活
「一方的な関係性になるリスク」に注意が必要です。
<支配される関係性>
「受け身で断れない状態」だと、相手に悪意ある場合一方的に「支配」される場合があります。
その結果、モラハラや暴力的なことに発展するリスクもあるため注意が必要です。
また逃げ場ないため、「うつ」「不眠」等のメンタル不調になるリスクもあります。
<支配する関係性>
逆に、相手を「支配」する状態になる場合もあります。
自分のこだわりを一方的に押し付けてしまう場合。
そして相手に共感せず、相手の自尊心を奪ってしまう場合があります。
そうすると、逆に相手の方が「カサンドラ症候群」に至るおそれがあります。
<現実的な対策>
まず交流は「対等・尊重」土台の「フェアトレード」であることを意識することです。
そして危険があるなら、慎重に第三者へ相談をするというところ。
一方で、相手のニーズを聞き出して、そこに合わせることに「こだわる」のも一案です。
⑤子育て
「苦手なタイプの取り組みが重なる」ことに注意が必要です。
<子育ての負担>
まずはさまざまなことを同時にやる「マルチタスク」が求められるところ。
そしてお子さんの状態の「急な変化への臨機応変な対応」が求められること。
そして子供への「共感」が求められることです。
これらはいずれもASDは苦手というところがあります。
<現実的な対策>
まずは日々の「ルーチン」「マニュアル」で、ある程度「型を固定」することで安定を図ります。
そして、自分のこだわりから一歩引いて「冷静に柔軟になる習慣」をつけることです。
それでも難しい場合は、いわゆる「こども家庭支援センター」等に、必要時サポートの相談を検討します。
⑥家事
「家事」も苦手な「マルチタスク」という面があります。
<家事の負担>
家事はさまざまなことを同時にする「マルチタスク」です。
そして「浅く広く」が求められ、「こだわり」がしばしば逆効果になります。
また「完全主義」になると、する事の幅広さから疲弊し、不調になるリスクが高くなります。
<現実的な対策>
ここでも「ルール・ルーチン・マニュアル」である程度形を決めて対応していくのが土台です。
そしてここまでやればOKという「線引き」をしっかり定め「完全主義を防ぐ」こと。
それでも難しい場合は家事の一部を家族やサポートの人等に「お願いする」のも一つの方法です。
(4)まとめ
今回は女性の発達障害「女性のASD困難なライフイベント6つ」について見てきました。
女性のASDでは、以下の6つのような困難なライフイベントが出てくることがあります。
- ●思春期の同姓集団
- ●仕事への対応
- ●恋愛の関係
- ●結婚生活
- ●子育て
- ●家事
これらは「特性上の苦手」なので、できなくても「自分を責め過ぎず」、冷静にできる範囲で対策を取っていくことが大事です。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)