罪悪感
うつ病で過剰になる
「罪悪感」は、「悪いことをした」と自分を責める感覚。過剰になると悪影響目立ちます。
主にうつ病で過剰になります。抗うつ薬などで治療しつつ、「別の見方」を探します。
もくじ
(1)はじめに:罪悪感
心療内科・精神科の症状。今回は「罪悪感」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします
。自分のやったことに「罪悪感を持つ」ということはしばしばあることです。
しかし、一方で、これが過度に強い場合は、うつ病の症状の一つの可能性があり、注意が必要です。
今回はこの「罪悪感」について見ていきます。
(2)罪悪感とは?
この罪悪感とは「悪いことをしたと思う気持ちのこと」です。
<罪悪感とは>
罪悪感とは、自分が罪をしたり、悪いことをしたというふうに思う「嫌悪の感情」になります。
自分の行動などが、いわゆる自分の中の規範(ルール)に反していると思った時に生じてきます。
背景には、ある種自分が、属している集団から排除されるような危機感がある、との推測があります。
この罪悪感は2つあり、一つは健全な罪悪感。もう一つは過度な罪悪感。この2つの違いが大きいです。
<健全な罪悪感>
健全な罪悪感は、自分の行動が、自分の中の規範(ルール)に反した時に自然に出る罪悪感です。
これは自分の行動の振り返りと反省を促し、その後の行動の改善につながりうるプラスの面があります。
<過度な罪悪感>
過度な罪悪感は、本来は罪のないような場面で、不自然に強く出るなどする罪悪感になります。
この背景には、「自己評価の低下」などの「認知のゆがみ」が影響することが多いです。
その結果、強い苦悩や生活や症状への悪影響がむしろ強く目立ちます。
<過度な罪悪感の特徴>
まずは「罪悪感を過大に評価」本来些細な事でも、大きなことととらえてしまいます。
2つ目は「罪悪感が続く」。本来は軽いほど時間で改善しますが、そうならず持続してしまいます。
3つ目が「機能を妨げる」過度な罪悪感でうつの悪化や社会生活の困難などが出てきます。
(3)罪悪感を起こす精神疾患
これはまさに「うつ病」が代表的になります。
<うつ病とは>
うつ病は、落ち込みなどのうつ症状が目立つ脳の不調になります。
背景として脳のセロトニンの不足が関与されるとされます。
この中で、自分を責め過ぎる「過度な罪悪感」が症状の一つになります。
<うつ病の罪悪感>
これは一般の健全な罪悪感とは異なる「過度な罪悪感」です。
そして、うつ病で生じる「考えのくせ」がこの罪悪感の発生に影響します。
そして、うつ病の悪化や治療の妨げになりえるので注意が必要です。
<罪悪感に影響する「考えのくせ」の例>
①全か無か思考
一つのミスを一般化して「全部もう駄目だ」考え、強い罪悪感をもたらします。
②選択的抽象化
物事のマイナス面ばかりに目が行き、そこから自分を責める罪悪感につながります。
③個人的帰属
ネガティブな出来事に関して、自分に本来関係ないことも全部自分に紐づけし、罪悪感につながります。
<罪悪感の悪影響>
①自責の悪循環
自分を責めることがさらにストレスになり、もっとうつが悪化する、こうした悪循環になる事があります。
②休養の困難
例えば休職して休養する場面でも、自分で自分を責める事が「考え事」として続き、頭が休まらないことが続きます。
③対人的な孤立
他の人への罪悪感や恐れが強くなり、その反応として人を避け・孤立することがあります。
(4)罪悪感への対策
罪悪感への対策は、基本的には「うつ病の治療」と「考えの調整」の2つです。
①うつ病の治療
「うつ病の罪悪感」は、まず「脳の不調」セロトニン不足があり、それにより「考えのくせ」が目立ち、そこを誘因に罪悪感が強く過度に出るようになる、この流れがあります。
なので、上流の「脳の不調」セロトニン不足を改善すれば、結果罪悪感の改善も見込める面があります。
そのためにうつ病の治療をします。治療の3本柱は休養・薬物療法(抗うつ薬等)・精神療法です。
②考えの調整
考えのくせが過度な罪悪感に繋がる面があります。
この考えのくせに対し「別の見方がないか」を探す練習を反復する「認知再構成(認知行動療法の技法の1つ)」が有効とされます。
この土台として、まず自分の「考えのくせを観察する」、いわゆるマインドフルネスの技術があります。
(5)まとめ
今回は心療内科・精神科の症状「罪悪感」について見てきました。
罪悪感は「悪いことをしたと思う気持ち」。一種の「健全な罪悪感」は行動の改善につながる一方、過度になるとむしろ悪影響が目立ちます。
「うつ病」では「考えのくせ」が影響し過度な罪悪感が起こります。その結果うつ病の悪化や治療の妨げに繋がるため注意が必要です。
この罪悪感の対策は、抗うつ薬などの「うつ病治療」を土台に、残った「考えのくせ」に別の見方を探す「考えの調整(認知再構成)」を並行します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)