グアンファシン(インチュニブ)
多動・衝動に有効なADHD治療薬
グアンファシン(インチュニブ)は、依存のないタイプのADHD治療薬です。
効果が出るまで2-4週、特に多動・衝動性に対しての効果を見込みます。
副作用の眠気・倦怠感に注意しつつ継続し、生活面の工夫の実践を並行します。
もくじ
- (1)はじめに:ADHD治療薬グアンファシン(インチュニブ)
- (2)グアンファシン(インチュニブ)とADHDの概略・症状
- (3)ADHDの、2つの脳機能の障害(実行機能・報酬系)
- (4)機能障害と効果までの期間、グアンファシンの効く部分
- (5)グアンファシン(インチュニブ)の作用機序
- (6)グアンファシン(インチュニブ)の効果の特徴と副作用
- (7)グアンファシンの長所と短所
- (8)グアンファシン(インチュニブ)を検討する場面
- (9)グアンファシン(インチュニブ)の実際の使い方
- (10)まとめ
(1)はじめに:ADHD治療薬グアンファシン(インチュニブ)
心療内科・精神科の薬。今回は、グアンファシン(インチュニブ)についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科、精神科の薬の動画では、メンタル分野の様々なお薬に対してご紹介をしていきます。
今回は多動・衝動に特に効果を見込む、依存のないタイプのADHD治療薬「グアンファシン(インチュニブ)」についてやっていきたいと思います。
(2)グアンファシン(インチュニブ)とADHDの概略・症状
<グアンファシンとは>
まず、このグアンファシン(インチュニブ)ですが、これは依存がなく、特に多動・衝動への効果を見込むタイプのADHD治療薬です。
副作用は眠気・だるさが出る方がいて、ここで相性があります。
効くまでは1から3週間が一つの目安になってきます。
<ADHDとは>
では、この「ADHDとは」というところを振り返りますけれども、これは不注意・多動・衝動性が特徴的な生来の発達障害です。
幼少期に不注意などで見つかることが多いですが、大人になってから不適応を繰り返すことで見つかるという方もいます。
薬によって症状の緩和・弱まることを見込みますが、同時に生活面の工夫を一緒にやっていくことが大事です。
<ADHDの症状>
ADHDの症状ですが、大きく言うと不注意・多動・衝動性があります。
不注意は注意がそれる、ものを忘れてしまう、先送りにしてしまう等の症状が出てきます。
多動に関しては、そわそわして動き回る他、「頭が多動」で考えがめぐってしまう方、あとは喋り過ぎてしまう方などがいます。
衝動性に関しては、つい衝動的にやってしまうという方、ストレスに対して敏感という方、あとは気分の波が強くなる方がいます。
(3)ADHDの、2つの脳機能の障害(実行機能・報酬系)
このADHD、脳の機能の障害というところで見ると、大きく言うと2つの障害があります。
1つ目が実行機能の障害です。これは物事を順序立てて考えることが苦手で、脳の場所では前頭葉が影響します。
2つ目が報酬系の障害です。これはいいこと(報酬)というのを待てないことが特徴で、脳の別の場所「側坐核」が影響するとされます。
少し詳しく見ていきます。
<実行機能の障害>
まずはこの実行機能系の障害ですが、これは脳の前頭葉のノルアドレナリン・ドパミンの不足が背景にあって起こるとされます。
不注意に関しては、注意や集中を続けたり、計画をして計画を立てて物事をやる事の困難。
多動・衝動性に関しては、抑制・抑えが利かずに衝動的に動いてしまうという形で出ることがあります。
<報酬系の障害>
もう一つの報酬系の障害ですが、これは脳の「側坐核」のドパミンの不足から起こるとされます。
不注意に関しては、すぐにいいこと(いわゆる報酬)がないとすぐ注意が逸れてしまうという形で出ます。
多動・衝動性に関しては、同じくすぐにいいこと(報酬)がないと待つことができず別のことをしてしまうという形で出ます。
(4)機能障害と効果までの期間、グアンファシンの効く部分
<脳機能と薬が効くまでの期間>
この2つの障害と薬が効くまでの期間ですが、実行機能系は(効果まで)少し時間差があります。
脳のバランスを取るための期間2から4週が目安とされます。
一方、報酬系に対してドパミンを補充しますと、これはすぐ効果が出ます。
<グアンファシンの効く部分>
その中でグアンファシン(インチュニブ)では基本的には実行機能・前頭葉の方への効果を見込みます。
あと、補助的には交感神経系・緊張の神経の抑制・抑えるということが影響するとも言われています。
一方で、報酬系にはあまり効果がないとされます。これは悪い意味もありますが、一方で依存が目立たないことでもあります。
(5)グアンファシン(インチュニブ)の作用機序
グアンファシンの作用機序は大きく言うと2つです。主なものとしては、前頭葉でのα2受容体の刺激、2つ目が交感神経の全般的な抑制です。
①前頭葉でのα2受容体刺激
神経細胞・前頭葉にも神経細胞がありまして、細胞ともう一つの細胞の間に隙間があり、前と後で繋いでいきます。
このグアンファシンでは、後の方の神経細胞シナプスにある「α2受容体」を刺激しまして、結果神経伝達の漏れが減ることで、「神経のシグナル伝達」が増えます。
