エチゾラム(デパス)
短時間型のベンゾジアゼピン系抗不安薬
エチゾラム(デパス)は「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬です。
長さは「短時間型」効果の早さ・明確さなどから、強い不安の頓服等でよく用いられます。
一方で薬の「切れる」感覚が出やすく、依存や耐性には特に注意が必要な面があります。
もくじ
- (1)はじめに:抗不安薬エチゾラム(デパス)
- (2)エチゾラム(デパス)・及び抗不安薬について
- (3)抗不安薬の2つの使い方
- (4)抗不安薬の時間での分類とエチゾラム(短時間型)の特徴
- (5)エチゾラム(デパス)と似た薬
- (6)エチゾラム(デパス)の長所・短所と副作用
- (7)エチゾラム(デパス)を使う代表的な場面5つ
- (8)まとめ
(1)はじめに:抗不安薬エチゾラム(デパス)
心療内科・精神科の薬。今回は「エチゾラム(デパス)」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科、精神科の薬の動画では、メンタル分野のさまざまなお薬についてご紹介をしています。
今回は効果は明確な一方、依存に注意が必要な抗不安薬「エチゾラム(デパス)」についてやっていきたいと思います。
(2)エチゾラム(デパス)・及び抗不安薬について
<エチゾラム(デパス)とは>
エチゾラムはベンゾジアゼピン系の抗不安薬の一つになります。
その中で効果が短い「短時間型」に分類され、頓服薬でよく使います。
効果は明確で強い一方で、逆に依存や耐性には特に注意が必要になってきます。
<抗不安薬とは>
抗不安薬は主に「ベンゾジアゼピン系」の不安を取る薬になります。
即効性はある一方で、依存・耐性というところに注意が必要になってきます。
持続時間は様々あり、使い方はそれによって変わってきます。
(3)抗不安薬の2つの使い方
①頓服薬
これは主に「効果の短い薬」での使い方になります。
強い不安や発作の時に使い、飲んでから15から20分で効果を見込みます。
使い過ぎると依存や耐性のリスクあるため、必要な時に絞るのがコツです。
②定期使用
これは主に「効果の長い薬」での使い方になります。
「ゆっくり1日中効かせる」ことを目標にして、不安の全般的な改善を図っていきます。
効果は短い薬でも定期使用することはあり、効果自体は強力なのですが、その分依存のリスクはより高くなるため、注意が必要になってきます。
(4)抗不安薬の時間での分類とエチゾラム(短時間型)の特徴
<抗不安薬の持続時間ごとの分類>
まず一番短いのが「短時間型」になります。次に短いのが「中間型」、やや長いのが「長時間型」になりまして、一番長いのが「超長時間型」になります。
この中で使い方は、長時間型と超長時間型の間で大きく違いがあります。
<各持続時間の薬の例と半減期>
まず短時間型で代表的なのが今回の「エチゾラム(デパス)」です。半減期(薬の濃度が半分になるまでの時間)は6時間と短くなっています。
中間型の代表的な薬は「ロラゼパム」、この半減期は12から20時間になります。
長時間型ですと「ジアゼパム」が代表的で、半減期は57時間になります。
超長時間型ですとロフラゼプ酸エチルがあり、これは半減期122時間と非常に長いものになります。
<エチゾラム(短時間型)の特徴>
第一の特徴としては、効果が早くかつ短いという点です。
強い不安に対して、主に頓服で有効性を出します。
ただ、逆に依存・耐性には特に注意が必要になります。
(5)エチゾラム(デパス)と似た薬
同様の短時間ですとクロチアゼパム(リーゼ)、やや長い中間型ですとロラゼパム(ワイパックス)等があります。
<クロチアゼパムとの違い>
エチゾラムの方が、効果に関しては理論上・実感としても強めです。
眠気や筋弛緩作用・筋肉を緩める作用も強いです。
一方で、「薬が消えたような感覚」が出やすい面があり、依存にはより注意が必要になってきます。
<ロラゼパムとの違い>
エチゾラムの方が効果をより早く実感しやすい面があります。
明確に効果を実感することができる一方で、薬が消えた時の印象も出やすい面があります。
そのため、依存のリスクにはロラゼパムと比べても注意が必要です。
(6)エチゾラム(デパス)の長所・短所と副作用
<エチゾラム(デパス)の長所>
まずは「効果が早く実感しやすい」面があります。
そして、筋弛緩作用が比較的強く、体の緊張がある方にも効果が見込めます。
