集中できない

ADHD以外の可能性もある

「集中できない」といえば、よくADHDの「不注意」が連想され、確かにその場合も多くあります。

 

一方で、うつ病やASD(自閉症スペクトラム)等を背景に、集中できなくなっている場合もあります。

 

「いつから」「どんな時に」集中できないか、他の症状は何かなどから、病気の鑑別をしていきます。

 

動画:集中できない

もくじ

 
  1. (1)はじめに:集中できない
  2. (2)可能性①ADHDでの集中困難
  3. (3)可能性②他の不調からの集中困難
  4. (4)まとめ
  5.  

(1)はじめに:集中できない

心療内科、精神科の症状。今回は「集中できない」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

心療内科の外来で「集中できない」という悩みがある中、ネットを見て「ADHDじゃないですか?」ということで受診される方が多くいらっしゃいます。

確かに、ADHDの症状で「集中できない」不注意の症状が目立つということは多くあります。

一方で、他の精神疾患でも「集中できない」という症状が出ることがあり得ます。

今回は「集中できない」ということについて見ていきたいと思います。

(2)可能性①ADHDでの集中困難

まずは可能性の1つ目「ADHD」です。ADHDの不注意で集中ができないということがあります。

<ADHDについて>

ADHDは不注意・多動・衝動が目立ちます、生まれながらの発達障害になります。

幼少期にわかることも多いですけれども、大人になってから不適応で気づかれることも多いです。

治療としてはADHD治療薬がありまして、これによって改善を図れる場合があります。

<成人のADHDの特徴>

多動・衝動に関しては、幼少期・子供の頃よりは改善することが多いです。

一方で集中しにくい「不注意」に関しては残りやすく、大人の方でも目立ちやすいです。

一般に不注意が幼少期は目立たない場合はありますが、よく見ると以前からあったということが多いです。

<ADHDの「集中できない」の特徴>

まずはADHDの場合、目立たないことはあるんですが、よく見ると以前から続いていることが大半です。

あとは「気分や精神面を伴わない」調子が良くても、集中困難ということが特徴になります。

そして、他のADHDの症状を合併しやすい。大人の方ですと、いわゆる典型的な多動・衝動ということは珍しくても、「気分の波」とかちょっと変わった形で出ることが少なくありません。

<ADHDの可能性が高い時>

まず、幼少期・子供の頃から続く集中困難ですと可能性は上がります。

あとは落ち込み・緊張などと「関係なく」集中できないと、これは可能性が上がってきます。

そして多弁・喋り過ぎてしまったり、気分の変動がある時には、これは衝動性などが背景にあることがありますので、可能性は上がっていきます。

<ADHDの可能性が下がる時>

まずはある時期大人になってから「ある時期から集中困難になった」という時は可能性は下がってきます。

あとは「状況・症状と連動しての集中困難」例えば人前で緊張した時だけ集中しにくいという場合だと可能性は下がってきます。

そして「他のADHDの症状の合併をあまりしない」気分の波等の他のADHD症状が目立たない方だと可能性は下がってきます。

(3)可能性②他の不調からの集中困難

続他の病気や原因での集中困難の場合もあります。

比較的可能性が高いものを見ていきますと、まずはうつ病による集中困難。続いてが不安障害による集中困難。3つ目はASD(自閉症スペクトラム)による集中困難になります。

①うつ病による集中困難

<うつ病とは>

うつ病は落ち込みや集中困難などのうつ症状が続く脳の不調になります。

脳のセロトニンという物質の不足などが背景とされています。

治療としては、このセロトニンを増やす抗うつ薬で治療し、休養やストレス対策を並行していきます。

<うつ病での集中困難>

うつ病の症状の一つとして、集中できない「集中困難」があります。

ただあくまでうつを発症してから集中困難が目立つという特徴があります。子供の頃からではないということは特徴です。

他のうつ症状を合併しまして、他のADHDの症状は基本的には必ずしも合併しないということがあります。

②不安障害による集中困難

<不安障害とは>

不安障害は、不安・緊張が強くなる精神不調になります。

細かく分けると、パニック症・社会不安症など、出方に色々種類があります。

うつ病と共通点が多くありまして、抗うつ薬をしばしば使うのが特徴です。

<不安障害の集中困難>

これは不安や緊張に伴って気が散ってしまって集中できないというじょうたいです。

そのため、不安障害を発症してから集中困難が目立つというところ。

後は、「不安などの症状と集中困難が連動する」不安が出やすいところで、集中困難も重くなるのが特徴です。

③ASD(自閉症スペクトラム)に伴う集中困難

<ASD(自閉症スペクトラム)とは>とは」

ASDは社会性の障害(対人関係の苦手さ)とこだわり、この2つが目立つ生まれながらの発達障害です。

幼少期に分かることが多いですが、大人になってから不適応が目立って分かるということもあります。

ASDの特性に対する薬はない為、生活面で特性の改善を図るのが対策です。

<ASDでの集中困難>

これは幾つかの背景で出ることがあります。

まず、1つ目としては「マルチタスクに対しての不適応」というところ。

このこだわりは「色々切り替えることが苦手」となるため、仕事が始まってマルチタスクが求められた時に、結果集中できなくなってしまう方は結構多いです。

後は感覚過敏です。聴覚過敏など過敏になったときに集中が切れてしまう方が中にはいらっしゃいます。

3つ目は、いわゆる「侵入思考」といって、「過去の嫌なことを急に思い出したりする」方が多いです。それによって巻き込まれて気が散ってしまうという方がいます。

そして、ASDに関しては、しばしば同じ発達障害であるADHDと合併するという方が多いです。

④その他の可能性

集中困難に関し、その他の原因の場合もあります。

<その他の精神疾患での集中困難>

まずは強迫性障害。これは強迫観念が「侵入的に」急にきますので、それによって集中困難になる方がいます。

次に「統合失調症」の方。これは特に急性期で「脳が敏感になって」集中できない、あとは「幻聴」などに惑わされて集中できない場合があります。

頻度は少なめですが「てんかん」の方もいます。発作の中で、「目立つ発作」以外にあまり目立たなくて集中が切れてしまうような「軽めの発作」が繰り返されて集中できなくなる方がいます。

<体の原因での集中困難>

まずは、いわゆる甲状腺ホルモンの異常、「機能亢進症」「機能低下症」、どちらでも集中困難が出ることがあります。

あとは不眠、それに伴う睡眠不足によって集中できない方もいます。

または、体調不良や(肝障害・糖尿病などの)内科疾患が実際あっての集中困難もありうるため、体の原因の除外は大事です。

こういったさまざまな可能性を踏まえながら、総合的に検討していきます。

(4)まとめ

今回は、心療内科・精神科の症状「集中できない」について見ていきました。

この「集中できない」症状はADHDで有名ですが、うつ病などその他の原因でも生じ得ます。

ADHDでは、幼少期から精神面にあまり関係なく出る不注意が特徴になります。なので、時期・場面が限られている場合に関しては、他の原因も考えていきます。

他の原因では、うつ病・不安障害・ASDが有名ですけが、そのほかの原因もあり得るため、状況や症状など総合的に見て原因を検討することになります。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)