反動形成

感情の「あえて逆をする」

「反動形成」は、自分の感情の「あえて逆をする」ことです。

 

心理学的には、ストレスへの対処戦略「防衛機制」の1つです。

 

動画:反動形成

もくじ

 
  1. (1)はじめに:反動形成
  2. (2)「反動形成」の例
  3. (3)反動形成とは?
  4. (4)反動形成のメリット
  5. (5)反動形成のデメリット
  6. (6)反動形成の対策
  7. (7)まとめ
  8.  

(1)はじめに:反動形成

精神科・メンタル分野の言葉。今回は「反動形成」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

「つらい時にあえて笑ってみる。」これは一つの対処方法になります。

一方で、この対応をやりすぎてしまいますと、長い目で見て辛くなることもあります。

この「本来の感情の逆をす」るということを、心理学的には「反動形成」という風に言います。

今回は、この「反動形成」について見ていきたいと思います。

(2)「反動形成」の例

Aさんは、会社で異動があって、好きではない部署になってしまいました。

職場への嫌悪感を悟られてはいけないということで努めて明るく振る舞うようにしました。

それでしばらくはうまくいきましたが、なぜか疲れがたまってきまして、ある日になって会社に行けなくなりました。

(3)反動形成とは?

反動形成は、「自分の感情と真逆に振る舞うこと」です。

<反動形成とは>

反動形成は、ストレスへの対処「防衛機制」の一つになります。

「自分の本来の感情とは逆の行動や表出・表現をする」方法です。

短期的には効果は高いですが、一方で続けると疲弊するなど様々な悪影響が出てきます。

<防衛機制とは>

防衛機制は、人がストレスや不適切な感情を感じた時にそれをうまく管理するための心理的な戦略です。

フロイトなどによって概念が提唱され、この概念は今も用いられています。

健全なタイプの防衛機制から危険なものまで、さまざまなタイプのものがあります。

<防衛機制の例>

まず「抑圧」、嫌な感情を無意識に押し込めるやり方があります。

あとは「昇華」、嫌な感情を建設的な方向に変換していく方法があります。

そして「投影」、嫌な感情を「相手が持っているとに思い込む」という方法もあります。

<反動形成の例>

例えば怒りが強い時に逆に非常に丁寧過ぎるくらい丁寧に振る舞うという場合があります。

後は悲しみが強すぎる場合に、逆にもあえて笑ってみせるという場合があります。

人間関係で言えば、好きな相手に対してあえて嫌いなように振る舞うというやり方をとる場合もあり得るかと思います。

(4)反動形成のメリット

「意識して、短期的に行うならば有効」です。

主な反動形成のメリットは「短期的には有効」「回避を防ぐ」「不適応を防ぐ」の3つです。

①短期的には有効

反動形成を使うと、否定的感情に呑まれず行動することができます。

そして、直面する時と比べると、ストレスの影響自体を減らすことも短期的には可能です。

強いストレス状況での一種の「自己」治療という面があります。

②回避を防ぐ

反動形成は、ストレスや状況に圧倒されてその場を回避してしまうことを防ぎます。

そのため、その場にとどまることはできるので、時に「脱感作」を並行して克服できる場合もあります。

また一種の「自己暗示」になりプラスに作用する場合もあります。

③不適応を防ぐ

不適切な感情ををそのまま出して喧嘩になる等の「不適応」をすることを防ぎます。

その結果、関係性の悪化から悪循環も防ぐことができます。

そして、感情に呑まれて混乱することも防ぎやすいです。

(5)反動形成のデメリット

「無意識に長期化すると危険」です。

主な反動形成のデメリットは、「疲弊してしまう」「自分の状態が見えなくなる」「対人面で誤解を生む」の3つです。

①疲弊する

この「反動形成」は、ある種「無理をしている状態」のため、長く続くと疲弊してしまうことが多いです。

対策として、疲労やストレスへの対策を意識的に取る事で一部は改善を見込みます。

ただ、長期に続くとをカバーしきれず、うつ病などのリスクが生じます。

②自分が見えなくなる

慢性的に無意識に反動形成を取ると、「自分がどう感じたか」が次第に不明瞭になってきます。

すると、どう自分に「適切に対処していいか」がわからなくなってきます。

その結果セルフケアがやりづらくなり、不調のリスクが長期的には高まる場合があります。

③対人面で誤解を生む

相手はあくまでこちらの表出・表現に対して反応します。

そのため反動形成で本来の思いとは違う振る舞いをすると、本来自分が望まない対応が相手から返ってきます。

また一方で、本心と違う「不自然な言動」のために、相手から実際に誤解される事もありえます。

(6)反動形成の対策

「自覚しつつ、短期的にのみ使う」のが対策です。

主な対策の方向性は「意識的に応急処置として」「体調面の対策を並行」「長期的には別の対策を取る」の3つです。

①意識的に応急処置として

反動形成は、短期間であれば現実的な応急処置として有効性は比較的高いです。

あくまで短期間にとどめることで疲弊してしまうというデメリットを防ぎます。

そして意識的に行うことで、無意識にすると出やすい「感情の混乱」を防ぎます。

②体調面の対策を並行する

基本的には、この「反動形成」は心身に無理をかける方法になります。

そのため無理し過ぎると不調になるリスクがどうしても上がってしまいます。

なので、意識的にストレスや疲労の対策を取ることが、疲弊を防ぐために大事です。

③長期的には別の対策を考える

反動形成は、長期的に無意識に続けると、いろいろな悪影響が目立ってきます。

もし、この反動形成をして適応してきたら、他の対策で置き換えていきます。

逆にこれをしても「不適応が続く場合」は現状厳しいため、環境調整を視野に入れていきます。

(7)まとめ

今回は、精神科・メンタル分野の言葉「反動形成」について見てきました。

反動形成は、ストレスへの対処「防衛機制」の一つで、不適切な感情の「あえて逆をする」という対処法です。

短期的・意識的にすれば有効性が高いですが、逆に長期的・無意識になると様々な悪影響が目立ってきます。

そのため、意識的・短期間、かつ必要な時のみ用いていくのが基本です。

もし反動形成が長期になりそうな場合は、別の対策を用いて置き換えていくことを検討します。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)