昏迷

意識あるが動かず反応しない

「昏迷」とは、意識はあるが「動かず」「反応しない状態」です。時に食事や飲水もできなくなります。

 

統合失調症やうつ病など原因は様々で、それにより起こり方や注意点が一部変わってきます。

 

ただし「重い症状」なのは共通で、安全面を考え、精査・入院ができる病院への早期の相談が求められます。

 

動画:昏迷

もくじ

 
  1. (1)はじめに:「昏迷」動かず・反応しない状態
  2. (2)昏迷の例
  3. (3)昏迷とは
  4. (4)昏迷の原因
  5. (5)昏迷の治療
  6. (6)まとめ
  7.  

(1)はじめに:「昏迷」動かず・反応しない状態

心療内科・精神科の症状。今回は「昏迷」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

会話などができなくなる状態に関して、代表的なものはいわゆる「意識不明」と言われる状態「意識障害」があります。

一方で、精神不調の中で意識はあるけれども、反応しない・動かないという状態になることがあります。

これを精神医学では「昏迷」と言います。

今回はこの「昏迷」についてみていきます。

(2)昏迷の例

まず、「昏迷の例」を見ていきます。ある方Aさんの例です。

Aさんは落ち込みが強くあり「うつ病」の診断で治療を続けていました。

症状がだんだん強まっていく中、ある日話しても全く応じなくなりまして、食事も取らなくなりました。

そのため、かかりつけの病院にご家族の方が連れてきました。

そこで「うつ病性の昏迷」という診断を受けまして、入院をして治療。その結果改善して退院しました。

元気になったAさんに不調時のことを覚えているかということを聞きますと「覚えています」というふうに答えました。

(3)昏迷とは

この「昏迷」は「意識はあるが、動きや交流が途絶えた状態」になります。

<昏迷とは>

昏迷とは、意識はあるが動かず、外部からの呼びかけにも応答・反応しない状態です。

ある種「意志の発動」がなくなっている状態と精神医学的には言われます。

そして、多くの場合は、その時のことは後日覚えていることが特徴です。

<昏迷と亜昏迷>

似たもので、昏迷に似た「亜昏迷」というものがあります。これは、その程度の強さによって分類することになります。

「昏迷」だとある種「全く動かない」という状態。「亜昏迷」だと、「最低限だけは動く」状態です。

(4)昏迷の原因

昏迷の原因はいろいろあります。

<主な昏迷の原因の4分類>

まずは「精神病性昏迷」、2つ目が「うつ病性昏迷」、3つ目が「心因性昏迷」、4つ目が「器質性昏迷」になります。

①精神病性昏迷

これは主に統合失調症に伴う昏迷状態になります。

これは急に興奮状態に変わることもあるのが特徴です。昏迷もある種「内的興奮が高い」という見方をすることがあります。

そういった強い興奮や混乱と似たような「症状の強さ」が、一見動かないけれどもあることが、精神病性昏迷の特徴です。

②うつ病性昏迷

これはうつ病やうつ状態(躁うつ病など)に伴う昏迷になります。

これは「意欲の低下がある種限界まで強まったもの」ということができます。

この時、食事や水を飲む「飲水」もできなくなる状態になることがあります。

その時は、健康のために特に早い対応が必要になってきます。

③心因性昏迷

これは強いストレス反応「解離性障害」の一種になります。

強いストレスがあった後に生じることが多いです。

解離性障害は他にも色々症状があり、他の解離の症状に移行することがあります。

その際は症状が大きく変化することがあり、注意が必要です。

④器質性昏迷

これは体の原因による昏迷になります。

脳の不調(脳炎など)や体の不調、あとはてんかんの関連での出現が背景とされます。

この場合、昏迷と思ったら実は意識障害があるという場合もあり得ますので、そういう意味で注意が必要なものになります。

(5)昏迷の治療

昏迷の治療は基本的に入院を要することが多いです。

そのため早めに対応ができる「病院」に相談することが大事です。

<基本は「原因への治療」だが…>

基本は「昏迷の原因への治療」にはなります。

ただし一方で、なかなかまず「服薬」ができない等、治療が家ではしばしば困難です。

そして、後述のように様々な面でリスクが高いため、実際は入院治療がしばしば必要です。

<昏迷の危険性>

①健康面のリスク

食事・水分が取れない状態では、容易に脱水状態から全身状態悪化のリスクがあります。

②予測困難な行動のリスク

これは精神病性昏迷で特に典型的ですが、昏迷状態から急な興奮や混乱・衝動行為に至る危険があります。

③器質因が隠れている可能性

ある時期まで昏迷だったのがある時期から意識障害に変わり、何か急な治療を要するような体の病気が隠れている場合があります。

<精査・入院治療できる病院に相談を>

昏迷は、その原因に関わらず、様々な面で危険性・リスクがありますの。

そのため「体の原因」がないかの精査や入院しての集中的な治療ができる病院に、早めに相談することが大事です。

(6)まとめ

今回は、心療内科・精神科の症状「昏迷」について見てきました。

昏迷とは意識はあるけれども、動かず反応もしない状態になります。そして、この時の状態のことは、後日も覚えているのが原則特徴です。

原因は統合失調症、うつ病など様々あり、原因により経過やリスクの方向が一部異なります。

ただし、「心身共に予断を許さない状態」なのはどの昏迷でも共通なので、精査や入院治療ができる病院への早めの相談が重要です。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)