気分の浮き沈みが激しい

躁うつ病以外の可能性もあり

「気分の浮き沈みが激しい」背景では、まず「躁うつ病」がイメージされ、その場合もあります。

 

一方でADHDの衝動性から気分の波が出たり、PMS/PMDDから周期的に変動することもあります。

 

そして適応障害では、「うつ」より「気分の浮き沈みが」で認識され、治療につながることもあります。

 

動画:気分の浮き沈みが激しい

もくじ

 
  1. (1)はじめに:気分の浮き沈みが激しい
  2. (2)気分の浮き沈みの背景
  3. (3)躁うつ病での気分の波
  4. (4)「ストレスへの敏感さ」での気分の浮き沈み
  5. (5)「うつ」関連での気分の浮き沈み
  6. (6)「特性由来の」気分の浮き沈み
  7. (7)特に臨床で多い「気分の浮き沈み」
  8. (8)まとめ
  9.  

(1)はじめに:気分の浮き沈みが激しい

心療内科、精神面の症状。今回は「気分の浮き沈みが激しい」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

「気分の浮き沈みが激しい」というご質問をよく受けます。

「気分の波」といえば、よく「躁うつ病」がイメージされますが、ほかの原因のことも少なくはありません。

今回は「気分の浮き沈みが激しい」について見ていきたいと思います。

(2)気分の浮き沈みの背景

気分の浮き沈みの代表的なものを見ていきます。

まずは躁うつ病(双極性障害)、これは病気として気分の波が出ます。

あとはストレスの敏感さ、ストレスに反応して気分の波が出ることがあります。

続いては、いわゆる「うつ」関連。うつがあると、気分の波が出やすくなることがあります。

そして、発達面など本人の特性。ADHDなどを背景に気分の波が激しいことがあります。

(3)躁うつ病での気分の波

躁うつ病は気分の波が出る病気のため、浮き沈みが激しくなることがあります。。

<躁うつ病とは>

「うつ」とその逆の「躁」、これを周期的に繰り返す脳の不調になります。

うつ病とは違う別の脳の不調のメカニズムが言われています。

治療は「気分安定薬」という躁うつ病の薬を使います。

<躁うつ病の気分の波>

基本的には「数カ月単位での波」と言われます。

人によっては、躁の時間が非常に短く、結果「早い気分の波」に見える事があります。

あと、以下2つのように例外的に波が早く出る場合があります。

①急速交代型(ラピッドサイクラー)

これは速い周期で躁とうつが交代していくものになります。

これは躁うつ病の中でも基本的に不安定な状態です。

そのため日常の中での「気分の浮き沈み」とは違うことが多いと思われます。

②混合状態

これは躁の状態とうつの状態が、いわゆる「まじったような」状態です。

この時も躁うつ病の中では不安定な状態です。

そのため日常の中での気分の浮き沈みの激しさとは違うことが多いかと思います。

<類似:気分循環性障害>

気分循環性障害は、躁うつ病と類似ですが、躁とうつのエピソードまではいかない、周期的な気分の変動が出ます。

この場合、トラブル等までは少ない一方、生活での困難が長く続くことがあります。

どこまで治療するかは状況次第ですが、治療時は、気分安定薬を検討します。

(4)「ストレスへの敏感さ」での気分の浮き沈み

ストレスに敏感だと気分の波が出やすくなります。

例はまず「不安障害」、続いて10代のいわゆる「思春期心性」、そして「体の原因」です。

①不安障害

不安障害の中でも生来の敏感さがあり、ストレスで気分の波が出やすいことがあります。

また人によりうつ病同様のセロトニン不足を背景にある時期から波が出ます。

そして、不安や落ち込みのほか、イライラの形で気分の波が出る方がいます。

②10代(思春期心性)