それで活性が落ちていた実行機能・前頭葉の機能が活性化され、不注意・多動・衝動性が改善してくる。こういったものになってきます。
②交感神経の抑制
これはもとはグアンファシン(インチュニブ)は、降圧薬として初めは開発されていました。
交感神経を全般的に抑える面があり、その結果、イライラなどを抑えたり、結果衝動なども抑えることを見込みます。
ただこれは一方で徐脈、眠気、血圧低下の原因にもなり得るので、注意も必要です。
<まとめると>
このグアンファシンの作用機序、もう一回まとめ直しますと、1つ目が前頭葉のシグナル伝達を強めて実行機能を改善する。
2つ目が交感神経を抑えて、衝動やイライラを改善する。この2つです。
(6)グアンファシン(インチュニブ)の効果の特徴と副作用
<グアンファシン(インチュニブ)の効き目の特徴>
まず1つ目としては依存がなく、3つの症状に効果を見込みます。
その中で特に衝動性、多動・衝動・怒りに対しての効果を見込みます。
効果が出るまでは1から3週、アトモキセチンと比べるとやや早いです。
<グアンファシンの副作用>
まずは日中の眠気や倦怠感(だるさ)。
2つ目が血圧が下がったり、徐脈・脈が遅くなったりすること。
この結果、立ちくらみ・めまい、あと重いと一時的な失神が出る方も(まれに)います。
(7)グアンファシンの長所と短所
<グアンファシンの長所>
1つ目としては衝動や怒りへの効果を見込むところ。
2つ目は、効果がアトモキセチンと比べると比較的早いというところ。
3つ目はアトモキセチンで出るようなお腹の副作用は出にくく、メチルフェニデート(徐放製剤)のような依存性も目立たないです。
<グアンファシンの短所>
まず1つ目は、不注意に対しての効果は多動・衝動と比べると限定的な場合があります。
2つ目としては眠気やだるが結構強い場合もあり、これで続けにくいことがあります。
3つ目としては、それを防ぐ為に徐々に増やしていくルールですが、有効な量まで増やすのに時間を要することが結果として多くあります。
(8)グアンファシン(インチュニブ)を検討する場面
まずは多動や衝動・怒りが主なタイプのADHDの方の場合はまさに適応になると思われます。
2つ目はアトモキセチン(ストラテラ)が無効か副作用で継続・続けることが難しい場合には適応になるかと思います。
3つ目としては、依存を起こさない治療を重視するとき。この場合、理論上はアトモキセチンとの併用も、選択肢の一つです。
(9)グアンファシン(インチュニブ)の実際の使い方
では、このグアンファシン(インチュニブ)、実際の使い方を見ていきたいと思います。
<開始>
大人の方ですと1日2ミリ夕方もしくは寝る前に使います。ただ、副作用をなるべく減らすという意味では、より少ない1ミリから始めるということも、臨床的にはあり得るかと思います。
人によって、眠気やだるさが目立つことがあります。なるべく慣れることもあるので、なるべくは慣らすことを目指していきます。
ただしあまりに生活に困難が強くなってしまった場合、または副作用の中でも失神するなど、ちょっと強い副作用だったり、リスクの高い副作用が出る場合に関しては中止をしてください。
<継続・増薬・無効時など>
そしてまずは2から4週を目安に、初期の量(はじめの量)で経過を見ていくのが一般的かと思われます。
その中で副作用がある時はあまり増やすということをしないで、少ない量でじっくり慣らすということをしていくと思われます。
そして、量が不十分という場合、効果が不十分という場合に関しては、1ミリずつ徐々に増やすというのが副作用を減らすためのルールになります。
1ミリずつ徐々に増やして最大6ミリという量まで増やすことがあります。
増やした時に、副作用・眠気等が目立つ場合は増やす前の量に戻していきます。
そして、最大量でも無効もしくは(副作用で)それ以上飲めないという場合に関しては、他のADHD治療薬を検討したり、もしくは薬以外の工夫でやっていくというのも選択肢になるかと思います。
そして、この効果が出る出ないを問わずに、生活の中でも対策、特に多動・衝動に対して一歩引いて冷静にやるなどの対策に関しては並行して行っていきます。
<減薬等>
効果があった場合、最低数カ月から1年以上は先ほどの多動・衝動などの工夫を続けながら同じ量を続けていきます。
その間に多動や衝動に対しての「薬以外の工夫」というのを繰り返し練習して身につけていきます。
そして、工夫が十分に定着してかつ安定してきた場合に、減らすことでの悪化のリスクを踏まえながらも、慎重に徐々に減らしていきます。
減らした時に、再度多動・衝動などが強く再燃するようであれば、これは減らす前の量に戻していきます。
(10)まとめ
今回はグアンファシン(インチュニブ)にについて見てきました。
このグアンファシン(インチュニブ)は依存がなく、特に多動・衝動性に対して効果が見込まれますADHD治療薬になります。
主には、前頭葉の神経細胞のシグナル伝達を増やしまして、実行機能を改善。それによってADHDの症状の改善を見込むものになります。
効くまで目安は1から3週、眠気やだるさが主な副作用です。徐々に増やしながら使ってきまして、生活面の工夫は並行して行っていきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)