昏迷について知っておきたい4つのポイント
症状の意味と原因、安全のために必要な対応を先にまとめます。
① 意識はあるが、動かず、呼びかけに反応しない

昏迷では、意識があっても動きや交流が途絶えます。多くの場合、回復した後に当時のことを覚えています。最低限の動きが残る状態は「亜昏迷」と呼び、程度の違いで分けます。
② 原因は、精神病性・うつ病性・心因性・器質性の四つに分ける

統合失調症に伴うもの、うつ病やうつ状態に伴うもの、強いストレスに伴うもの、脳や体の原因によるものがあります。原因ごとの特徴と、症状が始まる前の経過を確認します。
③ 食事・水分が取れないことや、急な状態変化に注意する

食事や水分が取れないと、脱水などで全身の状態が悪くなります。動かない状態から急に興奮することや、急いで治療すべき体の病気が隠れている場合にも注意が必要です。
④ 原因を調べ、入院治療ができる病院に相談する

治療の基本は、昏迷の原因への対応です。ただし、薬を飲むことも難しく、家庭では安全に治療を続けにくいため、入院が必要になることが多くあります。精査と入院に対応できる病院へ、早めにつなぎます。
詳しい解説の目次
1.昏迷とは――意識はあるが、動かず反応しない状態

「動く」「話す」「反応する」が途絶える
精神科でいう昏迷は、意識はあるが、自分から動かず、外からの呼びかけにも応答・反応しない状態です。 動作や会話による周囲との交流が途絶え、食事や水分を取ることもできなくなる場合があります。
精神医学的には、「意志の発動」がなくなっている状態と表現されます。自分から動き始めたり、言葉を返したりする働きが止まっている、という捉え方です。
多くの場合、回復した後に、そのときのことを覚えているのも特徴です。周囲から反応が見えない間も、本人に向けて丁寧に説明し、声をかけることが大切です。
うつ病の治療中に昏迷となった例
うつ病で治療を続けていたAさんは、落ち込みが次第に強くなり、ある日、話しかけられても全く応じなくなりました。食事も取らなくなったため、家族とともにかかりつけの病院を受診しました。
うつ病性の昏迷と診断され、入院して治療を受けたところ、状態が改善して退院できました。回復した後に不調時のことを尋ねると、Aさんは「覚えています」と答えました。
2.昏迷・亜昏迷・昏睡の違い

昏迷と亜昏迷は、動きがどの程度残るかで分ける
昏迷と亜昏迷(あこんめい)は、状態の程度による区別です。 昏迷では全く動かない状態となり、亜昏迷では最低限の動きが残ります。
少し動ける場合にも、飲食や服薬、日常生活がどこまで保てているかを確認します。「少し反応した」という一場面だけでなく、その後の変化まで医療者に伝えることが必要です。
| 言葉 | このページでの意味 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 昏迷 | 意識はあるが、動かず呼びかけにも反応しない状態 | 動作・会話・飲食、症状の経過、背景の原因 |
| 亜昏迷 | 昏迷に近いが、最低限の動きが残る状態 | どのような動きや反応があるか、飲食・生活が保てているか |
| 昏睡 | 意識が深く障害され、呼びかけなどで目覚めない状態 | 救急での全身状態と原因の評価 |
意識障害との区別は、診察で確認する
動かず返事がない状態を見たときは、昏迷のほか、意識そのものが障害されている可能性も確認します。脳や体の病気が背景にあると、昏迷に見えていても、実際には意識障害がある場合があります。
医学分野によって「昏迷」の使い方が異なることもありますが、ここでは、精神科で用いる意味を説明しています。今、反応がない人に必要なのは、家庭で言葉を当てはめることより、速やかな医学的評価です。
3.昏迷の原因4つ――精神病性・うつ病性・心因性・器質性