10代の方は成長期の様々な変化の中で、気分の波が非常に出やすくなります。

そのため、特に病気がなくても気分の浮き沈みが激しくなることがあります。

ただし、背景に精神疾患が隠れている場合もあり、注意が必要です。

<10代での隠れた精神疾患の例>

1)適応障害や・うつ病

ストレスによって波が強くなっていることがありえます。

2)躁うつ病

比較的躁うつ病は、10代も含め若い年齢での発症が多いと言われます。

3)ADHD

実際は幼少期からですが、10代になり気分の波目立つ場合があります。

4)統合失調症

脳が敏感になり、まず気分の波が出る事があります。率はやや低いものの注意を要します。

③体の原因

体の不調を背景に過敏や気分の波が出ることがあります。

特に、いわゆる甲状腺ホルモンの不調(亢進症・低下症)には注意が必要です。

気分変動が続く場合は、採血等での体の原因を除外が望まれます。

(5)「うつ」関連での気分の浮き沈み

いわゆる「うつ」関連でも、気分の波は出ることがあります。

例はまずは「うつ病」によるもの。続いてが「適応障害」によるもの。あとは「PMS/PMDD」によるものです。

①うつ病

うつ病の場合落ち込みの他、イライラや気分の変動が目立つことがあります。

そして、人前で「気を張る」ことで、逆にその後との「気分の波」に見える事があります。

また、ストレスへの余力が減り、反応が普段より強く出て「波」に見える事があります。

②適応障害

適応障害では、ストレスの有無による気分の浮き沈みが目立ちます。

具体的には、平日・ストレスが強いときには落ち込みが強く出る一方、休日になるとストレスから解放されて調子が戻る。

こういう変動が出るということが典型的です。

③PMS/PMDD

PMS(月経前症候群)では、生理前に様々な心身・体と心の不調が出ます。

その中で、周期的な落ち込みが出て、気分の浮き沈みに見える事があります。

そしてイライラ・不機嫌が目立つ場合もあり、これはPMDDと言われます。

(6)「特性由来の」気分の浮き沈み

発達面などの特性が由来での気分の浮き沈みがあります。

例としては第一にADHD、次にASD(自閉症スペクトラム障害)、もう一つが境界性パーソナリティ障害です。

①ADHD

ADHD由来での短期間での「気分の浮き沈み」はかなり多いです。

成人での「衝動性」は、主にストレスへの過敏さ・気分変動で現れます。

そして、「注意や集中の変動」も、ある種「浮き沈み」のように見えてきます。

そして、躁うつ病と比べても「短期間で」気分変動が起こりやすいです。

②ASD(自閉症スペクトラム障害)

状況への興味や相性で、気分が大きく変わることがは特徴です。

そして「前の嫌なことを思い出す」ことで、急に落ち込む等変動が出る場合があります。

特にADHDを合併した場合に、気分の波が目立ちやすくなります。

③境界性パーソナリティ障害

別名「感情調節困難」、刺激等で感情が大きく変わる特徴があります。

特に不調時に起こりうる「衝動性」や、「他者の巻き込み」には注意が必要です。

そして精査すると「実はADHDの衝動性が由来だった」という方も比較的経験します。

(7)特に臨床で多い「気分の浮き沈み」

実際、ご相談は「適応障害」の方が多いです。

「ストレス時の気分の変動」が続くことをきっかけに受診いただく場合が多いです。

次には「ADHDもしくはその傾向」。

傾向にとどまる方でも、やはり気分の変動が目立ちやすい方は多く経験します。

3つ目が「PMS/PMDD」になります。

周期に合わせての気分の波の方。「落ち込み」「イライラ」双方多く経験します。

その中で「躁うつ病(双極性障害)」の方もいます。

ただ、ご相談の頻度は上の3つと比べるとむしろ低いのが、クリニックでの印象です。

(8)まとめ

今回は、精神科・心療内科の症状「気分の浮き沈みが激しい」について見てきました。

「気分の浮き沈みが激しい」時、躁うつ病がまず連想されますが、他にも様々な原因があります。

適応障害において、「うつ」より「気分の浮き沈み」で自覚されることも多く、受診等のきっかけになる事があります。

そのほか、PMS/PMDDでの気分変動や、ADHDに伴う気分の波が、短期間での気分変動の場合は比較的多く見られます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)