蛙化現象

振り向かれると、嫌になる

蛙化現象は「好意を持った相手に好意を持たれると、逆に嫌悪感が出てしまう」状態です。

 

これは本人にも、相手にも影響が出る事があります。要素は様々ですが、自己肯定感・他者軸の影響が推測されます。

 

双方に取り辛い状況ですが、起こっている現状を受け入れつつ、冷静に今後の方向性を話し合うのが原則です。

 

動画:蛙化現象

もくじ

 
  1. (1)はじめに:蛙化現象
  2. (2)蛙化現象とは?
  3. (3)蛙化現象の影響
  4. (4)蛙化現象の背景(理由)
  5. (5)蛙化現象を防ぐには
  6. (6)実際に蛙化現象になってしまったら
  7. (7)どう実際取り組むか?
  8. (8)まとめ
  9.  

(1)はじめに:蛙化現象

精神科・メンタル分野の言葉。今回は「蛙化現象」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

ここ最近、心療内科・精神科の外来の中で「蛙化現象」の相談を受ける場面があります。

人によっては、その葛藤からうつ症状が続いたり、不眠になることもあります。

今回は、この「蛙化現象」についてやっていきたいと思います。

(2)蛙化現象とは?

まず、この「蛙化現象とは」ですが、これは「好きな相手がいたときに、その相手に好意を持たれたら、逆に嫌になってしまう現象」のことです。

<少し詳しく>

蛙化現象は心理学の用語の一つで、主には女性に多いとされます。(が、諸説あります)

好意を持つ相手から逆に好意を持たれると、その相手が逆に嫌になってしまうことです。

これはある種「本能的な嫌悪感」で出る場合、また人によっては自己嫌悪に陥ってしまう事もあります。

<蛙化現象の由来:グリム童話「かえるの王様」>

王女がいて、「金の毬」を泉に落としてしまった。その時にカエルが「自分と寝食を共にすること」を条件にして拾ったが王女はその約束を無視しました。

そうしたらカエルが城に来まして、その後いろいろあったんだけども、なかなか受け入れられず、カエルを壁に投げることがあった。

そうしたら魔法が解けてカエルが王子になったので、急に関係が改善して結婚した。

こういった童話になります。

<童話と蛙化現象の関係>

童話ではカエルから王子の変化で急な相手への感情が変化・改善しました。

一方蛙化現象はこの逆でして、交際を始めることで、「王子→カエル」的な変化が出て急に嫌悪感が出てしまったとの状態です。

(3)蛙化現象の影響

この蛙化現象は自分にも相手にも影響を与えうるところがあります。

<自分への影響>

①自己肯定感の低下

蛙化現象を経験しての自責・自己嫌悪から、特に対人面の自己肯定感が下がることがあります。

②予期不安からの対人回避

「また同じことをしてしまわないか」という不安が出て、人を避ける場合があります。

③対人トラブルのリスク

相手側が強く反応し、対人トラブルになるリスクがあります。

<相手への影響>

①評価の乱高下による心理的ダメージ

強く好かれる→嫌悪される、の大きな変化に当惑します。

②自責からの自己肯定感低下

「自分がレベル低いから」等自責・自己卑下に陥ると、大きく自己肯定感が低下します。

③予期不安からの対人回避

ダメージ・自責が大きいと、「また同じ思いをするのでは」との不安から、対人回避につながることがあります。

(4)蛙化現象の背景(理由)

ここは諸説あり実際には複雑で、単純には言いにくいのが現状です。ただし、比較的注意を要する点はあるかと思われます。

<注意を要する点>

①自己肯定感の低さ

自分で「自分を信じられない」と、「自分を好きになった相手も信じられない」につながってしまいます。

②他者依存(他者軸)

相手の状態に自分の感情の評価軸があると、相手の悪い点を見た時の強い動揺につながります。

③過度の理想化(全か無か思考)

相手の「いい面」だけ見えていると、逆に悪い面が見えたら真逆になってしまう危険性があります。

(5)蛙化現象を防ぐには

蛙化現象を防ぐ特効薬、心療内科的な特効薬はありません。

「注意点の逆」を地道に続けてする事と思われます。

<できる事のヒント>

①自分軸・自己肯定

自分軸で相手に影響されすぎない状態を作り、地道な日々の積みかさねで徐々にでも自己肯定感の改善を図ります。

②対人関係を選ぶ

自己信頼を土台に、対人面のいい面・悪い面両方を見極め、納得いく交流を選んでいきます。

③相手を「全体」として見る

相手も「理想」「嫌悪」の両極ではなく両面ありますので、相手を「清濁併せ持った存在」として「全体」を見ていきます。

(6)実際に蛙化現象になってしまったら

ここはつらい所ですが、その状況を受け止めつつも、現実的な対応をお互いに取っていくことが望まれます。

<基本的な方向性>

善悪はともかく、両者にとって非常に辛い現実があります。

その中で自分を責め過ぎない。でも、相手も責め過ぎないことが大事です。

そこを土台に、現実を見た上で、自分と相手双方にとっての今後のいい方向を相談・模索することになります。

<蛙化現象になった側の方向性>

「無理して隠す」と、次第にカバー困難となり、双方がつらくなる恐れはあると思われます。

(もし話すなら)

