楽しめない
不安等が背景、うつ病の症状の時も
「楽しめない」状態が続くと、ストレスが慢性的にたまり意欲にも影響、うつ病のリスクも出てきます。
「楽しめない」背景は様々。身体的・精神的・環境的な要素、不安などが絡んできます。
特に、楽しめなく「なった」場合は、うつ病の症状「興味の減退」の可能性に注意が必要です。
もくじ
(1)はじめに:「楽しめない」
心療内科・精神科の症状。今回は「楽しめない」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
仕事や生活をする中で「楽しめない」と思うことは少なくありません。
一方、それが続くことは、うつ病などのリスクにもなりますし、またそれ自体がうつ病の症状の一つの場合もあります。
そのため、早めの対策が必要なものになってきます。
今回は「楽しめない」について見ていきます。
(2)「楽しめない」の影響
時に楽しめないということは多くの人が経験しますが、それが「続いて」しまうと、様々なことに影響が出てきます。
<「楽しめない」影響の例>
①ストレス
発散ができなくなる部分もありますし、「楽しめない」が続くことで、ストレスがたまってしまう。
この両面でストレスがどんどん蓄積してしまうリスクがあります。
②意欲への影響
楽しめないことが続きますとモチベーションが下がってきます。
例えば仕事への影響、集中力などの影響も出てくることがあります。
③自己評価や人間関係
「楽しめない」ことが続くと、自己否定的になって考えすぎてしまうことがあります。
また人により対人的にも距離ができてしまうなどの影響が2次的に出てきます。
こういったことが持続すると「うつ病のリスク」が出てきます。
<うつ病のリスクになる要素>
まずはストレスがたまってくることでのリスクがあります。
2つ目は「考えすぎてしまう」ところ、それでさらにストレスが増え、うつ病のリスクになってきます。
3つ目は「切り替えができない」というところ。「何か楽しめること」で切り替えて立て直すことが難しくなってしまいます。
<うつ病の治療「行動活性化」>
これはよく認知行動療法でやる治療の一つです。
動くことを刺激として、うつの改善を図るものになります。
特に「楽しめるもの」「達成感のあるもの」を増やしていくことが大事です。
やることの基本としては「ストレスの発散する」や「リラックス」です。
(3)なぜ楽しめないか?
楽しめない原因は人によりさまざまあります。
大まかな原因としては、「身体の原因」、「精神的な原因」、そして「環境的な原因」に分けられるかと思います。
①身体の原因
まずは「疲れや過労」、疲れすぎていると楽しめる余裕は出てきません。
2つ目は「体調不良」、体の調子が悪い状態で、何かを楽しむのは困難です。
3つ目が「多忙や余裕がない」、余裕がなくなると、何かを楽しむことは困難です。
②精神的な原因
まずは「ストレスやイライラ」。ストレスが続いたり、考え事が続いてしまうと楽しめる余裕がなかなかできにくいです。
2つ目がいわゆる「罪悪感」。何か「楽しむことは良くないことなんじゃないか」というふうに思ってしまうと、そこで楽しむことにブレーキがかかってしまいます。
3つ目が「不安」。周りが気になったり、不安が続いたりすると、余裕を持って楽しむことは困難です。
③環境的な原因
まずは「変化があまりない」。同じことが続くと「楽しくない」ことにつながります。
2つ目が「やりがいがない」。達成感などがないと、楽しみにはつながりにくいことがあります。
3つ目が「興味がない」。仕事など興味がないことだと、そこから楽しみは見出しにくいです。
(4)「楽しめない」への対策
これは原因によって対策が変わってきます。
①体の原因
疲れや体調不良等には「休養」まずしっかり休むことです。休んでいる中で整ったら、また次の対策を取っていきます。
②精神的な原因
ここでの対策は「行動活性化」です。発散やリラックス等「楽しめることをする」を意識的に。
③環境的な原因
この場合は、環境を適宜変える「環境調整」が一番対策になります。
(5)「楽しめなくなった」に特に注意
「楽しめない」だけでなく、楽しめなく「なった」という場合は特に注意が必要です。
<「楽しめなくなった例」>
前楽しめたことが、実際やってもあまり楽しめなくなる場合。
あとは以前なら「楽しめそうなこと」に何も興味が湧かないところ。
その結果「休日何もせずに過ごすようになった」、前は動いていたのに何もせず過ごすようになることがあります。
ここでご質問として「なぜ特にこれは注意が必要なのか」ということがあります。
答えは「このことがうつ病の症状の場合があるから」です。
<うつ病の症状「興味の減退」>
うつ病の症状の「興味の減退」は、物事に興味を感じにくくなるということです。
「何かをやってみよう」という興味や意欲がわかなくなる場合があります。
また、実際にやっても前のように楽しめないことが増えてきます。
<特に注意が必要な時>
まずは「休日に興味の減退が起こる時」この場合はストレス反応だけでは説明がつきにくく、かつ休日にストレスの対策がとれず悪循環になるリスクが高くなります。
2つ目が「他の落ち込みなどのうつ症状がある」時。他の症状も合併していると、「うつ病」の状態にある可能性が高いと思われます。
3つ目が「体の症状や行動の変化を合併するとき」実はうつ病の症状は、落ち込みなどの精神症状以外に「体の不調」や「行動の変化」で出ることもあるため注意です。
ここで「もしうつ病が疑われたら」というご質問です。
答えは「早めの受診をご検討ください」です。
<うつ病が疑われる時>
うつ病は「脳の不調」の面が強いため、早めかつ十分な治療が必要です。
それまでの間は、「なるべく頭を休める」治療によっては休職も選択肢です。
そして、治療中で薬が必要になることは適応障害などよりも多いです。
(6)まとめ
今回は心療内科・精神科の症状「楽しめない」について見てきました。
「楽しめない」ことが続くと、ストレスや意欲低下などが生じ「うつ病」のリスクにもなるため注意が必要です。
原因は大まかに「身体の原因」「精神的な原因」「環境的な原因」があり、それにより対策が変わってきます。
特に「休日などに楽しめなくなった」変化がある時は、うつ病の「興味の減退」の可能性に注意が必要です。
そして、うつ病が疑わしければ早めの受診をご検討ください。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)