こだわりが強い

発達障害ASDで特徴的

「こだわりが強い」ことは、特に発達障害ASDで多く、「押しつけ」になると影響強まります。

 

対策は「利他」。こだわりと他者貢献の両立点を探し、それを実践することです。

 

動画:こだわりが強い

もくじ

 
  1. (1)はじめに:こだわりが強い
  2. (2)「こだわりが強い」とは?
  3. (3)こだわりが問題になるとき
  4. (4)「こだわり」が問題になる疾患
  5. (5)「こだわりが強い」への対策
  6. (6)まとめ
  7.  

(1)はじめに:こだわりが強い

心療内科・精神科の症状。今回は「こだわりが強い」について見ていきたいと思います。よろしくお願いします。

いわゆる「職人さん」の世界では、こだわりは一種の美徳として扱われることがあります。

一方で、対人的な社会生活では、こだわりの強さは逆に悪影響というご相談をご本人および周りの方から受けることがあります。

今回は、この「こだわりが強い」について見ていきたいと思います。

(2)「こだわりが強い」とは?

こだわり自体、それ自体が悪というわけではないです。

<こだわりが強いとは?>

これはある特定のことに高い基準を持ち、その基準に沿って行動することです。

その分野では、他者や状況に左右されず、自分の基準で物事を進めていく傾向が出ます。

<「こだわりが強い」の言い換え>

ある種「筋を通す」こと、もしくは「信念がある」ということ。

言い方を変えると、「自分を通す」とされることもあります。

<こだわりの長所の例>

例えば物作りなどで「こだわること」で質を上げていく面があります。

あとは、「自分なりの方法」で「独自性」を出しやすい面があります。

そして、ある種「熱量」を出しやすい面は言えるかと思われます。

<こだわりの短所の例>

1つ目は「柔軟性を欠く」、臨機応変な対応が難しい場合があります。

2つ目は「他者への圧力になる」特に「こだわり」を押しつける場合に生じます。

3つ目は、「変化に対応しにくい」ことが指摘されます。

(3)こだわりが問題になるとき

全ての場面でこだわりが問題になるわけではありません。

<こだわりがプラスに作用する仕事>

一種の「職人の世界」では、反復練習が有効のため、プラスになることがあります。

あとは芸術家・クリエイターでは、独自性がうまくいけばプラスになりえます。

そして、研究者はテーマを決めて、そこにこだわり研究を続ける事でプラスになりえます。

これらに共通するのはある種「自分との戦い」という面です。

<こだわりがプラスに作用する場面>

まずはいわゆる「反復練習」が意味を持つという場面です。

2つ目は、ある種の「熱量」が求められる場面です。

3つ目は「やり切ることが必要になってくる」場面です。

<こだわりがマイナスに作用してしまう場面>

逆にこだわりがマイナスに作用する場面もあります。

まずはいわゆる「チームワーク・コミュニケーションが求められる」場面。

2つ目は「柔軟性が求められる場面」、臨機応変な態度にはマイナスに作用します。

そして、一番注意が必要なのは、「こだわりを他者に押しつけてしまう」という場面。

この場合は、こだわりが非常にマイナスになってしまいます。

<注意:こだわりの押し付け>

こだわりが物や自分にいく分には特に実害はあまりないです。

一方他者への「要求」「押しつけ」になると、相手からは一種の暴力性が生じます。

この場合、本来長所のはずの「熱量」が強いほど暴力性が強くなる恐れが生じます。

<関連:自己利益のためのこだわり>

自分の利益のために「こだわる」と、不適応のリスクが高く注意が必要です。

まず、「自己中心的な印象」を持たれ、他者からの評価が非常に落ちてしまいます。

そして、自分のために相手から「奪う」場合、一種の暴力性とみなされることがあります。

(4)「こだわり」が問題になる疾患

主なものはいわゆる「自閉症スペクトラム」になります。

<ASD(自閉症スペクトラム)とは>

ASDは社会性の障害、こだわりが特徴的な「生まれながらの発達障害」です。

幼少期にわかることは多いですが、成人後不適応で気づかれる場合もあります。

特性への治療薬はなく工夫などで対応していきます。

<ASDのこだわり>

ASDでは特に狭い範囲を深くこだわり、強みもある一方、 柔軟な対応が難しいところが弱点です。

そして時にもう一つの障害「社会性の障害」と連動し、「自分本位なこだわり」になる場合があります。

そうすると相手が要求・搾取される結果になり、悪影響が大きくなります。

<ASDのこだわりが悪く出た例>

まずは「カサンドラ症候群」。配偶者の方にこだわりを押し付け疲弊させる状態です。

あとは職場、上司から部下へのパワハラ的言動につながる場合があります。

そして、同年代で押しつけをした結果、相手が離れ、孤立することがあります。

<他のこだわり類似の症状の疾患>

①強迫性障害

「強迫観念」こだわりと一部似た「とらわれ」が生じます。

②統合失調症

ここでは「妄想」訂正不能なこだわりが生じます。薬での改善の可能性があります。

③ADHD

特定のことへの「過集中」がこだわりに近く、また時にASDを合併します。

(5)「こだわりが強い」への対策

要点は「誰かのためにこだわる」ことです。

<社会適応の基本(信頼残高)とこだわり>

例外はあるものの、基本は「人から奪うと嫌われる」、「人に何か与えると好かれる」原則があります。

これはこだわりに関してもある種同様です。

こだわりで「相手から奪えば」嫌われたり評価が下がったりします。

一方こだわりで「相手に与えれば」評価されたり、好かれたりすることが多くなります。

<「与える「こだわり」への3段階」>

1段階目は「こだわりの自覚と行動分析」、2段階目が「他者に与えるこだわりの模索」、3段階目が「決めたこだわりの実践」です。

①こだわりの自覚と行動分析

まず「自分がどんなことにこだわっているのか」を自覚します。

そしてそのこだわりの相手への影響(奪う・与える)を行動分析します。

もし「奪う方が多い」こだわりなら、それは見直す必要が生じます。

②他者に与えるこだわりの模索

特に「奪うこだわり」があった場合に、他に何かできるこだわりはないか探します。

そして、その中で「人に対して与える要素が強い」ものを模索します。

「自分のこだわり」と「他者への貢献」の両立をできる点を探していきます。

③決めたこだわりの実践

先ほどの両立点を見つけたら、あとはやり切ればおのずと結果がついてきます。

ただ「すぐには結果が出ない」ことは、前もって織り込んでおくのが大事です。

そして、「他者には敬意を」、ただ一方で「雑音は無視を」これがやり切るうえで大事です。

(6)まとめ

今回は心療内科・精神科の症状「こだわりが強い」について見てきました。

こだわりは特定のことへの高い基準と行動です。うまくいけば、プラスの部分も多いです。

しかし一方で、他者との関わりではマイナスにいくことも多くあります。

そして、特に「相手から奪う・押し付ける」こだわりは、一種の暴力性を帯びる事があります。

対策としては「誰かのためにこだわる」。

「自分のこだわれる活動」と「他者に貢献できる部分」の両立点を探っていくことが大事です。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)