① 精神病性昏迷――主に統合失調症に伴う
精神病性昏迷は、主に統合失調症に伴う昏迷です。外からは動かない状態に見えても、急に興奮した状態へ変わることがあります。
この昏迷を、内的な興奮が高い状態として捉えることがあります。一見静かでも、強い興奮や混乱と同じような症状の強さがある点が特徴です。動いていないことを、そのまま落ち着いている証拠にはせず、状態の変化に注意します。
② うつ病性昏迷――意欲低下が極めて強まる
うつ病性昏迷は、うつ病や、双極性障害(躁うつ病)などのうつ状態に伴う昏迷です。意欲の低下が、いわば限界まで強まった状態として説明できます。
話したり動いたりすることに加え、食事や飲水までできなくなる場合があります。その際は、心の症状への治療とともに、脱水や全身状態の悪化を防ぐため、特に早い対応が必要です。
うつ病の症状・診断・治療を詳しく見る / 双極性障害について詳しく見る
③ 心因性昏迷――強いストレスに伴う解離性の症状
心因性昏迷は、強いストレス反応である解離性障害の一種です。「解離性昏迷」とも呼ばれ、強いストレスがあった後に生じることが多くあります。
解離性障害にはさまざまな症状があり、昏迷から別の解離症状へ移行する場合があります。その際は様子が大きく変わることがあるため、動きや返答が戻った後の状態にも注意して、医療者に伝えます。
ストレスがきっかけであっても、飲食や反応が保てない状態には、病院での確認と安全な支援が必要です。周囲は、つらい出来事をその場で詳しく話すよう求めるより、まず受診につなぐことを優先します。
④ 器質性昏迷――脳や体の病気を確認する
器質性昏迷は、体の原因による昏迷です。脳炎などの脳の不調、体の不調、てんかんに関連して起こる場合があります。
この場合には、昏迷と思われていた状態に意識障害があることもあります。精神科の病気で治療中でも、体の原因を含めて調べることが重要です。
4.昏迷で注意したい三つの危険性

① 食事や水分が取れず、全身の状態が悪くなる
食事や飲水ができなくなると、脱水から全身状態が悪化する危険があります。「横になっているから休めている」と見るのではなく、最後に水分や食事を取れたのはいつかを確認し、病院に伝えます。
特に、飲食が途絶えている場合は、本人から「つらい」「喉が渇いた」という訴えがなくても、早い対応が必要です。
② 急な興奮・混乱・衝動的な行動に変わる
昏迷から急に興奮したり、混乱したり、衝動的な行動が出たりすることがあります。精神病性昏迷で特に注意する点です。
状態の変化を家庭だけで予測し、対応し続けることには難しさがあります。本人と周囲の安全を保てる医療体制につなぐことが大切です。
③ 急いで治療が必要な、体の原因が隠れている
はじめは昏迷の状態でも、経過の途中で意識障害が生じる場合があります。そこに、急な治療が必要な体の病気が隠れている可能性もあります。
以前にも同じような状態があった場合は、その経過も参考になりますが、今回の全身状態や原因を改めて確認します。
5.昏迷の診察と治療――精査・入院ができる病院へ

原因への治療が基本になる
治療の基本は、昏迷を起こしている原因への対応です。 統合失調症、うつ病やうつ状態、解離性障害、体の病気など、どの背景があるかを調べて治療を選びます。
ただし、本人が自分の状態を話せず、薬を飲むことも難しいため、家で治療を進めることがしばしば困難になります。原因の治療と安全の確保を並行して行えるよう、入院が必要になることが多くあります。
体の状態と、発症前からの経過を確認する
病院では、反応や呼吸、体温などの全身状態と、症状が始まるまでの経過を確認します。家族が知っている飲食・服薬の状況や、以前にも同じ状態があったかも大切な情報です。
診察に応じて、血液検査、脳の画像検査、脳波などを選び、体の原因や意識障害の有無を調べます。必要な検査は、症状と経過によって異なります。
入院では、原因の治療と生活を支える対応を進める
飲食が難しければ、全身状態に合う水分・栄養の補給方法を判断します。動けない状態が続く間の体の管理や、急な興奮・混乱への対応も行います。
昏迷の改善だけでなく、安全に食べる、飲む、薬を使う、周囲とやり取りすることを含めて状態を見ていきます。外来や家庭での生活へ戻る時期は、その回復と背景の病気の状態を合わせて考えます。
6.昏迷状態の人への接し方と、家族が伝えること

