若い人の物忘れで確認したい4つのポイント
いつから、どんなことを忘れるのかによって、考える背景が違います。まずは主な違いを短くまとめます。
① 最近始まり、落ち込みと連動するときは、うつ病を考える

うつ病では、集中力の低下に伴って物忘れが起こります。以前は目立たず、落ち込みなどと一緒に始まった変化が手がかりです。治療による改善を見込みますが、物忘れは少し遅れてよくなることもあります。
② 子どもの頃から続くときは、ADHDの不注意を考える

ADHDによる物忘れは、幼少期から続く不注意や集中困難に関係します。多動・衝動性と比べ、大人になっても残りやすい症状です。普段は補えていても、ストレスがかかると忘れやすさが目立ちます。
③ 強いストレスに関連する記憶が抜けるときは、解離性健忘を考える

強いストレスを経験した後、その出来事に関連する記憶を思い出せなくなることがあります。解離性健忘では、一過性で戻る場合と、続く場合があります。離人感など、ほかの解離症状も確認します。
④ 体の原因と、少しずつ進む変化も確認する

甲状腺の病気、てんかん、体調不良や内科疾患でも物忘れが起こることがあります。若年性アルツハイマーはまれですが、以前できていたことが徐々に難しくなる経過も含め、必要時は診察で確認します。
詳しい解説の目次
1.若いのに物忘れが多いとき、まず確認すること

10代・20代・30代にも、物忘れの相談がある
若い人でも、物忘れを心配して心療内科・精神科を受診することがあります。 「授業で聞いたことが頭に残らない」「頼まれた仕事を忘れる」「予定が抜ける」など、困る場面は人によって違います。
物忘れというと認知症を思い浮かべ、「若年性アルツハイマーでしょうか」と相談されることもあります。診察では、その心配も受け止めながら、うつ病やADHDなど、若い人でまず考える原因を確認していきます。
「数分前のことを忘れる」ときも、忘れ方を具体的にする
さっき聞いた話が頭に入っていなかったのか、予定を実行する段階で抜けたのか、ある出来事の記憶自体を思い出せないのか。この違いを言葉にすると、診察で状況を伝えやすくなります。
| 困っていること | 伝え方の例 |
|---|---|
| 新しい内容が覚えにくい | 「以前は覚えられた説明を、最近は何度聞いても覚えにくい」 |
| 予定や用事を忘れる | 「提出物を出すことや、頼まれた連絡を忘れる」 |
| 持ち物の場所を忘れる | 「鍵やスマートフォンを置いた場所が分からなくなる」 |
| 特定の時期の記憶が抜ける | 「強いストレスがあった時期の出来事を思い出せない」 |
この表は、困りごとを説明するための例です。診断では、始まった時期やほかの症状、生活への影響を合わせて確認します。
いつから始まり、どんなときに増えるか
最近になって急に増えたのか、小学生の頃から忘れ物が多かったのかを振り返ります。落ち込みと一緒に悪くなったのか、忙しさが増して普段の工夫が使えなくなったのかも、大切な情報です。
本人の感覚に加え、「同じ説明を聞き直すことが増えた」「約束を忘れるようになった」など、周囲が気づいた変化も参考になります。
2.若年性アルツハイマーではないかと心配なとき

若年性アルツハイマーとは
アルツハイマー型認知症は、高齢者の認知症の主な原因です。記憶をつかさどる海馬などの神経細胞が徐々に減り、物忘れや生活上の障害が進んでいきます。
若年性アルツハイマーは、18歳から64歳までに発症するアルツハイマー型認知症です。年齢が上がるほど有病率が上がり、20代・30代で発症する方もいます。
治療の基本は高齢者の場合と同様とされますが、症状の進行の早さが指摘されています。
早期発見は大切だが、若い人では頻度も踏まえて考える
若年性アルツハイマーへの注意は必要ですが、特に45歳以下では頻度はかなりまれです。 若い人の物忘れでは、まずうつ病やADHDなど、ほかの原因を考えることが現実的です。
そのうえで、忘れやすさが少しずつ進んでいるか、学校・仕事・家事で以前できていたことが難しくなっているかを確認します。困りごとが続く場合は、心配だけを抱えて過ごさず、経過を医師に伝えてください。
3.若い人の物忘れの主な原因3つ

ここでは、うつ病、ADHD、解離性健忘の順に説明します。始まった時期と忘れ方を分けると、それぞれの特徴を整理しやすくなります。
4.甲状腺・てんかんなど、ほかに考えられる原因

