雑談ができない
発達障害ASDで特徴的
「雑談ができない」特徴が強いのが、発達障害の1つASD(自閉症スペクトラム障害)です。
ASDの社会性の障害・こだわりの双方が、会話の中でも特に「雑談」と相性が悪いです。
対策はできる工夫・対策をしつつもその限界を受け止め、他の強みを生かす事です。
もくじ
(1)はじめに:雑談ができない
心療内科・精神科の症状。今回は「雑談ができない」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
「雑談ができない」という方がいらっしゃいます。
業種や組織によっては、それが仕事や適応に大きなダメージになるとも聞きます。
「雑談ができない」この背景と対策はどんなことがあるでしょうか。
今回は「雑談ができない」について見ていきます。
(2)雑談とは?
「雑談とはどんなことですか?」というご質問があります。
これは「テーマを決めない一種の世間話」と答えます。
<雑談とは>
雑談は、テーマを決めずに行ういわゆる一種の世間話です。
知人、同僚、友人などの間で主に行わます。
特定の何かその会話を通じての達成目標はなく、交流自体が一種の目標です。
<雑談の全体的な意義>
1つ目が「人間関係の構築」話すことで人と人の距離を近づける面が言われます。
2つ目は「情報収集」、会話を通じて新しい情報を得られる面があります。
3つ目は「ストレスの発散」ストレス・嫌なことをためず話すことで発散する面があります。
この雑談は確かに日常でも仕事でも一種の効果があります。
<日常での雑談の効果>
1つ目は「友人関係の構築」、友人の距離を縮めたり友人数を増やします。
2つ目が「充実した対人交流」雑談を通じて交流を充実させるところ。
3つ目が「ストレスの発散」話すことでストレスをためないようにします。
<仕事での雑談の効果>
1つ目は「仕事での人間関係の構築」。同僚・顧客等様々な人間関係を構築していきます。
2つ目が「情報収集」雑談の中で様々な情報を得ることを見込みます。
3つ目は「他者の印象や評価の向上」交流が普段からうまくいけば、評価等にもつながります。
<雑談力が求められる業種の例>
まずは「営業の仕事」、顧客との関係性を作り、商談につなげます。
2つ目が「人事の仕事」、雑談を通じ「相手の本質を見抜く」等があります。
3つ目は「対人援助職」、人との関わりの潤滑油が雑談になります。
これまで雑談の意味を見てきましたが、時に雑談にも悪い面があります。
<悪い雑談の例>
まずは「他者の悪口の横行」。ストレス発散での雑談で、内容が誰かの悪口になる場合があります。
2つ目が「マウンティング」、本来の目的を離れ、雑談が「上下関係のつばぜり合い」になってしまうことがあります。
3つ目が「強制と不参加への差別」。時に相性などもあり本来は雑談は「出なくてもいい」はずですが、暗黙のうちに参加が義務になっていたり、出ない時に周囲から後ろ指を指されることもあり得ます。
(3)雑談ができない理由
特徴的なのは、いわゆる「ASD(自閉症スペクトラム)」になります。
①ASD(自閉症スペクトラム)で雑談が苦手
<ASD(自閉症スペクトラム)とは>
ASDは、社会性の障害とこだわりが特徴的な、生来の発達障害です。
幼少期の診断が多い一方、成人後に不適応等で判明することもあります。
「対人関係が苦手」、その中で特に「雑談が苦手」とされます。
少し社会性の障害とこだわりを少し詳しく見ていきます。
<社会性の障害>
これは相手の表情や場の雰囲気を読み取る事に困難があるとされます。
そして、無意識や自然な形での共感が難しい事も指摘されます。
また、相手から見て、言動や雰囲気等のずれからある種「奇妙」に見られることがあります。
<こだわりの障害>
これは限られた物事や行動パターンに固執することです。
興味や行動範囲が狭く、かつ周囲の「無意識の常識」とずれやすい面があります。
そして、予想外の変化への対応に関して困難があります。
この2つの特性が、特に雑談との相性が悪いです。
<雑談の特性>
まず、雑談はは目標がなくて予想外に様々変化しますが、これが苦手分野です。
あとは互いの共感・共通の話題が雑談の土台ですが、この点も本質的に苦手です。
そして、雑談の中ではしばしば「雰囲気」で評価が決まりますが、そうすると往々にして不利、低く評価されるに至ります。
<参考:ビジネス会話>
逆にビジネスの会話では、まずは目標が明確かつパターンも一種決まっています。こうなると苦手が減ってきます。
