ベンラファキシン(イフェクサー)
抗うつ薬SNRIの1つ
ベンラファキシン(イフェクサー)は抗うつ薬SNRIの1つです。
うつ病・うつ状態に適応がある薬ですが、少量で不安に、多量で意欲に、それぞれ効果を見込みます。
効果まで2-4週。初期の副作用と離脱症状に注意。増薬まで時間がかかるのが難点です。
もくじ
- (1)はじめに:抗うつ薬SNRI「ベンラファキシン(イフェクサー)」
- (2)ベンラファキシン(イフェクサー)とは
- (3)抗うつ薬とSNRIの特徴
- (4)SNRIとSSRIの共通点と違い
- (5)SNRIの副作用と離脱症状
- (6)SNRIの中でのベンラファキシン(イフェクサー)の立ち位置と特徴
- (7)ベンラファキシン(イフェクサー)の長所・短所・使う場面
- (8)ベンラファキシン(イフェクサー)の実際の使い方
- (9)まとめ
(1)はじめに:抗うつ薬SNRI「ベンラファキシン(イフェクサー)」
心療内科・精神科の薬。今回は「ベンラファキシン(イフェクサー)」について見ていきたいと思います。よろしくお願いします。
この心療内科・精神科の薬の動画では、実際にメンタルの分野でよく使う薬についてご説明をしていきます。
今回は、抗うつ薬SNRI、その中で使う量によって効果の変わる薬「ベンラファキシン(イフェクサー)」について見ていきたいと思います。
(2)ベンラファキシン(イフェクサー)とは
ベンラファキシン(イフェクサー)は、意欲の改善も図る抗うつ薬SNRIの一つです。
そして少ない量では不安に対しての効果、高い・より高用量では意欲に対しての効果を見込みます。
高用量まで段階を経て増やしていく必要があるために、効くまで時間がかかりやすいのが弱点です。
(3)抗うつ薬とSNRIの特徴
<抗うつ薬とは>
抗うつ薬は、続けることでうつの改善を図る薬になります。
主には、脳のセロトニンを増やすことで改善を見込みます。効くまで1から4週かかります。
主にはSSRIというタイプの薬を使いますが、意欲低下が目立つ時に関しては、今回扱う「SNRI」というタイプのものを使うことがあります。
<SNRIとは>
SNRIは「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」、脳内の「セロトニン」と「ノルアドレナリン」の双方を増やします。
まず「うつ」全般に関し「セロトニンの不足」が言われるため、セロトニンを増やすことでうつ・不安の改善を図っていきます。
もう一方の「ノルアドレナリンの増加を図ること」でさらに意欲の改善を図っていきます。
(4)SNRIとSSRIの共通点と違い
<SSRIとの共通点>
これは一番にはどちらも脳の「セロトニン」を増やします。
そのため、基本的な抗うつ薬としての効果に関しては、おおむね共通しています。
そして、「初期のセロトニン由来の副作用」および「中止時の離脱症状」、この2つに関しても共通しています。
<SSRIとの違い>
一番の大きな違いはSNRIでは「ノルアドレナリン」も増やすことです。
そのため、不安以外に「意欲への効果」も見込むということになります。
一方で、不安への効果にやや弱点があり、尿閉や頭痛等の「ノルアドレナリン由来の別の副作用」が出ることがあります。
(5)SNRIの副作用と離脱症状
<SNRIの副作用>
まずはセロトニンに伴うものとして、お腹の副作用、吐き気、下痢などがはじめの数日に出ることがあります。
もう一つがノルアドレナリン由来の副作用で、尿閉(尿が出にくい)、頭痛、頻脈などが出ることがあります。
どちらもはじめの数日に出ることが多く、多くの場合はその後慣れてきます。
<SNRIの離脱症状>
これはSSRIとほぼ同じで、特に急にやめた時に出現する「心身のさまざまな症状」です。
めまい・過敏さ・しびれ等、様々な場所に症状が出ることがあります。
