女性の発達障害の特徴5つ
過剰適応と二次障害に注意
女性の発達障害は、症状の目立ちにくさと過剰適応が目立ちます。
結果発見が遅れ二次障害が生じやすくなることに注意を要します。
もくじ
- (1)はじめに
- (2)発達障害と早期発見の重要性
- (3)女性の発達障害の特徴5つ
- ①症状が目立ちにくい
- ②発見が遅い
- ③目立つ不適応は少ない
- ④自己肯定感が下がりやすい
- ⑤二次障害が出やすい
- (4)まとめ
(1)はじめに
女性の発達障害。今回は「女性の発達障害の特徴5つ」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
発達障害といえば、男性のイメージを持つ方が多いと思います。しかし、実際は女性の方も少なくありません。
この背景は、「女性の発達障害は気づかれにくい」ということです。
結果、原因不明のストレスが続いてしまって、「二次障害」が出てしまいやすくなります。
なので「早めに気づいて早めに対策をとる」ということが、特にこの女性の発達障害で大事です。
では、女性の発達障害の特徴とは何でしょうか。
今回は「女性の発達障害の特徴5つ」について見ていきたいと思います。
(2)発達障害と早期発見の重要性
「二次障害を防ぐことが大事」です。
<発達障害とは>
発達障害は、生まれながらの得意と苦手の差が大きい「脳の特徴」です。
その結果、生活・対人関係などに影響が強く出やすいです。
そして「不適応」になりやすく、結果「うつ」など「二次障害」を「重ね着」しやすくなります。
<主な発達障害>
①ADHD
これは「不注意」「多動」「衝動」が特徴の発達障害です。
例えば「忘れ物」や「衝動的なイライラ」などが目立ちます。
②ASD(自閉症スペクトラム)
これは「社会性の障害(対人面の難しさ)」や「こだわり」の2つが特徴の発達障害です。
いわゆる「空気を読めない言動をしてしまう」などが目立ちます。
<発達障害の二次障害>
これは不適応などのストレスから二次的に出る症状になります。
「内側に出る症状」うつなどの場合と、「外側に出る症状」イライラなどが出る場合があります。
これはときにもとの特性以上に生活や人間関係などに影響が出る場合もあり注意が必要です。
<類似:重ね着症候群>
これは発達障害にうつなどの精神疾患が「重ね着」合併した状態です。
これは「うつ」「パーソナリティ障害」など様々ありかつ複数合併する事もあります。
そして「重ね着」が多くなるほど対策は難しくなります。
<二次障害や重ね着症候群のリスク>
まず「発見のおくれ」発見が遅れると、ストレス状態が続きリスクが増えます。
あとは「合わない環境」環境ストレスが大きくなり二次障害リスクが上がります。
「症状への未対応」症状持続からさらに「不適応」になり悪循環になります。
<二次障害・重ね着症候群を防ぐには>
まずは「早期発見」早めに発見して早めに対策を取ります。
そして「合う環境の模索」特性に合いストレスの少ない環境です。
そして「特性の対処と症状への対応」です。
<女性の発達障害の特徴>
まず症状が男性と比べて一部違い、かつ目立ちにくいです。
2つ目は結果「発見が遅れやすい」こと。
3つ目は「二次障害が発生しやすい」ことです。
(3)女性の発達障害の特徴5つ
「目立ちにくいということは、いい面だけではない」です。
①症状が目立ちにくい
「男性と一部違いがあり、かつ目立ちにくい」です。
<症状が目立ちにくい背景>
まずは「男性の発達障害とは症状の出方が一部違う」こと。
中でも外側より「内側」の方に出て目立ちにくいです。
関連してトラブルが少なく「事例化しにくい」です。
<ASDの症状の男女差>
男性では非常に「孤立」して目立つ場合、「かんしゃく」を起こしトラブルで目立つ場合等が多いです。
一方女性では「様子がうわの空」「周りに流されやすい」等、比較的目立ちにくいです。
<ADHDの症状の男女差>
男性では衝動性からの「暴力・けんか」や多動からの「授業中歩き回ってしまう」などが目立ちます。
一方女性では忘れ物が多かったり、授業中ぼーっとして集中できない等、同じく目立ちにくいです。
