睡眠薬

不眠を改善するための薬

睡眠薬は、不眠症の改善を図る薬です。うつ病等の悪化を防ぐための不眠改善にも使います。

 

不眠にはまずは生活等の対策を取り、それで困難な時に依存のない睡眠薬から検討します。

 

それでも困難な時に「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」を検討しますが、依存のリスクには注意します。

 

動画:睡眠薬

もくじ

 
  1. (1)はじめに:睡眠薬について
  2. (2)総論①:不眠と、その4つのタイプ
  3. (3)総論②:不眠治療の重要性と、治療の3段階
  4. (4)総論③:睡眠薬について、および睡眠薬の種類
  5. (5)総論④:<薬1>ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  6. (6)総論⑤:<薬2>依存のない睡眠薬
  7. (7)各論①:依存のない睡眠薬
  8. (8)各論②:ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  9. (9)各論③:<補足>補助薬について
  10. (10)全体のまとめ
  11.  

(1)はじめに:睡眠薬について

今回は「睡眠薬」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

精神科・心療内科におきまして不眠・眠れないということの相談は非常に多くありまして、あとうつ病など多くのこころの不調・悪化の原因として、非常に不眠が絡んできます。

その対策としての睡眠薬ですけれども、もちろん依存など注意は必要ですが、非常に大きな意味を持つものになります。

今回は睡眠薬についてやっていきたいと思います。

(2)総論①:不眠と、その4つのタイプ

まず、総論に関して見ていきますけれども、この睡眠薬を使う背景と不眠ですけれども、そこについてまず見ていきたいと思います。

不眠症は、まさに眠りに関しての不調でありまして、細かく分けますとこれから挙げます4つになってきます。

1つ目が入眠困難。これはなかなか寝付くことができないというものになります。

2つ目が中途覚醒、途中で目が覚めてしまうということです。

3つ目が早朝覚醒、朝早くに目が覚めてしまう。

4つ目が熟眠障害、眠りが浅い・しっかり寝ることができないということになってきます。

(3)総論②:不眠治療の重要性と、治療の3段階

<不眠治療の重要性>

この不眠の治療がなぜ大事かと言いますと、1つ目としてはまずうつ病などの心の不調が原因のことがあるということになります。なので不眠というのが他の不調のサインということで、早めに対策しましょうということが1つ目です。

2つ目としては、うつ病などの悪化の原因になってしまうということです。眠れないことが続くと、うつ病などがさらに悪くなって悪循環になってしまうことがある。これを防ぐ必要があるので、早めの対策が必要ということがあります。

<不眠治療の3段階>

不眠の対策・治療としては3段階ありまして、まず1つ目としては薬以外の対策を取っていく、睡眠の環境を整えていったり、リラックスを図っていたり、そういったことをやっていきます。

それでも難しい場合に依存がない睡眠薬をまず使っていきます。

これを使ってもし効果がなかった場合、3段階目として一般の睡眠薬を使う、こういう3段階で考えています。

(4)総論③:睡眠薬について、および睡眠薬の種類

ここにおいて、睡眠薬の話に移っていきたいと思うんですけれども、睡眠薬はまさに寝るのを助ける薬になってきます。

先ほどあったように、最近ですと依存がない薬も選択肢になってくる。そして不眠そのものにも使いますし、うつ病などに合併する不眠にも使うことがあります。

<睡眠薬の種類>

薬の種類を大きく見ていくと、まず一般的な睡眠薬として、いわゆるベンゾジアゼピン系の睡眠薬があります。

そして、最近使えるようになった依存が少ないものとしましては、まずは「オレキシン受容体拮抗薬」というのがありまして、2つ目として「メラトニン受容体作動薬」というのがあります。

(5)総論④:<薬1>ベンゾジアゼピン系睡眠薬

まず、一般の睡眠薬ベンゾジアゼピンについて見ていきますけれども、これはやはり一般的にはベンゾジアゼピン系の薬になってきます。

色々な種類がありますけれども、効く時間が異なる多くの種類があるというのは特色になってきます。

効果は強いんですけれども、一方で依存には注意が必要です。

<作用時間での分類>

このベンゾジアゼピン系は、薬の効き目の長さで分類すると、超短時間型・短時間型・中間型の3つがあります。

代表的な薬を見ていきますと超短時間型ではゾルピデムという薬が有名です。短時間型では、ブロチゾラムという薬が有名になってきます。そして、中間型が幾つかある中では、ニトラゼパムという薬などを使うことがあります。

有効な場面は、超短時間型はまさに入眠・寝つきに対して有効になってきます。短時間型に関しては寝つき・入眠と中途覚醒、両方に対して効果を見込むということになります。中間型に関しては効き目が長いので、中途覚醒を防ぐのが主な目的です。