まず、自分が「気変わり」したことは伝えざるを得ません。ただ、ここで「相手のせいではない」ことをはっきり伝えることが大事と思われます。

それを伝えないと相手が自分を責めてしまいますので、相手のせいではないけど、ちょっと変わってしまったという現実の話をする。

その中で、「変わってしまったことは申し訳ない」という謝罪的面もありますが、ただ一方で相手から「過度な要求や叱責」があった場合、そこは丁重に断ることが大事です。

(相手が受け入れ困難の時)

この場合は非常に難しいところです。その場合は、他の理由で距離を取る等の「現実的な方法」が時に求められます。

<言われた側の方向性>

まず1つ目としては、「それが現実だとを受け止めること」、非常にこれは辛いことですけども大事です。

その際、「自分を責め過ぎない(自己卑下しない)」ことが大事です。

(万が一、相手が「お前が悪い」と他責しても、それは一般には筋が通らない話と思われます)

対応としては、「誠意には誠意で、他責には毅然と」。

相手が「そういうことになってしまって申し訳ない」ということなら、それは誰が悪いというよりも、今後の双方にいい方向を目指し建設的に話し合っていく。

ただ、それをもし「相手(言われた側)が悪い」みたいにすりかえる場合は、「それは違いますよ」と、そこに関しては毅然と言う。

「必要な主張はする」ことで、自分をつぶさないようにすることはもう一つ大事だと思います。

その中で、やはりどうしても割り切れない思いというのは色々あると思います。

あるんだけれども、そこで「過度な要求や叱責は(あえて)控える」。

過度の要求等自体がハラスメントになる面もありますし、逆にそういう「強い要求や責め」をすることで、相手が自己防衛的・他責的になり、結局ダメージが跳ね返る恐れもあります。

なのでそこは辛いところですけれども、過度な要求や叱責は控えるのが原則になるかと思います。

(7)どう実際取り組むか?

「自分だけで難しい時にカウンセリングなどを検討する」方向と思われます。

<取り組みの方向性>

基本的には「自分で整理をしていって改善を図る」、振り返り・人生経験の積みかさねの面があろうかと思われます。

その中で、一人での解決は難しい時に関してカウンセリングなどを検討していくというところ。

(知人への相談も選択肢ですが、過度に(枠組みを付けず)「聞きすぎる」と知人が疲弊してしまいます)

そして、その中で「精神的な不調」うつ・不眠などを合併した時は、その改善のために心療内科・精神科を検討します。

<カウンセリングの検討の時>

まずは、一人で取り組んでもなかなかうまくいかない時。

そして、例えば人によっては背景に、全か無か思考などの「考えのくせ」があり、それが気になって何とかしたい時。

あとは話すことで整理をしたい「以前の心理的葛藤」があり、それが影響しているかもしれない時が選択肢になります。

逆に精神科・心療内科では、なかなかそういう時間をかけたカウンセリングは困難で、基本は薬の治療が主体になると思われます。

<精神科・心療内科を検討する時>

まずは葛藤があって「うつ・不眠が続く」など、いわゆる精神疾患・精神症状が続く時。

あとは色々あって対人不安が強まり、一般的な社会生活にも影響が出てしまう時は、「社会不安障害」の治療が適応になる可能性があります。

あと、人によってはこうした対人面で、不注意・こだわり等のADHD/ASD的な特性の自覚があり、発達障害が気になる場合は選択肢になります。

ただ、あくまで「蛙化現象」は単独では精神疾患ではありません。あくまで精神症状が合併した時に検討することになります。

(8)まとめ

今回は、精神科・メンタル分野の言葉「蛙化現象」について見てきました。

「蛙化現象」とは、好意を持った相手に好意を持たれたら、逆に嫌になってしまうという現象です。これは自分にも相手にも影響が生じるものになります。

自己肯定感の低さ、他者軸の強さというのが時に影響してしまうことがあります。

対策として自分軸を持って相手をある種「清濁併せ持った存在として」「全体として」見ていくのが方向性です。

実際になった時に、辛さがあっても、他責になり過ぎるのは良くないことだと思います。

可能な限りですが、受け止めて話し合って、双方の今後の方向性を冷静に模索していくことが大事になってくるかと思われます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)