加味帰脾湯
不安・不眠等に効く漢方薬
加味帰脾湯は、不安・不眠などの精神症状の改善を見込む漢方薬です。
効果はゆっくりかつ弱めですが、副作用・依存・眠気が目立たないのが長所です。
そのなかでも、倦怠感や疲労感が目立つ状態において効果を期待します。
もくじ
- (1)はじめに:だるさ等に使う漢方薬「加味帰脾湯」
- (2)加味帰脾湯と・漢方薬の特徴
- (3)疲れ・だるさ・意欲低下への薬
- (4)加味帰脾湯の長所や特徴・検討場面と副作用
- (5)加味帰脾湯の実際の使い方
- (6)まとめ
(1)はじめに:だるさ等に使う漢方薬「加味帰脾湯」
心療内科・精神科の薬。今回は「加味帰脾湯」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科・精神科の薬の動画では、メンタル分野のさまざまなお薬についてご紹介をしています。
今回は、だるさなどを伴う不安に使うことがある漢方薬「加味帰脾湯」について見ていきたいと思います。
(2)加味帰脾湯と・漢方薬の特徴
この「加味帰脾湯」、まずまとめますと、「だるさや不眠および不安の改善を図る漢方薬」になります。
<漢方薬と加味帰脾湯>
漢方薬は、生薬の組み合わせでさまざまな効果を出す薬になってきます。
その中で、不安や緊張などの精神症状の改善を見込む漢方もいくつかあります。
効果はゆっくりでかつ弱めですが、副作用はあまり目立たないのが特徴です。
加味帰脾湯は不安・不眠などに効果を見込む漢方薬になります。
(3)疲れ・だるさ・意欲低下への薬
疲れや意欲低下などというところにも(加味帰脾湯を)使うことがあります。
疲労等に対しての薬を見ていきますと、まずは「抗うつ薬」、あと「アリピプラゾール」という抗精神病薬、あとは眠りという意味で「睡眠薬」。その上で加味帰脾湯もあります。
<抗うつ薬>
抗うつ薬は続けることで、うつや不安の改善を図る薬になります。
特に「SNRI」という種類の抗うつ薬だと意欲の改善・やる気を出す効果も期待します。
ただし、不安などに比べ意欲低下の症状は残りやすいところがあります。
<アリピプラゾール>
これは元は抗精神病薬ですが、少量でうつの改善効果を見込むものになります。
主には抗うつ薬と併用し、意欲の改善などを図っていきます。
これは徐々に回復をするというよりは「何とか(無理に)動かす」という印象が臨床上あります。不眠の副作用が出る事もあります。
<睡眠薬>
睡眠薬では睡眠を改善することで、だるさや意欲などの改善を二次的に図っていきます。
依存がないタイプの薬もありますが、効果に個人差があったり、朝残ってしまうことがあります。
いわゆる一般のベンゾジアゼピン系睡眠薬ですと効果は強いんだけども、依存のリスクがどうしても生じます。
<加味帰脾湯>
加味帰脾湯は不安や緊張を和らげる漢方薬になります。
結果、緊張を和らげることで睡眠に関しても一部改善を図る面があります。
漢方薬の中では、「倦怠感などだるさや、疲れなどが目立つ状態」に対しての効果を見込む部分があります。
(4)加味帰脾湯の長所や特徴・検討場面と副作用
<加味帰脾湯の長所と特徴>
まずは副作用・依存・眠気が、向精神薬と違い目立ちません。
そして、漢方の中でいくと、よりだるさ・不眠などへの効果を期待する部分があります。
そして、一回当たりの錠数は多いですが、錠剤があるのが特徴です。
<加味帰脾湯を検討する場面>
まずは前述のようなだるさや不眠が目立つ時があります。
あとは、なるべく安全に治療したい時。他の向精神薬より安全性が高いところがあります。
あとは症状が効くまで「待つことができる」状態の時。どうしても漢方薬なので効くまで時間がかかります。待てない状態の時には、別の薬の方がいいということがあります。
<加味帰脾湯の副作用>
基本的にはあまり多くはありません。ただ、一つ注意点なのが「むくみ」、メカニズムとしては「低カリウム血症」です。
どうしても「甘草」という成分がむくみを引き起こす可能性があるため、そこは注意が必要です。
(5)加味帰脾湯の実際の使い方
加味帰脾湯は1日2から3回食前に使っていきます。粉の場合や錠剤の場合があります。
個人差はありますが効くまで時間がかかりますので、原則は1か月は待っていただけたらと思います。
その中で相性は確かにあるため、十分待ってもあまり効果がない場合は、他の漢方薬などを検討します。
そして、症状がどうしても不安定で「待てない」状態なら、他の向精神薬を検討していくことになるかと思います。
(6)まとめ
今回は漢方薬「加味帰脾湯」について見てきました。
この加味帰脾湯は、不安や不眠などの改善を図る漢方薬でして、だるさなどが目立つ時に効果を期待します。
他の向精神薬と比べると、効果は遅く弱めですが、副作用・眠気・依存が目立たず安全に使うことができます。
不安や緊張の漢方の中でも、だるさ・不眠などが目立つ時に、他の薬よりこの加味帰脾湯に効果を期待します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)