<女性の発達障害の症状の特徴>
まず症状が「外側には出にくい」ところ。
また「トラブル自体は少ない」こと。
そして忘れ物等「周りがカバーしやすい」ことがあります。
②発見が遅い
「大人になって見つかることも」あります。
<ASDの多い発見年齢>
男性では「3歳から9歳」就学前から小学校低学年までが多いです。
一方女性では「小学校高学年から中学生」10から15歳の方が多くなります。
<ADHDの多い発見年齢>
男性だと小学生「6から12歳」ごろ。
女性ではむしろ「大人になってから」が多いです。
<発見が遅れる背景>
まず女性の発達障害だと「症状が目立ちにくい」面があります。
そして「不適応が出やすい年代の違い」、女性の方が年齢が高いです。
そして、「過剰適応的に」自主的に適応を図ることも背景です。
<発見が遅れるデメリット>
まずは「療育支援の機会」が失われること。
関連して必要時の薬物療法の機会が失われること。
これらを背景に「二次障害」の合併リスクが上がります。
③目立つ不適応は少ない
「不適応の少なさはいい意味ばかりではない」です。
<女性で目立つ不適応が少ない背景>
まずはトラブルや症状が目立ちにくいこと。
また「自主的な適応の努力」が影響しますが、これはストレス面からは逆に危険もあります。
<女性の場合に想定される状況>
まずは「過剰適応」と言われる状態。
もう一つが「軽い不適応の持続」です。
1)過剰適応
過剰適応は一種「演じる」形で、社会や集団に適応する状態です。
結果一見「トラブル」は減り、外から見た適応は達成します。
ただ、自分とは違うものを演じているため、「自分軸が不明確になりやすい」です。
更に「無理をする」ためストレスがたまりやすく、自己肯定感が下がりやすい面があります。
2)軽い不適応の持続
トラブルまではいかない「軽い不適応」が続いた状態です。
この場合は、障害ではなくある種「劣っている」と見なされ、家族や知人から否定されやすくなります。
その結果ストレスが続き「自己肯定感が下がりやすく」なります。
④自己肯定感が下がりやすい
「素の自分が否定されていると思いやすい」です。
<自己肯定感が下がる背景>
まず診断前は原因が分からない中で色々「否定される」ことが続きます。
そして「原因を自分に帰属させる」自分のせいだと思うと、自己否定につながり自己肯定感が下がります。
発達障害の男女差の点では、女性の方が原因を「内側」に求めやすい傾向が言われます。
1)過剰適応の時
もとは「否定される」状態があり、その「適応の対策」として、演じるような「過剰適応」の形でやっていきます。
一見適応して認められるところもある一方、あくまで「素の自分の部分」は肯定されない面があります。
その結果、自己肯定感はむしろ下がることもあります。
2)軽い不適応が続く時
「理由が不明なままうまくいかない」状態が続きます。
結果他者からも「劣った」的な見方をされ、ネガティブな評価や反応が続きます。
そうした「他者の評価」を受け入れるほどさらに「自己否定」になる面があります。
<自己肯定感低下での悪影響>
まずは自分を信じられないので、自発的な行動が困難になります。
そして、慢性的なストレスやうつ症状が続きやすくなります。
これらを背景として、様々な二次障害の症状が出るリスクが上がります。
⑤二次障害が出やすい
「発見が遅れればストレス状態が続く」ことになります。
<女性で二次障害が出やすい背景>
まずは「発見の遅れ」が大きいです。
その結果、「慢性的なストレスの状態が(特に発見前)ずっと続く」ことになります。
その結果「自己肯定感が低下してしまいやすい」面があり、二次障害につながります。
<二次障害の例>
まずはうつや不安の症状。
そして女性だと「体の症状」頭痛・吐き気等が目立ちやすいです。
女性特有としては、いわゆる「摂食障害」過食や拒食の食事の問題で出る事があります。
そして長期続いた場合に、考えの偏り等「パーソナリティ障害」の状態になる事があります。
<女性の発達障害と二次障害の関連>
女性では、うつ等「二次障害」から受診して診断につながる場合が男性より多いです。