あとは論理的な話、条件面、ルール等が非常に明確なことが多く、対応しやすくなります。
また、専門知識や資料等、「印象面以外」での評価点が発生するのも有利な点になります。
<二次的な、雑談への嫌悪感>
二次的な雑談への嫌悪感が、ASDの方で出ることがあります。
まずは興味が合わないため「楽しくない」と感じることがあります。
あとは、「他者の悪口等」への嫌悪感というのを持つ方は少なくありません。
また、雑談が力関係等と絡む中、「下に見られる経験などへの嫌悪感」を持つ方もいます。
②他の原因での雑談の苦手さ
ASD以外、他の原因で雑談が苦手なこともあり得ます。
1)ADHD
ADHDでは実際、雑談自体は得意なことも多くあります。
ただし、不注意から、会話に集中せず話の流れを切る事で時に不具合が出ます。し
あとは衝動に伴う「つい余計な一言」から不具合が出ることがあります。
2)不安障害
不安障害だと会話自体の技術は、あることが多いです。
ただ、「相手がどう出るか」等考えすぎ、緊張で話しにくくなります。
特に、その雑談に「悪意が多い」とより不安や緊張が増えます。
3)うつ病
うつ病では落ち込みの他、判断力、興味なども減退し、雑談から離れることがあります。
そして不安や自己否定から、罪悪感を持って人を避ける場合もあります。
そして会話自体が疲弊の元になるため、避ける場合もあります。
4)境界知能(IQ70-84)
どうしても「会話の流れについて行きづらい」とことが出てきます。
表現をその場で素早く的確にするということの苦手もあります。
そして、表情や雰囲気など、多くの情報を会話で扱うことの困難が生じます。
(4)「雑談ができない」への対策
「できる対策はする。その上で、むしろ長所を生かす」がポイントです。
<できる対策はする>
①聞き手として相手に合わせる
自分から話して相手と共通項を持つのは難しい部分があります。
なので「相手がどう興味を持つか」に「合わせる」ことに集中し、ずれを減らしていきます。
②技術面でのモデリング
どうしても会話の苦手というところがあります。
その中で、得意な人を真似して、徐々にでも技術を身につけてい方法があります。
③他者利益にこだわる
自分の利益にこだわっての会話だと、確実にズレが生じ、雑談がうまくいきません。
相手に楽しんでもらうことに集中するのが一つの方法と思われます。
④悪い場からは勇気を持って去る
雑談での場の雰囲気や空気はそれぞれで、なかなか自分では制御しにくいのが現状です。
なので、悪口とかマウンティングが多い場なら、勇気を持って去るのも一つ方法です。
こうした方法で効果はありますが、いかんせん限界もあります。
<他の強みを生かす>
もう一つの方法が、「他の強みを生かす」事です。
まずは雑談に関しては、もう最低限できる対策をして何とかこなす。
そのうえで、他の強みを磨いて、そこで勝負をしていくというところ。
そして、強みを生かせるある種「減点法じゃない環境」を選んでいくことが大事です。
<補足:雑談ができない10代へ>
一つ言えるのは、学生時代がある種一番きついというところです。
仕事等あれば「手に職をつけた」、そこで社会と繋がっていけます。
しかし学生の場合はあくまで「学ぶ」ポジションなので、仕事等での社会貢献でポイントを取れません。
なので、どうしても「雑談的な雰囲気」場の雰囲気で周りから評価され、同級生からも評価されることになりがちです。
ここで他の貢献の方法がだんだん見つかってくると、非常に楽になってきます。
仕事などが始まれば、場を選べばチャンスがあるので、そこに備え日々技術を磨くのが大事です。
とはいえなかなかきつい時期が続く場合、アルバイトやSNS(等)を通じて、何か創作物を通じて、何か早目にできる貢献の方法を探していくのも一つのやり方です。
(5)まとめ
今回は、心療内科・精神科の症状「雑談ができない」について見てきました。
雑談は人間関係の構築など、仕事でも日常でも確かに大きな意味を持つところがあります。
この中で、特にASD(自閉症スペクトラム)の方は、どうしても特性上、特に会話の中でも雑談とは相性が悪い面が強く、苦手とする方が多いです。
対策は、まずは聞き手になるなど、できる取り組みをまずしっかり行っていく。
その上で苦手が残るなか、他の他者に貢献できる形を模索していくのが現実的な対策です。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)