(6)総論⑤<薬2>依存のない睡眠薬

①オレキシン受容体拮抗薬

これは脳の覚醒・目が覚めることを誘います「オレキシン」を受け取るところをブロックすることによって、睡眠の改善を図る。

さっきのベンゾジアゼピンと効き目の場所が違いますので、依存はあまりないとされると。

で、2種類今使える薬がありまして、効果時間が違うという特色があります。

②メラトニン受容体作動薬

これは体内時計に関わるメラトニンとほぼ同じ働きがありまして、リズム・生活リズムと睡眠の改善を促すというものになります。

これも同様に依存がないとされます。特にリズムの乱れを伴う不眠に対しては、効果を見込むところがあります。

(7)各論①:依存のない睡眠薬

①スボレキサント(ベルソムラ)

まずは依存がないものから見ていきたいと思います。1つ目がスボレキサント(ベルソムラ)になります。

これはオレキシン受容体拮抗薬の一つになりまして、効き目が長いものになってきますので、特に中途覚醒・途中で目が覚めてしまうという方に対して有効性を期待できます。

依存がないものになりますけれども、効果には個人差があると、人によっては効果が薄いということ、人によっては朝残ってしまうという方が少なからずいらっしゃいます。

②レンボレキサント(デエビゴ)

2つ目の薬がレンボレキサント、商品面でいうと「デエビゴ」になります。

これもオレキシン受容体拮抗薬ですが、その中で比較的効き目が短いものになります。

特に入院困難・寝つきが難しいということに対して効果を見込むということになってきます。

これは朝残るということは先ほどのスボレキサントよりは少ないんですけれども、人によっては残ることがある一方で、中途覚醒・途中で目が覚めるということが出る方もいて相性があります。

③ラメルテオン(ロゼレム)

3つ目としては、ラメルテオン商品名で言うとロゼレムというものになってきます。

これはメラトニン受容体作動薬になりまして、生活リズムの乱れがある不眠に対しては、非常に有効性の高さが期待できると。

かつ安全性に関しては非常に高いと言われて安全に使えるんですけれども、効果に関しては先程の2つと比べても個人差が大きいところがあります。

(8)各論②:ベンゾジアゼピン系睡眠薬

①ゾルピデム(マイスリー)

続きまして、一般の睡眠薬なんですけども、まずはゾルピデム(マイスリー)というものがあります。

これは超短時間型のベンゾジアゼピン型類似の睡眠薬になってきます。

特に寝付きづらい入院困難に対しては有効でして、約15分程で効果が出てきます。

一方で効き目が早いので飲んだ後に色々動いてしまうと「半分寝たような」ちょっともうろう状態になるリスクは否定できないので、飲んだら寝ることに専念するということが大事になってきます。

これと類似した・似た薬としては、エスゾピクロン(ルネスタ)、エチゾラム(デパス)というものがあります。

②ブロチゾラム(レンドルミン)

2つ目としてはブロチゾラム(レンドルミン)があります。これは短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になってきます。

これは短時間型なので入眠困難・寝付きにも効きますし、中途覚醒・途中で目が覚める方にもバランスよく効くというものになってきます。

これは人によって効果に差があります。人によっては、これを飲んでも寝付けない場合もあるし、人によってはこれを飲むと朝残るという場合があります。

その場合は、効く時間の違う薬に変えていくということをすることがあります。

これと時間が類似した薬でいきますと、リルマザホン(リスミー)およびロルメタゼパム(エバミール)などがあります。

③ニトラゼパム(ベンザリン)

3つ目としてはニトラゼパム(ベンザリン)があります。

これは中間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

これは中間型ですので、中途覚醒・途中で目が覚めてしまうという方に対して有効になってきます。

効き目は長めですので、人によって朝残るということがありますので、もしそれは残ってしまう、ふらつきが残るなどがあれば別の薬も検討していくということになってきます。

これと似た薬としては、フルニトラゼパムいわゆるサイレース、エスタゾラム(ユーロジン)などが候補です。

(9)各論③:<補足>補助薬について

補足としては、補助薬というのがあります。

これはどういうものかと言いますと、睡眠作用のある薬、もとは抗うつ薬などで別の作用なんだけれども、依存がないこともありまして、補助的に使うということがあります。

①トラゾドン(デジレル・レスリン)

これは元が抗うつ薬なんですけれども、眠気の作用・睡眠の作用が結果的には主体になりまして、ちょっと補助的に使うことがあります。

②ヒドロキシジン(アタラックスP)

元は抗アレルギー薬・アレルギーの薬なんですけれども、眠気の作用もあるので使うことがあります。

比較的安全のためによく高齢者の方に使うことがあります。

③レボメプロマジン(レボトミン)

いわゆる抗精神病薬(安定剤)になりまして、強い眠気が出るということがあります。強い不眠に対して少量を使うことがあります。

ただ、だるさ・倦怠感が出ることがあるので、そこは相性を慎重に見ていく必要があります。

(10)全体のまとめ

今回は睡眠薬について全般的に見てまいりました。

不眠はうつ病などの症状の一つでもありますし、悪化要因にもなりまして、対策を取ることは非常に大事になってきます。

できれば、まずは依存がない薬を検討していく。それでも難しい場合には一般のベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使う、という順番になってきます。

不眠の種類などを見て、薬を選んでいきまして、効果を見ていきながら調整を図っていきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)