考えすぎる
ぐるぐる回る「反芻思考」に注意
前向きに「考える」と違い、ぐるぐる考えすぎる「反芻思考」はストレスの蓄積につながり注意が必要です。
対策は「考えすぎ」と「考え」を見分け、「考えすぎ」に気づいたらすぐに一歩引き悪循環を抜ける事です。
慢性的には不安障害やASDが多いですが、考えすぎるように「なった」場合はうつ病の可能性に注意を要します。
もくじ
(1)はじめに:考えすぎる
心療内科・精神科の症状。今回は「考えすぎる」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
物事を解決したり、生み出したりするときに「考える」ということは非常に大事です。
一方、逆に「考えすぎる」ことによって、辛くなったり、不調になるというご相談を受けることも少なくありません。
この「考えすぎる」ことをどう見分けてどう対処していくか。今回は「考えすぎる」についてやっていきたいと思います。
(2)「考える」と「考えすぎる」
人は「考える」ことで解決をしたり、生み出したり、物事を判断したりしていきます。
一方で考えれば考えるほど辛くなったり、心身の不調が出てしまうこともあります。
ここで質問として、「この2つの違いは何でしょうか」ということがあります。
お答えとしては、「考えがどこを向いているか」となります。
<「考える」と「考えすぎる」向きの違い>
この「考える」前向きな考えを見ていくと、これは目標などに向かって徐々に前進していくイメージです。
一方で「考えすぎる」場合は、「同じところをずっとぐるぐる回ってしまう」状態です。
<建設的に「考える」>
これは目標に向けて徐々にでも前進をしているというところ。
そして前向きな、建設主義的な方向に向かって考えが進んでいます。
そのため、途中でストレスはかかっても、ずっとは続かないと思われます。
<「考えすぎる」場合>
ここでは先ほどの「ぐるぐる回る」ように同じ考え事を繰り返します。
その時にはあまり建設的な結果は出てこないです。
一方で、考えれば考えるほど、ストレスや不安が生み出され続けます。
<関連:反芻思考(ぐるぐる思考)>
これは過去の嫌なこと・不安や嫌な考えを繰り返し考えることです。
これはしばしば無意識にやってしまうことが多いです。
うつ病などの不調由来のこともありますし、1種のくせになっている時もあります。
<反芻思考の影響>
まずはプラスの影響はあまりありません。
その上でストレスや不安が、やればやるほど繰り返し生み出されていきます。
その反復の結果、心身の不調(うつ病・自律神経失調症など)がしばしば出現します。
<基本的な対策>
基本的な対策としては、「考えは残しながらも考え事(考えすぎ)を減らす」です。
(3)「考え過ぎる」状態の背景
考え過ぎには、幾つかの背景があります。
<代表的な考えすぎの背景の例>
①不安障害
不安障害では先のことをある種先回り・先読みして考えすぎてしまいます。
②自閉症スペクトラム(ASD)
ASDでは、過去の「嫌なこと」や「嫌な考え」を切り替えることが難しく、繰り返し考えてしまいます。
③気分変調症
これは慢性的なうつ状態が続く状態のため、習慣的に物事の否定的な面に目が向き、否定的に考えすぎてしまいます。
(4)「考え過ぎる」の対処法
方向の基本的は「見分ける、そして抜け出す」
<対処法の3段階>
1段階目は自分の考えを観察をしていくところ。
2段階目は「考え」と「考え過ぎ」を見分けるところ。
3段階目は「すぐ抜けられない時の追加の対策」になります。
<対処①自分の考えを観察する>
自分がどういう風に考えているのかを「一歩引いて見る」ことが大事です。
専門的には、いわゆるマインドフルネス的な「状態を観察する」一環で「考え」を観察する方法が有効とされます。
これは感情的な場面だと難しくなりますが、はじめは冷静な時に繰り返し練習して、だんだん感情が不安定な時でもできるようにしていきます。
<対処②「考え」と「考え過ぎ」を見分ける>
先程の「自分の考えの観察」を土台に、自分の思考が「考え」か「考え過ぎ」かを見分けていきます。
建設的な考えであれば、それはそのまま続けていきましょう。
一方「考え過ぎの状態」ぐるぐる回っていると分かれば、ここから一歩引いて「抜け出す」ことが対策です。
<対処③「すぐ抜けられない」時の追加の対策>
わかっていても「すぐ抜けられない」時があり得ます。その時の対策を見ていきます。
1)別のことに集中する
考え事は脳の内側で起こりますから、外の何かに集中する。そっちに集中を向けることによって、結果考え過ぎの悪循環を断つことを図ります。
2)考え過ぎの行動分析
この「考え過ぎ」がどういう影響を与えるかを振り返ります。
実際にはプラスの影響は少なくてマイナスがどんどん生み出されるということ。
そこが分かったら、これは「止めた方がいい」と気づくことがあります。
3)自己暗示(アサーション)
「本来何をすべきか、そして何ができるか」というところ。
「不安に飲まれるというポジションでいいのか」というところ、「そうではない」というところ。
そのある種の「自己暗示」をすることが、人によっては有効になるかと思います。
(5)考え過ぎが「増えた時」
「考えすぎ」が増えたら要注意というところがあります。
これは「うつ病の症状の場合があるから」になります。
<うつ病の症状「否定的思考」>
うつ病の症状で「悪い方に考え過ぎる」のがこの「否定的思考」です。
以前(うつ病になる前)はあまり考え過ぎなかったのに、うつ病になってから考え過ぎるようになることが特徴です。
そして、本来いい面・悪い面双方ある物事の「悪い面」だけに目が行くようになります。
<特にうつ病に注意が必要な時>
まずは以前はあまり考え過ぎなかった方が考えすぎるようになる「変化があった時」。
もう一つが「他の症状も合併している時」落ち込み・食欲低下等合併の時は注意です。
次は「体の症状」や「行動の変化」がある場合。うつ病の症状は精神的な症状以外に体の症状・行動の変化で出ることがあるため、注意が必要です。
<うつ病が疑われたら>
うつ病は「脳の不調」セロトニン不足などの不調なので、なかなか先程の対処法だけでは対処困難です。
なので、この時は早めの受診・早めの治療で悪化を防ぐことが大事です。
そして、薬や休養がしばしば必要です。受診の時にご相談ください。
(6)まとめ
今回は、心療内科・精神科の症状「考えすぎる」について見てきました。
「考えすぎ」は「反芻思考」とも言われ、同じことを繰り返し考えすぎてストレスが増え続け、不調の悪循環になってしまう状態です。
対策はまず、自分の考えを観察して「考え」か「考えすぎ」かを見分け、「考えすぎ」から抜けていくこと。
すぐ抜けにくい時は「別のことに集中する」など、もう一歩の対策を取っていきます。
慢性的な場合は、自閉症スペクトラムや不安障害等の場合が多いですが、考えすぎが「増えた」場合に関しては、うつ病由来の可能性の検討が必要です。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)