加味逍遙散
更年期障害・PMSに
加味逍遙散は、不安等の精神症状、頭痛などの身体症状の双方に効果を期待します。
更年期障害やPMS(月経前症候群)の治療に特によく使われます。
もくじ
(1)はじめに:加味逍遙散
心療内科・精神科の薬。今回は「加味逍遙散」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科、精神科の薬の動画では、メンタル分野のさまざまなお薬についてご紹介をしています。
今回は、更年期障害やPMS(月経前症候群)でよく使われます漢方薬「加味逍遙散」について見ていきます。
(2)漢方薬「加味逍遥散」
この漢方薬「加味逍遙散」は、「更年期障害などで使う、効果の幅広い漢方薬」です。
<漢方薬とは>
漢方薬は、生薬の組み合わせによってさまざまな効果を期待する薬になります。
その中に不安、緊張など精神症状に対して改善を見込むものもあります。
効果はゆっくりで弱めですが、副作用があまり目立たないのが特徴です。
<加味逍遥散とは>
加味逍遙散は、特に更年期障害やPMSでよく使われる漢方薬です。
使われる漢方の「生薬」の種類が幅広く、効果も幅広いところが特徴です。
精神面(不安など)や自律神経症状の双方に効果を期待するものになります。
<効果を期待する心の症状の例>
まずは「不安や緊張」、そして「イライラ」「不眠」の症状などに効果を見込みます。
<効果を期待する体の症状の例>
様々ありますが、「肩こり」「めまい」「頭痛」の症状などに効果を期待します。
(3)更年期障害やPMSの治療と漢方薬
この更年期障害とPMSは、どちらも「ホルモン変化への心身のさまざまな症状」です。
<更年期障害とは>
これは「閉経前後」の急なホルモン変化を背景に、心身の両面に幅広い症状が出る障害です。
人によって出る症状の種類や、幅広さ・程度は個人差が大きいです。
<PMSとは>
PMSは、「生理前」のホルモンの急な変化を背景として、心身両面に幅広い症状が出るものです。
人によって出る症状の種類や強さはかなり個人差が大きいです。
<更年期障害やPMSの治療>
主な候補は、「抗うつ薬」「抗不安薬」「タンドスピロン」「ホルモン治療(婦人科)」「漢方薬」の5つです。
①抗うつ薬
抗うつ薬は、脳のセロトニンを増やすなどの作用でうつや不安を改善する薬です。
更年期障害・PMSでも使うことがあります。
特に精神症状が強い時に、自律神経の症状も改善を期待しながら使うことがあります。
②抗不安薬
抗不安薬は、即効性のある「ベンゾジアゼピン系」の薬になります。
不安や緊張のほか、結果として「自律神経の症状」にも効果を期待しす。
ただ、ベンゾジアゼピン系ですので、続けると効果が弱まり、かつやめにくい「耐性」や「依存」に注意が必要です。
③タンドスピロン
タンドスピロンは、依存性がないタイプの不安を取る薬です。
抗不安薬より弱いですが、不安に関しては漢方薬より基本的には強いです。
一方、眠気が出ることがあり、「血流の改善」の効果はありません。
④ホルモン治療
ホルモン治療は、更年期での「ホルモン補充療法」、PMSでの「ピル」使用があります。
根本の「ホルモン」への介入のため、合えば幅広く強い効果を期待します。
ただ相性や、(婦人科的な)適応・不適応があるため、婦人科に相談をお願いできればと思います。
⑤漢方薬
漢方薬は続けることで、心身の症状への効果を期待する薬です。
眠気や依存がなく、副作用はあまり目立たないです。
ただ、効果はゆっくりかつ弱く、かつ個人差も比較的大きいです。
(4)更年期・PMSの三大漢方薬
更年期・PMSでの「3大漢方薬」は、「加味逍遥散」「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」の3つです。
<加味逍遙散の特徴>
加味逍遙散はどちらかというと、体よりも精神的な症状が主体の時に効果を期待します。
その中で、効果は「広く浅く」というところです。
幅広い症状が出ている時に、特に適応になります。
<当帰芍薬散の特徴>
当帰芍薬散は、疲れやすく、体の症状が目立つ方に対して有効を期待します。
主にむくみ・頭痛・めまいなどの体の症状が主体である方に使います。
その中で、不安などの精神症状を合併している時にはその効果も期待します。
<桂枝茯苓丸の特徴>
桂枝茯苓丸は、普段体力がある方の更年期障害に効果を期待します。
主に頭痛、肩こり、のぼせなどの体の症状が主にある場合に使われます。
その中でイライラなどを合併した時に効果を期待するところがあります。
<三大漢方薬の使い分け>
「加味逍遥散」は、精神面が主体の時や、幅広い症状がある時に効果を期待します。
「当帰芍薬散」は、疲れやすい方や体の症状が主な時に効果を期待します。
「桂枝茯苓丸」は、普段体力がある方の体の症状やイライラに効果を期待します。
(5)加味逍遥散の副作用・用法等
<加味逍遥散の副作用>
漢方薬なのであまり多くはありません。
1つ目は「偽性アルドステロン症」。臨床的にはむくみや体重が増えることで目立つため、その場合はご相談いただけたらと思います。
もう一つが「肝機能障害」肝臓に負担がかかる場合が時としてあります。
<加味逍遙散を検討する場面>
まずは精神面・身体面に幅広い不調がある時が検討のポイントです。
あとはその中でも、更年期障害やPMSといったホルモン関連の症状の場合には有効性を期待します。
そして他の治療と比べ、副作用・依存などが少ない治療を希望の時に適応になります。
<加味逍遙散の実際の使い方>
基本的に1日2日から3回、原則食前に使います。食後でも可能ですが、処方薬だと原則「粉薬」になります。
個人差はありますが、原則1か月は待ってきたいところ。
そして続けても無効であったり、副作用が目立つ場合は他の漢方薬を検討します。
また、症状が不安定なときは他の治療薬を検討します。
(6)まとめ
今回は漢方薬「加味逍遙散」について見てきました。
この加味逍遙散は特に更年期障害やPMSで使う漢方薬で、心身両面に幅広い効果を期待します。
更年期障害では他に当帰芍薬散、桂枝茯苓丸が候補ですが、その中で精神面が主体で症状が幅広い時が加味逍遙散の適応です。
他の治療法と比べると、副作用の少なさが長所です。一方で「続けても無効」「期間を待てない」時は、他の治療法を検討します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)