やる気が出ない

うつ病の「意欲低下」に注意

「やる気が出ない」場合、動機付けや体調の問題のほかに、うつ病の「意欲低下」を念頭に置きます。

 

「やる気が出ない」が全般的・他のうつ症状がある・悪化続く時は、特にうつ病の可能性に注意します。

 

また、「やる気が出ない」が続く場合は、「まず治療として動く」事が原則望まれます。

 

動画:やる気が出ない

もくじ

 
  1. (1)はじめに:やる気が出ない
  2. (2)「やる気が出ない」背景
  3. (3)「やる気が出ない」が続くとき
  4. (4)まとめ
  5.  

(1)はじめに:やる気が出ない

心療内科・精神科の症状。今回は「やる気が出ない」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

「やる気が出ない」と思うことはよく経験されますが、その中で特に注意を要するのはどんな場面でしょうか。

そして「やる気が出ないことが慢性的に続くとき」はどういうふうにしたらいいでしょうか。

今回はこの「やる気が出ない」について見ていきたいと思います。

(2)「やる気が出ない」背景

「やる気が出ない」背景はさまざまあります。

主なやる気が出ない理由・背景を見ていきますと、まず多いのはいわゆる動機づけの問題。なかなかやる気が出ないという話。

他には、いわゆる「体調不良」体の調子が悪く「やる気が出ない」ように見える場合。

あともう一つはいわゆる「うつ病」でやる気が出ない場合です。この後者2つは注意が必要になってきます。

①動機づけの問題

1)失敗への予期不安

何かをやろうとした時、失敗するときのイメージや不安が頭をよぎり、それでやる気がなくなってしまうという場合です。

この場合はある種の自己肯定感への対処が必要になる場合があります。

2)目的意識や関心の低さ

なかなかその目的・モチベーションを持てない場合、やる気が出ないことに結びつきます。

3)環境の影響

どうしても周りの環境に影響を受けることがあります。

それが良い方向に行く場合もあれば、やる気をそがれてしまう方に向いてしまうこともあります。

もし、環境でやる気が出ない事が続く場合は、環境調整が選択肢になります。

②体調不良

1)疲労の蓄積

いわゆる過労や、睡眠不足等が影響することがあります。

2)ストレスの蓄積

色々なストレスがたまってくると、当然・これは意欲への影響にもつながります。

3)体調不良や体の病気

例えば、糖尿病などがあった時、それが原因でだるさ、「やる気が出ない」等が出現する場合があります。

③うつ病の意欲低下

うつ病の症状が様々中で、そのうちの一つにやる気が出なくなる「意欲低下」があります。

特徴としては、興味があったことに関してもやる気が出なくなる、興味がなくなって意欲も出なくなるといった変化があります。

そして、治療していく中でも、不安などの他の症状と比べると残ったり、慢性化しやすいため注意です。

<こういうときに特にうつ病に注意>

まず1つ目としては「物事全般にやる気が出ない」。

あることだけに関心がなくてやる気が出ないとかではなくて、全般的にやる気が出なかったり、前興味があったことにやる気が出なかったりする場合に注意が必要です。

続いてが「他のうつの症状も合併している」。

「やる気が出ない」以外に「落ち込み」、「食欲が出ない」等の他の症状を合併する場合には注意が必要です。

3つ目としては「徐々に悪化してきている」というところ。

うつ病の場合気づかないうちに徐々に悪化する場合があり、注意が必要です。

(3)「やる気が出ない」が続くとき

やる気・意欲低下が慢性化しているとき、1つ大きな選択があります。

「やる気が出るまで待つ」か「まず動く」か。

基本的には「まず動く」ということをお勧めしています。

<背景:行動活性化>

この行動活性化は認知行動療法の一つの技法で、活動を増やすことで意欲改善を図る方法です。

行動と感情は結びついているというのが認知行動療法的な考え方です。かつ「感情」を「気持ち一つ」で変えるのは難しい面があります。

そのため対策としては、まず意識的に調整しやすい「行動」活動を増やすことで、結果二次的に感情や意欲にも働きかけていきます。

<他の「まず動くこと」のメリット>

1)慣れの効果

何か始めるにはエネルギーが必要ですが、始めてしまえば案外、その後は流れでやれることは少なくありません。

2)小さな成功体験

何かをとりあえずやれると、「次もやれるんじゃないか」という自信につながります。

3)ストレスや不安の発散

動くこと自体がある種ストレス発散でありますし、不安解消にもつながります。

<質問:それでもなかなか動く気になれません>

対策はまさに、「リハビリ・治療と割り切って動く」事です。

<治療として動く>

確かにこの「やる気が出ない」が慢性化している時は、やる気を待っても期待しにくいのが現状です。

むしろ、待ってうまくいかないことで自己否定になり、さらに「やる気が出ない」悪循環もあります。

なのでこの場合もう「治療として動く」、それで意欲への刺激を与えつつも「動けた」事実から自己肯定につなげていき、悪循環の流れを変えるのが現実的な対策です。

<例外:動かない方がいい場面>

1)急性期のうつ病

この時は消耗してしまっていますので、まずは休養が必要です。

2)疲労や体調不良

そういう時に無理をするともっと体調を崩してしまいますので、この時はまず休むことが大事です。

3)不眠が続く時

不眠が続くと当然体調不良も悪化し、無理して動くとさらに赤するため、この場合も少しゆっくりすることが求められます。

(4)まとめ

今回は心療内科・精神科の症状「やる気が出ない」について見てきました。

やる気が出ないという時、動機づけの問題のほかに、体調不良やうつ病の可能性があり、この点は注意が必要です。

その中で、特に他のうつ症状・全般的な「意欲低下」・「悪化の持続」等がある場合は、特にうつ病に注意が必要です。

そして、「やる気が出ない」ことが慢性的に続く場合は、まずは動くことが原則望まれます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)