ロラゼパム(ワイパックス)

中間型のベンゾジアゼピン系抗不安薬

ロラゼパム(ワイパックス)は「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬です。

 

長さは「中間型」であり比較的効果早く、特に強い不安時の「頓服」として用います。

 

不安強い時は定期的に使う事もありますが、その時は特に依存に注意が必要です。

 

動画:ロラゼパム

もくじ

 
  1. (1)はじめに:抗不安薬ロラゼパム(ワイパックス)
  2. (2)ロラゼパム(ワイパックス)及び抗不安薬とは
  3. (3)ロラゼパム(ワイパックス)と似た薬
  4. (4)ロラゼパムの使い方2つ(頓服と定期使用)
  5. (5)ロラゼパムを使う代表的な場面4つ
  6. (6)まとめ
  7.  

(1)はじめに:抗不安薬ロラゼパム(ワイパックス)

心療内科・精神科の薬。今回はロラゼパム(ワイパックス)についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

この心療内科、精神科の薬のところでは、実際にメンタルクリニックなどで使う薬についてご説明をしていきたいと思います。

今回は抗不安薬の一つロラゼパム、商品名はワイパックスになります。

(2)ロラゼパム(ワイパックス)及び抗不安薬とは

まず、このロラゼパム(ワイパックス)ですけれども、要約すると効き目の短い抗不安薬になります。少し詳しく見ていきます。

<抗不安薬とは>

抗不安薬とはということですけれども、主にベンゾジアゼピン系という系列の不安をとる薬になってきます。

これは即効性がある15分ほどで効くんですけれども、基本的には対症療法ですし、例えばうつ病そのものを良くするとかではなくて、あくまで症状を薬が(体内に)あるときだけ和らげるというものになっていきます。

注意点としては、一番にはやはり依存に注意が必要、「ないと不安」ということになってしまうことがあると、これは注意が必要なものになります。

<ロラゼパムとは>

その中でロラゼパムなんですけども、これは中間型の抗不安薬になりまして、15から30分で効果が出始めて大体個人差はありますけど、6時間ほど効果が続くというものになってきます。

なので、特に調子が悪い時だけ使うこともありますし、定期的に使うということ、両方があり得る。

ただ、特に定期的に使う場合はやはりベンゾジアゼピン系ですので、依存の問題には注意が必要になってきます。

(3)ロラゼパム(ワイパックス)と似た薬

この薬と似た抗不安薬ですけれども、効く時間が似たものとしては、ブロマゼパム(レキソタン)、アルプラゾラム(ソラナックス)があります。

より効果が短いものとしては、エチゾラム(デパス)、クロチアゼパム(リーゼ)があります。

(4)ロラゼパムの使い方2つ(頓服と定期使用)

①頓服

急な不安などがあった時のみ使うというものになります。持ち歩いておいて必要があった時に使えるようにしておくのが大事になってきます。

これはそういう意味で効果もあるんですけれども、人によってはだんだん頻度が増えてしまう、どんどん使う量が増えてしまう場合があります。

この場合は、例えば抗うつ薬・別の薬を考えるなど、他の方法を考えていく必要があるということになります。

②定期的に使う

1日1回から4回で使うということになります。

長時間型の抗不安薬に比べると効果が明確でありまして、かつ量の調整も行いやすいということはメリットなんですけれども、逆に依存はつきやすいところがあるので、これは注意が必要ということになります。

(5)ロラゼパムを使う代表的な場面4つ

代表的な使う場面というのをおよそ4つ挙げていきたいと思います。

①うつ病で不安が強い時

1つ目としては、うつ病で不安が強いときです。

うつ病・落ち込みが出る方もいれば、不安が主な方もいらっしゃいますが、不安が強いと治療で大事な「休養」がなかなか取れなくて、考えすぎて悪循環になってしまいやすいです。

このとき、抗うつ薬は有効なんですけれども、いかんせん効くまでが2から4週間はかかりまして、それまでの間、即効性のある薬として、このロラゼパムも併用することがあります。

抗うつ薬が効いてきた場合などは、薬を減らしたり、長引いてしまいそうなら長時間型・効き目の長いものに変えていくというのも検討していくのがいいかと思います。

②パニック障害の頓服

2つ目の場面としては、パニック障害の頓服ということで使います。

パニック障害の中ではパニック発作、急な不安だったり体の不調が出る発作がありますけれども、これに対して特に早いうちに使うと、15分ほどで効果が出てきます。

なので発作が起こっても大丈夫なように常に持ち歩いておきまして、必要な時に使えるようにしておくのが大事になってきます。

人によっては、症状が・発作が重かったり、頻度が非常に多い時は、はじめの時期は定期的に使うという方も中にはいらっしゃいます。

<補足:類似の場面>

パニック発作の頓服以外の似た場面としてあるのが、例えばパニック症の治療の後半で脱感作法・電車などで慣らしていくという治療をやりますけれども、脱感作をやる時悪化することがあります。それに備えて持っておくというやり方が一つ。

後はうつ病でも急に不安になったり、急に落ち込んだりすることがあります。その時のための頓服として持っておくという場合があります。

3つ目としては、発達障害のある方の場合、急な不安などが出ることがありますので、その時のために持って行くという方も中にはいらっしゃいます。

③時期が限定的な適応障害の不安

3つ目の場面としては、時期が限定的な適応障害の不安ということで挙げています。

例えば、テストの前とか、この1-2週間を何とかしたいという場合、この場合は抗うつ薬は効くまでが時間差があるので間に合いません。その前に即効性のある抗不安薬を使うということがあります。

この場合の注意点はあくまで乗り切った後、その後には早目に減らすということが依存を防ぐ上で大事になってきます。

④慢性的な不安(依存に注意)

4つ目としては慢性的な不安。

全般性不安障害などで、常に不安が強いという方に対して、症状が強い時に1日2から3回など定期的に使うことがあります。

ただ、この場面は比較的注意が必要です。

なぜならば何となく慢性的に使ってしまうと、依存がついて、かつ不安自体はなくならないということは出てくることはありますので、これは特に長期的になりそうなときは他の方法も探す必要があります。

<補足:他の不安を減らす方法>

他の代替方法の候補としては、まず1つ目としては薬以外で何かリラックスをする・緊張を和らげる方法をいろいろ探していくということが一つ。

2つ目としてはSSRIという抗うつ薬。これはうつ以外に不安にも効果がありますので、効くまで時間はかかりますけど、置き換えていくのも方法になります。

3つ目としては、同じ抗不安薬でも長時間型の抗不安薬を使うことによって抗不安薬なんだけども、依存がより少ない方に持っていくというやり方をとることがあります。

(6)まとめ

今回はロラゼパム(ワイパックス)についてやってきました。

ロラゼパムは代表的な中間型の抗不安薬になりまして、これは効き目が早いので、頓服・定期的に使う、両方で使うことがあります。

即効性があるために、手早く不安を取るのが治療上必要な時、こういう時に使うことが多いです。

一方で、依存のリスクには注意が必要です。特に使う量が増えてくるとか、長期になってしまう時に関しては、例えば抗うつ薬で置き換えるなど他の対策を探していくことは大事になってきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)