甲状腺の機能の異常
甲状腺の不調から、記憶力が落ちることがあります。甲状腺機能低下症だけでなく、亢進症でも起こる可能性があります。
物忘れと一緒に体調が変わっている場合は、その変化も医師へ伝えてください。症状や診察の結果に応じて、必要な検査を検討します。
軽い意識もうろうを伴う、てんかん
てんかんでは、強い発作が目立たなくても、軽く意識がもうろうとする状態によって、記憶が抜けたり覚えにくくなったりすることがあります。
「その間のことを覚えていない」「周囲から、呼びかけへの反応が違ったと言われた」などの出来事があれば、普段の物忘れと分けて伝えます。
体調不良や、内科の病気
体調不良や内科疾患、とくに意識が軽く混濁するような状態でも、物忘れにつながりやすくなります。心身のさまざまな原因を踏まえ、病歴や症状を確認することが、若い人の物忘れを調べる出発点です。
睡眠不足や不眠も、物忘れの相談では一緒に振り返る項目です。寝ている時間、途中で目が覚めるか、日中の眠気なども、受診時の情報になります。
5.物忘れを減らすために、学校や仕事でできる対策

覚えることを減らし、記録する場所を決める
予定や頼まれごとは、頭の中だけで覚えておくより、後から確認できる形にします。 手帳、スマートフォンの予定表、仕事用のメモなど、自分が使いやすい場所を一つ決めます。
約束をしたときには、その場で日時を入れます。「あとで書こう」と保留にせず、忘れる前に記録する流れをつくります。通知を使う場合は、準備や出発に間に合う時刻も考えて設定します。
一度に聞く量を減らし、短く確認する
説明が頭に残りにくいときは、内容を小さく分けて確認します。例えば、「まずこの書類を作り、終わったら提出する、で合っていますか」と、自分の言葉で短く復唱します。
学校では提出物の内容と期限を、職場では作業の順番と締め切りを、文章でも残してもらう方法があります。長い説明を一度で全部覚える形から、確認しながら進める形へ変えます。
同時に進めることを減らす
別の用事が入るたびに作業を切り替えていると、元の作業へ戻ったときに抜けが生じます。中断する前に、「ここまで終わった」「次は何をする」と短く残します。
例えば、電話を受ける前に「次は金額を確認」と一言書いておく方法です。対策は増やしすぎず、実際に困っている場面に合うものから試します。
最近増えた物忘れは、体調と負担も相談する
落ち込みや疲労、不眠が重なっているときには、確認作業を増やすだけでなく、休める時間や仕事・勉強の量を見直します。うつ病が背景にある場合は、その治療を進めることが物忘れの改善にもつながります。
生活上の工夫は、忘れてしまうことで困る場面を減らすためのものです。原因に合った治療と並行して、今の状態で使いやすい方法を選びます。
6.若い人の物忘れは何科へ? 受診の目安と検査

学校・仕事・家事に支障があるときは相談する
物忘れが続いて提出物や仕事の約束を守れない、同じ説明を何度も聞くようになった、生活で支障が増えている場合は、受診を考えます。周囲が以前との違いを感じている場合も、確認するきっかけになります。
「若いから相談しにくい」と遠慮する必要はありません。困りごとの経過を伝え、今の状態を調べてもらうことから始めます。
何科へ行くか迷うとき
| 主な相談内容 | 相談先の目安 |
|---|---|
| 原因が分からない、体調の変化もある | かかりつけ医・内科。診察に応じて必要な専門科へつなぐ |
| 落ち込み・不安・不眠とともに忘れやすくなった | 心療内科・精神科 |
| 子どもの頃から忘れ物や不注意が多い | ADHDの相談に対応する精神科など |
| 強いストレス後に、特定の記憶を思い出せない | 精神科・心療内科。体の原因の確認も含めて相談する |
| 徐々に進む物忘れ、意識の変化、神経の病気が心配 | 脳神経内科・もの忘れ外来など。かかりつけ医からの紹介も利用する |
10代の方は、小児科、学校の保健室や相談室を入口にする方法もあります。医療機関によって対象年齢や診療内容が違うため、予約時に年齢と困りごとを伝えて確認してください。
診察で伝えるとよいこと
| 確認すること | メモの例 |
|---|---|
| 始まった時期 | 「小学生の頃から忘れ物が多い」「2か月前から急に増えた」 |
| 忘れる内容 | 「説明を覚えにくい」「予定が抜ける」「ある時期のことが思い出せない」 |
| 起こりやすい場面 | 「複数の依頼を同時に受けたとき」「疲れや落ち込みが強い日」 |
| ほかの症状 | 睡眠、気分、食欲、疲れ、離人感、意識がもうろうとした場面 |
| 生活への影響 | 提出物、仕事の締め切り、通学・通勤、家事で困っていること |
| これまでのこと | 子どもの頃の様子、受けた検査、持病、処方薬・市販薬、飲酒など |
本人が希望する場合は、家族などに様子を補足してもらう方法もあります。話しにくい内容は、メモにして渡して構いません。
検査は、症状と経過に合わせて考える
まず問診と診察で、物忘れの出方を整理します。必要に応じて、血液検査、認知機能や心理面の評価、脳の画像検査などを検討し、てんかんなどが疑われる場合には専門科で調べます。
検査の種類は、確認する原因によって違います。これまでに検査を受けている場合は、結果や紹介状を持参すると、その後の診察につながります。
急に記憶が抜け、混乱しているときは、すぐに医療につなぐ
突然、今いる場所が分からなくなった、呼びかけへの反応が悪い、会話が通じなくなった場合は、通常の物忘れの相談とは別に、すぐに医療の対応が必要です。 119番で救急を要請し、本人に車を運転させないでください。
周囲の人は安全を確保して付き添い、いつから変わったか、直前の様子、服用している薬などを伝えます。
7.家族・学校・職場でできるサポート