また、眠気も出る面があるため、「不安からの不眠」にも効果が期待します。
<エチゾラム(デパス)の短所>
まずは依存や耐性には、特に注意が必要な薬になってきます。
そして筋弛緩作用がある一方で、ふらつきや転倒のリスクがあり、特に高齢者の場合注意が必要です。
また、日中使った場合にも眠気が出ることがある点にも注意を要します。
<エチゾラム(デパス)の副作用>
まず第1には依存や耐性に注意が必要です。
そして、ふらつき・めまいなどの筋弛緩作用に注意が必要です。
また、眠気やだるさも比較的出やすく注意が必要です。
(7)エチゾラム(デパス)を使う代表的な場面5つ
①パニック障害の頓服
パニック障害の「パニック発作」に対して使い、15分程で効果を見込みます。
そして、これは常に持って使えるようにすることで、予期不安などを予防する効果も、現実的には期待します。
エチゾラムは効果が早く明確で使いやすいですが、依存のリスクには注意が必要です。
<補足:パニック発作と似た場面>
まずパニック障害の脱感作、改善した後の「不安に慣らす」トレーニングをする時に「発作リスクに備え」持っておきます。
あとは、うつ病・適応障害の中で急な落ち込みが出る方に対し、頓服で使うことがあります。
また、発達障害の方の急なイライラや不安に対して使うことがあります。
そして「社会不安障害」対人的な不安が強い方に対して、特に強い不安が出る対人場面(人前の場面など)で持っておき、必要な時に使うことがあります。
②うつ病で不安が強い時
うつ病で不安が強い時は、休職になってもなかなか休養することは難しく、その場合に悪循環のリスクがあります。
そういう時に抗うつ薬は勿論使いますが、効くまでが2から4週と時間差あるため、それまでの間、時に併用することがあります。
もし定期的に使う場合は1日3回使いますが、効果が強い一方で依存のリスクは高いため、他の抗不安薬もあわせて検討します。
③時期が限定的な適応障害
テストなど大きなイベントなどがあり「この1-2週を何とか乗り切りたい」という場合。
抗うつ薬では効果まで間に合わないため、この場合に抗不安薬は適応になってきます。
長い薬を定期的に使って、このエチゾラムのような短い薬を頓服で使う場合もありますが、その場合でもやはり依存には注意が必要です。
④急性のストレス反応時
大きなストレスの後、本来は自然に改善しますが、時に不安で休めず悪循環の時があります。その時に使って、休養と自然軽快を促していきます。
主には長い薬を定期的に使って、このエチゾラムなどを頓服で使いますが、回復後はやはり速やかに減薬を模索するのが大事です。
⑤慢性的な不安(使い方に注意)
全般性不安障害など不安が強い場合に使うことを検討します。
特にその中で症状が強い場合、生活に影響する場合に頓服で使う、もしくは1日3回など定期的に使う場合があります。
ただ、これは長期的になると依存のリスクが特に高くなるため、その場合は他の方法も検討します。
<補足:慢性的な不安への代替方法>
定期的に使う場合は「より長い抗不安薬」を使い、エチゾラム等は頓服にとどめる方法があります。
あと最近では、抗うつ薬SSRI等を継続し、不安のベースを和らげる方法もよく行われます。
または「抗精神病薬」だるさが出る不安を取る薬を、依存がないことを踏まえ使う事も検討します。
そこまで不安が強くない場合では漢方薬や、依存ない抗不安薬「タンドスピロン」も検討されます。
そしてもう一つは「薬以外の方法」、リラックスの方法を色々実践していったり、「脱感作法」不安に徐々に慣らす方法を継続して行うこともあります。
(8)まとめ
今回は「エチゾラム(デパス)」について見てきました。
このエチゾラム(デパス)は、効果が早く明確な「短時間型」のベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。特に頓服薬で使いやすいものになります。
効果が強く明確で、体の緊張も和らげる筋弛緩作用もあるために使いやすい面はありますが、特に使う量が増えた時の依存には、他の薬と比べても注意が必要です。
急な不安に対して、特に頓服で使うのが有効です。ただ、長期化した場合には、依存・耐性に注意が必要のため、その場合は抗うつ薬に置き換えるなど、別の方法を検討していくことが必要になってきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)