反応が乏しい間も、本人に話しかける
昏迷の間のことを、後から覚えている人は多くいます。返答がなくても、本人に向けて短く説明し、丁寧に関わります。
「なぜ答えないの」と責めたり、大勢で質問を重ねたりするより、今することを一つずつ知らせます。
病院へ伝える内容を整理する
家族からの情報は、本人が説明できない間の診察を助けます。次の表は、分かることを短く整理するためのものです。すべてを記録し終えてから連絡する必要はありません。
| 伝えること | 伝え方の例 |
|---|---|
| 始まった時期 | 「昨日までは話せていました。今朝から返事がありません」 |
| 動き・反応 | 「声をかけても動きません」「短い返答はありますが、ほとんど動きません」 |
| 食事・水分 | 「昨夜から食事を取らず、水分もほとんど取れていません」 |
| 直前の経過 | 「落ち込みが強くなっていました」「強いストレスがかかる出来事がありました」 |
| 体の症状 | 「熱があります」「けいれんがありました」など、実際に見た変化 |
| これまでの病気・薬 | 診断名、薬の名前、変更した時期、最後に飲めた時刻 |
| 過去の同様の状態 | 以前の受診・入院と、そのときの経過 |
7.昏迷についてよくあるご質問

昏迷は治りますか? どのくらい続きますか?
原因に合う治療によって改善を目指します。うつ病性昏迷の例で紹介したように、入院治療を経て回復する場合があります。
続く期間や回復の経過は、原因や全身状態によって違います。食事や水分が取れないことや状態の急変に対応するため、自然に戻るまで待つより、早めの診察と治療が大切です。
解離性昏迷なら、静かに休ませて様子を見ればよいですか?
強いストレスへの配慮とともに、まず体の状態と安全の確認が必要です。解離性・心因性の昏迷でも、反応や飲食が保てない状態では、精査や入院ができる病院へ相談します。
他の解離症状に変わり、様子が大きく変化する場合もあります。家族だけで原因や経過を判断せず、医療者と共有して対応します。
薬を飲めないときは、どうすればよいですか?
薬が飲めないこと自体が、家庭での治療を難しくする大きな理由です。無理に飲ませたり、家族の判断で薬を増減・変更したりせず、その状態を医療機関に伝えます。
病院では、原因と全身状態に合わせて治療方法を選びます。いつもの薬が飲めるようになるまで、受診を待つ必要はありません。
昏迷と緊張病(カタトニア)は同じ意味ですか?
昏迷は、動きや反応が途絶えた状態を表す言葉です。緊張病では、昏迷や発語の減少、姿勢・動作の異常など、複数の特徴を合わせて評価します。
診察では、昏迷の背景と、他にどのような症状があるかを確認します。
8.まとめ・関連する病気を詳しく知る

昏迷は、意識はあるが、動かず、呼びかけにも反応しなくなる状態です。多くの場合、回復後に当時のことを覚えています。最低限の動きが残る場合は、亜昏迷と呼びます。
精神病性、うつ病性、心因性、器質性など原因はさまざまですが、いずれも心身の安全への注意が必要です。原因を詳しく調べ、必要な入院治療ができる病院へ、早めに相談してください。
関連する病気を詳しく知りたい方へ
| 関連する背景 | 詳しい解説 |
|---|---|
| 統合失調症に伴う症状 | 統合失調症の症状・治療 |
| 落ち込みや意欲の低下 | うつ病の症状・診断・治療 |
| 双極性障害のうつ状態 | 双極性障害の症状・治療 |
| 強いストレスに伴う解離 | 解離性障害の症状・治療 |
現在、昏迷が疑われる状態への対応は、一般の外来予約を待つより、精査・入院ができる病院への相談を優先してください。
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昏迷
このページのもとになった、精神科医による解説動画です。昏迷と亜昏迷、四つの原因、注意したい危険性、病院での治療について説明しています。
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こころ診療所吉祥寺駅前
医療法人社団Heart Station/心療内科・精神科