「何度言えば分かるの」より、困っている場面を確かめる
忘れ物や聞き直しが増えたら、「最近、説明を覚えるのが大変そうだけれど、疲れていない?」など、具体的な変化から尋ねます。責められると話しにくくなるため、まず本人が何に困っているかを聴きます。
以前からの傾向なのか、最近増えたのかを一緒に振り返ります。本人だけでは気づきにくい変化があれば、受診時に伝えられるよう短く残します。
口頭だけで伝えず、確認できる形をつくる
頼みごとは一度に詰め込まず、優先順位と期限をはっきりさせます。必要なら、口頭の説明をメモや共有の予定表でも確認できるようにします。
忘れにくくする方法は、本人と相談して決めます。「毎日この時間に一緒に予定を確認する」など、続けられる範囲の支えから始めます。
記憶が抜けた出来事を、無理に聞き出さない
強いストレスに関係する記憶が抜けているときには、周囲が内容を推測して答えを誘導したり、思い出すよう迫ったりする対応は避けます。今の生活で何がつらいか、安全に過ごせているかを確かめ、専門家への相談を支えます。
本人が望む場合には、予約や付き添いを手伝います。支える側も、一人で原因や治療を判断しようとせず、相談先を持つことが大切です。
8.若い人の物忘れについてよくあるご質問

10代や20代で、物忘れがひどくなることはありますか?
あります。うつ病の集中困難によって新しいことが覚えにくくなったり、ADHDの不注意が学校や仕事の負担によって目立ったりする場合があります。睡眠や体調の状態も確認します。
年齢から病名を決めるのではなく、以前からの様子と最近の変化を伝えてください。勉強や仕事に支障が出ているなら、若いうちでも相談する理由になります。
「若年性健忘症」という言葉を見かけて、心配です
まず確かめたいのは、いつから、何を、どんな場面で忘れているかです。若い人の物忘れには、うつ病、ADHD、解離性健忘、体の病気など、さまざまな背景があります。
気になった言葉に加えて、実際に困っている出来事を伝えると、診察で整理しやすくなります。このページでは、そうした原因を分けて説明しています。
うつ病の気分はよくなったのに、物忘れが残っています
うつ病による物忘れは、ほかの症状より改善に時間がかかることがあります。気分の回復と同時に、記憶の困りごとまで一度に解消しない場合もあります。
何がまだ難しいかを主治医へ伝え、仕事や生活での支えも相談します。以前よりさらに悪化している、新しい症状が出たという場合は、その変化も確認します。
インターネットのチェックだけで、原因は分かりますか?
チェック項目は、困りごとを整理する補助として使えます。原因の確認には、幼少期からの様子、最近の気分や体調、忘れる内容などを合わせて調べることが必要です。
診察では、できていることや工夫すると改善する場面も伝えてください。症状の名前だけでなく、生活全体を把握する手がかりになります。
9.まとめ・関連する病気や症状を詳しく知る

若い人の物忘れでは、まずうつ病による集中困難や、ADHDの不注意を考えます。落ち込みなどと連動する最近の変化か、幼少期から続く傾向かが、大切な手がかりです。
強いストレスの後に特定の記憶が抜ける場合には、解離性健忘も考えます。甲状腺やてんかんなどの体の原因、まれな若年性アルツハイマーへの注意も含め、病歴と症状から総合的に確認します。
落ち込みや意欲の低下と一緒に、物忘れが増えた方へ
うつ病全体の症状や治療については、総合ページで詳しく説明しています。
子どもの頃からの忘れ物や、不注意が気になる方へ
ADHDの症状や診断、日常の工夫については、総合ページをご覧ください。
集中しにくさや、仕事でのミスも気になる方へ
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若い人の物忘れ
このページのもとになった、精神科医による解説動画です。若年性アルツハイマーの可能性をどう考えるか、うつ病・ADHD・解離性健忘などで物忘れの現れ方がどう違うかを説明しています。
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