ドネペジル(アリセプト)

進行を遅らせる抗認知症薬

ドネペジル(アリセプト)は、認知症の進行を遅らせる代表的な抗認知症薬です。

 

あくまで進行を「遅らせる」薬のため、介護保険の活用などの並行が大事です。

 

動画:ドネペジル(アリセプト)

もくじ

 
  1. (1)はじめに:抗認知症薬ドネペジル(アリセプト)
  2. (2)ドネペジル(アリセプト)と認知症
  3. (3)ドネペジル(アリセプト)の作用機序
  4. (4)ドネペジル(アリセプト)の効果と副作用
  5. (5)ドネペジル(アリセプト)の長所、短所等
  6. (6)ドネペジル(アリセプト)の具体的な使い方
  7. (7)まとめ
  8.  

(1)はじめに:抗認知症薬ドネペジル(アリセプト)

心療内科・精神科の薬。今回は「ドネペジル(アリセプト)」について見ていきたいと思います。よろしくお願いします。

この心療内科・精神科の薬の動画では、メンタル分野の様々なお薬についてご紹介をしています。

今回は認知症の進行を遅らせる抗認知症薬「ドネペジル(アリセプト)」について見ていきたいと思います。

(2)ドネペジル(アリセプト)と認知症

この「ドネペジル」は認知症の進行を遅らせる薬です。

<ドネペジル(アリセプト)とは>

このドネペジルは代表的な抗認知症薬で、認知症の進行を遅らせる薬です。

脳内のアセチルコリンという物質を増やすことで効果を期待します。

あくまで「遅らせる」効果で、「治す」作用はありません。

<認知症とは>

認知症は、脳の機能が低下して、記憶・思考・判断などが困難になる病気です。

アルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型など、様々な原因が考えられます。

基本的には徐々に進行し、例外を除くと「治す」ことは困難です。

<アルツハイマー型認知症とは>

アルツハイマー型認知症は、最も一般的な認知症で、徐々に物忘れなどが進行します。

物忘れなどの「中核症状」と精神的な症状「周辺症状」の両方が生じる事があります。

今回扱うドネペジル等「進行を遅らせる薬」はありますが、進行を止めることは困難です。

<レビー小体型認知症とは>

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症の次、3番目に多い認知症です。

これは「パーキンソン病」という神経の病気と共通点が多いタイプの認知症です。

「パーキンソン症状」歩きにくさ等や、「幻視」幻が見える症状などが特徴的です。

(3)ドネペジル(アリセプト)の作用機序

ドネペジルは、脳のアセチルコリンを増やして作用する薬です。

<変性認知症(アルツハイマーおよびレビー小体型)の背景>

基本的には「神経原線維変化」、神経が「変性」変化することが背景の一つです。

その結果、脳の記憶などの機能が低下して症状が出てきます。

この中で脳内物質「アセチルコリン」の低下が影響すると言われます。

<ドネペジル(アリセプト)の作用機序>

これは「アセチルコリンを分解する酵素(エステラーゼ)」をブロックします。

その結果、脳内の「アセチルコリン」を増やします。

すると、神経伝達が改善して認知症の症状の進行を抑えることが期待されます。

(4)ドネペジル(アリセプト)の効果と副作用

<大まかな効果と副作用>

まず脳のアセチルコリンを増やすことで認知症抑制の効果を見込みます。

一方で、腸などのアセチルコリンも増やした結果、副作用が出ることがあります。

<ドネペジルの効果>

まずは認知症の進行を抑制することを期待します。

そして、レビー小体型認知症にも一定の効果を期待します。

そして、無気力(アパシー)にも効果を期待する面があります。

<ドネペジルの副作用>

1つ目は精神的な「イライラや衝動性」が人により出る場合があります。

あとは胃腸の副作用、食欲不振・吐き気・下痢などが出ることがあります。

もう一つは、不整脈(徐脈)が出る場合あり、心臓の持病がある方は注意を要します。

<他の認知症薬との違い>

まず他の薬と比べ、軽度から重症までアルツハイマー型認知症の幅広い適応があります。

そしてドネペジルのみレビー小体型認知症にも適応があります。

そして「他の認知症薬との併用」は、作用機序が違う「メマンチン」のみ可能です。

(5)ドネペジル(アリセプト)の長所、短所等

<ドネペジル(アリセプト)の長所>

まずは「保険適応が幅広い」こと。重度の場合やレビー小体型認知症に対応可能です。

そして、1日一回の使用で効果を見込むことができます。

そして、無気力(アパシー)に対しての効果を期待します。

<ドネペジル(アリセプト)の短所>

まず、あくまで「進行を遅らせる」ということで止めることはできません。

2つ目は、人によってはイライラなどが目立ってしまう点。

3つ目は、「レビー小体型認知症」に有効な一方、その強さには議論があります。

<ドネペジル(アリセプト)を使用検討の場面>

まず可能なら「認知症の早期」。進行後だと効果が弱まり、早期から使い効果を期待します。

その中で、特に無気力(アパシー)が生活に影響している場合。

そして「サポート体制の構築に時間を要する時」その時間を作る意味も期待されます。

<重要:介護サポートを並行する>

あくまでこの薬は進行を「遅らせる」、進行自体はどうしてもしてしまいます。

そのため段階的な介護サポートの並行がやはり大事です。

日本においては、介護保険制度の活用が有効と思われます。

(6)ドネペジル(アリセプト)の具体的な使い方

基本的にはアルツハイマー型もレビー小体型も共通して3mg1日一回から開始し、1-2週してして5mgに増やします。

その後必要時、アルツハイマー型の方では重症時、レビー小体型認知症では症状等見つつ、10mgまで増やすことがあります。

そして、副作用がある時は、適宜減量などをしていきます。

特にイライラが目立つ時に関しては、すぐに中止して精神面の改善を図っていきます。

副作用等の問題が目立たない場合は、進行抑制のため原則継続します。

ただ、(意識もうろう等)症状が進行した場合は、慎重に減薬・中止等を検討します。

<レビー小体型認知症の場合の注意点>

レビー小体型認知症での使用規定が22年に一部改訂され、以下の要件が新たに入りました。

まずは、12週まで使用して効果がリスクを上回ると判断できない場合には中止します。

継続するメリットの方が大きい場合のみ続けることになりました。

そして、その後も定期的に有効性などを評価して継続するかを判断をしていきます。

(7)まとめ

今回は、心療内科・精神科の薬「ドネペジル(アリセプト)」について見てきました。

この「ドネペジル(アリセプト)」は、認知症の進行を遅らせる薬で、脳のアセチルコリンを増やして効果を出します。

特に無気力(アパシー)に対し効果を期待する反面、時にイライラが目立つこともあり、相性を見ながら使う必要があります。

そして、あくまで「進行を遅らせる薬」のため、その限界を知りつつ、「介護サポート」をしっかり並行することが大事です。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)