十全大補湯

疲労感・食欲低下等に

十全大補湯は、疲労感・食欲低下やうつ・自律神経症状に効果を期待します。

 

他の治療薬と比べると効果は弱めですが、安全性を期待します。

 

動画:十全大補湯

もくじ

 
  1. (1)はじめに:十全大補湯
  2. (2)漢方薬「十全大補湯」
  3. (3)倦怠感、食欲不振の薬と十全大補湯
  4. (4)十全大補湯と似た漢方薬
  5. (5)十全大補湯の副作用・用法等
  6. (6)まとめ
  7.  

(1)はじめに:十全大補湯

心療内科・精神科の薬。今回は「十全大補湯」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

この心療内科、精神科の薬の動画では、メンタル分野の様々なお薬についてご紹介をしています。

今回は疲労感、食欲低下などに効果を期待する漢方薬「十全大補湯」について見ていきたいと思います。

(2)漢方薬「十全大補湯」

この「十全大補湯」とは、疲労感・食欲低下などに効果を期待する漢方薬です。

<漢方薬とは>

漢方薬は、「生薬」の組み合わせで様々な効果を出す薬になります。

その中で、不安や倦怠感など精神症状の改善を期待するものもあります。

効果はゆっくりでかつ弱めなんですが、副作用が目立たないのが特徴です。

<十全大補湯とは>

十全大補湯は「補気剤」と言われるものの一つで、気力などを戻すことを期待する漢方薬です。

疲れ、倦怠感、食欲不振などに効果を期待します。

そして、頭痛など「自律神経症状」にも有効な場合もあります。

(3)倦怠感、食欲不振の薬と十全大補湯

倦怠感や食欲不振の薬は色々あります。

代表例は「抗うつ薬(SSRIなど)」「スルピリド(別の抗うつ薬)」「消化管運動改善薬」及び「十全大補湯」です。

①抗うつ薬(主にSSRI)

抗うつ薬は続けることで「うつ・不安」を改善を図る薬です。

うつに伴う倦怠感や食欲不振には効果を期待します。

一方で、人によっては副作用で食欲が落ちる人もいます。

②スルピリド

スルピリドは、以前は胃薬としても使うことがあった弱めの抗うつ薬です。

食欲の改善・うつ改善の双方を期待します。

ただ、プロラクチンというホルモンを上げ、女性の場合は生理不順に注意が必要です。

③消化管運動改善薬

これは吐き気止め「メトクロプラミド」などいくつかあります。

胃腸の動きを良くして、食欲の改善を図るものです。

ただし、基本的には内科的な薬ですので、精神症状にはあまり効果を期待しにくいです。

④十全大補湯

十全大補湯は続けることで倦怠感、食欲低下などに効果を見込むのです。

副作用は目立たず、場合によっては頭痛などの自律神経症状にも効果を期待します。

効果はゆっくりかつ弱く、個人差はあるというのが弱点になります。

(4)十全大補湯と似た漢方薬

代表的な十全大補湯と似た漢方薬は「補中益気湯」「六君子湯」「人参養栄湯」の3つです。

①補中益気湯

補中益気湯は、食欲低下や疲労感などに効果を見込む漢方薬になります。

気力などを戻すことを期待するものにです。

その中で胃もたれなどは出にくいため、食欲低下改善を主に目指す方には補中益気湯が適応になります。

②六君子湯

六君子湯は、胃もたれで食べにくい時に有効とされる漢方薬です。

特に吐き気が強い方には効果を期待するところがあります。

その中で、過敏性腸症候群に対して使う事もあります。

③人参養栄湯

人参養栄湯は、体力低下、食欲低下などで使う漢方薬です。

主には、高齢者の方に使うことが多いところがあります。

そして、人により不安に対しても効果が出る場合があります。

(5)十全大補湯の副作用・用法等

<十全大補湯の副作用>

頻度は少ないんだけども、一部注意が必要ものがあります。

まずは「偽性アルドステロン症」臨床的にはむくみや体重増加時にこの副作用に注意が必要です。

続いてが「肝機能障害」もう一つあるのが「胃もたれ」になります。

意外とこの十全大補湯は胃もたれが出やすいことがあるので注意が必要です。

<十全大補湯を検討する場面>

まずは「疲労倦怠感や食欲の不振などが目立つ」時。

そして「他の自律神経症状を合併している時」です。

そして、他の治療と比べ「副作用が少ない治療」を希望した時には、この十全大補湯が候補になります。

<十全大補湯の実際の使い方>

十全大補湯は1日2から3回、原則食前に使います。食後でも可能です。

効果が出るまで個人差はありますが、基本的にはゆっくり1か月は待ちたいところです。

1か月続けても無効な時、あと副作用で続けにくい時は他の漢方薬を検討します。

そして、「症状が不安定でなかなか待てない」場合では、他の治療薬を検討することになります。

(6)まとめ

今回は心療内科、精神科の薬「十全大補湯」について見てきました。

十全大補湯は、倦怠感・疲労感やそれに伴う食欲低下に効果を期待する漢方薬です。

他の抗うつ薬などと比べて副作用が目立たず、「待てる」かつ「安全性を重視」の時には漢方薬治療が選択肢になります。

その中でも「疲労感が主体」「他の自律神経を合併」の時は、この十全大補湯が選択肢になると思われます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)