基本的には経過観察で自然軽快を見込みますが、症状が強い場合は「減らす前の量に戻す」のが対策です。
(6)SNRIの中でのベンラファキシン(イフェクサー)の立ち位置と特徴
日本で使えるSNRIは3つあります。
今回扱うベンラファキシン(イフェクサー)の他、デュロキセチン(サインバルタ)、ミルナシプラン(トレドミン)があります。
このSNRIの中でのベンラファキシンの位置づけは「量によって目的が変わる薬」。
<用量で効果が変わる>
ベンラファキシン(イフェクサー)の一番の特徴は、用量によって効き方が変わる事です。
少量75から150mgでは、セロトニンを増やす作用の方が強く、不安に対する効果を主に見込みます。
一方で、高用量150mg以上最大225mgまで使うと、今度はノルアドレナリン増加の作用が強くなり、意欲の効果を見込みます。
(7)ベンラファキシン(イフェクサー)の長所・短所・使う場面
<ベンラファキシンの長所>
最大量225ミリまで使うと量が比較的高用量になり、意欲への高い効果を期待しmさう。
一方では、少量では不安にも効果があり、150ミリ前後で不安・意欲の両方に効果を見込みます。
また、飲む回数は1日1回で可能です。
<ベンラファキシンの短所>
まずは高用量にするまで、非常に時間がかかります。結果十分な効果を期待するにも時間がかかります。
一方で、効果は意欲などに「飛び抜けて高い」とまでは言いにくいところがあります。
そしてSNRIなので、副作用の出る幅が広くなります。
<ベンラファキシンを検討する場面>
1つ目としては「長期間続く意欲の低下」、この場合は時間をかけても最大量までしっかり使い改善を見込みます。
2つ目が「不安と意欲低下の両方がある時」になります。ここでは150ミリなどを検討します。
3つ目としては「他の薬が無効もしくは継続困難な場合」です。効く場所がやや違うことで、効果を期待します。
(8)ベンラファキシン(イフェクサー)の実際の使い方
<開始>
まず、37.5ミリで始めまして、1週間以上して75ミリまで増薬します。
初めは吐き気、頭痛などがあり得ますが、基本的には数日で慣れてきます。
一方で、急なイライラなどが出た場合に関しては、速やかに中止をしてください。
<増薬>
基本的に不安が主であれば75ミリで、意欲低下もある場合は150ミリまで一般に増やします。
一方で副作用がある時は、無理して増やさないのが原則です。
そして、特に意欲の低下が続く場合や効果が不十分な場合は、最大225ミリまで使います。
<副作用・効果不十分時>
そして、薬を増やして副作用が続く場合は増やす前の量に戻していきます。
最大量の225ミリまで使っても不十分であれば変薬を検討するか、併用で相性のいい「ミルタザピン」の併用を検討します。
もしくは補助薬「アリピプラゾール」の少量追加も選択肢です。
<改善後の減薬>
改善をした場合、改善後数カ月は同じ量を再燃予防のために同じように続けていきます。
そして、安定が続く場合は、離脱症状に注意をして徐々に減らしていき、場合によっては0を目指していきます。
そして、特に0にした時に「離脱症状」に注意が必要です。
原則は徐々に減らして、離脱症状が出た場合も基本は慣らしていきますが、あまりに離脱症状が強い場合は減らす前の量に戻します。
(9)まとめ
今回はベンラファキシン(イフェクサー)についてみてきました。
このベンラファキシン(イフェクサー)は、用量によって効果が差が出る「SNRI」、高容量で意欲の改善を見込むものです。
高容量で効果は強い一方で、量を増やすのに時間がかかるのが難点です。
少ない量37.5ミリで開始し、その後徐々に増薬していきます。
そして改善しても数カ月は同量で続け、その後離脱症状に注意をしつつ徐々に減薬します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)