幻聴
統合失調症で特徴的
「幻聴」とは「ないはずの音や声が聞こえる事」。統合失調症で特徴的な症状です。
対話(噂)、命令、考えの言語化など様々な形を取り、統合失調症以外でも生じえます。
対策は体調を戻しつつ診断・治療を受け、残った幻聴はなるべく受け流すことです。
もくじ
(1)はじめに:幻聴
心療内科・精神科の症状。今回は「幻聴」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
幻聴といえば、統合失調症の代表的な症状として有名です。
一方で、他の病気でも幻聴が出たり、疲れている時など、一過性に幻聴が出ることもあります。
今回はこの「幻聴」についてみていきたいと思います。
(2)幻聴とは?
「幻聴とは何ですか?」というご質問があります。
答えとしては、「実際にはない音や声が聞こえること」。
<幻聴とは>
幻聴は、「実際にはない音や声が聞こえると感じること」。
これは声の他に音や音楽・考えなど、様々な形をとることがあります。
特に命令形の幻聴に応じる等、巻き込まれる時に特に注意が必要です。
<幻聴の例>
①対話性の幻聴
自分のことを話したり、噂したりするような幻聴です。
②命令幻聴
自分に対して「これをするように」などと命令するタイプの幻聴です。
③注釈幻聴・思考化声
行動や考えが声の形で聞こえてくるタイプの幻聴です。
<特に注意が必要なとき>
まずは「幻聴の音や影響が非常に大きいとき」、圧倒され精神不調になる危険があります。
続いて「悪口や批判の幻聴」巻き込まれてイライラ・トラブルのリスクが生じます。
あとは「命令性の幻聴」命令に従って動く場合は、時にトラブル等の危険高く、注意を要します。
(3)幻聴の原因
幻聴の原因は「統合失調症とは限らない」のがポイントです。
幻聴の原因の例は、まずは統合失調症。その他に「解離性幻聴」、あと「他の精神疾患等による幻聴」があります。
①統合失調症の幻聴
これは代表的な幻聴の原因になります。
<統合失調症とは>
統合失調症は、悪化すると幻聴や妄想・混乱などが目立つ「脳の不調」です。
主に脳のドーパミンの作用の過剰が背景とされています。
そのため治療では主に抗精神病薬を使い、脳と症状の安定を図ります。
<統合失調症の幻聴の特徴>
まずは一過性ではなく長く続くところ。
2つ目としては治療によって多くは改善するところ。
あと、妄想など他の症状と連動する形の幻聴になることが多いです。
②解離性幻聴
解離性幻聴は、「ストレスになると誘発される幻聴」です。
例を見ていくと、まずは狭い意味での「解離性幻聴」、続いて「一過性の幻聴」、3つ目が「ASDでの幻聴」です。
1)狭い意味の「解離性幻聴」
これはストレスに圧倒される強い反応「解離」のうちの一つです。
他の解離症状(離人症など)としばしば合併します。
時に統合失調症の幻聴と見分けづらいですが、抗精神病薬が効きにくいのが違いです。
2)一過性の幻聴
ストレスや疲労・不眠などが強くある時に、一過性に幻聴が出ることがあります。
これは「一過性の解離性幻聴」というイメージだとわかりやすいと思います。
これは狭い意味の精神疾患ではないので、休養などで状態が回復すれば消失します。
3)ASD(自閉症スペクトラム)での幻聴
「昔の嫌な出来事」関連の声が繰り返し聞こえることが、時に発生します。
これはASD(自閉症スペクトラム)で合併しやすい「解離性障害の一種」です。
これも時に統合失調症と見分けにくいですが、抗精神病薬が効きづらいのが違いです。
③他の精神疾患での幻聴
1)躁うつ病
重い躁状態および重いうつ状態の時に幻聴が聞こえることがあります。
2)うつ病
重症の時の「精神病性うつ病」の状態の時に幻聴が聞こえることがあります。
3)薬物や(多量)アルコール摂取後
多量摂取・依存などの結果、いわゆる後遺症として幻聴が聞こえる場合があります。
4)認知症
レビー小体型認知症などで、「幻視」の他「幻聴」も聞こえることがあります。
(4)幻聴の対策
「まずは体調を戻しつつ、受け流す」というのが一つポイントと思われます。
幻聴の対策3つ、1つ目は「体調の回復」、2つ目が「受診と治療」、3つ目が「見分けて受け流す」になります。
①体調の回復
これは一過性で消える幻聴も多いというところが背景です。
まずは睡眠確保や休養を図っていきます。
もしそれで消える場合は一過性の幻聴と思われるため、経過観察で問題がありません。
ただ、続く場合は一過性とは言いにくく、他の対策が必要になってきます。
②受診と治療
受診での診断(原因)によって、治療や対策が違います。
統合失調症であれば、これは抗精神病薬を使って治療をしていきます。
解離性幻聴であった場合は、解離の背景のストレスを減らす対策を優先します。
ASDであれば、確定診断のうえ、工夫をしつつ必要時サポートを充実させます。
③見分けて受け流す
治療をしても幻聴が残ることはありますが、受け流せれば影響はだいぶ減ります。
1)見分ける
幻聴と分かれば、それだけで影響は減ります。
何かが聞こえたら、それが「現実のこと」か、「幻聴」かを見分ける練習を反復します。
時に、「幻聴かどうかの根拠を書きだす」「人に聞く」などの方法も有効な場合があります。
2)受け流す
これは「幻だから意識的に受け流す」ということです。
幻聴は巻き込まれてしまうと、不調やトラブルの危険性が上がります。
巻き込まれそうな時は「幻」ということを今一度振り返り、距離確保に努めます。
(5)まとめ
今回は心療内科・精神科の症状「幻聴」について見てきました。
幻聴とは実際にはない音や声が聞こえることです。
特に巻き込まれると不調やトラブルのリスクがあり注意が必要です。
主な原因は統合失調症ですが、解離性幻聴・他の精神不調由来・一過性幻聴(疲労等由来)の場合もあります。
対策は、まずは休養し、それでも続くなら受診と診断を検討します。
そして、治療をしても幻聴が残る時は、幻聴を「見分けて受け流す」事が対策です。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)