世界没落体験

「妄想知覚」の1つ

世界没落体験は、世界が普段と違って見え「どうにかなるのでは」と思う感覚です。

 

統合失調症の前駆症状の意味がありますが、他の原因の事もあります。

 

動画:世界没落体験

もくじ

 
  1. (1)はじめに:世界没落体験
  2. (2)世界没落体験とは?
  3. (3)世界没落体験の原因
  4. (4)世界没落体験の対策
  5. (5)まとめ
  6.  

(1)はじめに:世界没落体験

心療内科・精神科の症状。今回は「世界没落体験」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

よく物語の中で、「世界が急に変わってひどいことになってしまう」そんなイメージが言われることがあります。

この感覚が実際に精神疾患の症状でも生じることがあるとされまして、これを「世界没落体験」と呼びます。

今回はこの「世界没落体験」について見ていきたいと思います。

(2)世界没落体験とは?

この世界没落体験は「まるで世界がどうにかなるような感覚」です。

<世界没落体験とは>

これは世界や周りにに見えるものが「普段と違って奇妙に」見え、「まるでどうにかなるように」思われる体験です。

主に統合失調症の前駆期(前触れ)から急性期の初めの頃に出るとされます。

いわゆる「妄想気分」の一つで、強い不安や恐怖を伴うことが特徴です。

<世界没落体験の例>

「同じ景色なのに普段と違い、非常に奇妙に見える」場合。

「根拠はないんだけれど、何か大変なことが起きそう」と思う場合。

「恐ろしい災いが何か切迫している」と思われることもあります。

<妄想気分とは>

妄想気分は、「何か変なことが起きている」強い違和感を感じての強度の不安等の気分のゆれです。

まだ「狭い意味での妄想」のような「確信」ではなく、妄想のある種「前段階」とよく言われます。

統合失調症で出る時は、主に「前駆期」か、「急性期の初期」が多いとされます。

(3)世界没落体験の原因

一番には「統合失調症の可能性に注意」です。

<統合失調症とは>

統合失調症はm悪化した時に幻聴や妄想などが目立つ「脳の不調」です。

脳の物質「ドーパミン」の作用過剰が背景で、脳が過敏になり様々な症状が出ます。

ドーパミンの作用を抑える「抗精神病薬」などを治療で使います。

<統合失調症の「前触れ(前駆症状)」>

統合失調症では急性期では幻覚や妄想が目立ちますが、その前に生じる「より非特異的な不調」が前駆症状です。

これは例えば不安やイライラ等「刺激への敏感さ」の物が多いです。

これは統合失調症の予後改善、早期発見と未治療期間の短縮のために重要な一方、治療しなくても「自然軽快」が多いことも言われます。

<前駆症状の背景(筆者仮説)>

脳が前ぶれの段階で非常に敏感になる事が示唆されます。

それで刺激に敏感になり、同じ刺激でも反応が強くなります。

それにより同じものや景色でも普段と見え方が変わることが推測されます。

<妄想気分や世界没落体験の背景(筆者仮説)>

脳が敏感になって同じ景色の見え方が変わってきます。

すると同じ日常の景色のはずでも、違うものに見えて、かつ強い印象に見えます。

その結果、不安など強い情動も合わさり、普段とは違う独特な体験、いわゆる「世界没落体験」的なものになると推測します。

<統合失調症以外の原因>

統合失調症に限らず、こうした脳の敏感さが生じた時は怒りえることが推測されます。

例えば、よく文献レベルで言われるのは、「重度のうつ病」妄想を伴う重いうつ病で出るとされます。

あとは「てんかん性精神病」、「てんかん」に合併する精神不調でも出る事があるとされます。

あともう一つ想定されるのが、前駆症状でしばしばある「一過性の強いストレスでの反応」。

例えば不眠が続いた時や疲れやストレスが重い時、「一過性で出る」ことがあります。

まとめると、この「世界没落体験」、すぐ診断に直結はしませんが、注意が必要な症状だとは思われます。

(4)世界没落体験の対策

「一過性かどうかが対策の鍵」です。

<対策の方向性>

「まずはしっかり休む」こと、そして「休んでも続く時の対策」、あとは「安全確保の対策」この3つです。

①まずしっかり休養

もし「一過性のストレス反応」なら、しっかり休むことで改善を見込みます。

なのでまずはしっかり休み、それで改善をする場合は、慎重に経過を見ることになります。

一方で「休んでも改善しない」あとは不安等で「そもそも全く休めない」場合は、対策が必要です。

②休んでも症状が続く時

もし休んでも続くとしたら「一過性」とは言いにくく、何らかの異変が示唆されます。

ただ、原因は色々ありえるため、受診をして相談することが望まれます。

そして、この症状以外に他の症状や検査、経過などから総合的に診断が決まり、治療が始まっていきます。

③安全確保の対策

休養が大事とわかっていても「休めない」「混乱する」場合は、衝動性や混乱などのリスクが示唆されます。

なのでこうした場合、まさに「安全の確保」の意味も含め、早目の相談が望まれます。

そして、「強い混乱」や「トラブルの危険」の場合などは、安全確保のために時に入院が必要になります。

(5)まとめ

今回は心療内科・精神科の症状「世界没落体験」について見てきました。

この「世界没落体験」は、強い不安等を背景に「世界がどうにかなるのでは」とに思う状態で、「妄想気分」の一つとされます。

これは統合失調症の初期症状の一つの場合があり注意を要しますが、一方で他の要因でも生じる可能性があります。

対策はまずはしっかり休養して改善するか、一過性のものかを見ていきます。

もし「改善しない」、あとは「そもそも休むことができない」場合は、受診等での対策が望まれます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)