男性だと「特性からのトラブルなどでの受診」が多い一方、女性では「うつなどの症状」から受診に至ります。
そして「ADHDの特性からの受診・診断の場合」でも、よく調べるとしばしば「二次障害」を合併してします。
女性の発達障害の発見・診断時には、二次障害をすでに合併していることが非常に多いです。
(4)女性発達障害の二次障害の対策
「早期発見して二次障害を防ぐ」ことが要点です。
<ポイントは二次障害の最小化>
女性の発達障害では、男性よりも二次障害の比重が大きいです。
そして「発見の遅れ」を背景に二次障害が出やすい点があります。
一方で「二次障害」は「特性自体」よりは対策で改善の余地があります。
なので、まさに重点的に取り組みたいところです。
対策の方向性は「早期発見・早期対策」「セルフケア」「環境や友人選び」の3つです。
①早期発見・早期対策
<早期発見のメリット>
まずは早期発見できれば「療育」など治療的な対応を始められやすい点です。
そして「必要時の薬物療法」などを行い必要な改善を図りうる点。
そして診断があれば、特性に「合う環境を選ぶヒント」になる面があります。
<療育など>
もし症状が重めなら、「通級教室」などの専門的なサポートを受けられます。
また家では「失敗を責め過ぎず、成功を褒める」「ペアレントトレーニング的なアプローチ」をとれます。
専門的な方法が仮になくても、周りが特性を知り、否定的言動を減らすだけでも効果が見込めます。
<薬物療法>
ADHDでは薬の使用で、特性改善の余地があるとされます。
その結果適応が改善しストレスも減り「二次障害」のリスクが減ることが期待できます。
ASDでも直接的な薬はない一方「イライラなど」に対し薬が有効な場合があります。
②セルフケア
<セルフケアとは>
もし特性や不適応の原因が分かれば自分でできる対策「セルフケア」は少なくありません。
発達特性に関して地道な「セルフケア」の余地があります。
そしてストレスや二次障害に対しても別の「セルフケア」の余地があります。
<特性のセルフケア>
例えば交流が得意な人のことを観察して「モデリング」まねしていく方法があります。
そしてさまざまな「マニュアルを介した学習」が有効な場合があります。
ADHDではかっと来た時に衝動に「一歩ひく」練習を繰り返すことで効果を見込める面があります。
<ストレスへのセルフケア>
まず否定的な言動を受けた時にそれを真に受けすぎず「受け流す」練習。
そして「自己否定」的なくせがあった場合に、それに対して「別の見方がないか」を探す練習。
そしてある種「自分で自分を応援する」練習も方法です。
③環境・友人選び
<環境を選ぶ>
環境選びは、ストレス対策、二次障害対策の面で非常に大事です。
特性を生かせて、苦手をカバーできる環境が選べるのが理想的です。
まず第一歩は、「自分の今ある環境」から受けているプラスマイナス双方の影響を分析すること。
そしてもし非常にマイナスが大きいなら、勇気を持ちその場を一旦「去る」のも方法です。
<友人関係を選ぶ>
友人関係を選ぶことも、ストレス対策、二次障害対策の面で非常に大事です。
「対等な関係でプラスの影響を与えあえる関係」は貴重で大事にしたいところです。
一方、そうでない関係も結果としてあり得るところです。
ここで「友人関係の影響」、自分がどんな立場でどんな影響を受けているかを分析します。
そして、「支配」「利用」される等負の要素が大きいなら、勇気を持ちその関係を一旦「切る」のも方法です。
(5)まとめ
今回は女性の発達障害「女性の発達障害の特徴5つ」について見てきました。
女性の発達障害は、目立ちにくさ等から発見が遅れることが多いです。主な特徴は、以下の5つになります。
- ●症状が目立ちにくい
- ●発見が遅い
- ●目立つ不適応が少ない
- ●自己肯定感が下がりやすい
- ●二次障害が出やすい
二次障害からの悪循環を防ぐために、特に女性の発達障害では「早期発見・早期対策」が重要になってきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)