落ち着かない
緊張強まった状態
「落ち着かない」は緊張が高まった状態。ストレス反応の他、不安障害やADHD等で生じます。
対策はあれば精神疾患の治療をしつつ、ストレス・リラックスの対策を並行します。
もくじ
(1)はじめに:落ち着かない
心療内科、精神科の症状。今回は「落ち着かない」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
ストレスを感じた時、楽しみなことがある時。落ち着かないという経験は、多くの人がしているものになります。
しかし、それが強すぎたり続きすぎたりする時は、背景に何らかのメンタル不調がある場合があります。
今回はこの「落ち着かない」についてみていきます。
(2)「落ち着かない」とは?
これは「覚醒度が上がっている状態」とも言い換えられます。
<「落ち着かない」とは>
これは覚醒度や緊張が高まった状態とに言えるかと思います。
何かイベントやストレスがあって、これが引き金になることも少なくありません。
一方、過度であったり続きすぎる場合は何か背景にメンタル不調を疑います。
この状態は、「交感神経が優位になった状態」とも言い換えられます。
<交感神経が優位になった時の体の反応>
まずは心拍数や脈拍が速くなります。
そして呼吸も速くなったり、荒くなったりします。
そして覚醒度は上昇します。
<これは短期的には意味のある反応>
この反応は、具体的には危険な状態に対しての反応です。
そして、状況や変化に機敏に対応できるのが、この状態の強みです。
運動や思考(考え)も早いスピードで行えるのが特徴です。
<長期的に続くと悪影響が目立つ>
一方、これが長期的に続くと悪影響がむしろ目立ちます。
まずは身体に過度の負担がかかってしまい、様々な症状も出ます。
そして、ストレスが続くことで、うつ病などのメンタル不調の発症・悪化要因になります。
そして、緊張から不眠が続き、そこから精神状態、身体状態の悪化のおそれがあります。
<生活の中での「落ち着かない場面」の例>
生活の中でも「落ち着かない場面」は多くあります。
まずは何か発表があるなどの「イベントの前」。
あとは「環境が変化した後」、なかなかリラックスは難しいことがあります。
そして「ストレスが大きい時」、ストレスで交感神経優位になる事があります。
<メンタル不調を示唆する所見>
一方で、以下のような時は、メンタル不調が原因の場合もあります。
まずは「程度が強すぎる」。ストレスの強さと比べて、落ち着かなさが強すぎる場合です。
あとは「長く続き過ぎる」。「自然に改善する」ことがうまくいかない状態です。
3つ目は「社会生活への影響が強い」。重くなると混乱なども生じるため、注意を要します。
(3)「落ち着かない」に至る精神疾患
いくつかの原因で落ち着かなくなることがあります。
①不安障害
これは大きく分けると、パニック障害や社会不安障害などがあります。
強烈な不安が出ること、あとは持続する不安が生じること、両方ありえます。
これらの結果、不安と緊張は非常に近いため、「落ちつかない状態」になります。
②ADHD
まず特性の1つ目「不注意」で集中がそれ、なかなか落ち着きません。
もう一つの特徴「多動・衝動性」で、じっとできず「落ち着かない」事があります。
これは発達障害なので、幼少期から一貫して「落ち着かない」のが特徴です。
③うつ病
うつ病の中の一部に、不安・焦燥が目立つタイプがあり、この場合落ち着きません。
この時、うつ病の治療の一つ「休養」が困難になり、悪化リスクが高くなります。
この時の対策で「抗不安薬」などを使いますが、それでも悪循環が続く場合は時に入院を要します。
④躁うつ病
うつ病同様、「うつ状態」で不安・焦燥が出ることがあります。
そのほか「躁状態」で多弁・多動の状態になり「落ち着かない」ことがあります。
この時は、なるべく刺激を減らし休むことが必要ですが、困難なことも多いです。
⑤統合失調症
統合失調症中で、前駆期や急性期で、脳が過敏になり「落ち着かない」ことが出てきます。
この時に、幻聴や妄想等「統合失調症特有の症状」も合併し悪循環になるおそれがあります。
この時は、抗精神病薬を使いつつ休養しますが、症状重い時は入院が必要な場合もあります。
(4)「落ち着かない時」への対策
基本はリラックスして安定を図ることです。
「落ち着かない」ときの対策3つ、まずは「(ある時は)精神疾患の治療」、次に「ストレスの対策」、そして「リラックスの対策」を並行します。
①精神疾患の治療
もしうつ病等の「精神疾患」がある場合は、その治療をしっかりすることが優先です。
そして、ストレスの対策やリラックスの対策も並行して行います。
その中で混乱が強いなど、安全確保が難しい場合は、時に入院しての治療を要します。
②ストレスの対策
ストレスが過剰にあると、緊張が強くなり落ち着かなくなることがあります。
その場合は、ストレスの対策が非常に大事になります。
ストレスの中でも、「外的な」ストレスに関しては、「環境の調整」が有効です。
そして、「内側」自分の中で作ってしまうようなストレスであれば、「ストレスマネジメント」が有効です。
③リラックス対策
「落ち着かない」の逆はリラックスですので、それを実践するのが対策です。
深呼吸やストレッチがシンプルかつ有名な方法で、有効な場合も多いです。
そのほか、「自分に合うリラックス法」は人により様々のため、色々試しつつ模索します。
(5)まとめ
今回は、心療内科・精神科の症状「落ち着かない」について見てきました。
「落ち着かない」とは「覚醒度が上がった状態」、短期的には利点もありますが、長く続くと悪影響が目立ちます。
「状況への反応」でも起こる一方、不安障害やうつ病などでも発生し、特に症状が強い場合は注意を要します。
対策はもしあれば「精神疾患の治療」を優先。その上で「ストレス対策」や「リラックス対策」を並行します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)